ARMOREDCORE compensation 作:天武@テム
少年はリンクスだ、しかし彼は只のコロニーの住民の1人だった。しかし、ある1つの事件が彼の人生を狂わせる━━
chapter1-8
━━━焦げ臭い匂い、パチパチと何かが破裂する音、鎧を着て歩くような音……いや、違うこの音は鎧を着て歩くような音じゃない、鎧より大きな物だ。ジンが目を開けるそこは、幼い頃家族と共に過ごした家が燃えていく景色とコクピットが無残にも穴が空けられた紅色の機動型ノーマル。そしてそれを見つめる草色のショットガンを持った逆関節のネクストACだった。
「……!!」
ジンは思わず息をのみ、立ちすくむ。忘れもしない、これは幼い頃の記憶だ。ジンの母親は10年前の真夜中このネクストに殺され帰る家も燃やされた。
━━逃げて
ジンは誰かからそう言われたような気がして走り出す。 言っているのが誰かが分からない聞いた事がある懐かしい声。でも、走らなきゃ行けないような気がした。
━━ 早く逃げて、どうか逃げて誰にも傷つけられない場所に…
どうかお願い━━━
………思い出した、お母さんの声だ。
「………!!!! はぁ………はぁ……」
ジンは夢半ばで目が覚め、額には汗がびっしょりかいていた。
「夢……だったの?」
汗を拭いながらゆっくり起き上がる。
あの声は確かに忘れかけたけど、お母さんの声だった。
━━いや、忘れようとしてたのかもしれない。嫌な記憶と一緒に。
「目は覚めたか?」
「は、はい…ってあれ?ここは?確か僕はリッチランドで…」
目が覚めると病院のベッドの上に寝ていてた。服は入院着に着替えられ、腕には点滴が打たれていた。ベッドの横には医療機器が置かれていて、白衣を着た金髪のドクターが椅子に座っていた。
「ここは、GA開発都市ジラーフの医療機関だ。口と鼻から血吹き出してコクピットで意識を失ったお前さんをお兄さんがこっちに運んできたんだよ」
「ジラーフ…?開発都市って、もうコロニーは殆ど破棄されて一般人はクレイドルに移民したんじゃなかったんですか?」
「正確に言えばGAアジアエリア最大を誇る工業地帯の中にある従業員の洋上居住区域だ。チャイニーズならわかると思ったんだが」
「あのー……僕は日本人、有澤地域出身なので中国人じゃないんですが…」
「おっと、それは悪かったな。大体のアジア人は同じように顔が平たいからわかんなかったぜ」
「はぁ…」
ドクターは悪気はなくケラケラ笑う。ジンは思わず、半ば呆れ口調で生返事をしてしまう。同じアジア人だし、中国人と勘違いされてもおかしくはないと理解するが、やるせない気持ちになる。
「坊や、リンクスとして依頼を受けるようになったのはこれで何回目だ?」
「ええっと…2回目ですね」
「だと思った、まだAMSに慣れてないのに連続して激しい戦闘したから意識失ったんだ。全くこういう無茶なことはするなよ?数少ないリンクスなんだから死なれちゃ困る」
「す、すみません……」
「お前が意識を失っている間にもう検査は済ませてるから、親御さんが来るまで大人しくしとけよ。じゃあ、俺は別の患者にところに行くから大人しくしておけよ?」
「あの、兄さんはいつくるのですか?」
「さぁな?一応報酬受け取ってから迎えに行くそうだぜ?いつ来るかは知らないな」
ドクターは立ち上がり、ジンの病室を出ていく。病室は暇を潰せる物は全くなく、隣には空いたベットと医療器具しかなくとても暇が潰せるものがない。正直早く迎えに来て欲しいとジンが思っている中、病室のドアが開く音が聞こえる。
「兄さん?」
もう兄さんが迎えに来たのかな?と思うが、入院着を着た無精髭が生えた中年男性が入ってくる。知らない人が入ってきて一瞬ビックリするが、中年男性もぎょっとした表情になる。おそらく、病院の患者であろう。
「お?初めて見る顔だな」
「は、はい…!初めましてです…!」
「そう固くなるなって、気楽に話していいぜ」
「はぁ……そうですか…」
「ほらほら、まだ固いぜ?リラックスリラックス!」
中年男性は近づくと、ジンの背中をバンバン叩いて、空いていた隣のベットに座り込む。
「んで、坊主どうしたんだ?怪我はしてる様子じゃなさそうだが、病気にでもかかったか?」
「あ、いえ…戦闘中に意識失っちゃって、ここに運ばれたんです」
「戦闘中にか……ってことはパイロットか…なんの戦闘だったんだ?」
「ええっと、リッチランドの襲撃ですね」
その瞬間、男性は朗らかな表情から急変し真剣な顔になる。
「……坊主、お前リンクスか?」
「は、はい…そうですけど?」
「リンクスになって何日だ?」
「なんでそんなこと聞くんですか…?えっと、カラードに登録されてからは一週間は経ってますね」
「……そうか」
「…?どうかしましたか?」
「いいや、なんでもない。ちゃんとメシは食ってるか?きちんと休んで睡眠をとっているか?」
「はい…、ちゃんとご飯は食べてますし、夜更かしはあんまりしてませんよ?」
「よし、ならいい。なにか困った場合は俺の名前を言えば話は通るからな」
「あ、ありがとうございます……えっと…おじさんの名前は?」
「ん?知らんのか?」
「わかんないです……」
「そりゃそうだよな、リンクスなって一週間から仕方ない。俺はドン・カーネル、一応リンクスだからお前の先輩にあたるだろうな」
「よ、よろしくお願いします…カーネルさん…」
「相変わらず固いなぁ、気軽にカーネルパパなんて呼んだっていいんだぜ?」
「それは…やめておきます……」
「なんだよぉ?遠慮すんなって!」
「遠慮はしてませんけど!?」
カーネルはガハハと笑いながら話し続ける。
「いいじゃん減るもんじゃないし」
「僕まだカーネルさんのこと知ったばっかりなのに……」
「そんなの気にすんなって!話は変わるが坊主、お前さんなんでリンクスになった?」
「え?なんでって……」
「くそったれな時代だが、その歳なら他の道を選べた筈だ。わざわざ自分から死に近づこうとしてるんだ」
「えっと、それは……」
「なんだ?言えない理由があるのか?」
「いえ…そういう訳じゃないです………ただ……」
ジンはゆっくり口を開ける
「……僕は殺したい人がいるから、リンクスになりました。」
……to be continued
次回は過去の話になります、何故あの子がリンクスになったのか、なぜ彼は戦うのか━━