仮面ライダーW&ドライブ Eの復活/ライダー捜査線   作:ラズベアー

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第三章 風都署襲撃事件
第9話


「新たな刺客か…。」

照井からの情報を聞いた俺達は頭を悩ませていた。

「そういえば、最近アサシンの目撃情報ありませんね。」

大門が言った。

「その代わりの蟹型のドーパント、さしずめ"蟹"の記憶を擁するC(クラブ)メモリを用いたクラブドーパントって所かな。」

フィリップは照井の報告から推測して言った。

「黒いエターナルも神出鬼没ときた。まったく尻尾が掴めないな。」

剛も若干苛立ちながら言った。

現在、一条班と氷川班の尽力により多くのガイアメモリを回収した。しかし、回収したところでどれが大道に繋がるのか見当がつかなかった。

「大道克己に繋がるの記憶、大道克己に繋がるの記憶…。」

俺は会議室内をうろうろしていた。

「落ち着いてください、左さん。」

泊が言った。

「ネオシェードが所持しているメモリ、もう一度おさらいしませんか?」

大門が言った。

「現状、僕たちが把握している限りで言えば、V、S、N…。マッハドライバーであの姿ではあるけど、おそらくEもあると見るべきだろう。」

フィリップが言った。

「そして、俺達で回収したメモリの中で、GとM(メロディ:旋律の記憶)は黒いエターナルが狙ってきたな。」

俺が言葉を続けた。

「一見、共通点が見えて来ないが…。」

一条が呟いた。

その時、部屋のドアが開いた。

「何か分かったか、左。」

照井ともう一人警官が部屋に入ってきた。

「今、やつらが狙っているメモリを整理していたところだ。…あんたは?」

俺は警官に尋ねた。

「氷川班班長の氷川誠です。」

「氷川って、元G3ユニット所属の仮面ライダー!?」

大門が興奮気味で言った。

「あんたもライダーなのか。」

俺は氷川に尋ねた。

「今は警視庁所属のただの警察官ですよ。」

氷川が答えた。

「今は違うって訳?」

剛が氷川に尋ねた。

「えぇ…まぁ。」

氷川が言葉を濁した。

「おい、剛!!余計な事を言うんじゃない!!」

泊が剛に言った。

「あー、話を進めていいか?」

おそらく氷川がライダーを辞めたことについては、何か理由があるのだろう。それを察した俺は話を変えるべく言った。

「照井、頼みがある。」

「何だ?」

「先日捕まえた男。確か、忍野って言ったな。やつと話がしたい。」

「何故です?」

泊が尋ねてきた。

「ドーパントに変わった連中は、皆戦闘による後遺症として意識不明になっている。唯一その例外なのが忍野瞬矢。いわば、彼が重要参考人だ。」

フィリップが俺の代わりに答えた。

「しかし、何度も尋問したがやつは何も話さなかったぞ。」

照井が言った。

「だからこそ、アプローチを変えてみるんだ。探偵である俺達が話をすることで何か違う反応が見られるかもしれねぇだろ?」

「なるほど…。」

大門が頷いた。

「そんな簡単にいくものか?」

剛が疑いの目を向けてきた。

「まぁ、見てなってボウヤ。」

「ぼっ…!?進兄さん、こいつぶん殴っていいか!!」

剛が言った。

「全く大人気ない…。これだから君はいつまで経ってもハーフボイルドなんだよ。」

フィリップがため息をつきながら言った。

「は…ハーフボイルドじゃねぇ、ハードボイルドだ!!」

まさかのフィリップからの一言に俺はカチンときた。

「…。あの、照井警視。本当に彼らを信用していいんですよね?」

氷川が照井に耳打ちをした。

「…。私に質問をしないで頂きたい。」

照井が呆れたように言った。

「まあまあ。…いいだろう。」

その場を収めようとしながら、一条は同意してくれた。

「ただし、共同捜査とはいえ、あくまでも取り調べは警察の仕事だ。君達の他に警官一人は着かせてもらうぞ。」

一条が言った。

「それなら、私が同席します。」

泊が名乗りを上げた。

「それと、別室でも我々は待機している。そのつもりでいてくれ。」

「分かった。」

 

