仮面ライダーW&ドライブ Eの復活/ライダー捜査線 作:ラズベアー
「すまねぇ、ジンさん。目の前でメモリ所有者を助けられなかった。」
俺は風都警察署の死体安直所でジンさん、フィリップに事の一件を伝えた。
「翔太郎のジョーカーを上回るメモリ…。少々厄介な相手だね。」
フィリップも流石に真剣な顔をしていた。
「翔太郎の言う、ドーパントの風貌、戦闘スタイル…。推測だけど、使用しているメモリは"暗殺者"の記憶を擁するメモリ、A(アサシン)メモリの可能性が高い。」
暗殺者か…。目撃率の低さ、身のこなし、的確な殺害…。なるほど、合点が行く。
「…で、そっちは何か掴めたか?」
俺はフィリップに尋ねた。
「あぁ。興味深い事がわかったよ。」
さすが相棒だ。
「それで?」
「まず、被害者が所持していたメモリ。それは、"吹雪"の記憶を持つB(ブリザード)、"羽根"の記憶を持つF(フェザー)、"昨日"の記憶を持つY(イエスタデイ)、そして、"暴力"の記憶を持つV(ヴァイオレンス)だ。」
フィリップは続けた。
「その内、破壊されたのがB、F、Y。そして行方不明なのが…。」
「…Vか。」
俺が言うとフィリップは頷いた。
「さらに、翔太郎が戦ったドーパント。仮にアサシンドーパントとしよう。やつが持っていったメモリが"刃"の記憶を持つSメモリ。やはり、アサシンドーパントの狙いは僕たちの模倣ではなく、特定のメモリの収集と見て間違い無いだろうね。」
だが、何のために…?
その時、俺はアサシンドーパントが去り際に言った一言を思い出した。
ー姿を見られた所で我らの計画を止められる訳がないか
「フィリップ、ジンさん。この事件、裏で何かが動いてるかもしれねぇ。」
「どういうことだ、翔太郎?」
ジンさんが言った。
「アサシンドーパントを退いた時、"我らの計画を止められる訳がない"って言っていたんだ。」
「我ら…。一人称複数形で言ったというのなら、複数での犯行ということかい?」
フィリップが確認してきた。
俺は頷いたが、ジンさんが続けて言った。
「けど、お前たちを欺くための嘘の可能性もあるんじゃないのか?」
「あぁ。だが、その可能性はかなり低いと俺は考えてる。」
俺は答えた。
「その根拠は?」
フィリップが尋ねた。
「殺しの腕は確かだ。やつは強い。それは俺のその身を持って感じた。だが、やつはメモリの力を過信しているのか、不測の事態には弱いと見たんだ。戦いの中で、俺を倒せないことで焦りを見せた。最後まで焦りを見せずに詰められたら、正直危なかったと思う。その焦りで助かった所もあるからな。やつが"我ら"なんて言ったのは、無意識に口から出たって所だ。」
俺が言い終えた所で、フィリップが鼻で笑った。
「なるほどねぇ。腕は一流だけど頭は二流、といった所か。アサシンが聞いて呆れるねぇ。」
全くだ。戦闘が専門ではない探偵でさえ、不測の事態に備え、ありとあらゆる可能性を踏まえて行動しなければならない。
まぁ、強いて言えば、やつにとって相手が仮面ライダーという所がイレギュラー中のイレギュラーだったのかも知れないが。
「あぁ、それと、翔太郎。もう一つ被害者の共通点がわかったんだ。」
ジンさんが言った。
「共通点?」
「被害者の身元が一切わからないんだ。」
「何だって!?」
俺は思わず声にしてしまった。
「被害者の顔は潰されている訳じゃないから、住民登録も漁ってみたんだが、全く情報がないんだ。」
言われて見れば…。
俺は風都の事なら何でも把握していると自負している。風都民についても、顔を見れば誰だか大体はわかる。しかし、最初に写真で見た顔も、アサシンドーパントに殺された被害者の顔も全く見覚えがなかった。
「被害者は、風都民じゃないのか?」
俺はジンさんに尋ねた。
「恐らくな…。まぁ、あくまで現時点で、だがな。」
所々わかってきたが、結局進展はなかったということか…。
「現時点でわかっていることは、特定のメモリを狙った犯行であること、被害者は皆身元が一切不明であること、そして、複数犯の可能性があること、か。」
事務所に戻り、俺とフィリップは今回の件を整理した。
「もし…。何らかの組織が関与しているとしたら、君なら何を想像する?」
フィリップが尋ねた。
