ブレイククラッカーズ   作:silofuku

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ファイターズ・ウォークライ - 10

「それで策はあるのか?」

 

カイレーがピックラックに問いかける。

 

「無い。」

 

即答するピックラックにスレードも思わず呆気にとられる。

 

「いやお前なんかわかった風な事言ってただろ!策無いのかよ!?」

 

「理屈が何となく分かっただけであんな化け物に勝つ方法はわかんねえよ!」

 

言い合いを続ける三人へバズーカとミサイルが飛んでくる。

それぞれちりじりにばらけて直撃を避けた。

 

「ただ囮というか削り役は決まってる。頼んだぜ、カイレー!」

 

「今お前囮っていったろ!?」

 

攻撃を避けながらツッコミを入れるカイレー。

 

「相手はブレイクデカールで強化されたバケモンだ。

 ただのガンプラで下手に突っ込んだら火傷程度じゃ済まないかもしれないだろ。

 だから同じブレイクデカールで強化できるお前に頼みたいんだよ。

 ガブスレイならスピードがある分突撃も離脱も容易。

 下手に攻撃食らって即死もないだろうし、相手に削りを入れつつ戦法見極めるには適役なんだよ。」

 

多少腑に落ちない所もあるが、状況が状況だ。

アントンを救って運営が来る前に逃げるためにも迷ってる暇は無い。

 

「わかったよ!メインでやりあうのは俺がやる。

 だが倒せるかどうかは分かんねえぞ!」

 

「ああアイツ相当固いぞ、バケモンになる前より固くなってる。

 ビームバズーカ直撃してもピンピンしてやがる。」

 

スレードも見たままの事を二人に伝える。

 

「決定打か…ジェムズガンのランスにデカール使ったガブスレイのフェダーイン、それに…」

 

「お前の一斉射…というか散弾じゃなくてビーム束ねて撃てないのか?」

 

先程ジェノアスから痛手を食らったカイレーが案を出す。

 

「出来る。曲射の応用でビームの方向性を定めれば一纏めにしてぶち込める。」

 

「へえ、ジェノアスはそんなことできるのか。」

 

スレードは興味深そうにジェノアスの武装を見つめる。

 

「決まりだな、俺がガブスレイで何とか削りながら隙を作る。

 後はタイミングを合わせて全員でぶち込む。」

 

「それくらいしか策は無いわな。」

 

話している間にもミサイルをまき散らしながらイフリートが近づいてくる。

既にガトリングの射程内にまで近づいてきていた。

 

「俺とスレードで援護する!頼むぜカイレー!」

 

「わかった!アントンお前も覚悟決めろよ!」

 

「ああ!だがカイレー、もしモニタにもう一回デカールのポップアップが出たら絶対に押すな!

 俺のイフリートはそれでおかしくなったんだ!」

 

「了解!」

 

(へえ…ポップアップ、ね。)

 

ピックラックは二人の会話を横聞きしながら考える。

二段階目の強化。ブレイクデカールにはどうやらまだ先があるようだ。

 

(興味深いが今は後回しだ!)

 

相手へ銃口を向けるピックラック。

 

「準備いいなスレード!」

 

「よっしゃ!行くぜ!」

 

ジェノアスとジェムズガンによる制圧射撃が始まる。

二人に反応して突撃してくるイフリートを横目にガブスレイはブレイクデカールを発動させた。

ガブスレイはMAへ変形すると、上空からイフリートを揺さぶりにかかる。

 

「我慢しろよアントン!」

 

「気をつけろカイレー!」

 

メガ粒子砲とフェダーインライフルによる攻撃、イフリートは避ける素振りを見せずにその体で受けてみせる。

悲鳴を上げるイフリート。

致命傷とまではいかないが、デカールを使ったガブスレイの攻撃はイフリートへ確実にダメージを与えていた。

 

「よし!これなら行けそうだ!」

 

効果を確認しながら追撃の体制にはいるガブスレイ。

だがここでイフリートの行動に変化が起こる。

 

「何だ?」

 

まるで痛みを感じたかのように、イフリートが体を丸めてうずくまる。

体に生えるコールドクナイが一斉に逆立ち、四方八方に飛び出した。

 

「ぐうっ!」

 

高度を上げて被弾を避けるガブスレイ。

地上にいるピックラック達もシールドで対応する。

 

「範囲攻撃持ちかよ!厄介だな。」

 

「発生に予兆があるだけまだマシって所か。」

 

イフリートの攻撃パターンが確立しきれない。他に使ってない武装はあるだろうか。

二人はイフリートの攻撃方法を思案する。

 

「クナイの攻撃力自体はそこまででもない。もう少し近距離で仕掛ける!」

 

