男が演奏している横に看板が立っている。あなたは看板を読んだ。...投げ銭歓迎!石は投げないでください... あなたは周囲を調べた。... ...何かが見つかりそうだ... 投げやすい小石を見つけた! 作:ネコ文屋
冷やしシャンフロ始めました。
01_サンサン太陽!
陽が
暑さでやる気がなさそうになった目をした中年の男が、シロクマのぬいぐるみを枕にしてソファーにあおむけになっていた。
部屋の中を見渡せば、ベッド兼用ソファ、テレビ、小さめの机、トカゲのはく製、レコード再生機、本棚、ショーケース、作業机、カメラ、スーツケース、ギター、ドライフラワーが活けられた花瓶などがお互いに邪魔をし合わないような配置でおかれている。
よく分からない組み合わせだが、きっと多趣味な男なのだろう。
おっと男が起き出したようだ。
◆
男はうなり声を上げて軽く伸びをした後、数度のまばたきと大きめの
小さめの机の上の白いリモコンにゆっくりと男は手を伸ばす。ボタンを軽く押すと、部屋に取り付けられたエアコンが涼しい風を部屋中に吹きわたら始める。満足げに男は頷いた。
今度は黒いリモコンを手にした。
ピッ
『モイスチャーシャンプー!それは髪のうる...』
ピッ
『はーい♪よゐこのみなさん♪わくわく♪ティラノ...』
ピッ
『...今日もクレイジー列島の時間やってきました。今日のテーマはここまで来たか。VRサービス。今、様々な世代で交友関係、ストレス解消、未知の体験、技能の習得など様々なものを求めて仮想現実、バーチャルリアリティーを利用する動きが活発です。現実生活の中で満たされない欲求や経験もバーチャルリアリティーなら満たせるというのです。
「ムカつく上司から解放されてストレス発散」「質感が超リアル」「友達あっちの方が多いけど、全員AI(白目)」「現実じゃできないことができる」「乗るしかない、このビックウェーブに」「移動時間ゼロって最高だよな」「もふもふ、クンクン」「コスプレし放題やねん」「年のせいで足腰が弱ってきたけど、おかげで楽」「ゲームだから許されるよナァ」「料理教室素敵よね」「かねのにおいがプンプン」「毎日早起き毎日ログイン」
右のグラフはツイッ〇ー上にアップされたVR関連のツイートの10年間の年別累計件数を示しています。ここ2,3年で急激に増加しているのがお分かりになると思います。人々の関心がVRに引き寄せられているのです。十数年前からゲーム業界を中心に技術のフラッシュアップとシェアの拡大を重ねてきたVR市場ですが、さらに驚くべき進化を見せ、VRサービスの範囲は多様化の一途をたどっていました。
それでは、ムービーどうぞ!
【一面に広がる草原の中で臨戦態勢の人間たち。
そこへ一匹の獣が跳ねるように走りながら頭突きの態勢で突っ込んでくる。
短剣を持つ剣士は軽快にサイドステップで躱したが、後方に控えていた魔法使いと突進を止めようとした両手剣を持つ剣士がはねられて空中を舞う。
離れていた場所にいた弓使いが即座に獣の額へと矢を射る。獣は頭を軽く振って矢を後ろの強固な鎧へと受け流す。
そして暴力的な縁取りの目をした全長2メートルほどのかぎ爪と刺々しい尾をもつ赤いアルマジロが尾をスイングして
...
木漏れ日にあたりながら、本を読むメガネの女性。
木にハンモックを吊るして風に揺られる葉が擦り合う音を聞きながら、うつらうつらとしている。
そのうちに寝てしまったようだ。
本に涎が垂れてしまっている。
...
