前の話の続きになります。
誤字修正。路傍の案山子様、ありがとうございます!
「すげぇなこの国」
「人外魔境の名は伊達じゃないんだなぁ」
唖然とするガーヴに至極冷静なフリをして俺は答える。
あ、どうもこんにちは。前回戦士から戦士(笑)にジョブチェンジ・・・いやランクダウンか。してしまったヨシオです。
いやね・・・・・・うん。無駄にシリアスぶって似合わないキメ顔まで晒してふっつうに技量負けしたのは苦い思い出ですわ。
結局物量戦にするしかなかったというね。物量戦にしても逃げに徹したガーヴは捉えられなくて結局盤外戦で勝利するというね。恥以外の何者でもありません。
「いや、戦士としては十分すぎる技量だったと思うぞ?並の魔族なら最初の突きで終わってただろ」
「それ以上のランクの人たちは何もさせてくれないんだよなぁ」
ゼロス君はガーヴより格下らしいけど、彼には結局今でも勝てるヴィジョンが見えない。
恐らくガーヴも先日の立会いの時に全てを見せたわけじゃないだろうし。結局俺の力はまだ、最上位の連中には届かない程度でしかないのだ。
で、その最上位の連中に届きそうな人たちが今目の前で稽古を行っている。
ルナちゃんが棍棒を振り上げれば地が割け空が割れ、それを受け止めるロディマス師匠の盾はボコボコになりながらもルナちゃんの天変地異のような一撃を弾き返している。
そしてロディマス師匠が作った隙を突いてロイドさんが入れた一撃が、確実にルナちゃんを追い詰めていく。
生物としての格が違う相手に対して着実に有利に進めていくその姿はガーヴの琴線に触れたのか。
この稽古を彼は毎日のように眺めていた。
因みにロイドさんの役割と俺の役割が変わっても同じような事ができるが、その場合は有利というかほぼ互角になってしまうというね。
いや、ね。気合を乗せるって技術がないとルナちゃんには毛ほどもダメージが行かないんだけど、ロイドさんの通しと違って俺のはまだまだ甘いらしいからね。
ダメージが蓄積しきる前に師匠が突破されたら負けになるんだ。
あ、ルナちゃんが棍棒を落とした。どうやら勝負が決まったらしいな。
「いやー、良いもんを見せてもらった。どうだお前ら、俺の配下にならねーか?一緒に天辺とろうぜ?」
「族の勧誘かな?」
パチパチパチ、とガーヴが手を叩いて3名に賞賛を送る。それは良いんだが悪の道に引きずり込もうとするのをやめなさい。
ほら、ルナちゃんなんかてっぺん?とか小首傾げてるじゃないか。くぁわいい。
「いやー、もう現役に復帰する気はないんで」
「わしも魔族は好かん」
「おいおい、俺はその魔族の元締めをぶっ殺したいんだ。どうだ、一度話を聞いちゃくれんか」
「チョイ待て。その話詳しく」
聞き捨てならない単語が聞こえたので思わず真顔でガーヴを呼び止める。
聞かれても困る内容なので、ちょいちょい、ちょっとこっち来てこっちとジェスチャーで呼びながらグイグイ引っ張ると呆れ顔でガーヴも付いて来てくれた。
助かるわ、力勝負じゃ勝ち目無いんだよね。まぁ、それはどうでも良い。魔族の元締めって誰よ?冥王?
