男が演奏している横に看板が立っている。あなたは看板を読んだ。...投げ銭歓迎!石は投げないでください... あなたは周囲を調べた。... ...何かが見つかりそうだ... 投げやすい小石を見つけた!   作:ネコ文屋

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パカパカ


08_デプロイ・ステージキューブ

 第三殻層を進んでいると、勇魚が小さなSDサイズの姿で私たちの前を軽やかに飛び回りながら案内してくれている。

 

「こちらです、ギター熊、ハルぽん。この先に音響機材の展示エリアがありますよ。」

 

  勇魚が嬉しそうに振り返る。まるで自分の自慢のコレクションを見せたい子供のような表情だ。

 

「音響機材展示エリアか。どんなものがあるんだ?」

 

「ふふ、驚きますよ。とてもユニークな装置ばかりですから。」

 

  そう言うと、勇魚は小さな手を前方にかざし、扉を操作した。滑らかな音を立てて扉が開くと、目の前には無数の機材が整然と並んでいた。

 

 高性能なスピーカー、カラフルなLEDライト、コンパクトステージ。これらは全てが緻密にデザインされており、未来的でありながら実用性に溢れている。

 

「どうぞ、こちらが音響機材展示エリアです!」

 

  勇魚が両手を広げて誇らしげに説明を始める。

 

 

 リヴァイアサンの広々とした機材展示エリアで、私は目の前に並ぶ多種多様な装置に目を奪われていた。その中でも一際目を引いたのが、手のひらサイズの金属製キューブだ。表面には幾何学模様が刻まれ、どこか未来的な雰囲気を醸し出している。

 

「勇魚、これって一体何なんだ?」

 

 私が尋ねると、SDサイズでふわりと宙に浮かんでいた勇魚が、そのキューブの前に降り立った。彼女は誇らしげに胸を張り、小さな手を広げて説明を始める。

 

「こちらは『デプロイ・ステージキューブ』です。持ち運び可能なライブステージの最新機材ですよ。」

 

 勇魚の声に誘われるように、私はそのキューブを手に取ってみる。予想以上に軽く、それでいてしっかりとした質感がある。

 

「これがステージ機材だって? こんなに小さいのに?」

 

 私の疑問に、勇魚はニヤリと笑みを浮かべた。

 

「ええ、そうです! このキューブは格納空間技術を採用しており、中にはステージ、音響機材、照明装置が収納されています。展開ボタンを押すだけで、数十秒で完全なライブセットが整うんですよ!」

 

 彼女が説明しながらキューブの操作パネルを示す。そこには簡単な指示が記されており、誰でもすぐに使えそうだ。

 

「へえ、そんな便利なものがあるのか。電源はどうするんだ?」

 

 その質問に、勇魚の目がさらに輝いた。

 

「そこがこの装置の最大の特徴です! このキューブは空気中のマナを直接電力に変換するシステムを搭載しているので、電源が不要なんです。山奥でも街中でも、どんな場所でもライブができますよ。」

 

 彼女の説明に私は唸り声を上げる。このキューブさえあれば、場所を選ばずに本格的なライブが開催できる。

 

 横でじっと見ていたハルぽんが興味津々といった表情で近寄ってきた。オレンジ色の髪が揺れる。

 

「すごいね、あなた! こんな小さいのにステージも、音響も入ってるなんて。これ、魔法みたいじゃない?」

 

 彼女が目を輝かせてそう言うと、勇魚が宙に浮きながら誇らしげそうに言う。

 

「その通りです、ハルぽん。設置も片付けも簡単。ステージの大きさや機材の配置は、事前にカスタマイズ可能ですから、好みに合わせたライブ環境を作れます。」

 

 

 勇魚の言葉に、私はキューブを再び見つめた。確かに、どこでもライブを開けるこの装置は、宣伝用の演奏にも本格的なフェスにも役立ちそうだ。

 

「これがあれば、どんな場所でも即興ライブができるな。しかも、設置も片付けも簡単そうだ。」

 

「そうなの! これを使ったらもっとたくさんの人に素敵な音楽を届けられるよ!」

 

  ハルぽんはそう言いながら、キューブを嬉しそうに覗き込んだ。

 

「よし、これに決めるか。フェスの準備がもっと楽しくなりそうだ。」

 

 購入手続きを進めると、勇魚が笑顔で締めくくった。

 

「素晴らしい選択です、これであなたたちのライブがさらに広がることでしょう!ついでに、所持者登録しましたのでご安心を。」

 

 ハルぽんはキューブを大切そうに抱えながら言った。

 

「これで次のライブも完璧だね、あなた!」

 

 私は彼女の期待に応えるように頷いた。

 

 

 

 

 第三殻層『戯盤』の中心、華やかな光に彩られた娯楽エリアは、スロットマシンやカードゲームテーブルの明かりとプレイヤーたちの歓声で賑わっている。その中にぽっかりと空いたスペースがあった。私はその空間を見て、ここが宣伝ライブの会場にふさわしいと確信した。

 

「ここだな、ハルぽん。早速準備しよう。」

 

「了解、あなた!」

 

オレンジ髪の彼女は元気よく答えた。

 

