仮面ライダーW&ドライブ Eの復活/ライダー捜査線   作:ラズベアー

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第11話

俺は病院の屋上に出た。そして、誰もいない屋上の柵に身体を任せ目を瞑った。

 

風都の風は気持ちいい…。

風に当たってるだけで傷が癒えていく感じがするぜ。

やっぱり、俺は風都に吹く風が大好きだ。憤りを感じる時、悲しい時、もやもやした時…。こうやって小高い所で風を感じることで、全てが洗い流されていく気がする。風に当たっている内に気持ちが落ち着くんだ。

仕事をしている時だってそうだ。

調査に行き詰まった時、風に当たることで頭の中が整理される。

それに風がいい知らせを運んで来るときもあるから、それを待つのだっていい。

まぁ、これはおやっさんの請け負いなんだがな。

「おやっさぁん。俺はどうしたらいい…?」

俺は空を仰ぎながら呟いた。

 

「左さん。」

我に返り、声の元へ向いた。

「氷川さん?」

「お邪魔でしたか?」

「いや、そんなことはねぇよ。」

「それなら良かった。」

氷川が缶コーヒーを差し出した。俺はそれを受け取り一口飲んだ。何とも安い味だ。それでもホッと一息がつける。

「風都。本当にいい風が吹いてますね。」

氷川が隣でコーヒーを飲みながら言った。

「お、わかるか?この良さ!」

「ええ、この街に住んで見たいくらいですよ。」

「だが、代償としてドーパントとやり合わなきゃならないぜ。結局落ち着かないさ。」

「そうかもしれませんね。」

お互い静かに笑った。

「フィリップさん。大切な相棒なんですよね?」

氷川が尋ねてきた。俺は黙って頷いた。

「照井さんから聞きました。何と言っていいのか…。無事であることを祈りましょう。」

「…あぁ。」

俺は呟くように言い、コーヒーを啜った。

「僕にも、大切な仲間がいました。警察官ではないんですが、戦友とでも言うんでしょうか。一緒に闘ってくれた仲間が。だから、少しだけかもしれませんが、左さんの気持ちわかりますよ。」

氷川が気を使ってくれているのがわかった。

「…なぁ、氷川さん。聞いてもいいか?」

「何ですか?」

「何でライダー辞めてしまったんだ?」

「…。」

氷川は黙ってコーヒーを啜った。

「…いや、答えなくていいっすよ。悪かった。」

「…僕は、仮面ライダーになりたかったんですよ。」

氷川が言った。

「?」

「僕は、かつてG3ユニットに所属し、G3ーXの装着員として闘っていました。といっても、強化外骨格装甲ですから、本来の意味でのライダーではなかったんです。」

「どういうことだ?」

俺は問い返した。

「左さんは、アギトをご存知ですか?」

「あー、あぁ。角の開くやつだよな?」

仮面ライダーアギト。クウガと同じくちゃんと顔を合わせた訳ではないが、知っていた。

「ええ。不可能犯罪を続けていた新種の未確認生命体・アンノウン。その脅威から人々を守るために闘っていたのがアギトなんです。」

氷川は続けて言った。

「アギトは、言葉では上手く説明できない人智を越えた力を持っていました。その力で数々のアンノウンを倒していったんです。本来なら市民の安全は警察が守らなければならなかったんですが。」

氷川は自嘲気味に言った。

「だから、あんたがG3ーXとして戦ったんじゃないのか?」

「まぁ、そうなんですが…。でもそれは、結局はアギトの力じゃない。人でしかなかったんです。僕は。」

俺はそのまま黙って聞いていた。

「ずっと仮面ライダーになりたくて戦っていましたが、ある時に気づいたんです。人として出来ることをすればいいんだって。それからは何だか吹っ切れた感じがして。自分の出来ることを精一杯やってそれで戦おう、みんなを守ろうって思ったんです。ただ…。」

「ただ?」

「所詮は人間。無理をし過ぎると身体のどこかを悪くしてしまうんですよね。」

「…。」

「僕の場合、ブラックアウトしてしまうんです。」

ブラックアウト。戦闘機なんかに載ってると起こる現象だ。身体に負荷が掛かってしまい、眼球に血液が回らなくなって一時的に失明してしまうのだ。

「初めはストレスによるものと診断されたんですが、戦い続けていく内にそれが頻繁に起きるようになり、はたまた長時間見えなくなったりしていったんです。ついにはドクターストップですよ。全く…。」

