仮面ライダーW&ドライブ Eの復活/ライダー捜査線   作:ラズベアー

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第二章 ネオシェード
第5話


後に残ったのは、俺達事務所の三人、照井竜、そして警視庁の青年だった。

「突然ですまなかったな、所長。」

照井は妻である亜樹子に言った。

「竜くぅん。いつ帰ってきたの?」

「つい先ほどだ。」

「あ、照井警視。噂の奥様ですね!」

警視庁の青年が言ったが、照井は睨み返すだけだった。青年は察したようで、小声ですみませんとだけ呟いた。

「照井、説明してくれ。何が起きてんだ !?」

俺は照井に尋ねた。

「俺に質問するな。」

照井の口癖が炸裂した。

「言ってる場合か!こっちはこっちで大変なことになってんだ!!」

俺は引き下がらず、今まで起こっていることを照井に伝えた。それを聞き、照井も驚きを隠せなかったようで、俺の問いについて答える気になったようだ。

「そんなことが…。いいだろう、まずは彼を紹介しよう。」

照井は青年を指して言った。

「彼は警視庁捜査一課所属の刑事で特殊状況下事件捜査課巡査長の…。」

「泊進ノ介です。」

照井の後に続き、泊進ノ介が挨拶をした。

見た目は俺よりも幾分か若い。フィリップよりは少し上くらいか。だが年齢に反してそのキャリアだとしたら、彼は能力の高い警察官なのだろう。

「警視庁の人間が、何故風都に?」

「実は、都内で暗躍しているあるテロリスト集団の捜索をしていまして、それを追って風都にやって来た次第です。」

泊が答えた。

「テロリスト?」

「その名は、"ネオシェード"。」

ネオシェード。聞いたことがある。都内を中心に暗躍していたテロリスト集団だった。

「たしか、ネオシェードは数年前に、当時リーダーだった岡村敬助が逮捕されたことで壊滅したはず。」

フィリップは泊に尋ねた。

「ああ。泊巡査長が逮捕した。それで終わったはずだったんだが、最近になり残党が活動を開始したんだ。」

泊に変わって照井が答えた。

「ネオシェードの活動を調査していく内に、風都で出回っているガイアメモリが絡んでいることがわかったんです。」

続けて泊が答えた。

「ガイアメモリ関連の事件となれば、我々、風都署超常犯罪捜査課が動かずにはいられない。それで俺は東京へ出向き合同捜査という形をとったという訳だ。」

「それで竜くんは東京に…。」

亜樹子が言った。

「そして、ネオシェードの元構成員が風都に潜んでいると聞き、我々公安も同行してきたということです。」

泊が説明した所で、俺はあることに気づいて言った。

「ちょっと待て、さっき連れていった男。あいつも元ネオシェード構成員だったって言ったな!?」

「そうですが?」

泊は答えた。

俺は件の被害者の顔写真を泊に見せた。

「こいつらに見覚えがないか?」

「この人達は…。」

泊は一度息を飲んだが、続けて言った。

「すべて、元ネオシェードの構成員だ…!」

「だとするなら…、メモリ使用者は全て元ネオシェード構成員。つまり、あのアサシンも元ネオシェード構成員の可能性が高い。」

フィリップは今までの事象を整理しながら言った。

「だが、まだ引っ掛かりがある。」

照井が口を挟んだ。

「全員が"元"構成員というのはどういうことなんだ?残党とはまた別なのか?」

「はい…。後でわかったことですが、彼らはネオシェード壊滅前に組織から離脱した者達です。離脱した後は身分を伏せ一般社会に溶け込んでいたはずですが…。」

泊は答えたが、彼らがガイアメモリを所有していたことについては理解出来ていない様子だった。

「てことは、ネオシェード残党とは別で元ネオシェード構成員もガイアメモリを使って何か企んでいるってことか。」

俺は今の話を整理して言った。。

「おそらくは…。ですが、彼らがガイアメモリを何故所有しているのか…。」

「考えられるのは、財団Xが彼らに接触したということさ。」

フィリップが答えた。

「財団X?」

俺とフィリップ、そして照井は泊に財団Xのことについて簡単に説明した。

しかし、新たに謎が生まれるばかりだ。

