仮面ライダーW&ドライブ Eの復活/ライダー捜査線   作:ラズベアー

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今回はフィリップ視点です。


第四章 復活
第13話


ジーン!

 

どこか遠くの方で聴こえる。それが何かまでははっきりとはわからない。

 

ソード!

 

それもそのハズだ。ここはどこで自分が何なのか分かっていない。それなのに、何が聴こえるかなんてわかるはずがない。

 

ヴァイオレンス!

 

だが、少しずつだが、意識がはっきりしてきた。それまで眠っていたものが意識を取り戻し、いつかの夜明けを待つかのように。だが、まるで何も見えない。

 

メロディ!

 

聴こえる。誰かが自分を呼んでいる。だけど、この不愉快さは何だ?だれが眠りを妨げる?

 

テラー!

 

光が見えた。日差しか?視界がハッキリしない。だが、嫌だ。目覚めたくない。

 

ウェポン!

 

やめろ!やめてくれ!!

誰が眠りを妨げるんだ!!!

 

ナイト!

 

そうか、ようやく分かった。

自分が何者かを…。

自分は…、俺は…!!

 

ネヴァー!

 

 

「もうやめろぉ!!!!」

僕は叫んだ。

「ほぅ…、ようやく意識を取り戻したか。」

男が言った。

その言葉で、僕は今まで気を失っていたことに気がついた。そして、両手を天井から垂れている鎖で縛られ、座りたくても座れない状態で拘束されていた。無機質な空間の中で、目の前には忍野と男とマッハドライバーを身につけたロイミュードがいた。

男は、ガイアメモリに封じられた記憶を注ぎ込むかのように、次々とガイアメモリをロイミュードに当てていた。

「目覚めるまでには覚醒させたかったが、まぁいい。お前もその目でしかと見届けろ。」

男はそう言うと、忍野からメモリを受け取った。

 

アサシン!

 

アサシンメモリをロイミュードに当てる。するとメモリが光り、その光がロイミュードに吸い込まれるように消えた。

「やめるんだ!何故そんなことを…。岡村敬介!」

僕は獄中にいるはずの男に言った。

岡村はフンっと鼻で笑った。

「この世界が気に食わないからだ。」

岡村は僕に近づきながら言った。

「ネオシェードが新たな世界を創る。そうすれば、こんな狭苦しい思いをせず、本当の自由を得ることができる。それがいけないことなのか?」

岡村が言った。

「たしかに、世界は不器用だ。自由を謳いながらも、本来の意味での自由は存在していない。だけど、無秩序の中の自由ほど、恐ろしいものはない!だから、規律が大事なんだ!それは決して飼い殺しということじゃない、それは…。」

話している途中で、視界が震えた。一瞬、何が起きたか理解できなかったが、舌に流れる生ぬるい鉄の味を感じた瞬間、それを理解した。

「そんなものは、綺麗事だ。それで解決させようとするから、どこかでしわ寄せが来る。そして、それを精算しなくちゃならない。その末路が俺達なんだよ!」

岡村が吐き捨てるように言った。

「だから、ネオシェードが世界を変えるんだ!清山先生のためにも!こいつの力が必要なんだ!」

「徳川清山…。ネオシェードの母体、シェードの創始者にして野蛮なテロリスト!」

「黙れ!」

岡村が再び僕を殴った。

飛びそうになる意識を何とか繋ぎとめ、岡村を睨み付けた。

「お前にはわかるまい!清山先生の理想郷を!」

「わかるさ…。混沌とした地獄の始まり…!そこに理想も何も有りはしない!」

「減らず口を!!」

岡村がさらに僕を殴ろうとした。

「やめておけ。それ以上やれば、計画に遅れが出るだろう?」

岡村はその声で動きを止めた。

部屋の扉をくぐり、全身白ずくめの男が現れた。その姿は良く見た姿であり、この男が何者かは容易に想像がついた。

「財団…、X…!」

僕は因縁深い組織の名を口にしていた。

「憐れな姿だな…。こんな形でご対面するのも何だが、ともかく始めましてだな。園咲来人。私は桃瀬理(さとる)だ。」

財団の男が後ろで手を組ながら言った。

「やはり、この事件はお前達が噛んでたんだな。」

「あくまでもバックスポンサーとしてだがね。」

桃瀬が答えた。

「ネオシェードが、かつてシェードと呼ばれた組織だったとき、その指導者であった徳川清山とコネがあってね。彼の生み出した改造人間。とても興味深かった。囚われていた彼を救いだすと岡村君から連絡を受け、我々が協力をしたという訳だ。」

