ちょっと短めでごめんなさい。
テイク52
「王手」
「待った!」
「待たない。さぁ、どうするよ。負けたら意識がしっかりした段階の幼少期の出来事を赤裸々に語る約束だよね?」
「あ・・・悪魔か貴様・・・」
戦慄するように慄く青年に口笛で応える。
この勝負には俺の半身とも言えるタマちゃんがかかってるからな。手加減も遠慮も俺にはない。
あ、どうもこんにちは。愛に生きる数学者ヨシオです。戦士はどうしたって?
休職中ですね。ちょいと鍛え直さなければいけなくなったので。
というのも目の前にいる青年に、戦士として完膚なき敗北を喫してしまった次第でして。
魔族を名乗る割に妙に人間臭いこの男が姿を表したのは今から三時間ほど前の話でした。
「その槍を譲ってくれ」
「断る」
授業の終わり頃。えらく剣呑な様子のお兄さんが玄関の戸を叩いてきた。
ゼロスくんと似た雰囲気を感じるから魔族なんだろうが、人間っぽい気もする。
取り敢えず頷ける内容じゃないので一言で切り捨てるが、引いてくれる様子はない。
むしろ、目がギラギラと光ってきてる。これはいけないな。力ずくでも来そうな奴だ。
仕方ないので無言で顎で街の外へ通じる道を示すと理解してくれたのかガーヴは俺に付いて来てくれた。
たまに居るんだよね。こんな感じでタマちゃんを狙ってくる奴は。
「ヨショ先生」
「ルナちゃん、ちょっと行ってくるね。エリスには心配」
「駄目。その人、ヨショ先生より強い」
「ほぉ。誰かと思えばその気配、忌々しい赤の龍神か。テメェも転生してるって話は本当だったんだな」
道を塞ぐように立つルナちゃんと男の間で火花がちらつく。
ああ、やっぱり格上か。まぁ何となく分かっちゃいたがね。
取り敢えずルナちゃん。こいつとの喧嘩は俺が買ったものだから手出しは要らないよ。
「・・・居なくなったらやだよ?」
「まかせんさい」
力こぶを作るように腕に力を込めると、苦笑を浮かべてルナちゃんは道を開けた。
隣に立つ兄ちゃんは「へっ」と笑うと何も言わずに俺の後ろについてくる。
街から出て、十分距離を取った所で俺達は歩みを止めた。
「ここらで良いか?」
「おけ」
「・・・素直にその槍を渡せば帰してやるぜ?目的を済ませた後に返却も考えるが」
「構わんよ。てか魔族の割に意外と優しいのね?あの場で襲い掛かってくるかもと思ってたけど」
「半分混ざり物みてぇなもんでな。それにお前みたいな馬鹿は嫌いじゃない」
いつの間にか取り出した大剣を構えて、兄ちゃんはそう言って笑った。
あ、うん間違いなく格上ですね。全然隙がないわ。
君ほんとに魔族だよね?
しかしまぁ、やらなきゃいかんし。
「タマちゃん、頼むでよ」
「面白い名前の槍だな?」
「自慢の娘だよ」
「そうか。覚えておこう」
タマちゃんを構えて、兄ちゃんと対峙する。
「ガーヴだ。魔竜王ガーヴ、冥土の土産に名を持っていけ」
「ヨシオ。ただの子守が好きなヨシオ先生さ」
「覚えた。いくぞ先生?」
ガーヴと名乗った兄ちゃんがそう言った瞬間、俺は右に大きく飛んだ。
上段から振り下ろされた大剣は俺が先程まで立っていた空間を通り過ぎ、地面を容易く切り裂いた。
体制を立て直す前に追撃が地面を抉るように襲ってきたので、タマちゃんを盾にする。
そこに追撃がタマちゃん越しに俺を襲う。が、ルナちゃんの暴走した時の一撃ほどじゃないな!
攻撃をいなした反動で宙返りを決めると、ガーヴはヒュウッと口笛を吹いた。
ふふん、格上との戦いは慣れっこだぜ!
「それ、あんまり良い意味じゃねぇぞ?」
「あ、うんそやね」
冷静に言われると心に来る物があるぜ。
と、兎に角仕切り直しだ。今度はこちらから行くぞ!
