男が演奏している横に看板が立っている。あなたは看板を読んだ。...投げ銭歓迎!石は投げないでください... あなたは周囲を調べた。... ...何かが見つかりそうだ... 投げやすい小石を見つけた!   作:ネコ文屋

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チューー


05_フェスの野望と契約

前線拠点にある広場。私はギターを構え、観客が集まる中、軽くストロークを鳴らし始めた。隣にはハルぽんがいて、期待に満ちた顔でマイクを手にしている。彼女の明るい表情を見ると、自然と気持ちが引き締まる。

 

「さぁ、今日も一緒に楽しもうか、ハルぽん!」

 

 私が声をかけると、ハルぽんはニコッと笑って元気よく頷いた。私たちの周りには冒険者や街の人々が集まり、すでに演奏の始まりを待ち構えている。

 

 私は最初のコードを軽やかに鳴らし、観客に向けて音楽の幕を開けた。ギターのメロディーに乗せて、ハルぽんは柔らかな声で歌い始める。

 

 

「夜空に浮かぶ星のように

君の夢を照らしたい

一緒に歩む道だから

信じて、共に行こう!」

 

 

 ハルぽんの透き通るような歌声が、ギターの音色と重なり合い、広場中に響き渡る。彼女の声には透明感があり、聴く人の心を包み込むような優しさがあった。観客たちは歌声に引き込まれ、微笑みながらこちらに視線を向けている。

 

 

「果てない夜を超えて行こう

君と共に、朝まで

笑顔でいられるなら

どんな時も越えてゆける」

 

 

 彼女の声が曲のクライマックスに達し、私はギターのリズムを強調しながら一層力を込めて演奏する。観客の中から手拍子が起こり、少しずつリズムに合わせて声援が増えていく。ハルぽんもその盛り上がりに応えるように、さらに明るく力強く歌声を響かせている。

 

 演奏が終わると、広場には一瞬の静寂が訪れ、次の瞬間、大きな拍手と歓声が湧き起こった。プレイヤー、冒険者たちや街の住民たちは皆、私たちの演奏に心を掴まれたようで、興奮気味に声を上げている。

 

 

 

 演奏を終え、ギターを片付けていると、観客の中から一人のプレイヤーが駆け寄ってきた。彼は興奮した表情で、まっすぐこちらに歩いてくると、真剣なまなざしで話しかけてきた。

 

「いやぁ、君たちの演奏、最高だったよ!こんな場所で、こんなに心に響く音楽が聴けるとは思わなかった。」

 

 彼の言葉に私も自然と笑みがこぼれる。ハルぽんも楽しそうに手を振りながら微笑んでいる。

 

「楽しんでくれたなら何よりだよ。私たちも、この広場で多くの人と音楽を共有できて嬉しく思う。」

 

 その言葉に、プレイヤーはさらに熱心にうなずいた。

 

「そうだよ。君たちの演奏、もっと多くの人に聴かせた方がいい。これから、もっと演奏する場を広げてもらいたいな。」

 

 彼の一言が、私の心に火を灯した。今はこの広場での演奏が中心だが、もっとしっかりとした場所で、多くの人が集まれる場所で演奏できたら、きっと素晴らしいライブになるはずだ。

 

 ハルぽんも彼の話を聞き、楽しげに目を輝かせて私の方を見上げた。

 

「当機も、もっとたくさんの人と音楽を楽しみたいなの!」

 

 彼女の無邪気な言葉に私も頷き、少し考え込んだ。整ったステージや音響設備があれば、音楽の力がもっと多くの人々に届き、一体感のある空間を作ることができるかもしれない。この広場での演奏も悪くはないが、もっとしっかりとした場でなら、私たちの音楽がさらに多くの人に響くに違いない。

 

「よし…ハルぽん、もう少し準備を整えて、もっと多くの人に聴いてもらえるライブ、そうだなフェスを開催するのはどうだろうか。他の有志も探して。」

 

 私の決意を聞き、ハルぽんは嬉しそうに両手を挙げて喜びを表現する。

 

「フェス、なんだか楽しそうなの!」

 

 彼女の無邪気な笑顔に、私も自然と微笑んでしまう。こうして評判が広がり、多くの人が私たちの音楽を楽しみにしてくれるようになったことが何よりの励みになっていた。もっと多くの人と音楽を共有するため、より整った場でのライブを目指して、私たちは新たな一歩を踏み出すことを決意した。

 

 

 新大陸の前線拠点でのフェス開催を本格的に準備するため、私は情報クラン『ライブラリ』の拠点を訪れた。情報に詳しい彼らなら、音響機器や特設ステージの手配についても助力が期待できる。受付を通して案内された部屋には、男が待っていた。彼は温和な表情でこちらを見つめ、私たちの来訪に気づくとにこやかに挨拶をしてくれた。

