ARMOREDCORE compensation 作:天武@テム
そんな中悩める姉弟達にオーダーマッチのお誘いが……
「オーダーマッチ……?っていうか、あの時のお兄さん…?」
「あの時っていうのは?」
「ほら、さっきリリアナ部隊にやられそうな時に救援に来てくれたじゃないですか?」
「さぁ?なんのことでしょうか?私は、君の医療担当の私の姉の代わりに君の様子を見に来ただけです。」
「えっ……でも…」
「声が似ていたからと言ってその人と安易に判断するのはよくありませんよ。きっと他人の空似でしょう」
お兄さんは僕を治療してくれた人の弟で、助けてくれて人とは違うって否定した。でもお兄さんの声は、僕が死にかけた際助けに来てくれた人の声と確かにそっくりだった。
「体の調子はいかがですか?」
「あ…はい、あちこち痛いけどなんとか…それでランクマッチっていうのは?」
「シュミレーターでカラードに登録されてあるリンクス同士で戦い、勝った方はカラードのランクが上がり、賞金が得られるのですよ。カラードには登録されていますよね?」
「はい、リンクスになる前に、企業連から登録するように通達されましたから」
カラードに登録されてあるリンクスはそれぞれランクがある。ランクが高ければ高いほど実力があり、契約している企業からも一目おかれる存在となっている。
当然僕は、新米のリンクスでミッションをこなした数も少ないから、最下位のランク31。
「それなら大丈夫です、ランクマッチの会場は調べたら出てますので」
「あ、待ってください…!」
「どうしました?」
「もし、助けてくれた人に会ったら僕が助けてくれてありがとうございますって言ってたって伝えてください」
お兄さんはふっと微笑むと僕の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「君はいい子ですね。ですが、申し訳ありませんが私はその人を知りません。自分で見つけて自分で伝えてください。」
それではと小さく会釈してお兄さんは病室から出ていった。
「勝ったら報酬金が貰えるし…ランクも上がる」
「ランクが上がればその分知名度も上がって依頼が来ることも多くなる。機体の修繕もしばらくかかるだろうから、怪我が治ったら行ってみたらどうだ?」
「そうだね、そうしてみるよ」
「ああ、それじゃあ俺達は家に戻るな」
「怪我を治る前に病室から出ないで、いい子にしてるのよジン」
「もう子供じゃないんだから分かってるよ…!」
分かってるよとクスクス笑いながらお姉ちゃんは兄さんと一緒に帰っていった。
時計を見るともう夕暮れ時だった、1人になった途端とても静かだった。周りを見回すとベッドの隣に置かれてある棚に紙媒体の本が置かれていた。
今時紙媒体の本は珍しいな、今は殆ど電子書籍ばっかりで本物の紙の書籍は初めてだった。本を読もうとしてそのまま手を伸ばしたけど、距離があって届かなかった。
焦れったく思い、一気に手を伸ばして本を取った……が、バランスを崩してベッドから落ちてしまった。
「あいたたた……」
受身もできず、顔面から落ちたため鼻元がジンジンする。
「ふふっ、相変わらずドジなんですね〜」
「ほっといてよぉ……ん?」
思わず反射的に返答したけど、誰の声か分からなかったから顔を上げた。
顔を上げた先には、屈んで僕が読もうとした本を笑顔で差し出している金髪の女の子がいた。
「久しぶりですね!ジンさん♪」
女の子の笑顔は明るくて可愛かった。そして、不思議と夢に出てきた女の子の面影が重なった。
久しぶりと金髪の女の子に声をかけられたジン
その女の子は夢で見た女の子の面影と重なった。あの夢はなんだったのだろう、そして女の子が声をかけた理由は……?