仮面ライダーW&ドライブ Eの復活/ライダー捜査線   作:ラズベアー

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第21話

「出たああああ!!オバケええええ!!」

大門が絶句していた。

「マジかよ!?」

剛もさすがに驚きを隠せないでいた。

「あぶねぇ!!」

俺は咄嗟に叫んだ。

ヤマアラシが、背中に生えた刺を俺達に向けて飛ばしてきたからだ。

幸い誰にも当たることはなかったが、このままじゃいつかは殺られるだろう。

「まさか、ネオシェードの生物兵器か!?」

朔田が言った。

「だとしても!やることは一つだ!」

 

アクセル!

 

そう言いながら、照井はガイアメモリを構えた。

「くっ、行くぜ、フィリップ!」

 

ジョーカー!

 

『皆、待つんだ!』

俺もガイアメモリを構えたが、フィリップがそれを止めた。

「どうした、フィリップ!」

『あいつは"ヤマアラシ"という妖怪。いや、魔化魍だ!』

フィリップが言った。

「魔化魍!?」

泊が聞き返した。

『魔化魍を倒すには、"清めの力"が必要だ!僕たちはその力を持っていない!』

俺達じゃ倒せないだと?

そんなやつ相手にどうすりゃいいんだ!?

 

グォオオオオオオオオオオオ!!!!

 

そうしている間にも、ヤマアラシはゆっくりだが、徐々に俺達に近づいている。

『照井君、一旦退避だ!』

インカムから一条の叫び声が聞こえてきた。

「総員退避!」

照井の指示に従い、警官達は先ほど出てきた森へ急いで戻った。しかし、大門は腰を抜かしたようでその場から動けないでいた。

「あ、ああ…。」

「不味い!」

加賀美がガタックゼクターを手に駆け始めたが、既に大門に向かって刺が飛ばされていた。

「…っ!」

 

キィン!

 

しかし、刺は大門に届くことはなかった。刺が何かに弾かれたようだった。

大門とヤマアラシの間に"何か"がいた。

緑色の身体の装飾や顔にある歌舞伎のような隈取は銀色に染められた姿。手には、まるでギターのような大きな剣を持っていた。そして頭頂部には、太く鋭い角が生えていた。その姿はまるで…。

「鬼!?」

俺は思わず呟いた。

緑色の鬼はヤマアラシに向かって果敢に立ち向かった。

一筋、また一筋と鬼の持つ大剣がヤマアラシの身体を刻みつけた。

そして最後の一振りにより、ヤマアラシは大きな隙をみせた。緑色の鬼はその隙を見逃さず、大剣をヤマアラシに突き立てた。

「音撃斬!雷電激震!!」

 

ギュイィィィィィィン!!

ジャンジャンジャンジャン!!

 

鬼は突き立てた大剣をギターのように弾き始めた。

 

グ、グォオオオ…。

 

ヤマアラシは苦しむ声を上げた。

「何してんだ?」

俺は呟くように言った。

『あれが"清めの力"…。』

フィリップも興味を持っていたようだ。

「ハァ!!」

 

ジャーーーン!

 

ドォォォォォォォォン!!!!

 

鬼が演奏し終えると、ヤマアラシは爆散した。

『あれが、清めの力を携えし鬼、いや、音撃戦士…!』

 

「大丈夫すか?凛子ちゃん!」

緑色の鬼が大門に向かって言った。

「その声…、戸田山先輩!?」

大門の問に答えるかのように、顔を人の姿に変えた。

「あんたも、仮面ライダー…、なのか?」

俺は緑色の鬼・戸田山に聞いた。

「え、かめんらいだー?何だか分かんないっすけど、俺は猛士関東支部の轟鬼(トドロキ)と言います。鬼っす!」

やっぱり鬼なのか…。

戸田山改めトドロキが答えた。

「大門、彼とは知り合いなのか?」

照井が大門に尋ねた。

「はい…。警察学校時代の先輩なんです。ただ、警察になってしばらくして辞めたと聞いていたんですけど…。」

「いやぁ、こんな所で凛子ちゃんと再開するとは…ははっ。」

トドロキは笑いながら言った。

「でも、皆さん見たところ警察官のようですけど、何でこんな所に?」

「実は…。」

照井がトドロキに事の経緯を話したところだった。

 

ザバァァァァァン!!!!

