「では次の問題です。1+1はなんですか?」
「わかんない!」
「うん、アメリア姫様。おやつ抜きです」
「えええええええ!」
こちらが言いたいんですがねぇ。せめて解こうとするそぶり位見せてください。
あ、おはようございます。卑の一文字を背に持つ男、戦士ヨシオです。
現在我々は諸々すっ飛ばしてゼフィーリアに戻ってきています。
まあ、原因はこないだの暗殺者騒動だったんですが・・・・・・酷い・・・酷い一件だったね。
無事致命傷で済んだ暗殺者は毎日熱々のおでんとカステラで持て成してるけど中々口を割らないらしい。意外と義理堅い奴だな。
しかしこの調子で歓待していれば、いつかは心打ち解けて全てを話してくれるだろう。俺はそれを信じて待つとしよう。
彼には牢獄の最奥に作った専用プライベートルームで暫く寛いで貰うとして、問題は狙われたアリシア様だ。
誰が犯人か分かりませんが少なくとも今回、手練れに王城の最奥部分まで侵入者を許してしまったのは事実。
反乱勃発前のように分かりやすい敵対者が存在しない今、誰が何故彼女を殺そうとしたのかが分からない以上このまま王城にいては不味いかもしれない。
エルドラン王はそう判断し、アリシア様の身を一時実家に戻す様に命令を下した。
はい。
フィリオネル様、また自国で単身赴任という訳の分からない状態に逆戻りですね。
しかも今回は犯人が見つかるまでというあやふやな期間のせいで、これを片付ければ家族で過ごせるという何かも無い。
お陰で憂さ晴らしのようにSUMOUで暴れ周ってるらしい。絶対対戦したくないわ。
さて、そうと決まれば危ないセイルーンを出て実家に帰るぜ!とばかりにアリシア様はあぶない水着より危ない衣装を着て高笑いを響かせながらゼフィーリアに出立。
護衛と万が一の時のストップ役として配置された俺とエリスはもう面倒くさくなったので格好については何も触れずにいた所、よりにもよって。よりにもよってグレイシア姫が興味を持ち出した。
高笑いをしようとしてげほがほ言ってた時は自分の不明とアリシア様への殺意を押し殺すのに必死だったね。
一先ず正座させて4時間ばかり真剣に話し合った結果、旅先では自重する事、もう二度とグレイシア姫やアメリア姫が起きている時間帯や近くに居る時はやらないことを誓わせる事に成功した。
以前も似たようなお願いしたけど今回はちゃんとした文章にしたためて、もし違反したらお気に入りの衣装を全て裁断して焼却炉に放り込むと伝えると青い顔で頷いてくれたのでもうやらないだろう。
え?雇い主にそんな事をして良いのかって?もちろん国王陛下や宰相閣下、更に第二王子様からは事前に許可を貰ってある。命最優先、他は俺の判断で良いとの事。
そもそも、やらかすのが多い王族の中でもトップレベルなフィリオネル夫妻のお守りに、通常の権限で何とかできると思うほどセイルーンの上層部は甘くないんだ。
最悪薬を盛って強制的に連れ帰っても良いと言われているので・・・まぁ、その時は流石に実家の方に軟禁になるかもしれないが・・・この位の罰を与える位は何の問題もない。
「あの、私達の評価が酷すぎません?」
「一度、胸に手を当てて考えて再度その言葉を言ってみてください」
エリスが笑顔でそう告げるとアリシア様は青い顔で黙り込んだ。
フィリオネル王子ですらあの格好は二人きりの時にして欲しいと言っているレベルなのに貴女ときたら・・・
再度お説教モードに移行したエリスがくどくどとアリシア様を叱っている間、俺は背中にアメリア様を背負って子供達を連れて外に出る。親が怒られている姿を子供に見せるのもね。
「さて、何か食べに行きましょうか。支払いは任せろ!(バリバリバリ)」
「わー、すごーい!それ財布?」
「ええ。マジックテープという新素材で出来てます」
元の世界でたまたま原理を知っていた為、ゼフィーリアで知り合いの工場の人にちょろっと話したら一晩で作ってきてちょっとビビッた。
この魔法の財布に魔力を通すと小さなフックと輪っかが結合し開かなくなり、再度魔力を通すとフックや輪っかが柔らかくなって外れるようになるらしい。
魔法って凄い(小並感)
楽しい旅路も終わりを告げ、勝手知ったるゼフィール・シティが見えてきた。