ガブスレイがさらに深くイフリートの間合いへ踏み込む。

この時、スレードの頭に疑問がよぎった。

 

(そういえばあいつ、食った右腕が再生してたけど手に持ってたアレは…)

 

それは一つの予感へと変わる。

 

「カイレー!気をつけろ!!」

 

ガブスレイのモニターに映るイフリート、その足元で一瞬何かが動いたように見えた。

次の瞬間、画面の横に巨大な塊が映り込む。

 

「うおおおお!?」

 

直前のスレードの通信もあり、カイレーの体はその物体に反応した。

ガブスレイはすんでの所で巨大な何かをクローで掴んでみせる。

それはヒートソードである。再生の際に尻尾の先端に融合されたイフリートの主兵装だ。

掴みはしたものの、その質量と速度にガブスレイは機体ごと押し込まれる。

イフリートはそのまま尻尾一薙ぎすると、ガブスレイを森の中へ叩き込んだ。

 

「カイレー!」

 

「大丈夫だ!何とかな。」

 

だが今の一撃は痛かった。ダメージもあるが何より左のクローが完全にひしゃげている。

イフリートの尻尾はまるで敵を警戒する蛇のようにうねうねと空中で蠢いていた。

 

「ありゃあ厄介だぜ。」

 

「そうだな。」

 

イフリートの持つ武装の中で一番攻撃力のあるヒートソード。

それが尻尾に接続されたことで射程が中距離まで伸びていた。

それだけではない。尻尾によるしなりを伴い威力まで増している。

 

「奴さんさっきからバカスカ撃ってきてもリロード時間はほとんどない。弾切れは期待できない。」

 

「その上で近接対策もバッチリと。」

 

「どうする?ここはもう突っ込むしかないか?」

 

構えるスレード。だがピックラックは一人冷静だった。

 

「いや、突破口は見えた。」

 

「本当か!?」

 

「二人とも聞いてくれ、今から全員でコイツに仕掛ける。」

 

「仕掛けるったって…今の攻撃どうするんだ?」

 

カイレーからもっともな疑問が飛ぶ。

 

「むしろ今の攻撃がいい。あれがいいんだ。」

 

「どういうことだ?」

 

「ヒートソードで攻撃する時、他の攻撃が止んだ。付け入る隙はあそこしかない。」

 

そう、イフリートはヒートソードで攻撃する時だけは一瞬他の攻撃を止めていた。

ピックラックはその異変を見逃さなかった。

 

「近接と射撃の攻撃ロジックのかみ合わせか何かは知らないが、相手は結局CPUだ。

 決められた行動しか取れない。あいつが見せた穴を突く!」

 

「…了解した。俺はどうすればいい?」

 

「幸いイフリートは鈍重な見た目に合わせてあまり回避をしないようになってる。

 …ムカつくがな。

 ガブスレイの攻撃が普通に通るのは恐らくデカール使い同士の戦闘は想定してないからだ。

 そのままボディを狙ってダメージを与えてくれ!」

 

「分かった。お前はどうする。」

 

「ある程度ダメージが通ったらドッズビームの纏め撃ちをしつつ囮をやる!

 シメはスレード!お前やれ!」

 

「分かった!だがあのヒートソードのスピード捌けるのかよ?」

 

「無理だな。だから一発勝負になる。どっちにしろそろそろ決めなきゃ時間切れだ。」

 

風はますます強まり、そこかしこで小さな竜巻が発生するまでになっていた。

このままではフィールドすら破壊しかねない勢いだ。

状況を顧みてスレードも腹を決める。

 

「わかった、任された!」

 

「良し!カイレー!」

 

「応よ!!」

 

ガブスレイは飛び上がると変形できる上半身だけMS形態になりイフリートへの全弾発射を行う。

その攻撃に反応してイフリートがガブスレイの方を向く。

対抗射撃が来るも構わず撃ち続けるガブスレイ。

デカールで強化された連続攻撃がイフリートの腹部に直撃する。

 

「のわああああ!!」

 

衝撃に慄いたアントンから悲鳴が上がる。合わせるようにイフリートからも悲鳴が上がった。

 

「今助けてやるからちょっと我慢しな!また揺れるぜ!!」

 

ジェノアスが肩、腰、腕の武装を全てイフリートへ向ける。

 

「こいつがジェノアスの全力だ!受け取りな!!」

 

ジェノアスから一斉にビームが放たれる。

だがそれは今までの散弾ではなく、全てが纏まって一つ塊のとなりイフリートに襲い掛かった。

ロックオンに反応したのかイフリートがジェノアスへ振り返る。

渾身の一撃は見事イフリートの腹部へヒットした。

 

「入った!」

 

