Nemesis~世界最強の戦争屋~   作:BIGBOSS0514

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さあてと、ちゃんとブリーフィングから書きますか・・・
基本3人称視点です。

一応、調べがつく職の人間は実名で出しますがフィクションである事をご理解下さい。

けど、書いてるうちにこれってミッション難易度的にさっさと終わりそうな予感したので戦闘シーンは今回はありません。次回から激しく・・・ね?


File02 Red Wing

2005年6月26日、20:29(EST)

アメリカ、ワシントンD.C.

 

 

 

ホワイトハウスのウエストウイング地下にあるシチュエーションルームは、数時間前に夕方の定時報告を終えたのにもかかわらず、人の出入りでごった返していた。

 

一人の男が入ってきたのを見て、着席していた全員が起立して彼の方を向き直った。

 

 

 

「挨拶はいい、それよりも状況が知りたい」

 

 

 

その男ー第43代アメリカ合衆国大統領ジョージ・W・ブッシュは足早に席に着いて言った。

 

 

 

「大統領、アメリカ中央軍司令部と繋がりました。モニターに出力します」

 

 

 

モニターにはアメリカ中央軍司令官のアビゼイド陸軍大将が映し出された。

 

 

 

「将軍、状況は?」

 

 

 

ブッシュ大統領が緊迫した面持ちで尋ねる。

 

 

 

「SEALsの即応チームは全滅、最初に派遣された4名の内1人は死亡が確認されています。現在、衛星をアフガニスタン上空に待機させ生存者を捜索していますがまだ見つかっていません。周辺の第3海兵師団から捜索部隊を編成、待機させていますが護衛につけるガンシップが確保できません」

 

 

 

アビゼイド大将が淡々と状況を説明する。

 

 

 

「アメリカのために戦っている者達を他国に置いていくわけにはいかない、何が何でも救出するのだ!」

 

 

 

「落ち着いてください大統領、彼らは必ず救出します」

 

 

 

興奮するブッシュ大統領を右側2番目の席に座っているアメリカ統合参謀本部議長のマイヤーズ空軍大将がなだめる。

 

 

 

「大統領、パターソン国連大使からです」

 

 

 

ライズ国務長官が報告する。

 

 

 

「国連だと?今更なんだこのタイミングで、後にしろ!」

 

 

 

ラムズフェルド国防長官が声を荒げる。

 

 

 

「ですが、緊急の案件だと・・・」

 

 

 

「分かった、繋げ」

 

 

 

大統領は回線を繋ぐよう指示する。

 

 

 

モニターにニューヨークの国連本部にいるパターソン大使が映し出される。

 

 

 

「大統領、先程ロシア主導による安保理の緊急集会が行われ、これ以上アフガニスタンでの軍事行動を認めないという決議案が提出されました。これについて我が国以外の常任理事国が賛成を表明しています」

 

 

 

「否決だ!今国連に構っている暇などない!!アメリカの為に戦っている兵士たちの命が懸かっているのだぞ!!」

 

 

 

ラムズフェルド国防長官はいきり立っている。

 

 

 

「丁度、その件についても話が出ました。もし、この決議案をアメリカが呑むのなら国連安保理は”ネメシス”を中心とするSEALs隊員救出チームを30分以内に出動させられるとの事です」

 

 

 

「”ネメシス”ですって!?」

 

 

 

今度はライズ国務長官が素っ頓狂な声を上げる。

 

 

 

「ダメだ、これは国連が首を突っ込んでくる事ではない、アメリカの問題なのだ!自国の兵士を自国で救えないなどとなったら、士気が下がるどころか、この国の威厳は失墜するぞ!!」

 

 

 

ラムズフェルド国防長官が猛烈に反対する。

 

 

 

「大統領、恐れながら、護衛のガンシップを用意して捜索を開始するまでにあと最低10時間はかかります。アメリカ本国から特殊部隊を派遣したとしても同様です。彼らの命を最優先にされるなら、国連の決議案を承認されるのが得策かと思います」

 

 

 

マイヤーズ空軍大将は軍の状況を確認し、冷静に大統領に助言をする。

 

 

 

「大統領!もしこのような決議案を呑めば、アメリカは末代まで笑い者になりましょうぞ!!」

 

 

 

ラムズフェルド国防長官がなおも食い下がる。

 

 

 

「大統領、ご決断を」

 

 

 

パターソン大使が催促する。

 

 

 

「・・・分かった、国連決議案を呑もう」

 

 

 

「大統領!!!」

 

 

 

ラムズフェルド国防長官が叫ぶ。

 

 

 

「ラムズフェルド君、私は決したのだ。これ以上何かあるのなら私は君を解任せざるを得ない」

 

 

 

大統領の有無を言わせぬ口調に、流石のラムズフェルド国防長官も黙らざるを得なかった。

 

 

 

