部下S:ああ、それは有名な劇の一説らしいです。恋人の絵姿を入れたブローチを持ちながら言うと更に見栄えがいいとか。
L様:ふーん。じゃあ中に私の絵姿入れとくからやってみなさいよ
部下S:あ、え!ああああはいぃ・・・・(し、しまったぁぁぁ!)
なんかエリスがトゲ付きのショルダーガードに真っ黒で派手派手な格好で歩いてたので急いで物陰に引っ張りこむ。これは、あれか。
もしかして感染するのかあの趣味は!
「ちょ、いきなり何するのよ!」
「こっちの台詞だよ!どしたん急に?ぽんぽん痛くない?そんなお腹出して」
「痛くないわよ!」
へそだしルックに思わずまじまじと見つめるとローキックを食らった。解せぬ。
むしろ見せ付けに行くスタイルちゃうのそれ?あ、そういう意図じゃない?でも何か少し嬉しそうだけいたいいたい。
「あらあら、その格好も良く似合うじゃない!」
「アリシア様!やっぱり、私」
「エリスちゃんは元がいいんだから、もっと色々な格好に挑戦した方が良いわよ?見てもらうのも良いでしょう?」
「あ、その。ええっと・・・」
アリシア様の言葉にエリスが恥ずかしそうに顔を赤らめている。
成るほど。着せ替え人形やってるのねおっけー完璧に理解したわ。じゃあ邪魔しても悪いし戦士ヨシオはクールに去るぜ!
あ、こら。姫様。まとわり付いちゃ駄目、ちょ、ムーンウォークできないいぃぃ
結局エリスと姫様の着せ替えショーを特等席で見ることになりました。眼福だったから良いけど後が怖いな!
さて、気づけばこのセイルーンシティに滞在してから半年が経過している。
この間、姫様に教える算数は遂に引き算に達し、御歳3歳にして自分がいくつリンゴを食べたかを言える様になったのだ!
毎日の成果って考えたらちょっと遅く感じるかもしれないけど3歳児って考えたら凄くね?姫様、好奇心旺盛でドンドン興味が移っちゃうからこれで結構苦労したんよね・・・・・・
たとえば、息抜きも兼ねた課外実習の時は、
「よしょ!これなぁに?」
「ああ、姫様触ってはいけません!それは蜂の巣・・・」
「うわぁ、ハチさんいっぱいだー!」
死ぬほど刺されたけど姫様は守り抜いたぜ。リザレクションなかったらまたリポップしたかもしれん。
そしてまたある時は、
「ましゅまろおいしいね!」
「おいしいですねぇ。いやぁ、すげぇなファンタジー。粉ゼラチンがあるとは・・・暖炉ねぇかなぁ」
「だんろ?よしょ、さむいの?」
「いえいえ。マシュマロは火で溶かすと美味しいんですよ。火傷に注意が必要ですが」
「ふーん。わかった!ふれああろー!」
「あっつつつつ!」
粉ゼラチンを発見したヨシオは感動の余りついついマシュマロを作成。姫様に甘味を献上しお褒めの言葉を賜った。
尚、延焼を阻止することに成功はしたがヨシオの頭がアフロになるという非常に悲しい結末を迎えることになる。
髪にもリザレクションが効いてよかった。ロディマス師匠にまで爆笑されちまったからなぁ。
そんなこんなでセイルーンでも愉快な日々を過ごしていたある日。
なんかやたらめったら物々しい格好の近衛騎士さん(フィル王子の近衛騎士は大体ラフな格好で筋肉を強調してたりする)に連れられてえっらい豪勢な広間っぽい場所に連れられてきた。
とりあえず座って待てと言われたので正座していると、気まずそうなフィル王子と美形の兄ちゃんがやたらとガタイのある、顔色の悪い爺さんの手を引いて部屋に入ってきた。
うん。激烈に嫌な予感がしてきたぞ!
フィル王子と兄ちゃんは備え付けられた豪勢な椅子に爺さんを座らせると、両脇に控えるように立つ。
「あ~。その、ヨシオ、もそっと楽にしていいぞ」
「あ、はい」
「兄上!いくら客人とはいえ・・・」
「構わん」
歯切れの悪いフィル王子の言葉にもう1人の美形の兄ちゃんが咎めるように口を出したが、爺さんの一言で口をつぐんだ。
二人の王子様を言葉一つで。うん、ちょっと師匠にならった礼儀作法レベル1君に仕事をしてもらう時が来たようだな!
