緑亜の君へ   作:タナト

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 スランプを脱するためのリハビリ的作品です。
 3話の予定です。
 いろいろ突っ込みどころはあるでしょうがよろしくお願いします。


異形―ANOTHER BEAST

  

眠らない街、東京。この街には絶望が棲む。

  人に紛れ、人を喰らい、人に狩られる、そんな存在が…

 

彼と初めて出会ったのは、ちょうど5年前、冬の雪の降る日だった。深夜に私が執筆の息抜きに自宅近くの公園の周りをうろうろしていたら、街灯が照らすベンチに座って何やら本を読みながらハンバーガーを食べる彼を見かけた。服はボロボロで、一生懸命ハンバーガーにがっついて、なのに目線は本に釘付けになってる。だけど単なる浮浪者の類とは違う雰囲気を纏う彼のことが気になってね、別に食べたいと思って近づいたわけじゃないんだ。

 

「ねぇ、お兄さん♪こんな時間に一人で何してるの?」

 

彼にそう言いながら、読んでいる本をのぞき込むと喰種についての本だった。

私はますます彼に興味がわいたよ。

 

「なんですか、あなた。女性がこんな時間に一人で、何があるかわかりませんよ…」

 

「君こそ、そんなもやしみたいな身体じゃ、その本に出てくる怪物相手じゃなくても喰べられちゃいそうだけどな~」

 

 私がにんまりしながら言うと、彼は目を丸くした。かわいかったな~

 

「余計なお世話ですよ」

 

彼はハンバーガーを食べ終わると包み紙を丸めて立ち上がった。

 

「なぁ君、少し話していかないか?こんなところに一人でいた変人同士さ。私退屈でしょうがないんだ」

 

それでも彼はそそくさと立ち去ろうとしてね…

 

 

 

「待ってください…」

 

ガラス越しにいる青年が私の話を遮る。

 

「ん、なんだね?」

 

青年、佐々木排世こと金木研は不満そうな顔をしてこちらを見てくる。

 

「それ惚気話ですか?」

 

「ああ、そうだよ」

 

ガタッ

 

青年はすごい勢いでで立ち上がる。

 

「時間の無駄だった…」

 

青年は振り向きざまに、あきれ顔で呟く。

 

「悪かった、何、少しからかっただけだ。私も暇なんだ。それに、この話は「君」にとって有益だと思うよ」

 

「僕はただ、貴女が所持を要求した、この五円玉が何なのかを聞いているんです。これは確かに唯の五円玉で、危険なものではない。でなぜこんなものにこだわるんですか?店長の持ち物とも思えない」

 

青年はチャック付きのビニール袋に入った紐の通してある五円玉を見せる。私が拘束されるときに身につけていたものだ。

 

「そうさ、それを私にくれたやつの話をしようというんだ。今から話すことが有益ならそれを返してくれ」

 

青年はつよい疑念の目を向けつつ言った。

 

「どんな人の話なんですか?」

 

「私の恋人の話だ」

 

青年はひどく驚いて目を見開く。

 

「…冗談でしょう?」

 

嘲笑うように言う青年しかし私は気にしない。

 

「冗談じゃないさ。言ったろう、惚気話だって。私にだって恋人ぐらいいたさ」

 

「喰種ですか?」

 

青年は目を細め捜査官としては当然のこと聞いてくる。

 

「いいや、でも人間でもない、君のような半端者。人喰いのそして人間のなりぞこない。まぁ、話を聞いていたまえ」

 

そこまで聞いて青年は再び椅子に座り黙り込んだ。

私はそれを了承と受け取り話をつづけた。

 

 

 

 

「なぁ、少し待ちたまえ、君、喰種に興味があるんだろう?」

 

彼はぴたりと足を止め振り向いた。

 

「…っ⁉」

 

あんまり生意気だったから食べちゃおうと思ったんだ、顔も私好みで反応を見たかったのもある。だから赫眼を見せてみたんだ。

 

「これ、なんだか分かる?」

 

 絶望の貌、命乞い、泣き顔、いろんなのを期待していたんだけど、彼のとった行動はどれとも違った。

 

「あなた…喰種なんですか?」

 

彼は少し身構えた程度でその声と表情は酷く冷静だった。

 

「そうさ、でもそんな反応を人間から返されたのは初めてだな…」

 

喰種相手でも隻眼ってだけで驚かれるのに、彼は逃げる様子もなかった。

少し間があってから彼は口を開いた。

 

「…僕は人間ではないんです。だから食べてもおいしくないと思います」

 

彼はこっちの出方を探るように言った。

 

「え、匂いは人間だけどなぁ?そんなこと言っても逃がしてあげないよ」

 

私が詰め寄ると、彼は袖をまくって腕を出した。

 

 シューッ

 

「…ッ⁉」

 

