ARMOREDCORE compensation   作:天武@テム

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砂漠の狼、そう名乗る青年は仇を討とうとするジンの前に立ちはだかる。


CHAPTER2-2 「メメント・モリ」

「俺は、砂漠の狼だ」

 

「砂漠の狼……?」

 

紅桜の目の前に降り立つアルゼブラの軽量機はそう言った。武はその言葉に聞き覚えがあった。リンクス戦争以前、アマジークと言うリンクスが存在した。彼は低いAMS適性を受け入れて高い戦闘能力を発揮して、企業のリンクス達と同等に戦ったという記録がある。その彼のまたの名を「砂漠の狼」と呼ばれていた。

 

「お前、オールドキングを捜してるんだろ?」

 

「オールドキング……それがアイツの名前なのか!?」

 

「知らなかったのかよ、呆れる。そんなんでよく探し回ったな」

 

「う、うるさい!そんなことよりもオールドキングはどこにいるんだ!」

 

「お前みたいなやつに教える訳ねえだろ」

 

「じゃあ、どうすれば教えてくれるんだよ……!」

 

「言い方を間違えたな、ここで死ぬ奴に教える必要はない」

 

そう言うとアルゼブラの軽量機は、両手に持っている武器で攻撃を始める。

紅桜は咄嗟に避けきれず、直撃してしまう。軽量機の武器はアサルトライフルと衝撃力の高いショットガンであり、紅桜はプライマルアーマーを展開しているにも関わらず、硬直してしまう。

 

「なっ…!?こいつ…!!」

 

紅桜は体制を立て直し、一度クイックブーストを吹かし、その後通常ブースターで後ろに下がって距離を置く。しかし、軽量機は空中を飛びながら迫り、散弾とアサルトライフルの弾は容赦なく降り注ぐ。

それに対して紅桜は、マシンガンとプラズマキャノンで迎撃しようとするが空中でクイックブーストで容易く避けられ、反撃を食らう。

 

「弾が当たらない!?」

 

『ここからじゃ、敵機が遠くて当たりづらいです!もっと接近しないといけません…!』

 

「でも、これ以上近づけばショットガンと餌食になっちゃうよ!?」

 

『真正面から接近するのではなく、敵機の真下をくぐって側面や背後から接近しすればなんとか……』

 

紅桜のAIであるサクラは、飛んでいる軽量機の下をくぐり抜け、背後に回ることを提案する。

ジンは早速クイックブーストで下をくぐり抜け。サイドクイックブーストで急旋回すると、マシンガンで軽量機を撃つ。しかし、軽量機は被弾を気にせずに振り向いてアサルトライフルとショットガンを放ちながら距離を詰めて再び紅桜の上空を飛び越える。

 

「くそっ…!捉えきれない!!」

 

紅桜は、横にクイックブーストをして距離を離すが、軽量機はすぐに紅桜を捉えて散布型マイクロミサイルを放つ。紅桜は、マシンガンで迎撃するが、数発被弾してしまう。その隙を狙って、軽量機はアサルトライフルとマイクロミサイルを容赦なく放ち続ける。

紅桜は必死に避けるも、避けきれずに被弾してしまう。

 

『AP60%現象!!これ以上被弾したら機体が持ちません!!』

 

「不味いわよジン、早く撤退して!」

 

「そう言われても…!あいつが逃がしてくれない!!」

 

ノアが撤退命令を出し、紅桜は逃げようとするが、軽量機は、撤退しようとする紅桜から回りこみ、逃げ道を塞いでいる。その光景は、獲物を逃がそうとしない獣のようにも見える。

ジンは逃げられず、機体を撃破するしかないと考えてプラズマキャノンを捨ててブレードを構える。

 

「レーザーブレード?そんな武器で何をしようってんだよ」

 

「決まってる、お前を倒すんだ!!」

 

「はっ、よく言うよ。さんざん逃げ回ってた癖によ」

 