ガイアメモリ。当初それを流通させていたのは、今は亡きフィリップの親父で園咲琉兵衛率いる園咲家・ミュージアムだ。彼らの屋敷の地下洞窟にあるガイアゲートと呼ばれる所に、全ての事象を記憶した地球(ほし)の本棚が存在し、そこで得た情報をガイアメモリに封じ込めることで製造される。風都で出回っているガイアメモリはそういった経緯で開発され、ミュージアムの人間の手によって広まったのだ。
しかし、改良型のT2メモリはミュージアムの手から離れ、別の組織が開発に携わっていた。それが…。
「…財団Xか。」
俺は答えた。
死の商人。目的は不明だが、あらゆる組織の技術を取り入れ、独自に開発をしているらしい。俺が知っている限りでは、ガイアメモリの他に、オーメダルやアストロスイッチ。噂でだが、ガシャットとやらやカイザーシステムとやらにも手を出しているらしい。
「けど、財団が絡んでるなんてことが有り得るのか?」
俺はフィリップに問い返した。
「もちろん、あくまでも可能性の一つさ。ただ、ガイアメモリの製造には地球の本棚が必要さ。その存在を知っているのはミュージアムや財団X以外に有り得ない。」
フィリップが言った。
フィリップの言うことも最もだ。
しかし、財団Xが絡んでいるなら疑問が生まれる。
「仮に、財団とアサシンドーパントがつるんでいるなら、その目的は何なんだ?やつらならメモリの製造できるんだから、直接メモリを渡せばいいハズだ。」
「確かに…。とにかく、今わかっていることで検索をかけてみるよ。」
フィリップはそう言うと、一階のガレージに降りて行った。
フィリップは地球の本棚にアクセスすることが出来る。それは幼少期に、ガイアゲートに転落してしまい命を落としたことで、地球の本棚の力でデータ人間として蘇ったからだ。今は、肉体を持った人として生活しているが、名残りから今も地球の本棚にアクセスできるということだ。
ただ、難点としてはアクセス中は地球の本棚と意識をリンクしているため、外部からの干渉を一切受け付けない。つまり、Wとして戦う必要があってもそれが出来ないということだ。
検索中に何も起きなければいいが…。
その時、事務所の扉を弾きOL二人組が入ってきた。
「クイーンにエリザベス!?どうしたんだ、そんなに慌てて!?」
「大変だよ、翔ちゃん!!」
「街に怪物が!!」
それと同時に、偵察に行かせていたバットカメラが事務所の窓を叩いていた。
「ナイス、二人とも!!」
そう言うと俺は急いでハードボイルダーに跨がり現場まで飛ばして行った。
フィリップはおそらく検索中だろう。正直アテにならない。
現場に着くと、俺は驚くべき光景を目の当たりにした。
街で暴れていたであろうドーパントを、別の黒い怪人が始末をした所だったのだ。
「くそっ、またお前か!アサシンドーパント!!」
俺はロストドライバーを装着し、すかさずメモリを装填、ジョーカーとなって、黒い怪人に殴り掛かった。
ところが、俺の拳はそいつの顔に届かなかった。片手で受け止められてしまったのだ。
「何!?」
次の瞬間、腹に強烈な打撃を受け蹴り飛ばされてしまった。
態勢を整え、黒い怪人を見た。
俺の眼には信じられないものが映っていた。
「お…、お前は!!」
それは怪人ではなかった。全身を黒い装甲が包んでおり、手には紫色の炎のような模様があった。複眼の様だが眉間が繋がった赤い単眼と、アルファベットのEを横にしたアンテナを持っていた。
まさか、そんなはずは…。
あの時、俺は確かにそいつを倒した。
だが、その姿は間違いない。
やつは…。
「仮面ライダー、エターナル。」
かつて風都の街を混沌に陥れた、風都史上最凶最悪のテロリスト・大道克己。そして彼が変身した仮面ライダーエターナル。俺はそのライダーの名を呟いていた。
しかし、俺の知っているエターナルは白い装甲、青い炎の模様、黄色い単眼だ。
それに、腰に着けている物はロストドライバーとは別の物で、よく見ると両腕と両脚にはタイヤのような黒い装飾がなされていた。
それらの差違を差し引いても、そこにいたのは仮面ライダーエターナルだった。
「バカな…。お前は、お前は俺達が倒したハズだ!」
俺は思わず叫んでいた。
黒いエターナルは何も答えなかった。その代わりに攻撃を仕掛けてきたのだ。
俺は応戦するが、自身の気持ちが整理されていなかった。その為、防戦一方となってしまった。
一体どういうことだ?
