ブレイククラッカーズ   作:silofuku

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ファイターズ・ウォークライ - 05

「タッグマッチ?」

 

アントンとカイレーは顔を見合わせた。

 

「そう、そっちの二人と自分達二人で。」

 

ピックラックは自分とスレードを指さして見せる。

 

「いやバトルをするとは言ったけどな、そいつも入れてってなるとな…。」

 

アントンはスレードをじろりと睨み付けた。スレードも半分笑いながら睨み返す。

既に一触即発といったところだ。

 

「まあまあそう熱くならないで。

 話してみたらこっちの…スレードさんはアントンさんとやりたいって話なんで。

 タッグマッチといっても実質タイマンのように戦えばいいんじゃないかなって。

 俺はカイレーさんと戦うと。

 もちろんタイマンで2組に分かれてもいいと思いますよ。

 こっちはバトルしたいだけなんで、それさえできれば。」

 

あくまで場の雰囲気を抑えるようにピックラックはニコニコと話して見せた。

 

「俺としちゃイフリートとやれればどうでもいいんだけどな。」

 

悪態をつくスレードにピックラックは笑顔のまま肘鉄を撃ちこむ。

今度はこちらが一触即発の状態である。

 

「…どうするよカイレー?」

 

「とりあえずこの状況でも下りないんだからそのまま倒しちまえばいいんじゃねえか?

 俺はこのジェノアスの相手やるからお前はいつも通りそっちの野郎をやっちまえよ。

 やるならそれぞれタイマンにした方が良さそうだがな。

 何も知らないカモがいるとやりずらいだろ。

 お互いさっさとカタつけちまおうぜ。」

 

カイレーは最近アントンがジェムズガンに押され始め、デカールを使う事を分かっていた。

ただ直接それを言ってしまうとアントンが気を悪くするのがわかっているので、それとなく言葉を濁す。

 

「そうだな。それじゃさっさと片付けて今日は店じまいにしようや。

 …ピックラックさんよ!それじゃそれぞれタイマンでやるとしようぜ!」

 

「はい、了解しました。

 それじゃあお互いバトルスペースが干渉しないように離れてやりましょうか。」

 

ピックラックとカイレーが森の奥へと移動し、アントンとスレードだけが残される。

二人が見えなくなるまで見送るとアントンは態度を変えた。

 

「これでもう誰に気兼ねする必要もねえな。」

 

「そりゃこっちの台詞だ。とっととやろうぜ。」

 

お互いにそれぞれの愛機へと乗り込む。何度も繰り返されたやりとり。

その動作に淀みは無かった。

 

 

BATTLE START

 

 

──────────────────────────

 

 

遠くから発砲音が聞こえてきた。スレードがアントンとバトルを始めたのだろう。

こちらもそろそろ始めなければならない。

 

「ピックラックさん、ここいらでいいんじゃないか?」

 

「そうですね。それじゃあさっきの続きを…とちょっとすいません。

 少し待ってください。」

 

ピックラックのアバターの動きが止まる。眼前に一時離席の表示が出た。

 

「やれやれ調子狂うな…。さっさと終わらせたいんだが。」

 

向こうの戦闘音を聞きながらカイレーは気を揉む。

 

「すみません、お待たせしました。それじゃやりましょう。」

 

二分弱でピックラックは戻ってきた。

きっとトイレか何かだろう。自分も行っておけば良かったか。

ガブスレイに乗り込みながらカイレーはそんな事を考えていた。

一瞬悩んだがすぐに思い返す。

 

いいや、どうせすぐに終わらせる。

 

 

BATTLE START

 

 

先程の戦闘とは一転、ガブスレイは様子見をせず即座にMAへ変形した。

そしてそのまま一気にジェノアスとの距離を詰めにかかる。

フェダーインライフルの狙撃距離に入ると同時にジェノアスへ撃ちこんだ。

ジェノアスは発射の瞬間左へと機体へブーストをかけた。

だがカイレーはそこへ間髪入れずメガ粒子砲による追撃を行う。

先程の戦闘とは違い攻撃の間隔が段違いに早い。

カイレーが遊びをやめて真面目にバトルを始めたのだ。

メガ粒子砲の着弾のエフェクトが発生した。だがカイレーは違和感に身構える。

HITの表示が出ないのだ。

瞬間着弾後方からビームショットが飛んでくる。

勘が当たった。

ジェノアスはメガ粒子砲着弾前に後方へバックダッシュして避けきったのだ。

ビームショットを避けつつMAからMSへ変形するガブスレイ。

互いにアドバンテージを得られぬままミドルレンジでの戦闘になる。

 

(前の動きを見る限りではあの連続攻撃を避けられるようには見えなかったが。)

 

ガブスレイは碗部からアームビームガンを展開すると、ジェノアスへ撃ちこみながらさらに接近する。

 

(ならこの距離は捌ききれるか?)