「パターソン君、至急国連安保理にこの事を通達したまえ」

 

 

 

「了解しました。大統領のご英断に感謝します」

 

 

 

パターソン大使はそう言ってモニターを切った。

 

 

 

「ふぅ、これで片付くのだろうか・・・」

 

 

 

ブッシュ大統領は大きなため息をつく。

 

 

 

「ええ、きっと彼らは完璧に任務を遂行するでしょう」

 

 

 

ネグロポンテ国家情報長官がオブザーバーで参加していたゴスCIA長官を見て、皮肉交じりに同意する。

 

この時、新設された国家情報長官とその配下に入る事となったCIA長官との間には軋轢を生じていた。

 

さらに、CIAは以前”ネメシス”にパラミリチームを全滅させられていた為に、彼らの活躍はあまり面白くはない事なのである。

 

シチュエーションルームに重い空気が流れていく―。

 

 

 

 

 

2005年6月27日 05:12(AFT)

アラビア海

 

 

 

朝日に照らされたアラビア海上に、空母『シャルル・ド・ゴール』率いるフランス艦隊が展開していた。

 

空母『シャルル・ド・ゴール』は2001年に新造されたばかりの原子力空母で、アメリカ以外では初の原子力空母という事で世界中から注目を集めていた。

 

その艦内にある、食堂兼ブリーフィングルームには多くの人が集まっていた。

 

 

 

「艦長、統合参謀本部から作戦"ブラックスパイダー"の実行許可が降りました!」

 

 

 

若い下士官が部屋に飛び込んできて報告する。

 

ブリーフィングルームにいたのは、艦長、航空長、飛行隊長と”ブラックスパイダー”と言われた作戦に参加するパイロットの他に、フランス出航時から随行していた海軍コマンドーのメンバーであった。

 

 

 

「よし、”ネメシス”に回線を繋いでくれ」

 

 

 

艦長が近くにいた通信士官に命じる。

 

暫くして、部屋のモニターに大きな作戦テーブルと、それを取り囲む黒の戦闘服や飛行服に身を包んだ兵士達が映し出された。

 

 

 

「こちらシャルル・ド・ゴール。”ネメシス”聞こえるか?」

 

 

 

艦長がフランス語で呼びかける。

 

 

 

「ああ、艦長。良好だ」

 

 

 

テーブルの中央にいた男―ネメシスのリーダーであり、”世界最強の傭兵”である赤城透がフランス語で呼びかけに応じる。

 

 

 

「君達も知っている通り、先程国連から”ブラックスパイダー”作戦の許可が下りた。こちらにいる海軍コマンドーの出撃用意はいつでも整っている。指示を乞う」

 

 

 

「作戦の説明はハワードにしてもらう、ハワード」

 

 

 

ハワードと呼ばれた男が透と入れ替わりで中央に立つ。

 

 

 

「作戦を説明する。なお、作戦伝達及び現地での指示は全てフランス語で行う。フランスチームはアフガン時間0530に、”ネメシス”チームは0830に拠点を出撃、1030でB2地点とD1地点にそれぞれヘリボーンを敢行する。それに先駆け我々のAC-130が出撃し、作戦地域の監視又は支援に当たる。フランスのヘリチームはヘリボーン完了後、一度作戦空域を離れて米軍の空中給油を受けろ。地上部隊は分隊ごとに行動し米軍の生存者及び遺体を探せ。細かい指示は作戦中に上空のAC-130から出す。フランスチームには発信器が渡してあるはずだ。もし米軍兵の遺体を見つけたらそれをつけておけ。生存者だった場合は近くの開けた場所を指示する、そこまで彼を移送しろ。我々のヘリで回収する。遺体を全て発見出来次第、撤収し回収作業を米軍に引き継ぐ。質問は?」

 

 

 

「遺体の判別が困難な場合は?」

 

 

 

フランスのコマンドー部隊員が聞く。

 

 

 

「その場合はその周辺に発信器を置いておくだけでいい。他には?」

 

 

 

他に誰も質問をする者はいなかった。

 

 

 

「よし、ではこれより”ブラックスパイダー”作戦を開始する」

 

 

 

透の号令と共に全員が動き出した―。

 

 

 

 

 

2005年6月27日 04:12(EST)

アメリカ、ワシントンD.C.

