ARMOREDCORE compensation 作:天武@テム
・獅郎=叢雲の日記から一部抜粋
chapter1-10
「━━暫くして、あの白いネクストはホワイトグリントって名前なのを知りました。僕はお母さんを殺したあの緑のネクストを許しません……お母さんの仇を取るためにリンクスになりました。これが僕がリンクスになった理由です」
俯いていた顔を上げてみると、目の前にはティッシュ片手にカーネルさんが号泣してた。
「あ、あの……カーネルさん?」
「うっ……ぐず…お前ってやつは……辛かっただろ…いいぞっ…!俺の胸の中で泣いていいぞぉ…!!」
「うわあぁっ……けっこう苦しい…」
そう言うとカーネルさんは号泣しながら抱き締めてきた。リンクスってだけあって、結構抱き締めてる手に力入ってて苦しい……
「はぁ……なにやってるのよカーネル。病人、しかも女の子に抱きついたりなんかして」
聞き覚えのある声だと思っていたら、ドアの前には呆れた表情をした緑髪の女性が立っていた。
「セクハラだと思っているな?違うぞメイ、これは愛情表現だ!」
「はいはい、そうですか。それより、ジンって子知らない?ここの病室にいるって言われたんだけど」
「えっと…ここにいます」
僕はカーネルさんの腕の中で手を挙げた。メイってことはこの女性がメリーゲートのパイロットなんだろうな。
「君がジン君なのね、リッチランドの時はありがとう。君のお兄さんが着替えてハンガーまで来て欲しいって言ってたわ。また新しい依頼ですって」
「新しい依頼……はい、わかりました」
「おいおい、身体の方は大丈夫なのか?」
「平気ですよ、検査でも異常がないみたいでしたし行けますよ!」
「ふむ…なら、いいんだが。気をつけろよ?」
「はい!行ってきます!」
「あ、待ってジン君」
ベットを降り、病室を出ようとすると。メイさんに手を掴まれ止められた。
「君、ここに来るの初めてでしょ?私が案内するわ」
「あ、ありがとうございます」
そう言うとメイさんは手を繋ぎ直して歩き出した。隣に並ぶと頭一つ分くらいメイさんの方が身長が高いのがわかった。そして、改めて自分の身長が低いことに気づいた。僕は思わず小さくため息をついた。
「どうしたの?急にため息なんかついて」
「ああ……いえ、早く大きくなりたいなって」
「そう?大きくても不便なだけよ?」
「だとしてもこの身長だと子供にみられるんですよ……!」
「ふぅん、今何歳なの?」
「えっと、今年で15歳になりました」
「15歳かぁ、まだまだ子供ね」
「子供って……もう15だから子供じゃないです…!」
「私からしてみればまだ子供よ。それに……」
メイさんはニヤッと笑うと僕の腰に手を当てて、突然胸元に抱き寄せた。
「ほわぁぁぁ!?」
「ふふっ、こんなことでビックリしてたらまだ子供だね〜」
突然の出来事で思わず変な声が出た。
それに対してメイさんはずっとニヤニヤ笑ってた。柔らかさと甘い匂いに頭が追いつかず、顔が熱くなってるのがわかった。
「ほ、ほほぉら……!そ、そんなことしないで……い、行きましょ…!」
慌てて離れると早歩きで更衣室に向かった。
……まだ顔が熱い、お姉ちゃん以外の女性であんなことされたのは初めてで、恥ずかしさと色んな物が混じったような気持ちになった。
暫くすると沈黙が訪れた。メイさんはまた手を繋ぎ直して隣に並んで歩いてた。
「…改めてリッチランドの時はありがとう、君が来なかったらやられてたかもしれなかったわ。」
でも、とメイさんは言うと僕の顔を振り向かせて顔を近づける。
「無理するのはダメよ。君はまだリンクスになって間もないんだから、無茶して倒れると君の家族が心配するよ」
「すみません、でも僕強くならなくちゃいけないんです。早く強くならなきゃ…お母さんを殺したアイツがいつ来ても必ず倒せるようにしなくちゃ…」
「そう…でも、それで無理して倒れちゃったら元も子もないでしょう?」
「でも…!」
「君は知らないかもしれないけど、AMSによる過度の精神負荷で死んじゃうこともあるのよ。焦る気持ちも分かるけど、今は来た依頼を確実に完遂していくこと。わかった?」
「………はい、わかりました」
「ならいいのよ。ほら、しゅんとしてないで行きましょ?もうすぐ着くからね」
頭をポンポンと撫でられると、メイさんは手を引いて案内を再開した。
更衣室でパイロットスーツに着替え、メイさんに案内されてながらハンガーに向かうと、紅桜の前で兄さんが作業員と話をしていた。紅桜はリッチランドの時で破壊されたライフルは銃身が長いGA製のライフルに、腕がいつものアリーヤフレームから違うものに変更されていた。
「おお、起きたか。検査では異常ないって聞いたが、調子はどうだ?」
「大丈夫、もう元気だからね。それより、そのライフルと腕はどうしたの?」
「ああ、これのことなんだが。ライフルは次の依頼に使う為に借りたもんだ。次に腕なんだが、BFFの063ANをさっき買った。中古だからカタログスペックより低いが、こっちの方がエネルギー消費も少ないし、射撃性能も遥かに良いからな………でだ、ここから本題だ」
そう言うと兄さんは険しい顔をしながら手に持っていたタブレット端末を僕ら2人に見せた。タブレットには朱色の全面にチェーンソーのような刃を持った鉄塊らしきものと「カブラカン撃破依頼」と書かれていた。
「カブラカン……?」
「アルゼブラ製の突撃型アームズフォートよ、それに今GAの悩みの種の1つじゃない……」
メイさんは顔を顰めながらでも……言った。どことなく張り詰めた空気になったと感じた。
「私もその依頼頼まれたわ……」
「そうらしいな。俺も仲介人から聞いた。だから、この作戦は共同任務になる」
次に弱点だが、と兄さんは険しい顔のまま話し続ける。
「機体下部のスカートアーマーの内部にあるキャタピラだ。これを壊せばめでたく機能停止、作戦完了……ってわけだ」
「でも、ちょっと待って……それじゃあ…」
「分かってる、キャタピラが壊れれば機能停止するなんてバカにでもわかる。それだけなら、ネクスト2機は必要ない。だからこそこれ以上になにかあるはずだ」
物申そうとすると兄さんは被せて言った。
「ただ、それ相応の報酬になってる。その報酬の中に……リリアナのアジトの位置データがある」
思わず目を見開き、息を呑んだ。リリアナのアジトが分かれば、もしかしたらお母さんをあのネクストの情報が得られるかもしれない。
「ぼ、僕はやるよ……」
「ジン君……!!ダメよ…!君にはまだ荷が重いわ…!」
「大丈夫だよ…!ネクスト2機なんだから、きっとなんとかやれるはず…!」
「………決まりだな。出撃するのは2時間後だ、いつでも準備しておけよ。」
僕は急いでコクピットへ向かった。
メイさんもメリーゲートの方へ向かおうとしたら兄さんに止められた。
「ああ、待ってくれ。メイさんって言ったっけな……アイツが無茶しないようにバックアップを頼む」
「……大丈夫よ、なんとかなるわ」
次回は初のアームズフォート戦となります。
社会人になった為投稿頻度が低くなるかもしれませんね