 

フェダーインライフルを逆に持つと大型のビ-ムサイズを展開するカイレー。

ジェノアスに接近戦を仕掛けようとそのままブーストで加速する。

 

だがジェノアスはその誘いに乗らず、後退しつつ肩のビームキャノンで阻害して距離を取る。

先程キャノンの爆発をモロに食らったカイレーは思わず突進をやめて距離を取る。

 

(接近戦に持ち込ませないつもりか。ショットガン持ちなのにチグハグな戦法だな。)

 

ジェノアスはなおもビームショットで牽制しつつ後退し距離を取ろうとする。

カイレーも攻めの手を決めかねているのか積極的には攻めてこない。

戦闘は硬直状態に陥る。

 

(とりあえずは順調…っと。)

 

ピックラックはガブスレイの動きを注意しつつ適度にショットを撃ちこんで見せる。

出来るだけ戦闘を長引かせること、それがピックラックの第一目標である。

あくまで今回のバトルの目的はデカールのデータ収集。勝利は二の次である。

本来なら自分で相手にブレイクデカールを使わせてやるつもりだったが、思わぬ味方が現れた。

あのスレードという男の言う事が本当かどうかはわからないが、本当にイフリートに勝てるのならこちらがリスクを負う必要は無い。

なら自分のやるべきことはカイレーを出来る限り足止めして、アントンへの合流を防ぐことだ。

十中八九カイレーもブレイクデカールを持っている。

下手に戦闘が白熱してデカールを使われたらこっちが勝てる可能性はほぼ無い。

なら適度に攻撃しつつ逃げまわるのが一番だ。

 

(後は痺れを切らしたカイレーをどう捌くか…だな。)

 

ガブスレイのフェダーインライフル狙撃からのメガ粒子砲、変形の隙を消しつつの接近。

ピックラックもカイレーの動きが前回の戦闘と動きが全く違う事を肌で感じていた。

恐らく今度は本気で来る。と心構えがあったから上手く回避出来たものの、かなり際どかったのも事実だ。

 

(でもこれくらいなら操作テクニックは俺とトントン。

 最高難度CPUで練習した分、当てられはせずとも避けるだけならいける!)

 

それにこちらはまだ本来のスピードで攻めていない。

一度限りだが奇襲できるアドバンテージがある。

 

(タイミング…大事だぜ。)

 

徐々に互いの緊張感が高まる。ジェノアスの後ろに森林地帯が見えてきた。

中に入ればジェノアスの動きはガブスレイに見えにくくなる。

だがジェノアスからもガブスレイの動きが木々に阻害され把握できなくなる。

ターニングポイント、二人は戦局の変わり目を感じ取っていた。

ピックラックは経過時間を確認する。

 

(二分半か、あっちの戦局はどうなってる?)

 

イフリートがブレイクデカールを発動したかどうか、それによってここからの戦法が変わってくる。

攻めに回るか受けに徹するか、悩む時間はもう残っていない。

 

「スレード!こっちは順調!そっちの今の状況だけ言え!」

 

ピックラックは予め開いていた1対1のクローズ回線でスレードに通信を入れる。

 

 

──────────────────────────

 

 

「返す余裕はねぇなあ!!」

 

思考を介さずそのまま叫ぶスレード。意識は全て目の前のイフリートへ向いていた。

今まさにジェムズガンとイフリートはクロスレンジの格闘戦を繰り広げている最中であった。

 

目の前で振り下ろされたヒートソードをショットランサーでいなすジェムズガン。

そこにすかさずイフリートの左手からグレネードが放たれるが、すかさずビームシールドを展開して防ぐジェムズガン。

そしてそのままビームシールドで前方を薙ぎ払うも、後退したイフリートはそのままショットガンを撃ちこもうとする。

しかしジェムズガンも脚のハードポイントにマウントしたビームライフルで牽制して相手の攻勢を許さない。

両者好むに好まざるに対戦を繰り返した結果、お互いの手の内が分かるようになってきていた。

互いの必殺の距離でも決定打が中々飛び出さない。

アントンはいつものように苛立ちを募らせる。

 

「今の所いつも通りだ!そろそろ動きが雑になってくるから攻勢をかける!」

 

「デカールは?」

 

「そこで追いつめてからだ!」

 

「OK。もうちょっと足止めはするけどなるべく急いでくれよな!」

 

イフリートは左手のガトリングシールドで弾幕を張りつつ、バズーカを織り交ぜてスレードに息をつく暇を与えようとしない。

 

「おうよ!もうちょっと頼むぜ!!」

 

ジェムズガンも回避運動でバズーカの致命傷をさけつつ、ランサーとライフルから撃つビームで相手の攻勢を削ぐ。

そしてまた吸い寄せられるようにクロスレンジへ突入する両機。

ヒートソードとショットランサーが鍔迫り合い、火花が飛び散った。

互いに一歩も引こうとしない。

接近戦なら自分の方が上だと言わんばかりに両者の意地がぶつかり合う。

その意地は力になり、せめぎ合い、弾きあって、またぶつかりあう。

 

「いい加減に負けを認めたらどうなんだ?毎回毎回よ!うざったいんだよ!!」

 

アントンからスレードに通信が入る。

 

「ああそうだな、ここいらでハッキリさせてやるよ。」

 

スレードはショットランサーの表面にビームを纏わせる。

 

「強ぇのは!俺の方だってな!!」

 

 

 

──────────────────────────

 

