L様:部下S!任せてた件ちゃんと出来てるんでしょうね!
部下S:は、はいL様直ちに!
L様:・・・ふむふむ。やっぱりこいつバカね。
部下S:それは間違いないかと。ここに来るたびに何が間違っているのか聞いてくるのですが全部としか言えませんので。
L様:ちょっと梃入れしましょうか。面白いけど死ぬだけじゃ飽きちゃうからね。
(誤字修正。あまにた様ありがとうございました!)
テイク17
「こちら講師のロディマスさんです」
「よろしく頼む」
ゼロス君、有能。
たった数日で何でも元騎士さんだというロディマスというナイスミドルを槍の先生として連れてきてくれた。
ロディマスさんも先日お勤めを辞めてさてどうしようかという所だったらしく、暫くのんびり路銀を貯める為にも修行を見てくれるとの事。
お金は大丈夫なのかって?全部ゼロス君に借りてます。
採集依頼だけじゃね。無理だね(諦め)
もっと実入りの良い仕事をするにもそもそもスペック足りてないからな。今後に期待という事で。
さて、早速槍の授業だぜぇ、と気合を入れて最初にやらされたのは走りこみである。
そもそも体が戦う者のそれではないとの事、しょうがないよね。ニートだったから。
自宅警備員としては問題のないスペック(願望)だったんだがリアル冒険者にはやはり遠いステータスだったらしい。
数週間位で槍(タマちゃん)を抱えて町を一周できるようになり、そこからは只管突き・払い・切りの繰り返しで、ある程度型が出来てきたら今度は受けの練習を加えられる。
「よし、もう一度、それぞれ200回だ!」
「アラホラサッサー・・・飯にしません?」
「ふむ。これが終わったら昼にするか」
というか朝から晩まで仕事のある時以外はこの4動作をくり返しさせられてる。
最初は案山子に向かってやってたんだけどタマちゃん切れ味が良すぎてあっと言う間に案山子がバラバラになるから今は完全に1人で突き払い切り受けの動作をやってる怪しい人物である。
いや、他の槍や棒使おうとしたらタマちゃん拗ねるんだよね。具体的に言うと破滅的ぱぅあーが凄い出て俺は死ぬ。みたいなさ。
機嫌を直す為に果物の果汁やらを穂先に浸したりチヤホヤしたりしないといけなかったから仕事にも修行にもいけなくてひたすら困った。
綺麗な子は維持費がかかっていけねえぜ。
さて、俺が修行中にも世の中は動くようで。
先日、近くの魔族が篭る山の方面から奇怪な光が走り山が削れるという珍事が起こったそうだが、それを機にこの国の王様が魔族討伐を行おうとしているらしい。
めっちゃ見覚えがあるんでゼロス君に大丈夫なのか聞いた所、
「全く問題ないですね」
と胡散臭い笑顔全快で答える物だから取り合えず俺が矢面に立つ事はなくなりそうである。
この話を聞いたロディマス師匠は終始苦い顔をしていたが。何でも王様を止めようとして辞めざるをえなくなったらしい。
「宮仕えだったんですかパネェっすね」
「そもそも騎士ってのは宮仕えだ!」
最近は打ち解けてくれたのかヨイショすると軽く肩を小突かれて笑われる。
この師匠、騎士だったってだけあって修行の際に騎士道精神について熱く語る事を除けば、非常に気さくで面白いおじさんだ。ただ義理堅いというかすっごくお節介な所がたまに傷だ。
俺は小市民として旅が出来ればそれで良い位に鍛えて欲しいんだが、どうも何かしら見所があったらしく「お前は良い騎士になれる!」とか何とか言って槍の修行以外にもガンガン教え込んでくる。
ゼロス君?あの人は最近時たまふっと居なくなって数日帰ってこなかったり忙しそうなんで今は居ない。