桃瀬が言うと懐からガイアメモリを取り出した。

それは僕にも見覚えのあるものだった。

「っ!エターナル…。何故!?」

僕は叫ぶ様に言った。

「俺達は国を転覆させるための力が必要だった。」

岡村が答えた。

「数年前、ロイミュードと結託し活動したが、その個体数は少なく、仮面ライダーどものお陰で敢えなく組織は壊滅してしまった。だが、獄中でガイアメモリの存在と一都市を壊滅寸前まで追い込んだ大道克己の存在を知り、それをネオシェードの手中に収めたかったんだ。日本の首都さえ潰してしまえばいい。その為の力が必要だったのさ。」

「そこで我々は新型のガイアメモリ、TN(タイプネクスト)メモリを彼らに譲渡した。」

桃瀬が言った。

「タイプネクストメモリ?」

僕は言った。

「T2の改良型とも言えよう。風都で出回っているP(プロダクション)タイプでも十分な性能を示しているが、君達仮面ライダーが相手では今一つなんでね。」

桃瀬が言った。

「さらに、彼らが大道克己を蘇らせたいことを知った我々は、ロイミュードを素体にガイアメモリの記憶を注ぐことで復活を試みようとした。だが結果は…。」

「失敗に終わった。それはそうだ。いくら地球の記憶といえど、生前の人間を蘇生させることなんて不可能だ。」

僕は桃瀬の言葉に続けて言った。

「悔しいが否定しようのない事実だ。それは認めよう。ただし、蘇生は出来なくても"記憶を再現"させればいい話だ。だが、Eメモリだけでは、大道克己どころか、仮面ライダーエターナルでさえ再現できなかった。だから私は考えた。大道克己を蘇らせるには、彼にまつわる記憶を注げば良いのではないか、と。」

桃瀬が言った。

「それで、特定のガイアメモリを収集していたのか。」

しかし、それでも疑問が残る。

 

僕は敢えて、ずっと疑問だったことを投げ掛けた。

「ならば、なぜTNメモリをネオシェードに直接与えなかった?元ネオシェードに与え、殺してまで回収するなんて、回りくどいことを。」

一瞬、桃瀬は黙ったが口を開いて言った。

「…いいだろう。教えてやろう。」

「桃瀬…、余計な話しをしている時間なんてない!」

岡村が言った。

「時間はいくらでもある。ここを知る人間などいやしないのだろう?」

桃瀬は余裕を見せていた。それでもと言わんばかりの岡村を無視して桃瀬は言葉を続けた。

「初めは、君の言う通り、大道克己に繋がるメモリを含め26本のメモリを生成し、彼の記憶にまつわるメモリをこのロイミュードに与えた。しかし、結果は変わらなかった。もちろんPタイプでも同じように試した。PタイプもTNメモリも結果は同じだった。」

「そうした実験の中で、ガイアメモリのある特性に気がついたのさ。何だかわかるかな?」

桃瀬はニヤっと不快な笑みを作って言った。

ガイアメモリの特性。あるとするならば一つだけ思いつくものがあった。

「メモリのレベルアップか。」

「ご名答!さすがは園咲家の長男にして、地球の本棚に認められた男。」

桃瀬は嬉々として言った。

「N (ナスカ)メモリに見られたレベルアップ機能。あれはメモリの力をさらに引き出す機能だ。言い換えれば、より強い記憶を引き出せるとも言える。」

「そこで、TNメモリにレベルアップ機能を付随させた。しかし、レベルアップさせるにはそれ相応の経験値が必要だった…。」

桃瀬が言った所で僕は閃いた。

「まさか…。元ネオシェード構成員にメモリを譲渡したのは、ネオシェードの掟をちらつかせ彼らをけしかけることで、自らにその力を引き出させるように仕向けたというのか!」

「いやぁ、さすが探偵の旦那の相方だ。頭がキレるねぇ。」

忍野が感嘆の声を出していった。

「奴ら裏切りものは、のうのうと生きようとしていた。死刑を通達すれば必然的にそれに抗おうとする。単純な話だ。それを我々が密かに始末し、レベルアップしたメモリ回収していけば良かった。唯一の誤算は、メモリを使ったものは何故か皆風都へ向かったことだが…。」

岡村も言った。

「そんなことの為に、組織を抜け、全うな生活を送ろうとしていた彼らを殺したのか!?」

僕は心底腹が立ってしょうがなかった。

「旦那の相棒さん、言ったはずだぜ?ネオシェードは裏切りを許さないってな。一切関わりのない人間を使うより、身内で事が済むんだ。良心的だと思ってもらいたいくらいだ。」

