【完結】スレイヤーズ リポップ!   作:ぱちぱち

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ご無沙汰して申し訳ない。


公都到着。そして

 カルマート公国 公都・カルマート・シティ

 正式な名前はカルマート・エルアトリオ・ヴィシス・ヴィラスコ・シティ。随分と複雑な名前だ。

 命名されたときに相当ごたごたしたんだろうか。普通にカルマート・シティだけで良いと思うんだが。

 

「入門する者はこの列に並ぶように!」

 

 街道を歩いていくとカルマート公国の騎士だろう男が声を張り上げているのが見える。よくよく見れば成程、商人や町人といった格好をした人々が列を成している。

 城門から随分と離れた場所から始まるその列に、流石は首都。そこらの街とは人の出入りの規模が違うようだ。

 

「いやぁ、あれはどっちかというと物見遊山だぜ」

「物見遊山? ああ、そういえば地下迷宮が」

「カルマートの誇る剣豪7名を葬った黒槍のヨシェがそろそろ公都にたどり着くってな」

「葬っとらんわ」

 

 全員きっちり生きてるしケガさせた相手にはリザレクションまで掛けたんだがな。

 

「随分お優しいこったな、ヨシオのおっさん」

「やかましい。お前、ルークか」

「おっす。随分のんびり旅してんだな。観光終わって戻ってきちまったぜ?」

「……邪魔が入ってるんだよ」

 

 煽る様な口調のクソガキに頬を引くつかせながら言い訳じみた言葉を吐く。

 最初は何の意味があるのかと思った嫌がらせで旅の予定が数週間単位で遅れているのだから言い訳もさせて欲しい。

 ”何故か”旅をしている最中に急速に広まったディルス流の達人とカルマートが誇る達人達の真剣勝負、の噂。

 それらを見ようと押し掛ける一般人達。

 

 自分達が行う街中での死闘は、民衆にとって普段は見ることも叶わない武の領域を垣間見る良い機会なのだろう。

 半ば娯楽のような扱いで噂は更に広まり、気づけば行く先々で「あれがディルス流の」やら「黒槍」やらと指さされる始末だ。

 お陰で常に人の目を気にしなければならなくなり、行く先々で歓待という名の足止めを受け。

 

「この公都に辿り着くだけでもやたらと時間がかかっちまったぜぃ」

「行く先々でちやほやされて鼻伸ばしてたって事で良いのか?」

「違うから。俺は奥さん一筋だから」

「単身赴任の寂しい身だろ? ハメ外しちまえば良いじゃねーか」

「外さねーよ。なんだお前、俺を悪の道に引きずり落とす為だけに来たのか?」

「んな暇じゃないって。ほら、おっさん宛てだ」

 

 軽口を叩きながらルークはピラっと封筒のような物を手渡してくる。

 封は……セイルーン?

 なんでゼフィーリア方面に向かったルークがセイルーンの封がついた書簡を持ってくるんだ?

 

「セイルーンに就職したのか?」

「あの王様と王子なら面白いかもしれんが違うよ。バイトみたいなもんさ」

「ほー。そいつはご苦労なこって……」

「お前が浮気してないかって嫁さんから結構な報酬を」

「エリスさあああん!?」

 

 俺の悲鳴にルークは「冗談だよ」とけらけら笑いながら答える。

 あれだ。絶対に冗談じゃない。もし仮にさっきの言葉で本当にハメを外したり隠れて遊んでたりしたら間違いなくエリスに伝わり地獄のような拷問を受けるんだ。

 具体的に言えばテイク回数が60くらいまで跳ね上がる。

 

「……え。おっさん恐妻家なのか?」

「男はなルーク。尻にしかれるんだ。本当に惚れた女が相手なら、さ」

「よくわっかんね。俺もそんな相手出来るんかねぇ」

 

 首を傾げてガリガリと頭を掻く少年に「お前もすぐだからなー」と呪いの言葉を吐いていると、人の列の最後尾に辿り着く。

 この様子だと夕方くらいまでに入れれば御の字という所か。ま、しょうがないわなーとのんびり構えていると。

 

「……おい、あれ」

「ああ。間違いない、そろそろだとは思っていたが」

「衛兵さーん! こっち、こっちだ!」

 

 俺たちの前に並んでいる民衆がざわざわと騒ぎ出し、何事かと衛兵や巡回の騎士達も集まりだす。

 うん、そうだよね。毎回こうなるんだ。ここから民衆が周囲を取り囲み、あーだこーだと応援とかいう名前の何かを言ってきて一時間。その後に巡回の騎士達が頑張って民衆を散らし、何故か俺が騒乱を起こした罪とかでしょっ引かれてまた数日。

 暴れ回るタマちゃんの被害に耐え切れなくなった騎士達が俺とタマちゃんを開放し、そしたら何故か待機してる達人さんが喧嘩を売ってくる、と。

 もしかして達人さんが街に来るまでの時間稼ぎなのかもしれないな。一番最初のロクシタンさん以降は明らかに格が落ちてたけど。

 

「すまんな、ルーク。隙を見て……」

 

 巻き込んだ形になるルークに謝罪を言おうと横を向くと、つい先ほどまで隣を歩いていた小さな影は影も形も見えなくなってしまっていた。

 うん。判断早いね、素晴らしい。ちくしょう。

 

 

 

 また3日は臭い飯かと思ったらそんな事はなかったでござるの巻。どうも、ヨシオです。

 なんか普通に賓客待遇で列をスルーして中に居れてもらったよ。なんだ、これまでと差がありすぎて怖いぞおい。

 先導する体格の良い騎士はキョロキョロと所在なさげに周囲を見る俺の姿に何を思ったのか。

 にこやかな表情で話しかけてくる。

 