 

 

(少なく見積もってデカール発動まであと三分は覚悟しないといけないか。)

 

ピックラックは後退したまま加速して森林地帯へ突っ込む。

それを見たカイレーは一旦前進を止めて距離を取った。

 

「どうしたい、随分消極的じゃないか。それじゃ勝てないぜ。」

 

カイレーからピックラックに通信が入る。

 

「戦略ですよ。機動戦でやりあったらガブスレイ相手じゃ分が悪い。」

 

返事をしつつ森の奥へ奥へ歩を進めるジェノアス。

 

「そうかい、気分はポケ戦のバーニィってかぁ!?」

 

距離を取りレーダー範囲からジェノアスが消えた瞬間、カイレーはガブスレイを変形させて最高速で距離を詰める。

相手から離れた一瞬の気の緩みをつかれたピックラックは対応が遅れた。

 

「でもGBNじゃ事前に罠は貼れないな!」

 

ガブスレイのメガ粒子砲とフェダーインライフルの掃射がジェノアスを襲う。

 

「クソッ!やっぱり速え!!」

 

相手の奇襲にジェノアスはビームシールドを展開して防ぐ。

直撃は防いだもののダメージは免れなかった。

ガブスレイはそのまま攻撃を止めずに接近する。

あれ程開いていた距離が最早目と鼻の先まで縮まっていた。

カイレーはMA状態のまま減速せずクローで掴みにかかる。

 

「残念だったな!」

 

「まだまだ!」

 

しかしジェノアスはシールドを構えたままノーロックでビームキャノンを発射していた。

両者の間で爆発が起こる。

全方位へビームの散弾が飛び散った。先程の戦闘の再現だ。

だが今回はジェノアスはシールドを構えている。

対するガブスレイは加速したまま散弾の壁へと突っ込んだ。

キャノンによるダメージの差は歴然であった。

 

「クソッ!思ったよりやる!」

 

カイレーはピックラックを素人に毛が生えたレベルの強さだと思っていた。

実際先程の戦闘では負ける要素は見受けられなかったのだ。

認識を改めなければならない。カイレーはそう感じた。

少なくともピックラックは危機的状況に陥ってもパニックにならず対処する冷静さと度胸はある。

 

「それなら嫌でも機動戦に付き合ってもらうぜ!」

 

ガブスレイは加速するとジェノアスから距離を取りフェダーインライフルによる狙撃を始める。

ジェノアスの耐久力を細かく削り取る算段だ。

ジェノアスの動きは森林で読みにくいが、あちらも動きを制限されつつこちらを狙いにくい。

だがガブスレイはMAで上空を抑えながら動き回りつつ絶え間なく攻撃を撃ちこめる。

長期戦になればどちらが不利かは目を見るより明らかである。

 

「さあ追いつめたぜジェノアス!」

 

「くっ!」

 

「森で空から嬲られるか、平地で正面からやられるか!好きな方を選びな!」

 

カイレーから慢心が消えた。動きに隙が無くなる。

ジェノアスもビームショットで応戦するが、飛び回るガブスレイに上手く当てることが出来ない。

射程距離からもビームショットではフェダーインライフルと撃ち合える地力は無かった。

 

(だが、これでいい。)

 

ピックラックは追い詰められつつも冷静であった。

ガブスレイがロックに入るととりあえずビームを撃つが当てる気はない。

気持ちは回避に専念して被弾を避ける事を優先していた。

 

(開始五分経過…、そろそろこっちも勝負かけないと怪しまれるな。)

 

ピックラックは通信回線を切りかえる。

 

「スレード!そろそろ時間稼ぎも限界だ!

 こっち仕掛けるから後はなんとかしてくれ!!」

 

そう叫ぶとピックラックは森から開けた場所へ飛び出した。

 

 

──────────────────────────

 

 

「了解!こっちもそろそろだ!」

 

接近するイフリートの攻撃をかわしながら、隙をみせた所をビームバズーカで確実に大きく耐久力を削るスレード。

頭に血が上ったアントンの動きは明らかに先程より精彩を欠いていた。

対して幾度も対戦を重ねて相手の癖を覚えたスレードの攻撃は冷静であった。

徐々にイフリートのダメージが蓄積していき、ついに耐久力が危険域に達する。

 

「どうしたアントンさんよ?そろそろ負けを認めたらどうだよ!」

 

「あぁ!?何勝ったつもりになってるんだテメェ!」

 

スレードはアントンを煽り、さらにラッシュをしかける。

アントンは舌打ちすると画面のボタンに手を伸ばした。

 

「そんなにやられてえなら!いつも通りそのジェムズガン、壊してやるよ!」

 

一瞬スレードの動きに負荷がかかった。

スレードだけではない。同じ瞬間、ピックラックにもカイレーにも体感できる程のラグが発生した。

それはこのバトルフィールド全域に影響を及ぼすものだった。

誰もがその理由を察知する。

 

 

ブレイクデカール!

 

 

イフリートの周りを縁取るように黒い炎が揺らめきだす。

スレードは深呼吸すると大きく息を吐き出した。

 

「さぁ、決着付けようぜ…アントン!」

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