 

川の中から巨大なカニのような化け物が現れた。

「また化け物か!?」

俺は叫ぶように言った。恐らくこいつも魔化魍とかいうやつだろう。

「化けガニまで!?ここの所、奥多摩川で魔化魍の活動が妙に活発になっていたのは、そのネオシェードとかいうやつらの仕業っすね!」

トドロキが武器を構えて言った。

「多分な。俺達を近づけないようにするために、けしかけたんだろう!」

俺はトドロキに答えながら構えた。

「事情はわかったっす!魔化魍は俺に任せて下さい!皆さんは、早くネオシェードの元へ!」

「わかった!」

トドロキは素顔を再び鬼の姿に変え、轟鬼となって化けガニに立ち向かって行った。

俺達は、この場を轟鬼に任せ、さらに森の奥へ進んだ。

 

森を抜けると開けた場所へ出た。

「やはり来ましたねぇ、警察の皆さん!」

「須藤!」

泊が叫んだ。

須藤だけではなく、岡村、忍野、さらにネオシェードの構成員が複数いた。

「いよいよ追い詰めたぞ、ネオシェード!」

俺は言った。

「さすがは探偵の旦那だ!警視庁を潰して俺達の勝ちだと思っていたが、まさかまだ奥の手があったなんてな。」

忍野は言った。

「だが、ここで貴様らも終わりだ!」

岡村は未だに負けを認めてはいなかった。

「終わりなのは、お前たちの方だ!国際警察の権限において、お前たちを全員逮捕する!」

朔田が言った。

「ハハハっ!出来るものならやってみなさい!」

須藤が不敵の笑みを浮かべながら言った。

「桃瀬と徳川はこの奥だな!?」

照井が言った。

「ふん。その通りだ。だが、お前たちを通すつもりはない!」

 

リキッド!

 

アサシン!

 

クラブ!

 

岡村の言葉を合図に忍野、須藤、その他ネオシェード構成員達は自身の姿を変えた。

「俺達も行くぜ!」

「はい!」

「待て、左、泊。」

俺と泊は変身の構えを取ったが、照井に止められた。

「何でだ、照井!」

「ここは俺達に任せろ。左は先に行け!」

照井が言った。

「ボスはあの先なんだろ?だったら進兄さん達は清山を!」

「照井警視、剛…!」

泊が言った。

「…生き残れよ!」

俺は皆に向かって言った。

「お前もな!」

照井の言葉を聞き、俺と泊は走り出した。

「行かせるか!うっ!」

リキッドが立ちはだかったが、上空からの射撃により怯んだ。

車体の両サイドにジェットエンジンを装着したトライドロンだ。俺達の目の前で着陸すると中からフィリップが降りてきた。

「ナイスフライトだ、相棒!」

「フッ、これくらい飛行機の全てを閲覧した僕には、容易いことさ。行こう、翔太郎!!」

俺とフィリップ、泊は清山達が待つ場所へ向かった。

 

洞窟の様な入口を抜けると、再び広い空間に出た。採掘場の様でいつ崩れてもおかしくはない状態だった。

「徳川ぁ!桃瀬ぇ!出てこい!!」

俺は闇の中に向かって叫んだ。

「お前に、もう逃げ場はない!大人しく降伏しろ!」

泊も辺りを警戒しながら言った。

『皆、気を付けるんだ!』

泊の腰につけられたベルトさんが言った。

「…っ!?来る!」

フィリップが言った。

 

ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…。

 

二人分の足音が闇の中から聞こえてきた。

暗闇に溶け込む程黒いスーツ姿の清山と暗闇からも分かるくらい真っ白な装衣の桃瀬が現れた。

「中々やるじゃないか、田舎探偵。」

「徳川…!」

俺は言った。

「ここまで計画を狂わせてきたのはお前たちが初めてだ。非常に不愉快だ!」

「桃瀬!」

泊も言った。

「だが、せっかくシャバの空気が吸えるようところに戻って来たんだ。シェードの計画を実行するまで捕まる訳にはいかんな!」

清山は言った。

「なぜそこまでして計画に拘るんだ!何がお前達を駆り立てる!?」

フィリップが言った。

「…冥土の土産に教えてやる。」

清山が言った。

「お前たちも既に知っているだろうが、ネオシェード、いやシェードは元々対テロ組織だった。」

『非人道的な人体実験をしておいて何を!』

ベルトさんが叫ぶように言った。

「そうまでしなければ、"やつら"を潰すことが出来ないからだ!」

「やつら?対テロ組織と言っていたが、何と戦うつもりだったんだ!」

俺は言った。

「俺達が潰すべき相手、それは…。」

 

 

「秘密結社・SHOCKERだ!」

 

 

清山の声が、洞窟内に響き渡った。

「何、だって…!?」

俺は予期せぬ返答に戸惑った。SHOCKERと言えば、これまで何度もライダー達の前に立ち塞がった巨悪の根源。大ショッカー、スーパーショッカー、スペースショッカーとその都度名を変えてきた組織だ。

それを潰すことが、シェードの目的だというのか?

