ARMOREDCORE compensation 作:天武@テム
D-delta氏の主人公のトーマスくんと主人公のジンくんの二人の会話です
「検査はこれにて終了だ。君は、ロビーで待っていてくれ」
不明ネクストの撃破が終わった後、ノアのツテでGAのコロニーにある大病院で検査が行われていた。ジンは言われた通りロビーで待っていたが、待ちぼうけを食ってしまった。
病院内は怪我人も多く、院内は忙しなくて人が行ったり来たりしていた。
「……何があったんだろ」
「隣、座っていいか」
「ええ、どうぞ──」
顔を上げて見ると、頭に包帯を巻き、顔に火傷跡の青年が立っていた。以前、マザーウィルで補給行った際に出会った青年だ。
出会い頭に銃を突きつけられ、憧れていたホワイトグリントへの憎しみをぶつけられたのは今でも覚えている……。しかし、マザーウィルの青年はホワイトグリントによって家族を奪われて憎むのは無理のないのない話だ。
青年は隣に座ると、二人の間に沈黙が流れた。
「あ……えっと…貴方一体…」
「トーマス。トーマス=フェイスだ。」
「えっとじゃあトーマスさん……その怪我は、一体どうしたの?」
沈黙を破ったのはジンの方だった。最初に出会った時と比べると意気消沈しているように見え、何よりもこれ程の怪我をしたと言うことは激しい戦闘が行われたと思い、思わず声をかけた。
「……数週間、でネクストの襲撃に遭った。そのせいでマザーウィルは崩壊して、俺はここで入院中って訳だ」
「えっ…マザーウィルが!?そんなことが…」
「ありえたのさ、仲間も兵器もなんもかんも壊されて……なんで俺は生き残ってるんだろうな」
BFFが所有するアームズフォート、スピリットマザーウィル。アームズフォートの中でかなりの大型で、10年以上稼働し続けている兵器。あのホワイトグリントでさえ破壊出来なかった代物だ。
「なんでって……生き残ったのは機体が守ってくれたから……じゃないかな?」
「守ってくれた……ねぇ。俺はいつまで経っても地獄から抜け出すことはできないって事か?」
「地獄って……そんな言い方しなくたって」
「地獄だよ。母親は俺を産んで間もなく死んで…父さんはホワイトグリントに殺された!そして俺は生き残る為にノーマルに乗って戦って、何度も死にかけた!これの何処が地獄じゃないって言うんだ!!」
「ご、ごめんそんなつもりじゃなかったんだ……!ほんとに……ごめん」
「……いや、俺も言いすぎた。お前は関係ないのにな…。そういやお前はなんでここにいるんだ?」
「コジマ汚染濃度の検査だよ。今までネクストに乗る事が増えてきたし、それにこの前激しい戦闘があったからいい機会だってお姉ちゃんが…」
「そういう事かリンクス様は大変だな……。でも、お前GAの人間じゃないんだろ。なんでわざわざGAのコロニーまで来て診察受けてんだ?」
「死にそうな目に遭ったトーマスさんも人のこと言えなくない?お姉ちゃんがGAのAMS技術者の娘さんなの。だから、コネがあるみたいでさ」
「補給の時にいた金髪の姉ちゃんか?あーあ、姉弟揃って顔がいいのは羨ましいぜ」
「顔がいいって……確かにお姉ちゃんは美人だけど……」
そう言いながらジンはじっとトーマスの顔を見つめ出した。
「なんだ……急にジロジロ見るなよ」
「いや、綺麗な顔してるなぁって」
「はぁ!?急に何言ったんだ!?」
突拍子に中々言われない事を聞き、トーマスは驚いた。しかし、それに対して「なにか変なこと言った?」と言わんばかりにジンはキョトンとした顔になった。
「なんで?化粧とかすればもっと良くなりそうなんだけどなぁ……」
「お前…銃を突きつけた奴によくそんなこと言えるな。普通そんな事されたら避けようとするだろ?」
「そりゃ…怖かったよ。いきなり出会ったら怒鳴りながら銃を突きつけて…。でも、事情を知ったら怒れるのも怒れなくて…」
ジンは苦笑しながらもふっと下を向いて話し始めた。
「前に言ったと思うけど、リリアナのネクストにお母さんを殺されたんだ。…1度も忘れたことも無い。だから今も探してるし、仇討ちの為にリンクスにもなった。トーマスさんだってそうでしょ?ホワイトグリントにお父さん殺されて憎んでる。マザーウィルがホワイトグリントに襲われたって話を聞いたよ。だから、ホワイトグリントに似た機体を見かけたらそりゃ銃突きつけられてもおかしくないよなって思っちゃって…」
「へぇ…。じゃあ、あの時のこと許すのか?」
「二度としないって言うなら許してあげる。それとランチ1回奢りね」
「ハハッ…それで許してくれるのか?お前安いもんだな。傭兵の癖に」
「そうかな?あと、お前って言わないで。ジンって名前があるんだから」
「はいはい……じゃあ、俺もさん付けはしなくていいぜ。堅苦しいのは苦手だからさ」
以前、銃を突きつけたのにも関わらず、ここまで絡んでくる相手は今まで出会ったこと無く、思わずトーマスは顔が緩んでしまった。
「ジン=叢雲さん。4番診察室までお越しください」
「案外早かったな」
「だね…また、話したいな…。いいかな?」
「ああ、こんな変わったヤツと会ったのは初めてだ。また話したい。次会う時も戦場じゃないといいな」
「ほんとだね…。じゃあ、またねトーマス!」
ジンはニコッと笑いながら診察室へ向かい、途中で振り返ってトーマスの方を手を振る。
また、それに応えるようにトーマスも軽く手を振る。
カラスと山猫。それぞれの生き方は違うが、戦場で生き抜く者同士。また座って話せる時があればいいとジンは心の底からそう思った。
次回からは本編に戻ります