ARMOREDCORE compensation 作:天武@テム
「……それで兄さん、急ぎの依頼ってなんなの?」
武がレンタルしたコンパクトSUVはジンを助手席に乗せてコロニー内のハイウェイを走って行く。
走行車両には一般車両は殆どなく、GAグループのトラックや装甲車両が多く走っている。
「計画都市フィリップ跡地を占拠しているテロリストの排除だとよ。至急してローゼンタール社に向かうように…だとさ」
リンクス戦争以前、企業によって一般市民への居住区として作られた人口都市である。しかし、人類の大半がクレイドルに住むようになってから都市だけが残り、反動勢力の拠点と化している場所が幾つか存在している。
「ふぅん……。でも、それってローゼンタール社が運営してるんでしょ?僕達、お姉ちゃんの会社のAGEから多少のバックアップ受けてるのに、なんで僕達に依頼がくるの?」
「それが……テロリストの正体がリリアナかもしれないって話なんだ」
ジンはリリアナの文字を聞くと、顔色が一瞬で変わった。ジンは今度こそ、オールドキングの情報を聞けるかもしれないと、思わず前のめりになりながら武の話を聞いていた。
「それは本当なの?そいつらの目的はなんなの!?」
「落ち着け、まだ決まったわけじゃない。それに、今は濃霧で視界が不安定らしい。ネクスト戦力がいるって話だが……まだ不確定要素が沢山ある。正直やりたくは無いが」
「僕やるよ!今度こそ分かるかもしれない…!!」
「お前……前に死にかけたの忘れてないだろうな?」
「忘れてない…!今度は大丈夫だって……」
武は呆れたようにジトっとジンを横目に見ると、ジンはたじろぎ大人しく座り直す。
「はぁ……まぁ、今回はお目付け役がいるから大丈夫か」
「お目付け役って…?」
「そう、ローゼンタールからも調査隊を出すみたいだ。自由都市を開発するための調査だとかなんとかって」
「へぇ、自由都市……か。なんでそんなものを?」
「さぁ?お嬢さんの聞いてみたらどうだ?」
「ん?お嬢さんって?」
国家解体戦争後、企業はコロニーを設立し、パックスエコノミカが施行され、住民に資源の節度ある配給が行われた。しかし実情は最低限の衣食住を渡すだけの奴隷制度であった。しかし自由都市は真逆で、クレイドルと同様に住民達が自由に売買が可能となり、国家解体以前の様な体制となる。
ジンは、お嬢さんって言葉にピンと来ずに首を傾げていた。
「お前……あんだけ仲良さそうに追いかけっこしてて分かってないのか?」
「追いかけっこって……もしかしてコスモスの事!?」
「ああ?なんだ違うのか?呼び捨てだしってきり」
「違うっていうか、呼び捨てでいいって言ってたし…それに、あの時はその…なんか見覚えのある人だったと思ったから思わず…」
「見覚えのある人ってそりゃそうだろ。覚えてないのか?」
「思い出せたらいいんだけど……小さい時の事を思い出すそうとしても、思い出せなくって…」
ジンは母親を殺された時以前の記憶を思い出せずにいた。それ故に、コスモスのことを思い出せずにいることを負い目を感じている。
コンパクトSUVは空港に着くとノアがローゼンタールのバッチを付けたスーツの男性と話していた。男性は兄弟の方を見ると会釈をした。
「彼が例のイレギュラーネクストを?」
「ええ、腕は下手なリンクスよりかは戦力になりますよ」
「ええ、期待しています」
そう言うと、男性は武の方に近づいて手を差し伸べた。
「初めまして、ジン=叢雲。今回はよろしくお願いします。噂通り、端正な顔出しですね」
「ありがとうございます。でも、ジンは俺じゃなくて…こっち」
男性はキョトンとした顔になり、ジンは深くため息をついた。
武の方がリンクスと間違えられる事はよくある。しかし、だからといって気にしていないわけではなかった。