【完結】スレイヤーズ リポップ!   作:ぱちぱち

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(誤字修正。日向@様ありがとうございます!)

L様:・・・・・・アレ食べたい。ちょっと部下S!
部下S:はっ。しからばあの料理の名人と呼ばれている人物を招待いたしました!
L様:あら気が利くじゃない!仕事が早くなったわね!




愉悦神父:(成るほど。この男を貶めれば良いのか)


セイルーンのシェフ

カリカリ、カリ・・・・・・

 

羊皮紙に筆を走らせる音が静かに部屋を満たしている。

ここはセイルーン王エルドランの執務室であり、現在は午後の執務を執り行っている所だ。

王の見るべき案件は本来それほど多いものではない。セイルーンは大臣等の官僚も優秀であり、王への忠誠も疑うべき所が無い忠臣たちが揃っている。

ちと真面目に過ぎるのが傷と言えば傷だろうか・・・とまで考えて脇道にそれた思考にエルドランは疲れを自覚した。

少し休憩としよう。

 

 

「これ、誰ぞある」

 

「はっ、陛下。如何なされました」

 

「ちと根を詰めすぎたようじゃ。休息をとる・・・ああ。ヨショをこれに」

 

「・・・・・・・・・畏まりました」

 

 

王の発言に眉を寄せながらも、控えていた秘書官が静かに退室していく。

その様子に小さくため息を付く。よそ者に対して思う所がない者は王の周囲には居ないだろう。

なまじっか誰も彼もが優秀なため、突然の抜擢に対して過剰に反応しすぎているのだ。

まるで自身が籠の中の鳥になっているような錯覚を受けてエルドランは苦笑を浮かべた。

この国の全権を持つものである余がこのような感傷を受けるなどとは。民草は思いもしないだろう。

上がってきた報告書には今年の実りについても報告が上がっている。この様子なら収穫祭は例年通りの規模で祝うことが出来るだろう。

いや、いっそ少し派手にしてみても良いかも知れない。まずはヨショに話を聞いてみてからだな。

 

 

「陛下。ヨショを連れてまいりました」

 

「うむ。入るが良い」

 

 

思考が纏まった頃合に丁度良く秘書官の声が響く。

ドアを開けた秘書官に釣られて、白い帽子とエプロンを身につけたヨショが姿をあらわした。

ヨショは押しテーブルにティーポットや茶器といった諸々を乗せて王の前に進むと、その場で膝を屈して礼を取る。

最初は戦士らしく武張った礼が多かったが、同僚のシェフに習ったのか最近では宮廷内の作法も及第点と言える物になってきた。

この向上心の高さは素直に素晴らしいと賛辞する事が出来る。

 

 

「ヨショ、お召しに従い参上仕りました」

 

「うむ、堅苦しくせんでもいい。ちと休みを入れたくてな。茶を頼む」

 

「はっ」

 

 

王の言葉に一礼するとヨショが茶器を丁寧に並べ、ティーポットに入れたティーをカップに注いでいく。

グリーンティーと呼ばれるヨショの故郷での茶らしいが、これがまた王の口にはあった。

独特の香りと飲み干したときの爽やかな甘みが心地よい。これに砂糖もミルクも使われていないというのが信じられないほどだ。

一息に飲み干すには少し熱い為、少しずつ口に付けていく。疲れが解れていくような感覚だ。

 

 

「うむ、旨い」

 

「ありがたき幸せ」

 

 

素直な感想を口にするとヨショがすっと頭を下げた。

 

 

「時にヨショよ」

 

「はっ」

 

「煎餅が見当たらないのだが」

 

「おやつは3時の時だけと何度申し上げればよろしいのでしょうか」

 

 

 

 

 

信じられないものを見るような目で王様に見られてますが表情も変えずにお茶を注ぎます。

こんにちは、ヨショ改めヨシオです。

今、俺はグレイシア姫に数字を教える傍ら王様のお茶組み係的な仕事をやらされています。

仕事内容はこんな風に王様が望んだ時にお茶を入れたり、

 

 

「王命である。ワシに焦がし醤油の煎餅を持て」

 

「絶対にノウ」

 

「王命が聞けぬか!」

 

「王太子殿下並びに第二王子殿下の署名と各大臣の捺印で陛下の食事管理のみ王命を無視して良いと」

 

「無駄に優秀な上に融通の利かぬ官僚共が!」

 

 