生き返ったというのか?
それとも死んでいなかった?
そもそも別人なのか?
俺の頭の中で様々な思考が巡っていた。
だが、そうこうしている間にも黒いエターナルの熾烈な攻撃が続く。
「うぉおおおあああ!!」
俺は叫んだ。
考えてもしょうがねぇ。
そう思ったと同時に自分を鼓舞するように叫んだ。
そして、攻勢に出た。
思わぬ攻撃を受け、黒いエターナルは一瞬怯んだ。だがすぐに俺の攻撃に対応してくる。
それが俺の中で別の違和感を生んだ。
ふと、黒いエターナルの動きが止まった。止まったというより、丸で機械が動作不良を起こしたような止まり方だった。
俺はそれを見逃さず、拳を打ち込もうとしたが、かわされてしまった。
態勢を整え、俺は黒いエターナルをマスク越しで睨んだ。
黒いエターナルも同じく様子を伺うようにしていたが、
ズゥーット・エターナル!
黒いエターナルはベルトのスイッチを数回叩き、電子音がなるとその場から消えた。消えたというより超高速でその場から去ったというのが正しいか。
俺は呆然としていた。
ふと見下ろすと、ドーパントは人の姿に戻っており、事切れていた。
その場にはガイアメモリは無かった。超高速で立ち去ると同時に持ち去ったのだろう。
黒いエターナルもメモリを収集しているのか。ということは、アサシンドーパントの仲間なのか。
俺は再び果てない思考に捕らわれてしまった。
だが、銃声と共にすぐに意識を呼び戻された。
咄嗟のことだったが銃弾は足元で砕けた。俺は銃声の元の方を見た。
そこには白いライダースジャケットを身に纏った青年が銃器のようなものをこちらに向けていた。
「誰だ?」
俺は青年に尋ねた。しかし、青年は答えずこちらを睨んだままだった。
「見つけたぜ。黒い仮面ライダー!」
そう言うと青年はロストドライバーやWドライバーに似たものを手にしていた。
「メモリドライバーか!?」
青年はそれを腰に装着すると、ガイアメモリ程の大きさの白いバイクを模したものをベルトに装填した。
シグナルバイク・ライダー!
「レッツ!変身!!」
青年が叫ぶと彼の身体を白い装甲が包み込んでいった。そして、バイクのヘルメットの用なマスクと右肩にタイヤのような装飾も装着された。
マッハ!!
「追跡!撲滅!いずれもマッハ!!」
「仮面ライダぁ~…、マッッハー!!!」
青年は仮面ライダーの姿に変わった。
「仮面ライダーだと!?」
俺は驚きを隠せなかった。
本作登場の敵
<アサシン・ドーパント>
"暗殺者の記憶"を擁するA(アサシン)メモリを使って変身したドーパント。現時点での変身者は不明。
能力:自身の気配を消す、身軽な身体能力
<仮面ライダーダークエターナル>
作中で黒いエターナルと呼ばれる仮面ライダー。
黒い装甲、紫色の炎の模様、赤い単眼、メモリスロットを持つベストやエターナルローブを装備していない、両手脚にタイヤのような装飾がある(ドライブ・タイプフォーミュラーのような配置)など、オリジナルのエターナルとの差違がある。
また使用しているベルトも、ロストドライバーではなくマッハドライバー炎であり、シグナルバイクはシグナルエターナルを使用している。
現時点での変身者は不明。
終盤に登場した仮面ライダーマッハ。その目的とは…。
次回をお楽しみください。