すっと居住まいを正して頭を下げる。初めて偉い人に面会したけど(フィル王子は除く)変なところないよね?
王子様方が「ほう・・・」やら「・・・ううむ?」やら言ってるから致命的に間違ってはいないらしい。
あとフィル王子、なんで怪訝そうなんです?俺一応騎士の弟子なんですが。あなたのお付をこの半年やってて何度か礼儀作法見せたでしょうに。
・・・・・・見せたよね?
「わしがセイルーン王国国王、エルドランである!」
やつれた様子からは想像できないほどの声量と覇気に思わず身震いしそうになる。
国王って名前の人に会うのはこれで二度目だが、思わずひれ伏しそうになったのは初めてだった。
これが長年王座に君臨してきた人の威圧って奴だろうか。フィル王子が纏っている物とはまた違う圧力を感じる。
「楽にしてよいと言ったぞ。異国の戦士よ。それでは顔が見えぬな」
「・・・・・・はっ、失礼します」
「うむ・・・・・・成るほど。面白い面構えの小僧よな。フィリオネルのお気に入りと聞いていたからどんな男が出るかと思ったが。存外お前の目も悪くは無さそうだ」
「ち、父上・・・」
恥ずかしそうにするフィル王子という珍しい場面を目撃してしまった。その様子をくすくすと笑って見る弟さん。
どうやら家族仲は良好らしい。親父さんの健康が心配かなって位だ。
「急な呼び出しをしてすまんな、ええと、ヨショ君」
「ヨシオで・・・いえ、何でもないです」
「うむ、そうか。実は、父上から君に少し頼み事があるという事で今日は来てもらったんだ」
フィル王子の弟さんが落ち着いた口調でそう話すと、エルドラン王が片手を上げて制した。
自分の口から言うという事か。どんな無茶振りか戦々恐々としながら言葉を待つ。
「ヨシオよ。孫に良くして貰っていると聞いている。まずは、礼を言わせてくれ」
「あ。いえいえ、とんでもありません。姫様には私も色々と学ばせていただいています」
「あれもお転婆な所はあるが母親に似て聡明な娘だ。この間、わしに数字を見せに来ていたが・・・ははは。この歳で孫に数字の数え方を教えてもらう事になるとはな」
「あ、その。恐縮です」
「いや。楽しい時間だった・・・そこでな。グレイシアに貰った物があってな。マシュマロという菓子なのだが、あれはお前が作ったもので相違ないか?」
「あ、はい」
孫自慢が始まるのかと思ったらマシュマロの事を聞かれた。お菓子?
まぁ、ゼラチンがある割りにそれを元にした食べ物が無かったから珍しかったのかな?
「そうかそうか!うむ、ではヨシオよ。あのマシュマロを主食として食べられるようにすることは出来ぬか?」
「出来ません」
土下座に足を組みなおして頭を下げる。
そんなん無理です。いっそ殺してくださいとばかりに悲壮感をまとって地面に頭をこすり付ける。
「ほら、父上!やっぱり無理ですって!」
「嫌じゃい嫌じゃい!ようやくまともに美味いと思える食い物だったんじゃい!」
「年齢考えてください。その歳で好き嫌いで死に掛けるとか恥ずかしくないんですか!?」
「この歳だから好きに生きたいんじゃい!わしゃ図太く短く生きるんじゃい!」
「最低だこのおっさん!」
頭に手を当ててため息をつくフィル王子と、取っ組み合いを始めた父王と弟王子。
とりあえず騒ぎが終わるまで頭と地面は仲良しこよしだぜ。日本人の処世術、DOGEZAの真骨頂を見せてやる!
次の日から王様の料理番も仕事に加わりました。解せぬ。
着せ替えエリス:アニメ版参照。普段は普通の魔道士然としたロープ姿です。
王子の弟:第二王子クリストファ=ウル=ブロッゾ=セイルーン。フィリオネルの弟だが似ても似つかぬ美形の青年。性格はアニメ版準拠になります。
エルドラン王:原作だと病弱でほぼ描写が無い。今作ではそもそも体が弱った原因が好き嫌いが激しいからというどうしようもない理由にされてしまった人。外見は歳を取ったフィリオネル王子。