ARMOREDCORE compensation   作:天武@テム

17 / 39
意識を失ったジンは夢を見る、それは覚えのない幼い記憶


chapter2-3 「勿忘草」

「えっぐ…ぐすっ…」

 

どこからか小さい子供の泣き声が聞こえる。

怪我したのかな、それとも親に叱られたかな?

目を開けてみると、自分が誰かにおんぶされていた。この泣き声は、小さい頃の僕だったことが分かった。

 

「大丈夫だ、絆創膏貼ったんだから痛いのは治るよ」

 

「うん……」

 

「でも楽しかったですよね!こんな体験初めて!ねっ、お姉ちゃん!」

 

後ろからじゃ顔はわからなかったけど、声的に、当時の自分と年の離れた男の子のような気がした。その隣にはショートカットで、金髪の少女と、同じ髪色をした大きなリボンをつけたロングヘアーの女の子が並ぶように歩いていた。

 

「災難でしたわ、コスモスから珍しい物が見られるって聞いてついてきましたのに」

 

「あははは……でも、お姉ちゃん黒い虫が飛んできて喜んでたじゃない」

 

「あれは喜んでたんじゃありませんわ!まったく……お母様になんていえば…」

 

「母さんからは俺が言っておくよ」

 

「ありがとうお兄様…」

 

2人の女の子の顔はよくは見えなかった。だけど、リボンを付けた女の子はほっとしたような雰囲気は分かった。

この子達は、初めての筈…なのにどこか暖かく、懐かしく感じる。どうしてだろう━━

 

 

 

 

 

「……やっと目が覚めたか」

 

「兄さ……っ…いたたた…」

 

目を開けると、目の前で兄さんが呆れた顔でこっちを見ていた。起き上がろうとした瞬間、体のあちこちに痛みが走った。隣の手鏡を見ると、頭には包帯が巻かれていた。

顔を上げればら見覚えのない白い天井……ということは、あの時助けが来たところで、意識を失ったんだなって分かった。

 

「大丈夫かよ?無理して起きるなくていいぞ」

 

「頭と身体のあちこちが痛いんだけど……」

 

「医者によると、全身打撲と、頭、手足から出血してたらしい」

 

「そっか…えっと、ここは?」

 

「アスピナ機関の医療帰還だ。もうすぐ姉貴の方が━━」

 

そう言ってる最中、荒っぽい足音と同時にドアが勢いよく開くとお姉ちゃんがこっちに駆け寄って来ると、僕を強く抱きしめた。

 

「く、来るしいよ…」

 

「勝手に無茶してこんなボロボロにして…死んじゃうかと思ったじゃない!!」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

お姉ちゃんの声は震えていて、抱きしめた手は全く離す気はなさそうだった。

これだけ心配させたんだなってわかるとちょっと申し訳なく思った。

 

「もうこんな無茶な真似はしちゃだめよ?」

 

「うん、わかってるよ……」

 

「次こんなことをしたら、リンクスを辞めさせるからね?」

 

「そんなっ…!どうして…!?」

 

「決まってるでしょ、死ぬリスクがある職業を家族が喜んで勧めると思う?私はジンに死んで欲しくないのよ」

 

そりゃそうだよね、リンクスになるって言った時みんな賛成はしてくれなかった。機体が破壊され、搭乗しているリンクスが死亡した事案は幾つもある。

 

「……分かったよ、もう無理しないよ」

 

「分かってくれたならなにより。武、機体の方はどうなの?」

 

「アリーヤのパーツはともかく、新品の腕パーツまで大破している。治すのに、金と時間がかなり必要になるな」

 

「困ったわね、どうしようかしら……」

 

「お取り込み中失礼します、資金にお困りならオーダーマッチがありますよ」

 

「オーダーマッチ……?」

 

僕らが悩んでる中、部屋のドアをノックして入って来たのは、白髪が混じって、少し髪が長いお兄さんだった。

そのお兄さんの声は、あの時殺されかけた瞬間、助けに来てくれた人の声と同じだった。




アスピナ跡地で助けてくれた声の主に、ランクマッチというものにオススメされた。それは、少年の運命を大きく変える事となるのを誰も知らなかった。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。