仮面ライダーW&ドライブ Eの復活/ライダー捜査線   作:ラズベアー

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第6話

「あ゙ぁ~…。息の詰まる会議だったぜ。」

俺は珍しく締めたネクタイを緩めながら言った。

「そうかい?警察との合同捜査なんて、滅多にあることでもないじゃないか。それにドーパントと対等に渡り合えそうな警察官達…。何だかゾクゾクするねぇ。」

フィリップが言った。

確かに、ドーパントに酷似した存在と対峙してきた警察官というのは興味がない訳ではなかった。

すると、会議室にまだ残っていた警官の話し声が俺達に聞こえてきた。

「私立探偵を捜査に参加させるって何を考えてんだかな。」

「全くだ。探偵なんて、胡散臭い連中に何ができるって言うんだか…。」

「個人でできることなんて、たかが知れてるな。」

聞き捨てならなかった。

「おい!あんたら…。」

「探偵をバカにはできませんよ!!」

俺が叫ぼうとした所で、別の警官が声をあげた。

「探偵は確かに個人でしか動けない。だからこそ、我々のように規律に縛られない自由な捜査が可能です。探偵でしか出来ないこと、探偵にしか気づかないこともあります!風都署職員も認めているのなら、我々も見習うべきだとは思いませんか?」

警官が話すと、先ほどの警官達は黙り、そのまま席を立って行った。

「…失礼しました。左さん。」

警官が改めて挨拶をしてきた。

「お…おお。あんたのお陰で少し気が晴れたぜ。」

「いえ…。私の恩師も探偵業をやっているもので、つい…。」

警官は申し訳なさそうに言った。

「申し遅れました。警視庁の沢村と申します。どうやら同じ班ではなさそうですね。お互い、捜査に全力を尽くしましょう!」

沢村は俺達に一礼すると、その場を後にした。

 

「左、こっちだ!」

廊下から照井の声が聞こえた。俺達は照井に案内された部屋に入ると、既に十数名程の警官が活動を始めていた。そして、その場には一条の姿もあった。

「君が左君か。照井君から噂は聞いている。」

一条はこちらに気がつくと、手を差し出した。

俺とフィリップはそれぞれ握手をした。その手は優しい印象を与える顔に似合わず硬かった。その感触だけでも、この男が未確認生命体とかいう脅威と戦ってきた証に思えた。

「なるほど…。どこか、五代に近いものを感じるな。」

「五代?」

俺は思わず聞き返した。

「ああ、すまない。気にしないでくれ。」

「何も隠すことはないだろう、一条。」

二人の男性警官が近づいてきた。

「警視庁の杉田だ。」

「同じく桜井です。」

「俺達も一条と同じで、未確認生命体と戦ってきた。五代君と共にな。」

杉田が言った。

「五代というのは、もしかして未確認生命体第4号のことですか?」

フィリップが尋ねた。

「あぁ。今で言う仮面ライダー…、あー、何て言ったっけ?」

杉田が一条に聞いた。

「…クウガだ。」

一条が答えた。

第4号と言われて分かっていなかったが、"クウガ"の名を聞いてピンときた。

ちゃんと面と向かって話したことはないが、何度か共に戦ったことのある赤いライダーだ。

「我々も怪物と戦ってきた経験がある。そのドーパントとかいうやつらも同じ一条班として駆逐して行きましょう!」

桜井が言った。

「え?俺達一条班なんすか?」

「なんだ、まだ聞いてなかったのか?」

杉田が言った所で照井がやってきた。

「左、フィリップ。お前達は一条班と共に活動してくれ。」

「お前は?」

俺は照井に尋ねた。

「俺は氷川班だ。戦力バランスを踏まえて、俺とお前達は離れた方がいいと思ってな。後は一条さんの話を聞いて行動してくれ。」

照井はそういうとその場を後にした。

 

「では、我々一条班のメンバーを確認する。まず、班長兼現場責任者の一条。副班長として杉田。次に桜井…。」

杉田が班員の名前を呼び上げ始めた。

「…、大門、泊、左、フィリップ。以上だ。」

「左君、フィリップ君。ドーパントのこととガイアメモリについて説明してくれ。」

一条の言葉に従い、俺達はドーパントとガイアメモリのこと。そして暗躍しているアサシンと黒いエターナルの存在を話した。

「まさか、仮面ライダーなのに犯罪に加担してるだなんて…。」

大門凛子が呟いた。

「バイクのようなデバイス…。」

泊もどこか疑問に思っている様子だった。

「アサシン・ドーパント、ならびにエターナルと呼ぶ仮面ライダー。やつらが元ネオシェード構成員なのか、ネオシェード残党なのかが不明だとしても、やつらよりもメモリを回収する必要がありそうだ。各員、泊巡査長の元ネオシェード構成員の写真を元に捜索を始めよう。」

