男が演奏している横に看板が立っている。あなたは看板を読んだ。...投げ銭歓迎!石は投げないでください... あなたは周囲を調べた。... ...何かが見つかりそうだ... 投げやすい小石を見つけた! 作:ネコ文屋
夕暮れのサードレマの街は、いつもと同じ穏やかな光景に包まれていた。路地には商人たちが店じまいの準備を始め、家路を急ぐ人々が行き交っている。そんな中、私は小さな広場の片隅に立ち、手に持ったギターを軽く調整しながら深呼吸した。
今日が10回目の演奏になる。10人以上のNPCの観客の前での演奏を10回こなすことが、吟遊詩人のジョブを取得するための条件だと聞いていた。そしてこの最後の演奏が成功すれば、そのジョブが解放されるはずだ。
「さて、始めるか…」
私は小さく呟き、ギターの弦を爪で弾いた。心地よい音が広場に響き渡り、少しずつ通りがかりの人々が足を止めてこちらを見始めた。
曲は、Jpopや歌謡曲。ギターを大学時代に買ってから習得してきた曲だ。その他にも書店で手に入れたサードレマに伝わる曲を演奏する。最初は控えめに、しかし次第にリズムを強調し、音楽の波を大きく広げていく。風に乗って、音色がさらに遠くまで流れ、気づけば私の前には小さな人だかりができていた。
「いい音色だな…」
そんな声が耳に入ってくる。私は少し笑みを浮かべ、さらに手元に集中した。演奏に没頭するほど、周囲の景色が薄れていき、ただ音楽だけが残る。
やがて最後の音を響かせ、演奏を終えた。周囲からは拍手がわき起こり、私は軽く頭を下げた。
「いい演奏だったよ!」と、観客の一人が声をかけながら、帽子の中に小さな硬貨を投げ入れる。それを皮切りに、次々と観客たちが私の帽子にお金を入れていく。コインが触れ合う音が心地よく響いた。
「お見事!素晴らしい演奏だった!」
拍手しながら笑顔で声をかけてきたのは髭面の男だ。
「酒場の店主、ロイだ。よろしく。博物館の通りに店があってね。もし良ければ、うちの酒場で演奏してくれないか?最近、音楽があるともっと盛り上がるんじゃないかと思っててね。」
ロイの誘いに驚きつつも、私は微笑んだ。
「酒場で…ですか?演奏者として声をかけられるのは初めてだな。」
「君なら間違いなく、うちの客も喜ぶだろう。どうだ、やってみるか?」
ロイは期待に満ちた目で私を見つめる。
「喜んで引き受けますよ。」
私はロイに答えた。こんな機会を得られるとは思っていなかったが。
その瞬間、体の中に温かい感覚が広がり、頭の中に新たなジョブが解放されたことを知らせる声が響いた。
『吟遊詩人のジョブが解放されました…』
私は驚いて自分の手元を見た。指先が以前とは違う感覚を持っていた。音楽に宿る魔力を感じることができるようになったのだ。
「…なるほど、これが吟遊詩人の力か。」
私は呟いた。音楽の力で人々の心を揺さぶり、戦いの中でも仲間を支えることができる。これこそ、私が新たに得た能力だった。もっとも仲間はいないソロのため、今のところ演奏での稼ぎが良くなる以外には役に立たなさそうだが。
「どうした、何かあったのか?」ロイが心配そうに聞いてきた。
「いや、ただ…少し感動してしまっただけです。これからも、もっと良い演奏を聴かせられそうです。」私は笑顔で答えた。
「それなら良かった!じゃあ、明日の夜にうちの酒場【黄金獅子亭】で待ってるからな。楽しみにしてるよ!」ロイは肩を叩いて去っていった。
私はふと立ち止まり、今手にしている新たな力を感じながら、もう一度ギターを弾き始めた。
それにしても5億マーニか。あまりにも遠い目標だ。何かでかい稼ぎでも探さなきゃなぁ。クランに入らないソロだと限界があるけど、演奏で知り合ったプレイヤーとフレンドになってモンスター狩りに誘われることも徐々に増えてきた。
ま、時間はかかるがなんとかなるだろう。