「ショッカーを潰すことが、シェード結成の理由!?」

泊も驚きを隠せないでいた。

「そうだ。やつらの科学技術力は異常だ。その力を持って、世界征服を企む位だからな。」

「けど…。ショッカーは既に様々なライダー達によって倒されているはずだ!」

フィリップが言った。

「フッ、甘いな。」

清山は鼻で笑った。

「光があればそこに闇が生まれるのと同じ様に、ライダーがいる限り、SHOCKERは何度でも甦る。」

「だから、シェードを結成した!SHOCKER、ひいては仮面ライダーを潰す為に!その為ならば、俺は悪魔にでもその魂を売るのさ!」

そう言うと清山は怪人の姿へ変わった。丸でバッタを擬人化したかのような姿だ。しかし、すぐに元の姿に戻った。

「っ!それで人間を捨てネイティブにまで成ったのか!」

俺は言った。

「その通りだ!」

清山が答えた。

「SHOCKERの殲滅…。それは私の悲願でもあった。」

今度は桃瀬が言った。

「何!?」

泊が言った。

「我々、財団の栄華の為にはSHOCKERの影が邪魔でしかなかった。やつらを潰す為に、我々は数多くの技術を取り入れようとしたのだ!」

今まで俺達の前に現れたのはそれが理由なのか。そして、そんな理由の為に風都を、関係のない人々を泣かせたというのか。俺は心底腹が立ってしょうがなかった。

「全てが繋がった。お互いの利害一致によって、財団とシェードが手を組んだ。その結果!罪のない人々を危険な目に遭わせた!そんなこと、許されることではない!!」

泊も怒りに任せて言っていた。

「何故だ?SHOCKERは紛れもない社会悪だぞ!?その撲滅の為に、人をやめてまでシェードを結成したんだ。それが何故許されない!?」

清山が言った。

「当たり前だ!ショッカーを潰すことは理解できるが、やり方が間違ってる!それに、ネオシェードとなった今、お前たちがしていることは、ショッカーと何ら変わりがねぇ!」

俺は言った。

「そりゃあそうだろう!シェードの理想が認められないならば、それを否定した現日本政府を潰すしかない!そして新たな社会を作り、改めてSHOCKERを潰すのだ!」

桃瀬が言った。

「そんなこと、僕たちが許さない!シェードもショッカーも、僕たち仮面ライダーが倒す!」

フィリップが言った。

「その前に、倒されるのは貴様らだ!」

清山の言葉を待っていたかの様に、闇の中から大道が俺達目掛けて飛び込んで来た。

咄嗟のことだったが、俺達は大道の攻撃何とかかわし構えた。

「大道…!」

大道は生気のない眼差しを俺達に向けていた。

「行くぜ、フィリップ!泊!」

「ああ!」

『これで最後にしよう、進ノ介!』

「ベルトさん!最後までひとっ走り付き合えよ!」

 

サイクロン!

ジョーカー!

 

俺達はガイアメモリを構えた。

同じく、泊もシフトカーをブレスレットに装填した。

 

シグナルバイク・ライダー!

 

大道もまた、マッハドライバーにシグナルバイクを装填した。

 

「「変身!!」」

 

サイクロン!ジョーカー!!

 

「変身!」

 

ドラーイブ!

ターイプ・スピード!!

 

「変身。」

 

エターナル!

 

お互い仮面ライダーの姿へ変わった。

 

「これが、最後の戦いだぁ!」

清山が叫んだ。

 

『「さぁ、お前の罪を数えろ!!」』

 

「行こう!ベルトさん」

『OK!START YOR ENGINE!!』

 

「さぁ、地獄を楽しみな…。」

 




魔化魍であるヤマアラシと化けガニ。彼らは、ネオシェードが奥多摩を隠れ蓑として使い始め、且つネオシェードが外敵を近づけさせないように刺激したため、暴れていると設定しました。
そんな魔化魍を倒すため、最後の隠れ警官ライダー、仮面ライダー轟鬼の登場です。猛士に所属する前は警官だったという設定から登場させました。
大門凛子との絡みは、中の二人がウィザードで共演していたことから作りました。
まさか轟鬼さんがジオウに出るとは…。笑

後半、いよいよネオシェードとの決戦が始まる訳ですが、ついに徳川清山のシェード計画、桃瀬理の野望が明らかになりました。
SHOCKERの打倒。シェードが対テロ組織でありながら、改造人間を生み出さなければならない理由、財団Xが平成二期ライダーの敵組織の技術を集めていた理由、それらの理由付けとしてライダー達の永遠の敵・ショッカーの存在を利用してみました。シェードはともかく、財団Xは平成ライダー達にとってショッカーみたいな存在ですしね。

ただし、清山、桃瀬が思っている"SHOCKER"と翔太郎達が思っている"ショッカー"は実は別物です。
何故そうしたのか、それはまた後程…。
ショッカーが"SHOCKER"と表記されてる作品、それが何かを考えていただければと思います。

そして最後に再び対立した翔太郎達と大道克己。
彼らの戦いの行く末は…。

気になる所ですが、次回、表で戦っている警官ライダー達のお話です!
お楽しみに!

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