「そう言っていられるのも今の内だからな…!」

 

ブレードを地面に沿って振り上げて砂埃を起こし、軽量機のヘッドカメラを覆う。軽量機のカメラは砂まみれになり、紅桜をロックオンすることが出来なくなる。

 

「砂埃で目隠しか、だけどな…」

 

軽量機は、迷うことなく接近し、アサルトライフルとショットガンを連射する。ブレードを構えて接近する紅桜は直撃してショットガンの衝撃でよろけ、プライマルアーマーが強制的に解除される。紅桜は、体勢を立て直すように後退し、軽量機は、それを追い詰めて攻撃を続けていく。

 

「その単純な動きじゃ、狙わなくても当たるんだよ!!」

 

紅桜は、蛇行しながら攻撃を避けていくが拡散するショットガンの弾は完全に避けきれずに被弾して、装甲は銃弾の跡や穴ができ、関節部分からは火花が散る。

 

「AP80%減少…!!早く撤退して!これは命令よ!!」

 

「でも、どうやって逃げればいいのさ!!どんなに離しても追いついてくるよ!!?」

 

「っ…!どうすれば……」

 

【こちら、ハーディン。現在そっちに向かっています。私が対処しますので、それまで耐えてください】

 

「援軍か…!くそっ…やっとか……。聞いたかジン、援軍が来るまでなんとか耐えろ。オーバードブーストで距離を離せ、出ないとお前が死ぬぞ!!」

 

武とノアは大破寸前の紅桜を見て焦りながらも援軍が来るまで持ちこたえろとジンに指示を送る。紅桜は蛇行しながらオーバードブーストを起動して軽量機と距離を離していく。

 

「怖気づいたのか?でも逃がさねえよ」

 

軽量機もオーバードブーストを起動して紅桜との距離を段々と詰めていくと、武器を構えて狙いを定めて攻撃を行う。

 

「このまま追いつかれる!何とかしないと…!!」

 

紅桜は思わず、廃墟と化した建物の裏に周り攻撃を防ぐと廃墟が崩れて砂埃を起こる。すると、紅桜の視界が砂埃で視界が塞がれてしまう。思わず、片手で砂埃を振り払うと目の前に今まで追いかけて来た軽量機が目の前に現れる。

 

「うわああぁぁぁぁ!!」

 

ジンは驚き、思わずマシンガンを連射するがショットガンで破壊され、その衝撃でバランスを崩して、尻もちをついてしまう。

 

「ったく、逃げ足は一丁前だな。手間をかけさせんなよ、お前一人に」

 

コクピットに向けてショットガンを突きつけらる。その光景は幼い頃、逆関節のネクストに母親を殺された時の構図とそっくりだった。ジンは逃げなきゃと思いながらも、額が冷や汗でベッタリになり、頭の中が真っ白になり身体が動かなくなる。

 

「おい!ジン!!逃げろ!!早くしろ!!」

 

武は大きく叫び、ジンに呼びかけるがその声を聞こえておらず、さらにジンの動悸が激しくなる。

軽量機がショットガンの引き金をひこうと指をかけて今にも撃とうとした瞬間だった。

ズドンッ!と重い音が響くと同時に軽量機は衝撃で硬直した。

モニターを見ると、遠くで角張ったシルエットが見えた。

 

「えっ……?」

「ちっ…!手間取りすぎたか!!」

 

ジンは何が起きたか分からなかった。しかし、軽量機は撤退して行くのを見て、助かったということだけは理解出来ていた。そんな中、紅桜に通信が届く。

 

「こちらハーディン、生きていますか?」

 

「えっ…?あ、はい……」

 

「ならよかった、今迎えが向かっていますから安心してください」

 

また、助けてもらった。その安心感と自分の弱さに悔やみながらも瞼を閉じる。




久しぶりの投稿になりました
次回もまた遅くなるかもですねぇ…

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