「黒槍のヨショの武名は最早国中に広まっております。私が巡回中に来ていただけるとは嬉しい限りです」

「前の街では担当の騎士様(笑)に2日ほど「この社会のごみめ! 腕っぷしだけで偉そうな顔するんじゃねぇ!」とか牢屋の中で罵られ続けたんですが」

「……………………ははっ」

 

 ははっ、じゃないが。引きつった笑顔で誤魔化そうとしても俺は絶対に忘れんぞ。

 まぁ報復代わりに街から出るときにスパッと鎧の留め具を全部ぶった切って全裸にしてやったんですがね。

 むしろそっちで捕まったのかと思ったけどどうやら被害届は出ていなかったらしい。

 

 しかし、予想よりも大きな都市だな。ここは。

 勿論公国の中心地である以上発展しているとは思っていた。だが、伝え聞くカルマート公国の噂――古いだけで中身のない通り道国家――という物と、実際の環境はかなり差があるように感じる。

 

「流石は公都。賑わいのある街並みですね」

「お判りになりますか。これも偏に王太子様の手腕によるものです」

「王太子殿下が、ですか?」

「ええ。国王陛下はここ10年ほど体調が思わしくなく、ここ数年は寝たきりの状況でしてね。しかし王太子殿下は幼き頃から俊英と名高い方。立派に政務を取り仕切られております」

「成程。それは素晴らしい。ご教授いただきありがとうございます」

 

 誇らしげにそう語る騎士に礼を述べ、口の中で小さく王太子、と呟く。

 この国で一番と思える達人。ロクシタンが命がけで俺を止めに来た理由の、エルトリア王子。

 それとなく旅の途中で誰かに尋ねれば、返ってくるのは大概が絶賛の言葉だった。

 例えば大規模な森林火災を最小限の被害で抑えた。例えば食料の備蓄を行っていたら大不作が起き、間一髪で大規模な飢餓を食い止めた。

 曰く、未来を見通す天才だとかなんとか。

 彼が行っている手はどれも堅実な手法なんだが、それがズバリもっとも困った時に効果を発揮する事からそう呼ばれているらしい。

 うん、すげー怪しいよね。

 

「騎士さん。それで、このちんどん行列はどこまで続くんですか?」

「ちんどん……ええと、一応城で……王太子殿下が是非、稀代の豪傑と面会したい、と」

 

 背後に続く一般民衆の群れを指さしながら先導する騎士に尋ねると、彼は苦笑を溢しながらそう答える。

 成程。どうやら直接対峙する機会には、どうやら恵まれそうである。

 自身の直感としてはほぼ黒の灰色なんだが、さて。

 

 暫く街並みを眺める事しばし。王城への出入りを行うメインストリートを奥まで進むと、城門前に広い広場がある事に気づく。

 観閲式等で使う為だろう。しっかりとレンガを敷き詰め舗装されたその広場へ行列が入り込むと、先導していた騎士がくるりと振り返り後続の民衆に「ここから先は一般市民は入れない!」と通行を制限し始めた。

 

「黒槍殿。城門の衛兵も事態は把握している筈です。そのまま向かっていただければ」

「ああ、はい。お疲れ様です」

「務めですので」

 

 キリっと表情を引き締めて渋る民衆に声をかける騎士に手を振り、そのまま城へ向かって足を進める。

 職務に忠実な人は好感が持てるね。前の街の騎士様(笑)が駄目だったんだな。全裸にして正解だった。

 そのままテクテクと城門へ向かって歩くと、俺の姿を見とがめたのか城門が少しずつ開くのが見て取れる。

 どうやら本当に話が通っているらしい。よしよし、と頷きながら広場から城門まで続く階段を上り、城門の前に辿り着く。

 今夜は暖かいベッドで眠れそうだぜ。

 

 と、内心思っていたのだが。

 

「黒い魔槍を持つ、というのは君か」

「……どちらさまでしょうか」

 

 どうやら、そうは問屋が卸してくれないらしい。

 

「カルマール公国から話が来た時は驚いたが、成程確かに強い」

 

 ヴゥン、とタマちゃんが喜びの声を上げる。

 それは金髪の男だった。恐らくは戦士……いや、剣士だろう。腰に差した一本の剣がそう物語っている。

 

「まぁ、そこそこ腕に覚えはありますがね」

「だろうね。ロクシタン殿を破ったという噂は、こちらに来るまでに耳にした。見事、と言える」

「そらどうも」

 

 青いプレートメイルのようなそれは、鎧とは無縁の俺でも上質なものだとわかる代物。そして、そんなものを抜きにして。

 こいつは強い。そういう雰囲気を、この男は全身から匂わせていた。

 

「俺の名はガウルン。今代の光の剣士、ガウルン=ガブリエフ。君の魔槍と我が光の剣。どちらが上か――いざ、尋常に勝負」

「勘弁して欲しいんですがねぇ」

 

 抜き撃つように走る光の剣閃に最初からヒートアップするタマちゃんを合わせる。

 光と闇の力はぶつかり合い、火花の様に周囲へと散らされた。




使いたい配役使い切ってしまった()

(劇場忘れてたすみません)


L様:ところであんたって外見を変えるとか出来るのよね
部下S:ええぇ、あ。はい、一応……まぁ
L様:ふぅむ
部下S:あの。L様?
L様:スリッパの裏にへばりつく潰れたムカデと蜘蛛の巣に囚われて朽ち果てたコバエよね
部下S:よねじゃないですから! あ、いえ、そのこれは言い訳とか口答えじゃなくて
(しばらくお待ち下しあ)


ヨシオ:ううん。やっぱりコクが足りない、か
愉悦神父:励むといい。汝の道行きに幸あらんことを。
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