「いや、あいつは勿論ぶっ殺したい奴NO1だが、その前に魔王を討たなきゃならねぇ」
「冥王の方なら協力しても良かったが部下さんに手を出すなら次はお前が死ぬまで追い続けるぞ?」
あの人は心の友と書いて心友だ。結構酷い事してるけど。
彼の為なら苦労を買って出る位には思っているのだ。結構酷い事しちゃったけど。
俺の声音に冗談の色が見えない事に気づいたのか、ちょっと引き気味にガーヴが尋ねてくる。
「いや、あのな。俺らの大本なんだが魔王が存在すると俺ら滅びなきゃいかんだろ?それが嫌で俺は魔族から離反したんだ。というかその部下さんってなんだそれ」
「部下さんは部下さんだよ。金髪のねーちゃんに椅子の代わりにされたり地獄のような味の料理を食わされて悶えてたりする可愛そうな魔族。こっちだと氷付けで更に可哀相だった」
「同一人物だと思いたくないんだがシャブラニグドゥって名前じゃないよな?」
「そんなイカした名前だった気がする」
「親父何やってんだ・・・・・・」
ガーヴは呻きながら天を仰いだ。よほどショックだったのか若干涙まで流してる。
まぁ、うん。そうだね、生みの親がそんな扱いならショックを受けるよね。ちょっと配慮が足りなかった。本当に申し訳ない。
「今度部下さんに会った時に『ガーヴがお父さんを心配してました』って伝えとくね」
「ゲブハァ!」
俺の言葉を耳にした瞬間、ガーヴが血を吐いて悶え苦しみだした。
ど、どうしたんだ!反抗期のガーヴ!カオスドラゴンってちょっと族の名前っぽいしやっぱり反抗期なんだなってお父さんに伝えてくるだけだよ!?
「やめろぉ!テメェ、ショックで久しぶりに精神が消滅しかけたじゃねぇか!」
「気恥ずか死とな」
「誰が上手い事を言えと」
いや、でも君のお父さんはそんな不思議な死に方を結構な回数してるっぽいよ?
と本人から聞いたお仕置きシリーズをガーヴに伝えると途中から顔色が赤から青になって最後には涙を流してた。
「おい、お前、親父に会えるんだよな?」
「死んだ時にね」
「・・・・・・頑張れって言っといてくれ」
「おk把握」
死にそうな顔でそう言うガーヴに親指を立てて返事を返す。
お父さんを労われる良い子やん。おいちゃん感動したで。
ガーヴとは一先ず部下さんは放置という事で平和的な話し合いが終わり。
さてここからは建設的な話と行こうか。取りあえず冥王はぶっ○す方向でおKよね?オーケーって言えよ?
「なんだお前もあの陰険野郎にやらかされた口か?あいつも変わんねーな」
「うん?俺とルナちゃんはゼフィーリア冥王被害者友の会1番と2番を自負してるけど」
「なら俺は0番にしとけ。なんせ千年物だからな」
手近な岩に腰を下ろしてガーヴは話し始めた。
何でも千年前の降魔戦争。水竜王はマジで滅んだらしいね。
いや、まぁ
「俺はその時、計画の内容を何も知らされちゃいなかった。まぁ、何だかんだ単純に奴を信じすぎた俺が馬鹿だったって話だがな」
自重するように笑うガーヴに全くその通りだな。と頷くと殴られた。解せぬ。
いや、色んな奴から伝え聞く内容を鑑みるにどう考えても信頼とか信用とかしちゃ駄目な奴でしょ?
数万年一緒に居て普通気づかないかな?
「まぁ、そう言われるのも無理ねぇがよ。少なくとも同僚を使い捨てるほどの馬鹿だとは思ってなかったのさ」
「ふーん。で、使い捨てられた事を根に持って復讐したいと?」
「したいが、それ以上に生きたい。滅びに向かってただ落ちていくだけの人生なんて御免だ」
「・・・・・・それは、何となくわかる」
魔族の癖に妙に人間くさいと思ったら、多分これだな。
こいつ。自分が滅びるのが嫌だから必死こいてるんだ。今を生きようともがいてる人間と何も変わらない。
人間に転生した時に、人としてのあり方が混ざったのだろうか。
ゼロスくんみたいに演じている気配が欠片もない、生の人間をこいつの言葉の節々から感じる。
変な事を言い出すようならタマちゃんぶっぱも視野に入れてたんだが・・・あかん。
もう俺はこいつを殺そうと思えない。
「まぁ、部下さんに迷惑かけないなら協力するのもやぶさかじゃないよ」
「・・・恩に着る」
そう自分に言い訳をして差し出した手をガーヴが握り返す。
握り返された掌は、熱い血が通っていた。
部下S:ゲバハァ!(吐血)
L様:お・・・おとうさ・・・だめ、苦し・・・(笑いすぎて悶えている)
部下S:(滅びの淵に瀕している)
愉悦神父:(他人とは思えん)