忍野が言った。

「さぁ。まもなくエターナル目覚めの時だ…。」

桃瀬が言った。

しかし、いくつものメモリを注入されても、ロイミュードは依然として変わらない。

「ふっ…。それも失敗というわけだね。」

僕は笑って言った。しかし、

「何を言っている?まだ必要なメモリがあるんだよ。」

桃瀬は懐から別のTNメモリを取り出した。

「そ、それは…!」

僕は目を見開いた。

それに印字されているもの。

C(サイクロン)と…。

「大道克己が嫌っていた風都の風の記憶。これほど刺激の強い記憶はないだろう。だが、このメモリだけは誰も使えなくてねぇ。」

桃瀬が僕を見て言った。

「それで、僕を…!?」

僕は恐怖を覚えた。あの男が僕にしようとしていることくらい想像がつく。しかし、鎖に繋がれている以上、為す術がなかった。

「君なら簡単にレベルアップさせられるだろう。心配するな、すぐに終わる。」

桃瀬はまたも不快な笑みを浮かべて近づいてきた。

 

サイクロン!

 

Cメモリを起動し、そのコネクターを僕の首筋に当てた。

その途端、僕の脳裏を様々な風の記憶が駆け巡った。

穏やかなそよ風の記憶もあれば、全てを破壊し続ける暴風の記憶。戦争による爆風や熱風の記憶、凍えるような吹雪の記憶。これが風の記憶。

いつも、Wドライバーを介して使用していたため、これ程の膨大な風の記憶を受け止めたことがなかった。

「うわああああああああ!!!!!」

僕は叫び声を上げた。

処理しきれない。このままでは、いつか脳が焼き切れる。僕は何とかして地球の本棚へ意識をリンクさせた。メモリの記憶がどんどん本棚へ流れていった。本棚は暴風によって次々と倒れていき、本は吹き飛ばされていった。

しかし、桃瀬の言った通り、それはすぐに止んだ。

「はは、ははははは!!さすが地球の本棚に選ばれし男!一度の起動でこうも簡単にレベルアップさせるとは!」

 

サイクロン!

 

桃瀬は再びメモリを起動させた。

「さぁ、感じたまえ。お前の嫌う風都の風だぁ!!」

桃瀬はCメモリをロイミュードに当てる。

その途端、ロイミュードの身体中が発光し始めた。先ほどから注入されていた記憶達がCメモリによって活性化されたのだろう。それぞれの光が一つに集まっていく。

これが何を意味しているのか、しかし、わかった所でどうすることも出来ない。

諦めかけていたとき、扉を突き破って突入してきた相棒の姿を捉えた。




ネオシェードと繋がる新たな敵、財団X。
そこに所属するオリジナルキャラを登場させました。

<桃瀬理>
財団X所属。W本編に登場した加頭順の直属の部下だった。加頭の元でガイアメモリの研究をし、そのノウハウから新たなガイアメモリ・タイプネクスト(TN)を開発した。ある目的から、ネオシェードに接触し、彼らにガイアメモリの提供をした。

本作における新型のガイアメモリについても以下のように設定しました。

<TNガイアメモリ>
T2ガイアメモリの発展型メモリ。T2を一般流通させることを目的として開発された。性能はT2と同等。さらにNメモリの特徴であったメモリのレベルアップ機能を付随したことで、性能を全て引き出せばT2以上の性能を発揮する。しかし、レベルアップ機能を使いこなすにはそれ相応の精神力が必要であり、一般人には使いこなせず、最悪メモリの負荷により使用者は暴走、果ては死亡してしまう。
コネクタ手術により通常時ならば誰でも使えるが、量産に向けたコストダウンやレベルアップ機能の付随により、T2よりも強度が落ちてしまい、仮面ライダーの攻撃によりメモリブレイクしてしまう。また、同等タイプのメモリを使ったドーパントならば、簡単に破壊出来てしまう。

エターナル復活の為にしようされたメモリは
G(ジーン:遺伝子)
ネヴァーとして生きる為に細胞活性化酵素が必要なことから。
S(ソード:刃)
エターナル(大道)の基本武器がコンバットナイフだから。※E(エッジ)の方がしっくりくるんですが、E(エターナル)が控えていたためボツ。
V(ヴァイオレンス:暴力)
傭兵として破壊の限りを尽くしたから。
M(メロディ:旋律)
生前、ハーモニカを嗜み、ミーナに形見として預けたから。
T(テラー:恐怖)
風都を恐怖の世界に陥れようとしたから。
W(ウェポン:兵器)
ネヴァーは生物兵器だから。
K(ナイト:騎士)
仮面"ライダー"
N(ネヴァー:決意)
ネヴァー。そのまんま。
C(サイクロン:風)
風都を嫌う記憶だから。

これらのメモリを用い、次回ヤツが復活します。

お楽しみに。

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