だがイフリートは倒れない。

装甲の損壊はあったが、構わずジェノアスへ射撃を続行する。

デカールによるさらなる強化、耐久力は先程までの比ではなかった。

 

しかし想定通りだ。この程度の攻撃でこいつが倒れるわけは無い。

ピックラックはこの事態を想定して動いていた。

 

「こんな状況で都合のいい事なんてあるワケねえよなぁ!!」

 

ビームユニットからビームを放つジェノアス。

ビームソードの形成に、ショットと曲射による形態変化の合わせ技。

まるでワイヤーのようにビームは伸び、イフリートの破損した腹部装甲を貫いた。

イフリートが叫び声を上げる。

ピックラックは刺さったビームの先端を碇状に変形させ、体からすっぽ抜けないよう固定した。

 

「カイレー!もう一回ブチこめ!!」

 

「分かった!」

 

二方向からの同時攻撃がイフリートを襲う。

それが攻撃のスイッチなのか、イフリートが体を屈めてコールドクナイの射出態勢を取る。

イフリートの貼る弾幕が途切れた。

ジェノアスはブーストを強めてさらに距離を詰める。

それを見たスレードが叫んだ。

 

「ダメだ!ピックラック!それじゃクナイを避けられねえ!」

「避ける気なんてねえよ!お前も構えろスレード!

 タイミングはここしかない!行くぞ!!」

 

ピックラックの意図に気づき、はっとするスレード。

ジェムズガンはバックパックからマルチランサーを構えると、穂先にビームを纏わせた。

 

「オッケー、ピックラック!!」

 

ジェムズガンは槍を構えるとブーストを全開にしてジェノアスに続く。

 

「そうだ、それでいい!」

 

イフリートからコールドクナイが襲い掛かる。

ピックラックはビームシールドを展開しながら被弾も構わずに突っ込んだ。

着弾の衝撃が襲い、ジェノアスの速度が一瞬落ちる。

ジェムズガンはジェノアスを盾にしてそのままさらにトップスピードを上げた。

 

三体の距離が縮まる。

 

ぶん、と空気を切り裂く音がした。

ヒートソードがジェノアスの左わき腹から右肩にかけて逆袈裟切りにする。

ジェノアスは体制を大きく崩したがそのままイフリートへ突撃した。

そのコックピット内ではアラートが鳴り響く。

 

「ピックラック!!」

 

「まだ動く!!」

 

イフリートは組みついたジェノアスを両手で掴むと、その手に融合した武装を撃ちこみながら頭突きを始める。

さらに頭突きと合わせてインパクトの瞬間、頭部と融合したショットガンが直接ジェノアスに撃ちこまれた。

ジェノアスのコックピット内に警報が鳴る。撃破されるまでもう数秒も無いだろう。

 

「今だスレード!俺ごと突き刺せ!!」

「ああ!!」

 

イフリートの攻撃ターゲットはより距離の近いジェノアスへと移っている。

ジェムズガンは完全なフリー状態にあった。

 

「こいつで…くたばれ!!」

 

ランサーを突き出す瞬間、イフリートの目がジェムズガンを見た。

頭部ショットガンの発射口に光が走る。

だが、ショットガンが発射される前にイフリートの頭部で爆発が起こった。

 

「もう十分暴れただろ、お前は。」

 

それはガブスレイからのフェダーインライフルによる狙撃だった。

2体との近接戦闘中に飛んできた遠距離狙撃。

優先攻撃対象を計算するイフリートの思考の隙を、マルチランサーは突き破った。

 

イフリートから断末魔の悲鳴が上がる。

その体は萎み、元の姿を取り戻していった。

纏いつく炎が掻き消え、最後に残った紫の火の粉が宙で消える。

その動きが完全に停止すると、待っていたかのように雲の切れ間から光が射し込んだ。

 

長く降り続いた雨が明ける。

 

 

「終わった…のか?

 そうだアントン!無事かアントン!」

 

カイレーはアントンへ通信をかける。

イフリートがフィールドから転送され、跡地からアントンが現れた。

 

「ああ…無事だ…。」

 

「…ったく、心配かけさせやがって。」

 

同じくジェノアスがハンガーへと送られ、ピックラックが姿を現す。

 

「お疲れさん、お前のお蔭で何とかなったよ。」

 

スレードは笑いながらピックラックに労いの言葉を駆けた。

 

「いやー…、ダメかと思ったわマジで。」

 

そう言ってピックラックは力無く笑う。

 

「俺もう当分バトルはしたくないわ。」

 

言い終わるや否や、ピックラックは雨で濡れた地面に大の字で倒れ込んだ。

大きくため息を吐いたその顔は達成感と脱力感に包まれていた。

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