彼もまあ忙しいんだろう。大丈夫とは言っても自分達の住処に攻めてこられるんだしな。
居ない人の事は置いといてさて修行だ。
一日一万回、感謝の直突きをしないとね。
表情一つ変えずに延々と突きを繰り返すヨシオを、ゼロスは興味深く観察していた。
ここ数週間、昼食を終えた後に彼は必ずこの広場で夕方まで同じ動作を繰り返しており、ゼロスも何度か目にした事がある。
最初はまた面白そうなことを、と思った。
暫くして延々と続く同じ作業に愚かだと感じ、そして今。
得体の知れないものを見ているような感覚をゼロスは味わっている。
「よう、神官さん」
「これはロディマス先生。修行はよろしいのですか?」
背後から近づいてきたロディマスに声をかけられ、にこやかにゼロスは返した。
ロディマスはゼロスの質問に答える事はなく、横に並んで立ってヨシオを見る。
その顔はヨシオと話している時のにこやかさなど欠片もなく、能面のような表情を浮かべていた。
「あんたに聞きたいことがある。アレは何だ?」
「アレですか?はて、ヨシオさんに何か」
「アレは本当に人間なのか?」
ロディマスの問いかけにゼロスは警戒度を一段階引き上げる。
何に気づいたのか。ここで消すデメリットは。頭の中で計算を働かせながらゼロスは意味がわからないとばかりに質問を返す。
「さて、私も知り合いから世話を頼まれただけですので。見る限り人間にしか見えませんがね」
「そうか。そうだな・・・見る限りは人間にしか見えん。実際接してみて俺もそう感じている」
「・・・要領を得ませんね。貴方は何を私に聞きたいのですか?」
「普通の人間は体が壊死する寸前まで槍を振るったり出来ない。自分の体が壊れるまで力を込められない。そんな体の使い方をすればすぐにくたばっちまうからな」
ゼロスの質問に答えると、ロディマスは無表情のままゼロスに目線を向ける。
その瞳には確かに感情の火がともっていた。困惑と恐怖。そして憐憫。
魔族の糧となる感情がこの精強な騎士から感じられる。
心地よさを感じながらゼロスは続きを促した。
「痛みを感じない体質なのかとも思った。でもそうじゃねぇ。小突いたら痛いというし怪我をすれば騒ぎ立てる。普通の人間だ。限度を超えても止まらないってのを除けばよ」
「・・・だから怖い、ですか?」
「ああ。正直に言えばビビってる。あの直突きだってあいつが言い出してから毎日ずっとやってるがよ。延々同じ動作だけを何日も決められた時間決められた通りにやる。言うだけなら簡単だが普通どこかで変化が現れるはずだ。だがあいつは本当に同じ動作だけを延々くり返してる。怪我をしていようが、体力が限界だろうが構わず倒れるまでやった時もあった。そんな奴が次の日にへらへらと笑いながら世間話をしてくるんだぞ?怖いなんてもんじゃねぇ」
そこまで言い切って、ロディマスはヨシオに目線を戻した。
「あんな歪な奴どうやれば出来るのかね。俺が手を出せるうちに、少しでもマシになるようにするつもりだが・・・・・・その程度しか俺にはできんだろう。情けない話だ」
そう言って肩を落とすロディマスにゼロスは何も言わず、ヨシオを見る。
視線の先のヨシオは、大量に落ちる汗を一顧だにせずに槍を突き続けていた。
夕日が落ちるまでずっと。
若ロディマス:今回のメイン被害者。かつて騎士だったとの事なので宮仕えを辞めてすぐ、という設定。ヨシオとは話は合うのだが節々に感じるヨシオの命に対する軽さに恐怖を覚える。持ち前の責任感で何とかできないかと色々試行錯誤中
ゼロス:金色の魔王が玩具にするだけはあるのか、と若干評価を上げる。
この国の王様:もうすぐ腐る。
タマちゃん:槍。嫉妬深い。