 私はデプロイ・ステージキューブを地面に置き、展開ボタンを押す。小さなキューブが音もなく変形し始め、数十秒のうちにステージ、音響機材、ライトが完璧な形で現れた。その光景に周囲のプレイヤーたちが足を止め、興味津々とこちらを見つめている。

 

「よし、始めるか。」

 

 華やかなライトがステージを照らし、周囲にはスロットやカードゲームに興じるプレイヤーたちのざわめきが残る中、私たちの演奏が始まった。私はギターを手に取り、まずは調子を確かめるように弦を弾く。

 

 軽快な音色が響き渡り、雑然としていた空気が少しずつ一つにまとまり始める。音が響くと同時に、ハルぽんがステージの中央で明るい笑顔を浮かべてマイクを握る。ハルぽんがステージ中央に立ち、彼女の透き通った声がマイクを通して広がる。

 

「皆さん、こんにちは! 私たちは音楽祭、フェスの開催を目指してます! 少しだけ足を止めて、私たちの音楽を楽しんでいってくださいね!」

 

 彼女の声に反応して、観客たちが次々と集まり始めた。ライブの目的はフェスの宣伝だったが、今この瞬間だけは純粋に音楽で人々を楽しませることが大事だと感じていた。

 

 私はギターを高く掲げ、最初のコードを弾き鳴らした。ハルぽんの歌声がそれに重なり、軽快なリズムが場を包む。LEDライトが音楽に合わせて点滅し、観客の熱気をさらに煽る。

 

「次の曲で盛り上がろう!」

 

 ハルぽんが煽ると、拍手と歓声が湧き起こる。彼女の歌声はさらに力強くなり、私はそれに呼応するようにギターのリフを力強く弾き続けた。

 

 

 彼女の声が会場に響くと、周囲にいた人々が次々と足を止め、ステージに注目し始める。彼女が歌い出すと、明るく弾むようなメロディーに合わせて観客たちの表情がほころんでいく。

 

「どこまでも続く道を、私たちは歩いていこう!

 空を風に乗って、みんなで飛ぼう!」

 

 ハルぽんの透き通った歌声が観客の心を引き込み、私は彼女の声を支えるようにリズムを刻み続ける。指先が弦を弾くたびに、ギターの音色がハルぽんの歌声と調和し、ステージ全体にエネルギーが満ちていくのを感じた。

 

 途中、観客の一人が手拍子を始め、それが次第に広がる。ハルぽんはそれに気づき、歌いながら手を振ってさらに観客を煽った。

 

「もっと声を聞かせて!」

 

 彼女の一言に応じて、観客が声を上げ、ステージの周りに明るい空気が渦巻く。私はテンポを少し上げ、ギターのリフをさらに派手にしていく。ライトがリズムに合わせて点滅し、ステージを彩った。

 

 演奏がクライマックスに近づくにつれ、ハルぽんの歌声はさらに力強くなり、観客の盛り上がりもピークに達した。そして最後のコードを弾き終えると、ステージを包んだ音が静まり、観客から大きな拍手と歓声が湧き起こった。

 

 

 曲が終わると、観客から大きな拍手が巻き起こる。その中に混じる声が私の耳に届いた。

 

「これ、フェスの宣伝なのか?」

「面白そうだな。フェスってどこでやるんだ?」

 

 ハルぽんがその質問に応えるように微笑みながら手を振った。

 

「詳細はもうすぐ発表します! ぜひ楽しみにしていてくださいね!」

 

 

 

 

 

 

 ライブを終え、私たちはステージ裏に戻った。ライトの余韻がまだ目に残り、耳には観客の歓声が残響している。ハルぽんは明るい笑顔を浮かべ、今の演奏を反芻するように息を整えていた。

 

 その時、ふわりと宙に浮かんだ勇魚が現れた。彼女は小さな手を胸の前で合わせながら、誇らしげに私たちを見つめている。

 

「お疲れさま、ギター熊、ハルぽん。素晴らしい演奏でした!」

 

「ありがとな、勇魚。どうだった? 観客、楽しんでくれたみたいだったけど。」

 

 私はギターを背負い直しながら尋ねる。

 

「ええ、彼らの反応を見れば一目瞭然です。ギター熊のギターとハルぽんの歌声が完璧に調和していて、観客を引き込む力がありました。」

 

 ハルぽんも彼女の言葉に嬉しそうに頷く。

 

「あなたとの演奏は本当に楽しいね。みんなが手拍子してくれると、もっと頑張ろうって思えるの。」

 

「それに、ステージのライトや音響も素晴らしかったですよ。」

 

 勇魚が少し得意げに続ける。

 

「あれだけ多くのプレイヤーが足を止めて聴き入るなんて、これは宣伝効果も抜群ですね。」

 

「宣伝って感じはあんまりしなかったけどな。楽しんでもらえたのは間違いないみたいだ。」

 

 私は肩をすくめながら笑った。

 

「その感覚が大事なんですよ。音楽で人を惹きつけるのは、ただの言葉よりもずっと強力ですから。」

 

 勇魚の言葉にハルぽんと顔を見合わせ、笑顔を交わす。この瞬間、私たちの演奏が確実に何かを届けたのだと実感できた。

 

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