俺達の宿舎はゼフィール・シティのすぐ傍にある町にあるが、その前に
先触れとして俺が城門に走り、その後を馬車に乗ったアリシア様達がゆっくり付いてくる。
幸いにも今日は王城の警備にデルグランが居た為、すぐに話を通してもらいそれほど待ち時間を作らずに俺達は
「おねーちゃん、お久しぶり!」
「はい。ルナちゃんお久しぶりですね。お元気でしたか?」
「うん!あたしビョーキになった事ないんだよ!」
でしょうねー、とデルグランが顔に出してるのであいつは後で締める。
「アリシアさん。お話は伺っています。ご無事で何よりです」
「ありがとうございます。この度はまた迷惑をお掛けしますが・・・」
「貴女のお父様にはすでに話を通してあります。ゆっくり心を休めなさい。それと、グレイシア姫、お久しぶりですね」
アリシア様と
「お、お久しぶりでごじゃります!」
一同、思わず苦笑い。
「私のお願いを聞いてくれてありがとう。ルナちゃん、とても良い子でしょう?」
「うん!あ、じゃなくて・・・はい!」
「ふふっ。これからも仲良くしてあげてね」
「はじめまして、アメリア姫。私はゼフィーリアの女王。
「はい!初めましてクーちゃん!」
「・・・まあ!デルグラン!この子もとってもいい子よ!」
素直にクーちゃんと呼ばれた
デルグランすっごい渋々笑ってるんですがこれ大丈夫な奴なんですかね。
このクーちゃん呼び、初めてルナちゃんやグレイシア姫に会った時もお願いしていたらしいが、今まで即答で返したのはルナちゃんだけらしいしルナちゃんはその後おねえちゃん呼びに変わったから・・・
「今日はとても良い日です。これでまた今年一年も頑張れます」
「
思わずそう言ってしまったが後悔はない。あっちで疲れた顔をしたデルグランや偉そうなおじさんも頷いてるし。
あの顔を見るに子供が来る度にこういう感じなんだろうな。
永世名誉大賢者は伊達じゃないって事か、
「今すごく不快になりました」
「すんませんっした!」
だから内心をするっと読むの止めてくださいお願いします。
「何でもしてくれるなら許しますが」
「何をすればよろしいんでしょうか。足でもお舐めするとか」
言った瞬間デルグランから槍が飛んできた。あの、ちょっと頭を掠めたんですけど。あ、はいごめんなさい土下座何発すれば許してくれますかね?
「カルマート公国領で怪しい動きがあったのはご存知でしょうが」
「
「とお・・・こほん。兎に角。セレンティアの大寺院による宣言でルナちゃんの立場は保障されカルマート公国の動きは霧散したと思っていたのですが」
セイルーン王直々の他称なんですがね、
「兎に角!一度企みを潰された魔族がまたぞろ何か企んでいるやもしれません。ガーヴという無視できない戦力が出現しこちらが手薄になっているうちに調査をお願いしたいのです」
「・・・陛下ご自慢の隠密部隊の見せ場だと思うのですが」
「そこからは私が。今、彼らは国内に散らばっており動かすに動かせないのです。そして、ゼフィーリアの内部の人間を動かす事は少し不味い状況でしてな」
一瞬言い辛そうに押し黙った
確か宰相さんだったか。立憲君主制に近い政体を取るこの国の、実質的な実務担当者のトップのはずだ。
「お恥ずかしい話ですが、恐らく内部に内通者がおります」
困った、と顔に書いたまま宰相閣下はそう切り出してきた。
あの、それは他国人の俺に言って大丈夫なんでしょうか。漏らしたら・・・・・・あ(察し)
何でもするとは言ったけど本当に何でもさせる気だったんですね。エリス、すまん、だからその。般若のような顔は見たくないな。後で屋上?
はい・・・・・・(震え声)
L様:気軽にエルちゃまって呼んで良いわよ
部下S:(これノリツッコミの所なんだろうか。いや、待て。突っ込んだらお仕置きと称して地獄のようなナニかを食わされるパターンだ!考えろ、この状況を突破するたった一つの冴えたやり方を!今こそ力を貸してくれ、ヨシオ!)
L様:何黙りこくってんのよ気味悪い。白けたわ・・・ちょっとDの所に遊びに行ってこよっと
部下S:(ありがとうヨシオオオオオオ!)
ヨシオ:え?(割と親切心でL様に呼び方を変えてみたらと言った男)