俺とフィリップ、そして泊は、面会室で忍野に会った。

「た、探偵の旦那ぁ!」

忍野が言った。

「よぉ、元気そうだな。」

俺は忍野に対しフランクに言った。

「では、本題に入ります。忍野瞬矢さん。あなたがガイアメモリを手に入れた経緯、ネオシェードの動向など知っていることをお話願います。」

泊がお堅く言った。

「それは…、前の刑事さんにも言ったハズだ。ガイアメモリのことはともかく、ネオシェードが今何をやろうとしているのかなんて、俺の知る所じゃねぇ。」

忍野は答えた。

「ガイアメモリ、白衣の人間から貰わなかったかい?」

フィリップが言った。

「…。」

忍野は答えなかった。だが、俺の経験上、この黙秘は黙認と変わらないものだ。

「どうなんですか?忍野さん!あなたの知っていることをお話して頂かないと、ネオシェードがテロを起こしてしまう!」

泊は焦りを見せていた。

「焦ってるねぇ、刑事さん。」

気味の悪い笑みを浮かべながら、忍野が言った。

「そりゃそうか。俺のいたネオシェードのせいであんたのお仲間、間違って撃っちまったんだもんなぁ。」

「お前…っ!!」

泊が立ち上がって言った。

「それに、正直な所、日本がどうなっても構いやしねぇ。今さら警察に捜査協力をする気すら湧かねぇさ。」

忍野は泊に対し挑発的に言った。

「黙って聞いていれば!!」

泊は、忍野との間を隔てている防弾ガラスを拳で叩いて言った。

「落ち着け、泊。」

「気持ちは分かるよ、泊さん。」

俺とフィリップはどうにか泊の気持ちをなだめた。

「フーッ…。すみません、既に過ぎたことですし、あれはロイミュードによるものですから…。」

泊は何とか自分を抑え、再び席に着いた。

「じゃあ、他のことを聞くぞ。そもそもネオシェードに加担しようとした理由は何だ?」

俺は忍野に尋ねた。

「…旦那。あんた家族はいるかい?」

忍野が問い返してきた。

「家族…。」

フィリップが呟いた。

「家族って思える仲間達はいる。だが、俺は独り身だし、肉親もいねぇ。」

「そっか…。俺には家族がいたんだ。女房とかわいい子供と。俺は大黒柱として養わなきゃいけなかった。だが、社会は残酷だ。俺は勤めていた会社を辞めさせられた。それで女房も俺のことを見切りをつけて出ていっちまった…。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

別室にて、俺、一条、氷川はモニター越しで左達の様子を見ていた。

左の問いに対し忍野が答えている所だ。

「家族か…。」

俺は思わず呟いた。

「奥様は、あの探偵の事務所の所長でしたね?」

氷川が尋ねてきた。

「えぇ。」

「旧姓は鳴海…。鳴海荘吉さんの娘さん?」

一条が尋ねてきた。

「?…一条さんはお義父様をご存知で?」

「えぇ。彼の評判は都内や長野にも広く伝わっていまして。生前、何度か捜査協力をお願いしたことがありまして。」

一条が答えた。

「そうだったんですね。」

「今回、左君達を捜査本部へ参加して頂いているのは、信頼できる鳴海さんのお弟子さん達であったこともあるんです。」

道理ですんなりと許可が降りた訳か。

「惜しい人を亡くされたんですね…。僕も是非ともご一緒に仕事したかった。」

氷川が言った。

そうこうしていると、中の様子が変わっていることに気づいた。

「何があった…?」

一条は切っていた室内マイクのスイッチを入れた。

 

うおおおおおおおおん。

うわあああああ。

うっ…、ひっぐ…。

 

中は阿鼻叫喚の如く、泣き声や喘ぎ声が轟いていた。

「…。」

「…。」

「…。バカかあいつらは!」

よくよく聞いていると、何とも阿呆らしい会話だった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「…でよ!そんな大金ちらつかせたらさぁ、やるしかねぇじゃねぇか!!」