「とりゃー」
「うおっ!?」
掛け声に合わせて、タマちゃんを突く。
特別な技は俺には使えない。だから、一番信頼している技を繰り出した。
ロディマス師匠に師事してからこっち、毎日毎日続けた突きは師匠にも褒められる練度になったと自負してる。
これが通用しないならもうタマちゃんに縋るしか無かったが、どうやら俺の戦士としての力量もそれほど捨てたもんじゃないらしい。
俺の突きをガーヴは受け損ね、軽く右腕に傷を付けたのだ。
「なる程、思ったよりやるじゃねーか」
「それほどでもない」
「謙遜すんな。見事としか言いようのない突きだった。お前を見誤っていたなぁ。全力を出すに相応しい戦士だ」
嬉しそうに笑いながら言われてもね。正直恐怖しか湧いてこないんだけど。
下段に大剣を構えたガーヴは、笑みを浮かべたままゆっくりとした歩調で俺に向かって歩いてくる。
あ、これアカンわ。格下相手に相打ち覚悟の後の先狙ってくるんじゃねーよ(震え声)
突いた瞬間に右か左の腕を貰ってそのまま斜めに切り捨てられる。
でも、近寄られれば槍の最大の武器である間合いを封じられるというね。完全にジリ貧。
てかこいつ本当に魔族なのか?純粋に技で上を行かれている経験なんてここ最近無いんだが。
武術は弱者である人間の牙だ。それを強者である魔族が人間より修めているなんて反則だろ。
「なんだ?来ないのか?」
「打ち込む隙プリーズ」
「面白い冗談だな。強請るな、勝ち取れって奴だ。気張れよ!」
間合いに入るか入らないかのギリギリでガーヴが大きく踏み込んだ。瞬間、思わず槍が出てしまう。
誘われた、と思う間もなくタマちゃんが打ち上げられ、俺の胸に大剣が突き刺さる。
「カヒュッ」
「悪かねぇ。いや、確実に凄腕だぜ、お前さんは。ただ、負けに慣れ過ぎてた。惜しいな、俺の部下に欲しい位だったぜ」
そう言いながら、ガーヴは袈裟懸けに止めを入れる。
事切れた俺の死体は少しの後に倒れ付し、その姿をガーヴは名残惜しそうに見下ろした。
武人としての礼だろうか。軽く礼までしてきた。
でも、背後がガラ空きですよ?
「ぐぁっ!」
「ふふふ、終わったと思ってたなら片腹痛い。まだ始まったばかりだぜ、この地獄はよ!」
俺の背後からの攻撃はガーヴの脇腹を少し抉るだけに留まった。
不意打ちできっちり急所を捉えても良かったんだけど、直前に身を交わしたガーヴの反応速度と、そもそも俺自身があんまり殺す気がなかったからね。
タマちゃんによる傷だから結構なダメージだと思うし。
「ば、馬鹿な!お前は確かに!」
「うん。確かに一度死んだね。ただ、蘇らないとは言ってないだろう?」
「そんな生き物がこの世に居てたまるか!」
それが居るんだよなぁここに。
動揺とダメージで動きに精彩を欠いたガーヴと槍を交える。
戦士として完全に上を行かれたせいで俺も大分ショック受けてるんだけどね。あ、ミスっあー
「はぁ、はぁ・・・こ、今度こそ」
「お替り入ります」
「何だ!お前は!?」
だから子守が好きなヨシオ先生だよ。戦士とは、ちょっと恥ずかしくて名乗れなくなったけど。
さぁ、戦いを続けようぜ。俺の残機は無限だぞ!
「で、結局決着が着かなくてゲームで勝負決めたのね。で、何歳までおねしょしてたの?」
「悪魔の嫁は悪魔だったか・・・・・・だよ」
「あ、ふふっ」
「あああああ!!!!」
エリスに慈母の瞳を向けられてガーヴが天に向かって吠える。
再戦はいつでも受けて立つぜ?
L様:部下S、罰ゲームがしたい
部下S:まずゲームをする所からやりましょう!ね!?
L様:じゃあ、ショーギやりましょうか。玉取ったら死刑ね
部下S:それ私の知ってるショーギじゃないだす(滝汗)
愉悦神父:(ふむ、味付けはこれで良かろう)