 

「おや、君が噂のギタリストと、その相棒の征服人形か。ああ、その前に僕はエリオだ。はじめまして。今日はどうしたんだい?」

 

 エリオの問いかけに、私はすぐにフェス開催の話を切り出した。

 

「実は…この前線拠点で大きなフェスを開催したいと考えていて、音響機器や舞台設置に関する情報を知っている人がいないかと思って来たんです。」

 

 エリオは私の話に興味を示し、顎に手を当てて少し考え込むと、やがて思い出したように口を開いた。

 

「なるほど、フェスか。面白そうだね。それなら、リヴァイアサンに音響機器があるって話を聞いたことがあるよ。」

 

 エリオの口から思いがけない場所の名前が出たことで、私は少し驚きつつ彼に訊ねた。

 

「リヴァイアサン…あの街外れの海に浮かぶ巨大な船のことですよね?そんなところに音響機器があるんですか?」

 

 エリオはゆっくりと頷いた。

 

「そう。リヴァイアサンはただの船じゃなく、神代の技術を使った特殊な船でね。内部にはさまざまな装置が眠っているらしい。音響機材や照明なんかもその一部に含まれているって話だよ。」

 

 ハルぽんが隣で目を輝かせ、エリオの話に夢中になっている様子だった。だが、エリオはさらに続けて、少し困ったような表情で言葉を付け加えた。

 

「ただし、リヴァイアサンに入るには条件があって、特に征服人形には『契約』が必要になるらしいんだ。征服人形だけでは入れない仕組みになっていて、プレイヤーとの契約を結ぶことで、彼女も共に入れるようになる。」

 

 その言葉を聞き、私はハルぽんに目を向けた。彼女も驚いた表情でエリオを見つめている。契約という概念が、私たちの間に必要なものだったとは思いもよらなかった。

 

「リヴァイアサンへのアクセスには条件があるのですね…。それでも、フェスのためなら契約を考えざるを得ないかもしれません。」

 

 エリオはにこりと微笑み、頷いてみせた。

 

「君たちがフェスを成功させたい気持ちはよくわかるよ。リヴァイアサンの機器を使えば、特別なステージが作れるかもしれない。頑張ってね。」

 

 エリオに礼を述べ、私たちはライブラリの拠点を後にした。フェス開催に向けての準備がまた一歩進んだが、今度はハルぽんとの「契約」という新しい関係を築く決意も必要となった。

 

 

 

 情報クラン「ライブラリ」の拠点から得た情報に基づき、私はリヴァイアサンの音響機器を調達するため、ハルぽんとの正式な契約を結ぶことを決意した。契約を交わすには、特定の儀式的な手順を踏む必要があると聞いていたが、それがどんなものなのか、実際にやるとなると少し緊張が走る。

 

「ねえ…準備はいいの?」

 

 私の隣でハルぽんが問いかける。その真剣な瞳を見つめながら、私は静かに頷き、手のひらを彼女に向けて差し出した。彼女も一歩前に出て、自分の手を私の手の上に重ねる。手と手が重なった瞬間、ハルぽんの手のひらに淡い青い光が走り、そこに刻まれたラインが浮かび上がるのが見えた。

 

「指紋、掌紋情報を登録します…」

 

 彼女のシステムが私の指紋と掌紋を丁寧に記録していく。微かな振動が伝わり、ハルぽんの手の温もりが少しずつ感じられる。しばらくして、彼女はゆっくりと手を離し、今度は真っ直ぐに私の腕を見つめた。

 

「次に…腕を出してほしいの。」

 

 少し驚きつつも、私は指示に従って腕を差し出した。その瞬間、彼女は不意に私の腕に顔を近づけ、ためらいなく牙を立てて噛みついてきた。

 

「っ…!」

 

 一瞬痛みが走り、体力ゲージが少し減ったのがわかる。しかし、そのダメージエフェクトは彼女の口の中へと吸い込まれ、消えていった。どうやらこれで血液が採取され、彼女のシステムに登録されたらしい。

 

「血液情報を登録…『貴方の人形』プロセス、完了しました。」

 

 その瞬間、彼女の目が輝きを増し、私を見つめながら微笑む。

 

「これからもよろしくなの!」

 

 契約を結んだ瞬間から、彼女のステータスが私の視界に表示されるようになった。征服人形専用のステータスアイコンが新たに追加され、ハルぽんの状態を細かく管理できるようになっている。

 

 こうして、正式な契約を結び、私たちは新たな絆で結ばれた。リヴァイアサンへの道も開かれ、フェスに向けた準備が着実に進んでいく。

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