一条が言った。

「あんた達がこれまでどんなやつらを相手にしてきたかわからねぇ。だが、ドーパントを確認したら、無理はせず俺達に連絡をくれ。」

「何故お前達なんだ?」

杉田が尋ねた。

「この街を守る仮面ライダーとのコネがあるからね。」

フィリップが代わりに答えた。

「マジですか!?」

大門が言った。

「…わかった。君達に任せよう。」

一条も同意してくれた。

 

『市街地にて、ドーパントと思われる生命体が暴れているとの情報アリ。総員、現場に急行せよ!繰り返しますー』

 

署内で放送が流れた。

「一条班、これより現場に急行する!」

杉田の合図で各員行動を始めた。

 

「左さん、フィリップさん、大門さん!どなたかこっちの車両に乗ってください!」

泊に促され駐車場に向かうと、パトカーの並びにとても似つかわしくない車が停まっていた。

「うわっ、何だこのド派手な車!?」

俺は思わず言ってしまった。それは真っ赤なボディのスポーツカーのような車両だった。

「これでも公認された警察車両です!さぁ、早く!!」

泊は言うが正直乗り気ではなかった。

しかし、

「申し訳ない、泊さん。僕乗り物に酔いやすくて…。自前のバイクで向かいます。」

フィリップが言った。

「そうですか…、では向こうで会いましょう!」

「ちょっ、待てフィリップ!そんな話聞いてねぇぞ!!」

俺はフィリップに言ったが、彼はニヤっと笑いハードボイルダーに乗って行った。

あの野郎…、乗りたくなくて嘘言いやがったな。

「わ、私も…別の車両で向かいますね…。」

大門も引いていた。

「あ、じゃあ俺も…。」

「行きましょう、左さん!!」

「えぇ~…。」

しかし、フィリップはハードボイルダーで走り去り、残りのパトカーも出動してしまった。俺はしぶしぶ泊の車に乗り、現場に向かった。

 

「しかしまぁ…、よくもこんな車が警察車両として認められたな。」

車内で俺は泊に言った。

「これも一応訳アリなんですよ。でも、スポーツカー顔負けの馬力ですから、現場に急行するなら打ってつけです!」

泊が答えた。

「いやでも…。これは…。」

俺が言おうとしたときだった。

『全く、文句の多い青年だな!』

泊とは違う声が車内に響いた。

「!?な、何だ!?」

俺は驚きの余りに叫んでしまった。

『進ノ介、次の角を右に曲がれば近道だ!』

「わかった、ベルトさん!」

またしても声がした。

「誰だ!?」

『私はここだ。』

運転席と助手席の間にある機械から聞こえた。

中心にディスプレイを持ち、そこに顔のようなものが映されていた。

「カーナビか??」

『失礼な!私はこのトライドロンそのものだ。全く、ハードボイルドを語る探偵にしては、似つかわしくないな。』

「何だと!?」

「まぁまぁ、左さん。」

泊がなだめてきた。

「彼はベルトさんです。」

『よろしく!』

ディスプレイの顔が笑顔になった。

「ベルトさんだぁ??」

ベルトにはとても見えないが…。

 

『付近の警官がドーパントを確認。しかし、逃走を始めた模様。追跡してください!場所はー』

 

『急ごう、進ノ介!』

車内の無線を聞き、泊はアクセルを吹かし、目標地点へと向かった。

 

現場に着くと、ドーパントと白い仮面ライダーが戦闘をしていた。

マッハだった。

トライドロンから降りると同時にフィリップの乗るハードボイルダーと杉田、桜井、大門を乗せたパトカーも到着した。

「あいつ、あの時の!?」

「あいつかい?君が戦ったという仮面ライダーは。」

フィリップが言った。

「翔太郎、今回は僕が戦うよ。僕の相棒を傷つけたお礼をしなきゃね。」

珍しくフィリップから殺気を感じた。

「わかった!泊、大門、あんたらはこっから離れてろ!」

俺は二人に言った。

「ちょ、待ってくれ!あいつは…。」

「泊さん、離れましょ!」

泊が何か言いかけたが、大門に無理矢理移動された。

「桜井、距離を取って応戦するぞ!」

「はい!」

杉田、桜井は物陰に隠れ、相手の様子を伺っていた。

俺はロストドライバーではなく、ダブルドライバーを腰に装着した。それと同じものがフィリップにも現れ、装着された。

すると、どこからともなく小さな恐竜のようなロボットが現れ、フィリップの手中に収まった。

フィリップはそれをガイアメモリに変形させた。

 

ファング!