 

 

 

「はい、了解しました」

 

 

 

昨日の重苦しい雰囲気のまま一夜を越したホワイトハウスのシチュエーションルームで、マイヤーズ大将が緊張した面持ちで受話器を置いた。

 

 

 

「何か進展はあったのかね?」

 

 

 

丸一夜寝ていないのでブッシュ大統領の表情にも流石に疲れが見える。

 

 

 

「・・・ネメシス・フランス海軍合同チームがSEALs隊員1名を救出し、即応チームを含める19名の遺体全てを発見しました。先程、第3海兵師団が遺体の接収作業に入りました」

 

 

 

マイヤーズ大将が苦悶の表情を浮かべて報告する。

 

 

 

「そうか・・・一人は助かったんだな」

 

 

 

ブッシュ大統領が呟く。

 

 

 

「しかし、あまりにも大きすぎる代償です」

 

 

 

ライズ国務長官が嘆く。

 

 

 

「全くだ、多くのアメリカ人が死んだ」

 

 

 

ラムズフェルド国防長官が先程とは打って変わって沈んだ声でライズ国務長官に同意する。

 

 

 

「それにしても、よくこの短時間で・・・まだ作戦開始時刻から3時間程だぞ」

 

 

 

ネグロポンテ長官が話題をネメシスの事に移す。

 

 

 

「ええ、これ程早く見つかるとはこちらも想定していませんでした」

 

 

 

マイヤーズ大将が冷や汗をかきながら同意する。

 

何せ統合参謀本部の見積もりでは生存者の発見まで丸一日以上、遺体の回収も含めたら一週間はかかると予想していたのである。

 

これでは、軍の無力さを露見させてしまっているのと同義である。

 

しかし、幸いにもブッシュ大統領を始め国家安全保障会議のメンバーがそれに気づく事は無かった。

 

 

 

 

 

2005年6月27日 12:59(AFT)

アフガニスタン上空

 

 

 

「あ〜あ、今回も大した事無かったな」

 

 

 

着々と撤退準備の進むアフガンの米軍基地で給油後、南南西へ向けて飛び立ったAC-130U機内の特殊作戦ユニットで隼人がぼやく。

 

 

 

「ほ〜んとそうよ〜ハワードちょっとアンタ殺り過ぎよ!私たちの出番なくなっちゃったじゃない!!」

 

 

 

ミレーナも同意し、ハワードを責める。

 

というのも、降下時刻1030の直前にフランス軍のヘリボーン地点周辺にSEALsを襲ったと思われるゲリラを発見し、AC-130Uの火器を以ってこれを全滅させてしまったのだ。

 

これにより、全チームは生存者及び遺体捜索だけに従事する事となったのだ。

 

 

 

「まぁそう怒るな。お前らだけならまだしもフランス軍兵士の命も預かっているのだ。お前達の楽しみは次の仕事に取っておけ」

 

 

 

ハワードが苦笑しながら二人をなだめる。

 

 

 

「ボス、国連本部から通信です」

 

 

 

戦闘システム管制官のサラが報告する。

 

 

 

「・・・分かった、出よう」

 

 

 

後ろの方にいた透が席を立ち、渡されたヘッドセットを装着する。

 

 

 

「作戦おめでとう、透」

 

 

 

「何だお前か。仕事の話か?」

 

 

 

電話の相手は今作戦で留守番となり、ニューヨークに待機していたメンバー、デッカードだった。

 

 

 

「ああ、ボス。緊急事態だ。」

 

 

 

「・・・なにがあった」

 

 

 

「さっきヨーロッパ各地で自爆による同時多発テロが起きた」

 

 

 

「!?・・・それで」

 

 

 

「犯行声明はまだ出ていないが、被害国情報部はアルカイダの仕業だと断定している。再び安保理が招集され、今回のテロについて非難すると共に、五大国の協議でアルカイダ本拠地の制圧と親玉のウサマ・ビンラディン殺害を決めたんだ」

 

 

 

「それで、俺達の出番と言う訳か」

 

 

 

「ああ、そうだ。必要な物資や兵員は全て手配すると言っている」

 

 

 

「承諾したと伝えておけ。それと、お前もこっちに早く来い」

 

 

 

「ああ、じゃあまた後で」

 

 

 

回線は切れた。

 

 

 

「サラ、散らばっているメンバーをフリゲート島に集めろ。緊急だ」

 

 

 

「了解」

 

 

 

サラがすぐに実行に移る。

 

 

 

「ボス、何かあったのですか?」

 

 

 

先程の内容を聞いていないハワードが尋ねる。

 

 

 

「欧州で同時多発テロだ、犯人はアルカイダ。連中の殲滅が今回のミッションだ」

 

 

 

その場にいた全員が息をのんだ。

 

テロの事もそうだが、結成以来、本格的な殲滅戦はこれが初めてとなるのだ。

 

その事に全員がプロと言えど緊張したのである。

 

 

 

「・・・多くの罪のない人々が死んだ。これは到底許されるべきではない。”ネメシス”の力を以て奴らを地獄へ送り届ける」

 

 

 

透のこの言葉に全員が落ち着きを取り戻し、自分の使命を自覚した。

 

かくして、彼らは後に”海神の槍”と呼ばれる作戦に従事していくこととなるのだった。

 

 

 




一つ時代錯誤の点で説明しておきますと、ミレーナは設定でSEALs出身となっていますが、女性がSEALsに入隊できるのは2015年からです()

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