ネオシェードは何を企んでこの街に現れたのか。

財団Xは何故元ネオシェード構成員にメモリを与えたのか。

そして、そのメモリを狙うアサシンドーパントと黒いエターナル。

彼らの目的はいったい…。

やがて、照井が口を開いた。

「アサシンと黒いエターナル。やつらの目的が何であれ、新型ガイアメモリの所有者が元ネオシェード構成員ならば、先にこちらで押さえてメモリを押収すべきだろう。」

俺も照井の意見に同意だった。

「泊巡査長!今すぐに警視庁に連絡を!合同捜査本部を風都署に移転させる!」

「はい!」

泊は警視庁と連絡を取るために事務所を出ていった。

「左、フィリップ。お前達にも協力を願いたい。」

「へっ!こっちが受けた依頼を横取りされたような気分だが、風都をまたあんな惨劇に遭わせる訳にはいかねぇ!」

俺は皮肉を込めて言ったが、この街を守るためにも照井の協力を引き受けることにした。

 

翌日。

風都警察署大会議室は「対ネオシェード合同捜査本部」として機能を始めた。

照井とジンさんの計らいにより、俺とフィリップも本部会議に同席することになった。

正直な所、俺はあまり警察を好んじゃいない。警察は規律を重んじる組織だ。組織力が強いからこそ、平和が守られている訳だが、規律に則った組織である以上、それに反した捜査は行うことが出来ない。言ってしまえば、"型にはまったことしか出来ない"ということだ。片や探偵業はその縛りがない。探偵個人の力量が試されるため、警察程の組織力はないが、自由に多面的に捜査が行える。俺の性分からすれば探偵の方が都合がいい。故に、事件の早期解決の為とはいえ、こんな所にいると息が詰まる。

 

定刻になると、照井を先頭に二人の警察官が会議室に入ってきた。それと同時に会議室の警官が一斉に席から立ち一礼した。俺達も一テンポ遅れてそれにならった。

全員が席に座ると、照井が話を始めた。

「この度は、第一級犯罪組織ネオシェード壊滅のために皆様のお力をお借りできて光栄であります。風都署署長に代わり、御礼申し上げます。」

「今回の件において、ネオシェードが我が街で出回っている忌まわしき凶器、ガイアメモリと関係していることが判明し、合同捜査本部をここ風都署に移転した次第であります。」

「また、ネオシェードがガイアメモリを使用しているということは、それによって産み出される怪人・ドーパントも脅威となり得ます。そこで本捜査にあたり、それに酷似した存在と対抗してきた皆様のお力をお借りしたいと考えている所存であります。」

ドーパントに酷似した存在と対抗してきた警察官…?

俺はふと辺りを見渡した。確かにただの警察官にしてはかなりの数の修羅場を越えてきたような雰囲気を漂わせている人も見受けられる。

 

「本捜査の現場主任として、かつて東京を震撼させた未確認生命体の駆逐に尽力された、長野県警警備部の一条薫氏を任命したいと思います。」

照井の言葉で会議室内にざわついた。

照井の紹介の後、ちょうど反対側の席に座っていた男性が立ち上がり、一礼した。

「一条薫?」

「知らないんですか!?一条薫といえば、未確認生命体第4号と共に、その他の未確認生命体を駆逐した伝説の刑事ですよ!?」

小声だが、席の近くにいた泊が興奮気味で俺に言った。

「長野県警警備部所属の一条です。かつての東京のように、ここ風の街風都を凶悪犯の巣窟にすることは、我々警察として決して許される事ではありません。とは言え、相手は人成らざる者であることに違いはありません。我々の被害が最小限になるよう、私も不手際のないよう尽力を尽くします。」

一条は一度一呼吸し、続けて言った。

「しかしながら、この風都には第4号…、失礼。仮面ライダーという脅威に対抗し得る戦士がいます。かくいう風都署の照井警視もその一人です。東京にて未確認生命体を駆逐できたのも、同じく未確認生命体である第4号、今で言う仮面ライダーの協力があって成し得たことであります。私の他にも、同様に仮面ライダーの協力を得て、様々な脅威と立ち向かってきた方もおられるでしょう。我々も仮面ライダーと協力し、全面的にバックアップしていくつもりでおります。どうか皆様のお力をお借りしたい。よろしくお願いいたします。」