今度は私が驚く番だった。彼の腕から蒸気とかなりの熱が出たんだ。

蒸気が晴れるとそこにあったのは異形の腕だった。

 色は光沢のあるエメラルドグリーン、トカゲの鱗のような体表、鋭い爪、棘のあるヒレ、赫者でもあそこまで禍々しいのはなかなかないよ。

 

「君、何?」

 

彼は意を決したように言った。

 

「僕は水澤悠、人工生命体『アマゾン』と言われる存在です。僕は喰種の方に話を聞きたくてこの街に来ました」

 

私は久しぶりにゾクゾクしたよ。その青年、いろんなものを見てきた私でも見たことがなかった。狂気、冷酷さ、熱意、哀愁、そしてやさしさ。その全てが混じり合っているんじゃなく、ただ整然と真っ直ぐ同時にこちらを見てくるような、強い瞳。

 

「話を聴いてもらえますか?」

 

私は彼を部屋に呼んで話を聞いた。『アマゾン』のこと彼とその仲間たちの動向。小説家としても、一人の喰種としても彼の話は興味深かった。当時はアマゾンの存在も公表されていなかったし4Cも創設されてなかったからね。もっとも、今公表されている情報も彼らを造った野座間の闇のほんの一部でしかない、あれはまさに狂気だ。まぁ、それはいい。彼が聞いてきたことは関係ない。

 彼は、アマゾンのリーダーとして私にうまく人から隠れて暮らすヒントを聞いてきた。アマゾンと共通点が多い喰種を参考にするため東京まで一人足を運んだとのことだった。   

警戒が緩いのも喰種とは何度かやりあったことがあるかららしい。私もアマゾンの情報を対価に人に溶け込むコツとか偽装のしかたとかあとアオギリの樹のこととか話せるだけ話した。

 

 まぁ、でもなんていうか彼のスタンスが特殊でね。理性を保っていくための食人は認める。護身のために人を殺すのもね。でもアマゾンっていうのは一度細胞が覚醒してしまうと理性を失い人の肉だけを求める完全な化け物になるんだ。そうなったら殺すっていう何とも奇妙なものだった。そして、なるべく人と争わないように努めていた。アマゾンは繁殖することができなかった。だから人との対立の激化はすなわち滅びを早めることになる。そんな生活を1年ほど続けているらしい。

 

身も蓋もないことを言ってしまえば彼のやってることはいつか来る終わりを引き延ばすだけのことだ。でも生きたいと思うのが生命だ、たとえ造られたものだったとしても、それは変わらない。そして結果的に無意味でも構わない『生きたいから生きる』と彼は口癖のように言っていた。

 

え、私が親切にするわけないって?失敬だなぁ、私は何も常に血に飢えているわけじゃない。それに未知の人工生命体なんていう興味の対象をすぐ手放してしまうのは惜しいだろ?あと悠のことは一目見た時から本当に気にいっていたのもある。その日は私が組織に何かしてやれないか掛け合ってみるって話をしたところで解散になった。それだけだったのに彼、何度も何度もお礼を言うんだ。ひどくあてにされている…ってより話を聞いてもらえたのが本当に嬉しかったみたいだ。

そしてそれから定期的に会うようになった。情報交換とかしたり、あとは使わなくなった小さな拠点を提供したりそれなりに仲良くなったよ。そのうちに彼個人のことが気になってきた。普段は虫も殺せないような顔してるけど、私が隻眼の梟だとは教えてなかったとはいえ全く物怖じしないし、目も座ってたからね。普通に聞くのも面白くないし、ある日別れた後、顔を隠して襲ってみた。え、やっぱり?そりゃ隻眼の梟ですから。

 

いやぁ、あの時はさすがにビビったなぁ~。

 

ある日別れた彼を尾行して廃工場の路地に入っていったから、ちょうど10年前くらいな感じに調節して赫者化して後ろから羽赫ぶっ放しちゃった。あ、一応ちゃんと逸らしたよ、彼もうまく反応してたし。

 

「ぐ、喰種⁉…僕は人間じゃありません、食べると体の毒になることもあるかもしれません。だから僕を食べようとするのはやめてください。CCGへの通報もしませんから」

 

悠は以前と同じように腕を異形化させて訴えていた。

まぁ、私は構わず威嚇射撃を続けたけど…

 

「話を聞く気はないか…なんだか分からないけど、黙ってやられはしない!」

 

その言葉を境に彼からの圧が重くなった。

バックからなんか変なもの取り出したと思ったら、それを腰に巻いた。それはベルトのようで、バックル部分には二本のハンドルのような突起があった。彼は左の突起を握って目を見開きこちらを睨み…

 

―そして、咆えた―

 

「ウオォォォォォ!!!アマゾン!!」

 

突起は回される。

 