忍野は涙ながらに訴えていた。

「あぁ…そうだな、そうだよな…うわあああ。」

俺は涙が止まらなかった。

「女房は事故で亡くなっちまってさぁ、おまけに治すのに莫大な大金が必要な程の病気にかかった子供の為に、俺は…、俺はやむを得ず…。」

「ぼ、僕にも家族がいます…。そりゃ、お子さんのことが心配ですよね…うぅ…。」

泊も号泣していた。

「けどよ…!やっぱ親父として頑張ってるって胸を張りたいと思ったんだよ!だから、俺は組織から足を洗ったんだ…。」

「お父さんとして…。それは大事なことですよね…ぐすっ」

フィリップも袖で涙を拭いながら言った。

「わかってくれるかぃ?探偵の旦那達、刑事さんよぉ!!」

忍野が言った。

「あぁ…、わかったよ忍野さん!」

「…で、メモリはどうやって手に入れたんだ?」

俺は近くにあったティッシュを手に取り鼻をかみながら言った。

「あぁ…、財団Xって野郎から貰った。…あ。」

忍野は言い切った所で"しまった"という顔をした。お涙頂戴作戦の成功だった。

「…!?」

泊はまさかの証言に驚いていた。

「…さすがだね、翔太郎。」

フィリップも感心していた。

俺は涙を拭い、改めて問いただした。

「財団は、なんて吹っ掛けてきたんだ?今さら知らねぇは効かねぇぜ、忍野さんよぉ。」

忍野は黙ったが、観念し重い口を開けた。

「参ったよ、旦那。あんた上手いねぇ。」

「俺達…、組織を抜けた連中は、ネオシェード残党に命を狙われているんだ。」

「命を?」

と俺が。

「どういうことですか?」

と泊が尋ねた。

「ネオシェードの掟さ。裏切り者には死を。俺達何人かが組織を抜けた直後は何もなかったんだが、最近になって死刑宣告されてな。」

そういうと、忍野はズボンのポケットから青い薔薇の花びらを出して見せた。

「これが、そのサインとでも言うのかい?」

フィリップが薔薇を指して言った。

「そうだ。それとほぼ同じ時期に、財団Xが接触してきたんだ。命が惜しければこれを使うといいってな。」

「ということは、アサシンや黒いエターナル、それと新たな刺客であるクラブ・ドーパント。奴らはネオシェード残党であり、組織離脱者を粛清するために行動しているということか。」

俺は言った。が、しかしそれでもわからないことがある。

「でも繋がらない…。ネオシェード残党も元ネオシェード構成員もガイアメモリを所有している。言ってしまえば、どちらにも財団Xが関与している。となると、なぜ双方にメモリを渡しているんだろうか…。」

泊が言ったが、俺も同じ考えだった。そして、ネオシェード残党はそれを幾つか回収している。ならば、目当てのモノを財団から手に入れれば済む話だ。何故そんな回りくどいことを…。

「さぁ…。俺には分からん。だが、そろそろ時間か…。」

忍野が呟いた。

「時間?」

俺は忍野に尋ねた。

 

その時だった。

ビー!ビー!ビー!ビー!

署内の警報が鳴り響いた。

 

『署内職員に通達!直ちに近くにあるモニターを付け、電波を繋げて下さい!』

 

「何だ!?」

すると泊がスマートフォンを取り出しテレビ中継にした。

別室の照井達も室内のモニターに電波を繋いだ。

モニターに写し出されたのは、無表情の男の姿だった。

「!?岡村敬介!!」

泊は投獄されているはずの男の姿を見て叫んだ。

 

『日本全土に住まう国民ども。我々の言葉を聞くがいい。我々はネオシェード。我々の目的は現行の日本社会の変革である!』

『日本社会は、自由を謳いながらも決められた枠組みの中で生かされ続けているのが現状である!我道を進めば周囲の圧力により修正され、果ては異端者となれば社会から弾かれる。この国での自由とは本来の自由とは呼べないものである!これは許されるべきではない事実である!』

『故に、我々は本来の自由を取り戻すべく、立ち上がった次第である!同士達よ!準備は整った!我々の目的を果たす機会が訪れたのだ!』

『日本政府に告ぐ!我々ネオシェードは、本来の自由を取り戻すべく!政府に対し宣戦を布告する!』

 

 




元ネオシェード構成員との戦闘を毎回やってしまうと間延びしてしまい面白さに欠けてしまうと判断し、アイヴィ戦とジーン戦以外は全カット。既にある程度のドーパントからガイアメモリを押収したことにしました。
既に押収した内の一部として、Mメモリを登場させました。

少しながら、キャラクターのクロスオーバーを設定しました。

翔太郎と氷川誠の対面。
一条と鳴海荘吉がかつて共に仕事をしていたこと。
そして、一条と氷川が同じ場面に出てくること。

どこかで一条さんと氷川さんが共に活躍する場面を作りたいです。笑

第3話で逮捕された忍野瞬矢への尋問の中で明らかになった財団Xの陰。
そして、ネオシェードの掟。
最後にドライブ本編最終回で逮捕されたはずのネオシェードリーダー岡村敬介による、ネオシェードの宣戦布告。

物語は、いったいどうなっていくのでしょうか。
次回もお楽しみ下さい。

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