一条は再び一礼すると席に座った。

 

再び照井が話を始めた。

「そして本捜査の最高責任者として、警視庁加賀美陸警視総監を任命させていただきます。」

その言葉を合図に中央の席に座っていた老齢の男性が立ち上がった。

「警視総監の加賀美です。諸君らは、蜜蜂の真の強さを知っているかな…?」

蜜蜂?突然何を言い出すんだ、あのじいさん。

同じく会議室内がどよめいたが、加賀美警視総監は続けて言った。

「蜜蜂は花から花へその蜜を求め飛び交う。途中で外敵に襲われればやむを得ずその針を用いて戦う。そして、強大な敵と対峙する際は集団で戦うのである。警察官である諸君らも同じだ。事件から事件へ、その真相を求め足を進める。犯人から攻撃されれば手にした拳銃を撃つだろう。しかし、今回の相手は諸君らよりももっと獰猛な存在である。一人一人では太刀打ち出来ないかもしれない。だからこそ、我々は協力して脅威に立ち向かわねばならない。諸君らの健闘に期待する…。」

「なるほど…。」

隣でフィリップが呟いた。

いや、さっぱり意味がわからなかったんだが…。

「なお、本捜査にあたり、この風都の情勢を把握している鳴海探偵事務所の私立探偵、左翔太郎とフィリップにも捜査の依頼をしております。本来ならば、部外者である彼らを捜査に参加させることは異例ではあります。しかし、彼らの力量は風都署職員全員が納得するものであります。事件の早期解決のためにも皆様にご承知して頂きたい。」

突然の照井からの紹介で、 俺は面を喰らった。

「よ、よよよろしく。」

一度立って挨拶をしたが、隣のフィリップは涼しげな様子で会釈だけで済ました。

座ってから照井を観ると、ニヤついてやがった。あの野郎…。

「本捜査の最終目的はネオシェードの壊滅。しかし、ガイアメモリを凶器として扱っています。よって、まずはネオシェード構成員からガイアメモリを押収すること。これを第一目標とします。」

照井が言ったあと、再び一条が言葉を続けた。

「捜査を二班に分けて行います。第一班を一条班。第二班を氷川班とします。配置は各々で確認してください。各員の健闘に期待します!」

「解散!!」

照井の合図を受け、会議は終了した。

 




今回は戦闘シーン無しですm(__)m

本作のもう一人の主人公・泊進ノ介の登場です。
彼が風都に現れた理由。
それは、テロ組織ネオシェードが暗躍し始めたからと設定しました。

改めてネオシェードの概要を説明します。
<ネオシェード>
仮面ライダードライブ本編に登場した国家転覆を狙うテロリスト集団。
岡村敬介をリーダーとし、ロイミュードと結託し爆破テロ等を引き起こしていた。
進ノ介がネオシェードを追う中でグローバルフリーズに遭い、誤って相棒を負傷させてしまったことがあり、そのことから彼に取って因縁深い組織とも言える。
ドライブ本編にて、岡村敬介が逮捕されたことで組織は壊滅した。はずだったが…。

本作では、ネオシェードを主な敵対組織として扱っていきますが、その理由はまた後程。


本作を執筆する上で、一番やりたかったこと。それは探偵ライダーと警官ライダーが力を合わせて難事件に挑むというストーリーです。
そして、それをやるからにはやってみたかったこと。
それが、各ライダー作品でライダー達に協力してきた警察官達の登場です。
※タグにある警察とはそういうことです。笑

その第一号が一条薫です。
本作では未確認生命体を駆逐した伝説の警察官として登場しました。そのキャリアから今後も活躍していく予定です。
本作の警視総監として加々美陸を設定しました。ということは…?
最後に出てきた"氷川"班とは…?

今後、まだまだライダーに縁のある警官達も登場していきます。
次回もお楽しみに!!

<登場警察官>
一条薫(仮面ライダークウガ)
加々美陸(仮面ライダーカブト)

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