 ―O・ME・GA—

彼の体は緑色の炎に包まれた。

 ―EVO・EVOL・EVOLUSION!—

爆風が体を叩き、赫子ごしでも分かる圧倒的熱量を肌に伝えた。

 ああ、私はあの姿を忘れることはないだろう…

 まず目に映ったのは緑、鮮やかな緑色だった。体は甲冑のようなもので覆われていて、足と腕には黒光りする黒いアーマー、そこから伸びるしなやかな刃。

 そして、紅く光る複眼…

 緑亜の異形がそこにいた。

彼は姿勢を低くして、腕をカマキリのように構え、息を荒くし肩を上下させていた。

 

「何が目的なんですか⁉あなたは!」

 

言葉遣いこそいつも通りだけど、普段からを考えられないドスの利いた声だった。

私はまたまた赫子を撃った。

彼はすぐさま反応し、バックステップで避けた。

 

「話を聞く気がないなら!」

 

異形はさらに腰を落として…

 

「動けなくしてから話してもらいます!」

 

一直線に飛び掛かってきた。

意外に脳筋なのかと両肩から赫子を正面に発射、しかし異形は当然のように反応し、地面を蹴り左に飛び、さらに工場の外壁を蹴って立体的に迫ってくる。

 

「ヴゥゥゥ…!ガァァァー!」

 

雄叫びを上げながら右手の手刀が振るわれる。私は左腕の刃でガードしたが赫子は抉られる。異形はすぐさま地面に手を付き体を浮かせたままローキックを繰り出してきた。

私はバックステップで躱し、右の刃で突く、異形は体をうねらせて少し肩を抉られながらも攻撃から逸らした右腕の爪で私の胸を引っ搔いた。胸部の装甲を皮膚に達しそうなほどにそがれた私は接近戦は不利と判断、後ろに大きく飛び退いた。

 しかしね、どうも脚力は相手が数段上らしい、追従してきたと思ったら脇をすり抜けて後ろ蹴りを入れようととしてきた。やむなく新しい赫子を生成して相手を吹き飛ばした。

 

「ヴゥゥゥ…」

 

それでもすぐに起き上がり唸りながら構えていた。

 

いやぁ…ほんとあの姿はさっきまでの幸薄そうな青年のものだとは思えなかったよ。あ、君も似たようなものか。

 

 しばらくにらみ合っていたが相手が先に動いた。

異形はこちらに駆けてきながらベルトの左の突起を回した。

 

―VIOLENT PANISH—

 

「アアアァァァ―――‼」

 

これまでとは比べ物にならない絶叫を上げ、飛び掛かってくる。

私はすぐさま弾を撃つ。しかし異形のとった行動は前回とは違った。勢いを落とさず、迫りくる羽赫の刃を肥大化した腕の刃で切り払った。払いきれず刺さったり、肉を抉ったりしたけど奴は意も介さず加速をかけた。

 懐に入られた私は、両腕でガードする。が左下から振るわれる異形の刃は切り上げられるとともに私の刃を腕ごと切り裂き、胸の肉さえ裂かれた。さすがの私も怯みのけ反った。その隙を相手は見逃さず、少し飛び退きまた突起を回した。

 

―VIOLENT STRIKE―

 

「ハァァァーーー‼」

 

緑亜の影は飛び上がり、かかとについた刃とともに容赦ない打撃を繰り出した。

 私は吹っ飛ばされて工場の外壁に叩きつけられた。もう内臓もぐちゃぐちゃになって、やっと危機感を感じた。

 

え?いい気味?ひどいなぁ…

まぁ、ホントにひどいはここからだけど。

 

揺れる視界の中、異形を見据えると槍のようなものを持ってたんだ。

 

―VIOLENT BREAKE—

 

 マジか…マジで来るのか…ってビビったよ。

 

「オオォォォ―――!」

 

 銀色の槍は私の右肩の赫包を貫き私を張り付けにした。

すぐさま、異形は射撃のできない右側から私に飛びつき腕の刃を首元に立てた。

 

「もう、いいだろう!」

 

懇願するような声だった。

 

「ああ、そうだね」

 

「…!」

 

 久しぶりに聞いた気のする彼の言葉につい反応してしまった。

彼はつきものが落ちたようにおとなしくなり、私が赫者かを解除するところで元の姿に戻った。

 

「エト…さん…」

 

「やぁ、悠また会ったね」

 

 それが隻眼の梟と緑亜の王の出会いだった。

 




 
 次回予告(BGM armour zone)

僕はぁぁぁ!

 これでよかったのかな…

 でもさ、それは…

 NEXT MEMORY

仮面—MASQUERADE PARTY

 なかなかない、アマゾンズ×喰種もっと増えろ。
 誤字報告、感想・評価待ってます。

 小説家の高槻さんがこんなたどたどしい語りするわけないというツッコミは、私の文才不足だと思って大目に見てください。
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