ハハっと氷川は笑って言った。

「幸い、G3ーXを手放せば警察官としてはまだまだ戦えるとのことだったので、後任の尾室さんに任せて、僕はその一線を退いたというわけなんです。でも、やっぱり心のどこかに、ライダーとして戦いたい気持ちが残ってるんですよ。先の戦いだって、僕が戦えていれば結果は少し違ったんじゃないかって。」

「なるほどな…。氷川さん、あんた強い人だ。」

「え?」

氷川は面を喰らったような顔をした。

「だってそうだろう、あんたは最後まで"人として闘い抜いた"んだろ?何かの力に頼るでもなく、自身の力で。」

「…でも、それに気づかせてくれたのは仲間達のお陰ですから。」

「その仲間達の為にも、あんたはライダーとしてだけでなく、氷川誠として戦えばいいんじゃないか?」

「…左さんって、僕より年下ですよね?」

「これがハードボイルドってもんすよ。」

「は、ハード…?」

 

「翔ちゃーん!」

また俺を呼ぶ声がした。

風都イレギュラーズの一人、サンタちゃんが駆け寄ってきた。

「なんだよ、サンタちゃん。こんな所まできて。」

俺は呆れていった。

「探したよ~。実はさ、あの超人気ワインセラーのG'sヴィンテージがちょっと前から風都に出張店舗出してんだよ!」

サンタちゃんが興奮気味に言った。

「あー、サンタちゃん、わかったけど今する話か?」

「聞いてって!ほら、そろそろボジョレー解禁でしょ?だから俺もちょっと様子見に行ったらさ、本店の店長が来てたの!そしたら、鳴海探偵事務所を知らないか?って聞かれたわけ!」

仕事の依頼か?

「んで、知り合いだって伝えたら、話したい事があるからすぐに来て欲しいって!」

「ったく!あのな、今…。」

その時、不意におやっさんの言葉が脳裏を過った。

 

「いいか、翔太郎。風都の風は、時に予期せぬものを運んでくることがある…。それが調査のキッカケに繋がることだってあるんだ。そんときは黙って風の流れに身を任せろ。ただの気のせいなら、それでいいじゃねぇか…。」

 

「…わかった。場所は?」

俺はサンタちゃんから場所を聞き、そこへ向かおうとした。

「左さん!」

氷川が呼んだ。

「ありがとうございました。美味しいフレンチレストランを知っているので、今度ご馳走しますよ!」

俺は片手でハンドサインを送ると、その場を後にした。

 

「ここか…。」

サンタちゃんに教えられた場所。

それは風都通りに面したフリースペースを借りて営業していた。

G'sヴィンテージ。あまりワインには詳しくないんだが、ここのオーナーが俺に何の用なのか。

「考えても仕方ねぇか…。」

俺は意を決して、入店した。

中は中世ヨーロッパをモチーフにした内装が施されていた。ショーウィンドウには、オススメのワインとそれに合うスナック等が置かれている。反対に店の奥には年季の入ったワインボトルが壁一面に並べられていた。

そして、さすがワインセラーだけあって、果物の香りが漂っていた。しかし、決して葡萄の香りだけではなく、様々な果物の香りがする。

もう少し奥へ行くと、立ち飲み用のカウンターやイートインもあり、俺を呼びつけた男はそこにいた。白いジャケットと暗めのデニムを身につけていた。

「あんたか、俺を呼んだのは。」

俺は男に尋ねた。

しかし、男は黙ったまま、ワインボトルを見つめていた。

「あの、あんたここのオーナーだよな?」

反応がない。

「おい…!」

「しっ!」

「…!?」

突然、男に黙らされた。

「ワインを嗜む時は、ボトルをあける所から慎重にならなければならない。少しの衝撃で風味が変わってしまうからね。」

そういうと、オーナーはジャケットの中からワインオープナーを取り出し、ゆっくり丁寧にワインの口を開け始めた。

 

ポンっ

 

思ったよりも小さな音を立て、ワインはこの世に放たれた。

そして、それを静かにグラスに注ぎ始めた。

「君は、普段からワインを嗜むかい?」

オーナーが尋ねてきた。

「いや…、あんまり…。」

「そうか…。ワインを注ぐ時もグラスの底に柔らかなクッションがあるつもりで注ぐといい。例えば水を硬いコンクリートの上に流せば四方に飛び散ってしまうだろ?そうではなくて、それを柔らかく受け止めてくれるものを想像しながら注ぐんだ。そうすることで、口当たりがさらにマイルドになる。」