カラフルな布で屋根が作られた東南アジア風の店がたちならぶマーケット。
タオルを頭に巻いた太めのおばさんがほうれん草のような野菜を山のようにして売っている。
そこへやってきた料理人が値切り交渉をし始めた。
隣では植物の根っこらしきものが売っていたり、金属武器が無造作に並べられていて、縁日くらいの人の流れの中から立ち止まって手に取ってみている人がいる。
料理人の値切りはうまくいったようでほうれん草もどきを程よい値段で仕入れることが決まり、屋台のおばさんと握手を交わしている
...】
これらは全て一つのゲームの中の映像で、デモムービーではなく、いわば日常風景を切り取ったものです。
昨年4月からサービスを開始したシャングリラフロンティアというオンラインゲームなのですが、どうでしょう。
さきほどもツ○ッターのコメントでありましたが、現実と見分けがつかないですよね。
情報によると五感の再現性も非常に高く、ついに完璧な仮想現実の到来かと喜びの叫びが上がっています。
運営会社によれば...』
「今時のゲームは本当にすごいな。ほとんど現実に近いじゃないか。」
男、シロクマ中年は感心したように頷き、テレビをBGMにしながら再びあおむけになり物思いにふけ始めた。
(ここまでVRの技術が進んでいたなんてなぁ。うちの会社は会議でも安いし安定するからと言ってテレビ電話使ってるし、なかなか触れる機会がない。
さらに言えばゲーム。会社に入ってからは全く遊んでない。時間がなかったしな。もう30年近くは遊んでいないはずだ。そういえば、俺がゲームを最後に遊んだのはいつ頃だったろうか。
確か...小学生の時はいとこのお古でスー○ァミ、ファ○コンで昔の名作を遊んだ。あと、○クヨン、ゲーム○ーイで4人対戦や繰り返しリセットなんてやってたか。
中学生・高校生くらいまではゲーム○ーブ、○S2、○ii、○SPを兄とお小遣いから着服してこっそり買って一緒に遊んだり奪い合ったりしたものだった。
大学生の時は金がなかったしスマホゲーム全盛期でゲームに飽きてやらなくなったっけ。
いや。確か大学生の時も遊んでいたはずだ。PCで遊べるフリーゲームを。確かelonaというゲームだったか...懐かしいな、今もサイトがあるだろうか。)
シロクマ中年は体を起こして、作業机についてPCを開いてネットサーフィンをし始めた。しばらくして眠そうな胡乱な目の瞳の奥に輝きが灯った。
「おお!まだあるじゃないか。とっくに閉鎖されているものと思ったのだが!」
(うーむ、懐かしい。ごみ箱に何度捨てたことか?初めてやったときは最初の洞窟でごみ箱に捨てた。次の時は近くの町で死にまくりごみ箱に捨てた。しかし、段々やり方が分かってくる。
理不尽さも慣れればソコがいいと思えてくるんだよなぁ。自分なりのこだわりも出てくるんだよな。
確かなんとなく強くないけどキャラクリはいつも同じ感じだった。ジューア、ピアニストで魅力を最大限に高めて演奏で稼ぎペットで殴りペットの回復を杖でする。そうそう。ひもプレイはバブみがあっていい...。)
バックステップを刻みつつある頭皮を持つシロクマ中年の恍惚とした表情はもし目撃者がいるならばドン引きされるに違いない気持ち悪い雰囲気を醸し出していた。
その瞬間、突然ギターが倒れた。スマートハウス管理AIが思わず風の流れを計算してわざと倒したのだ。AIの進化って怖い!もちろん、シロクマ中年はそんなAIの生理的嫌悪を知る由はないし、そんなAIが実装されていること自体知らない(不穏な流れ)。小さく飛び上がり、思わずギターを3度見したオッサンの脳裏にスパークが走る...!
(はっ!さっきテレビでやっていたゲームならもしかしたら、そんなプレイングもできるかもしれないな。あれほど自由度が高いなら楽器だって作れるんじゃないだろうか?
単身赴任で時間は十分ある。演奏旅行としゃれ込むのもおつなものやんけ!思い立ったが吉日。ビール片手にネットで情報仕入れてキャラクリでもするかな。)
こうして次の日も予定がないシロクマ中年の夜は更けていった。
Tips.elona
知っている人は知っているローグライクPCフリーゲーム。