いや、どう考えても自業自得なんですがね。偏食が過ぎて死に掛けるってそれ王様として本当に正しいと思ってるんだろうか。

思ってるんだろうなぁこの人。

接してみて感じたのだが、この人はマジですげー有能な王様ですげー我侭な王様でもあるのだ。王様気質って言葉があると思うが正にアレ。

自分が一番で無いと基本満足せずしかもなまじっかそんだけの能力があるし普段は王様としての器量も十分にあるから問題が無い。

ただ、食べ物に関してだけは王様としてよりも我侭な私人としての部分が強く出てしまっているのだ。

 

似たような人?神様?を知っているがあっちは何しても問題ないみたいだけど、こっちはそれで命を落としかけていたので国として大問題である。

という訳でその国を回している官僚方の達ての願いという事で、王様が満足できるような新しくて未知の味を知る料理人として何故か俺が起用される事になった。

 

 

「ワシの命令を聞けぬ奴は打ち首じゃ!」

 

「お好きにどうぞ」

 

「ぬぐぐぐぐぐぐ!」

 

 

後、基本的に権力には諂うが暴力には諂わないんですよ(ぼか)ぁ。

何度走馬灯見てると思う?今なら断頭台の上で拘束されてもコサックダンスを踊りながらギロチンを待つくらいはでけるゾ!

そして俺の弱点である権力面での圧力も既に根回し済み。という訳で一部限定とはいえ俺は王様にも面と向かってNOと言える数少ない宮廷の人間として周囲に認識されている。

普通ならこんなよそ者居たら排斥されると思うんだが皆めっちゃ頼りにしてくるんだ・・・・・・王様付きの料理人が彼が満足できる料理を覚えきるまでの任期なのにめっちゃそのまま居ついてくれって言われるんだ・・・・・・

 

 

「後、余り間食が過ぎると夕食が入らなくなりますよ」

 

「・・・・・・・・・・・・今日の夕餉は?」

 

「山椒などの香辛料を贅沢に使ったひき肉の炒め物です。ライスに超絶合います」

 

「これ秘書官休憩は終わりじゃ!次の案件を持ってまいれ!」

 

 

エルドラン王の言葉に慌てて秘書官が書類の束を持って駆ける。傍を通る際に目礼されたが・・・・・・苦労してるんだろうなぁ。

押しテーブルを秘書官さんに預けて退室。部屋を出ると何故かスタンバッていた大臣さんたちが中の様子を聞いてくるので応えると、安堵の表情を浮かべてまた明日も頑張ってくれと言われた。

これ、打ち首にされないかひやひやしながら待っててくれたって事かな。すげぇ嫌な出待ちだな。

 

 

 

 

 

「父上もなぁ。兄上並みのカリスマ性に私以上の内政能力と、本当に非の打ち所のない為政者なんだが・・・・・・」

 

 

最近生まれたと言う愛息子を抱きながら、クリストファ王子がため息をつく。

王子殿下に何か良い玩具は無いかと相談を受けた為、前々から姫様用に作ろうと思っていた角を丸めた積み木を持って王子の所にお邪魔したのだが。

いきなりの訪問だったので妃殿下に予想以上に驚かれてちょっと傷ついた。傍から見たら完全に佞臣にしか見えないからね。王子様とは宮殿でよく相談されるんだけどね。

王子向けの玩具持ってきましたよって伝えたらちょっとだけ気を許してくれたのが嬉しい。

しかし最近、本当に便利屋扱いになってきたなぁ。

 

 

「あれで兄上以上の我の強さと偏食がなければなぁ。本当に凄いと尊敬だけ出来るのに」

 

「尊敬以外の感情も強そうですね」

 

「生まれた時からあの人に振り回されているんだぞ!兄上ほどの英傑であればともかく普通の人間があんな親に耐えられるものか!可愛そうに、弟のランディオネなんか自室に引きこもって出てこなくなる始末・・・・・・」

 

 

一回見たことあるけどあの弟さんは弟さんで色々問題があると思うんですがね。アリシアさんとエリスに窓から怪しい視線送ってたし。

気づいたフィリオネル王子が物理的に何とかしてたけど。

ふーむ。しかし、このままだと確かに色々問題があるか。

姫様の成長も順調だしそろそろまた旅に出るかなと思っていたけど、このままじゃ流石に後味も悪い結果になりそうだしね。

何とか出来ればいいんだが。はてさて。

 

 

 




権力に弱い:世界をまたぐ前からの弱点。特に自身に不利益が無いと判断した権力者には媚び諂う。

ランディオネ王子:フィリオネル王子を暗殺しようとして失敗し、フィリオネルに蹴っ飛ばされた怪物の下敷きになってその怪我が元で死亡。こんな死因なのに誰にも同情されなかったある意味可愛そうな王子。
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