「はぁ…。」

いや、別にワインの注ぎ方を聞きに来たんじゃないんだが…。

「そして、静かにグラスを回すと空気を含みさらに味わい深くなる…。さぁ。」

オーナーはワインを差し出した。

「いや、俺一応仕事中なんで…。」

「一口だけで構わない。味わってみてくれ。」

俺はしぶしぶそれを受け取り、一口だけ口に含んだ。

その途端、口の中をワインの風味が広がった。赤ワインだが癖も少なく、でもジュースと異なりしっかりと熟成された味が舌の上を流れていく。喉の奥へ流れたかと思えばその風味だけが逆流して鼻から抜けていった。芳醇の香りだ。

何だこれ、こんなにワインって美味かったか?

たった一口だけだが、全身を幸福感が包み込むような満たされるような気分だった。

「どうだい?」

「何とも、例えがたい感じだ…。ただ、少なくとも今まで飲んだ中で一番美味しい…!」

それを見たオーナーは笑顔を見せた。

「そうか、それなら良かった。けど…。」

オーナーは手に持ったワインボトルのラベルを見せてきた。

「多分、みんなが良く口にするものだよ?」

それはコンビニのロゴが入ったものだった。そして、事務所でやるクリスマスパーティーで飲んだことのあるごくごく普通のワインだったのだ。

「…へ?」

俺は大げさに答えた自分に恥ずかしさを感じた。

「ふふ…。すまない。けど、普段から口にするワインでも、アプローチを変えることで風味がガラリと変わるんだ。ワインの世界は奥が深いだろ?」

完全にオーナーのペースにのまれていた。

「君が鳴海探偵事務所の探偵・左翔太郎君だね?」

オーナーが尋ねてきた。

「…あぁ、そうだ。」

「僕は…、君が探しているものの在処を知っている。」

「!?それは本当なのか?」

いや、それよりも俺がフィリップを探していることを何故知っているんだ?

「何者だ、あんた。ただのワインセラーのオーナーじゃないな?」

俺は身構えた。

「…。ここではワインが泣いてしまう。表に出よう。」

オーナーに続き、俺は店の外へ出た。すると突然、オーナーから鋭い蹴りが飛んできた。

俺は咄嗟にかわし、距離を取った。

「ほぅ。今のをかわすとは…。さすがは仮面ライダーWか。」

オーナーは身だしなみを整えながら言った。

仮面ライダーとしての姿を知っているとなると、選択肢は絞られる。

「お前、ネオシェードか!!それとも財団Xか!!」

「ネオ、シェード…?そうか。今はそう名乗っているのか。」

オーナーは意味あり気に言った。

「何者か、と聞いたね?左翔太郎君。ならばお答えしよう。」

俺は、あの男の腰にベルトが巻かれていることに気づいた。

「あんた、まさか!?」

 

「変身!」

オーナーの右手には小さなワインボトルが握られており、それをベルトに装填した。装填したことで持ち上がったワインオープナーのようなトリガーを反対に戻した。

そして、ベルトを中心に装甲が展開され、仮面ライダーの姿になった。

「僕は…。シェードの改造人間!」

「仮面ライダーGだ!」




前半は翔太郎と氷川誠が交流する場面を設定しました。
本作で、氷川誠がG3ーXを手離した理由が明らかになりました。
アギト本編において、一時的に視力が無くなった場面がありました。それについては、過度のストレスによる一時的なものとされ、以降、再発することなく終わりました。
本作では、それを敢えて過大解釈をし、氷川さんがライダーを辞めざるを得ない設定にしました。
このまま、氷川さんはG3ーXとして戦わずに終わってしまうのでしょうか…。

後半は仮面ライダーGの登場です。
本作でやりたかったこと第二弾です。笑
ドライブ本編や東映公式で特に言及されていませんでしたが、ネオシェードと聞いて某バラエティ番組中の物語で登場した組織"シェード"を思い浮かべた読者も多いのではないでしょうか。
本作の敵はネオシェード。そして、ここは二次創作の場。ならば!と思い切って登場させました。
果たして、翔太郎の前に現れた仮面ライダーGの真意とは…。

次回もお楽しみに!
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