 

それは"野獣"の記憶を擁するF(ファング)メモリだ。

 

ジョーカー!

 

俺もJメモリを手にした。

「「変身!!」」

俺が先にメモリを自分のベルトに装填すると、それはフィリップのベルトに転送され、続けてフィリップがFメモリを装填した。

 

ファング!ジョーカー!!

 

フィリップの身体を、右側を白、左側を黒の装甲が包み込み、仮面ライダーW・ファングジョーカーへと姿を変えた。

それと同時に俺の意識は身体を離れ、変身したフィリップの方へ移された。

「あの探偵、仮面ライダーだったのか!?」

杉田は驚きを隠せないでいた。

 

『「さぁ、お前の罪を数えろ!!」』

「は?あ、お前は!!」

マッハはこちらに気がついた。

「君かい?僕の相棒を傷つけたのは?」

「何を?そもそもお前は俺達の身体だ!姿が変わろうが、返してもらうぜ!!」

マッハが言ったが、前回同様、何の話か分からなかった。

「ふむ…。翔太郎の言う通り、何の事かわからないね。でも、相棒を傷つけた借りは返させてもらうよ!」

フィリップが言うとマッハに攻撃を仕掛けた。

 

「まさか、フィリップさんが仮面ライダーだったなんて!」

大門が言った。

「剛のやつ、何やってんだ…。考えるのは止めた!二人を止めないと!」

泊はトライドロンからベルトさんを取り外し、自身の腰に装着した。

「ちょ、泊さん!?」

大門が言ったが泊には届かなかった。

 

「ベルトさん!ひとっ走り付き合えよ!」

『OK !START YOUR ENGINE!』

泊はベルトさんに付いている鍵状のスイッチを入れ、左手首に着けたブレスレットに車型のデバイスを装填した。

 

「変身!!」

 

ブレスレットの車を前に倒した。

 

ドラーイブ!

ターイプ・スピード!!

 

泊の身体を赤い装甲が包み込み仮面ライダードライブの姿に変えた。その直後、トライドロンからタイヤが飛び出し、ドライブの身体に装着された。

「ストーップ!!」

ドライブがマッハとWの間に入った。

「何!?」

『あ!?』

俺とフィリップは、目の前に飛んで入ってきた赤いライダーに驚いた。

「し、進兄さん!?」

マッハも驚いていた。

「進、兄さん?」

『てことは、お前、泊か!?』

「はい!ていうか、あなた達も仮面ライダーだったんですか!?」

ドライブも俺達の姿を見て驚いていた。

『どうなってんだ!?』

俺にはこの状況が理解できなかった。

「進兄さん!何でこいつと一緒に!?」

マッハが言った。

「説明は後だ。俺も剛から聞きたいことがある!」

「とにかく、彼は俺達の味方だ!」

ドライブがマッハに言った。

「皆、各々言いたいことがあるだろうけど、ドーパント、逃げちゃうよ。」

フィリップが冷静に言った。

 

「「『あ。』」」

 

気がつけば、ドーパントはすでに俺達からずいぶん距離を取り、今にも逃げそうだった。

『待ちやがれぇ!!』

俺達は急いでドーパントを追った。




鳴海探偵事務所の二人が警察と合同捜査という形で一条薫率いる一条班とともに行動を開始しました。

そして、本作のもう一人の主人公・泊進ノ介がついに変身します。遅くなりましたm(__)m

今回はライダー作品の警官達が何人か現れました。気づきましたでしょうか?

<登場警察官>
沢村(仮面ライダー555)

〔一条班〕
杉田守道(仮面ライダークウガ)
桜井剛(仮面ライダークウガ)
大門凛子(仮面ライダーウィザード)

ちなみに、警察所属の仮面ライダー達は警察官の間では周知のことであり、一条班の警官達は泊=ドライブであることは知っている設定です。

次回をお楽しみに!

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