とあるハンターのゴブリン討伐紀行   作:毒素

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剥ぎ取り

フー、と溜まっていた空気を吐きだして、肩を回したハンターはあたりを見回す。

ハンターが撫で切りにした狼の死体が転がり、あたりは死臭で満ちていた。

 

 

「さて、と。

剥ぎ取りでもしましょうかね。

めぼしいものが取れるといいんだけど」

 

 

ハンターはめんどくさそうに、肩を竦めたがすぐにボス狼の死体を検分する。

毛皮に触れると毛質は硬く、灰色の毛皮の下はいくつも古傷があったことからそれなりに歴戦の個体だったことがうかがえた。

狼にしてはやけに賢しかったのも長い年数生き残って来たことで培われた技能か、

ドス個体によくある統率力から来たものだろうと適当に推察をする。

そんなドスならぬボス狼の毛皮をできるだけ傷つけないように剥ぎ取り、

アイテムポーチに保管する。

骨も獣骨に近く、有効活用可能なことにハンターは満足げだった。

 

 

「小型モンスター狩りだったら妥当な素材だな」

 

 

他の個体もサクサクと解体し、剥ぎ取りを行ううちに、

あたりは明るくなり、朝日が昇り始めた。

ポーチに入り切らない分の素材を近くに放置されていた荷馬車の荷台に積み、

大雑把に片付けも同時に行っていたため時間がかかってしまった。

朝日が完全に上る前に全ての剥ぎ取りが終わり、ハンターは仕事をやり切った顔で朝日を浴びた。

何も考えずに向かってきた狼を斬り捨てたせいでいくつか毛皮を剥ぎ取れなかったが、

掃討が目的だったハンターは気にしていない。

 

「上々上々!

後は村に報告すれば俺の依頼完了!」

 

 

ガッツ、と拳を強く握ってハンターは、意気揚々と牧場から村まで帰る。

ふんふん、と鼻歌を鳴らすハンターが歌うのは、昔とある村で出会った愛らしい少女が歌っていた曲だった。

まさに上機嫌で、スキップでもしそうくらいにはテンションが上がっているハンターだったが、

不安な夜を乗り越え、清々しい朝を迎えた村人たちはハンターの姿をぎょっとした。

黒と赤の厳めしい装備からは獣の臭いと血の臭いが混ざったにおいを漂わせ、

低く、良い声で鼻歌を歌いながらスキップしている鎧の男に、誰もが怯え、遠巻きにした。

 

そんなことに気が付かないハンターは、そのまま村長の家まで行き、ドンドンと強く村長の家の扉を叩いた。

ある意味生粋の仕事人のハンターの頭の中に、「早朝だから遠慮しよう」などという考えはない。

依頼を終えたから報告を行う、という仕事をこなしたまでだった。

 

案の定、朝早くからたたき起こされた村長は不機嫌そうにでてきたが、

血の臭いを漂わせたハンターを見て、一瞬で固まった。

目の前で固まった村長を見て、首をかしげたもの徹夜明けで眠いハンターは手早く済まそうと話を切りだした。

 

 

「村長さーん。

依頼済ませましたよー」

 

「ッは!?もうですか!?

う、嘘を言うのも大概に…」

 

「本当ですって。

これで証拠にならないですか?」

 

 

アイテムポーチから取り出したのは、毛皮。

それも通常の狼よりも一回り以上程度大きく、分厚い皮に村長は目を瞬かせた。

震える指で毛皮を指さし、ハンターと毛皮の間で視線を泳がせる。

 

 

「これを、狩ってきたんですか?」

 

「そうですけど。

詳しい報告は冒険者ギルドにしますけど、先に駆逐したっていう報告だけしておこうかと思って」

 

「そ、それはわざわざ・・・ありがとうございます。

そ、そ、それで狼の群れが襲ってきた理由やなんかはわかりましたかね…?」

 

「学者じゃないんで詳しくはわかんなかったですけど、恐らく群れのリーダーが賢かったからだと思いますよ。

野生の狼にしてはやけに統率が取れてたんで。

ドスにでもなりかけてたんじゃないかな?」

 

「ドス…?」

 

「あぁ、いや、こっちの話。

とりあえず30匹くらい狩ったから大丈夫だとは思いますけど、

しばらくは様子見してダメそうだったらまた呼んでください」

 

「…30匹の狼を、一人で狩ったんですか?」

 

「そりゃあ、依頼ですから」

 

個人の裁量にもよるが依頼があれば何でもやるのがハンターだ。

鬼畜の様な依頼でもやらなきゃいけないときはやるし、

その鬼畜クエストをこなせるように腕を磨くのもハンターの役目だと思っていた。

 

「あんた、一体…」

 

「ただのしがないハンターですよ。

将来サムライになりたいだけの、ね」

 

 

かすかに笑った気配はしたが、その顔は不気味な面で隠されており見ることはできなかった。

仮面で感情がうかがえなかったハンターが初めて見せた人間らしい一面に村長は目を見張ったが、

そんな村長の様子に気が付かなかったハンターは毛皮をアイテムポーチにしまった。

 

「それじゃあ、俺は一旦街に戻ります。

何かあったら気軽に呼んでくださいね」

 

 

少し頭を下げて会釈をすると、軽い動きで村長から背を向けて歩き始めた。

ガシャガシャと堅い金属のようなものが擦れる音を鳴らしながら去っていくハンターを呆然を見つめる村長は、いつのまに肺にたまっていた淀んだ空気を吐きだした。

 

 

「何者だったんだ、あの冒険者は…」

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

村長と別れたハンターは余った素材を村人に売り渡し小銭を稼いだ後、

行きと同じように荷馬車に相乗りさせてもらいながら辺境の街まで戻った。

ここに流れ着いてまだ数日しかたっていないが戻ってきた安心感で、少しだけ緊張していた体が解れた。

ゴキゴキと肩を回しながらハンターは冒険者ギルドに戻ってきた。

 

 

「…仕事終わりましたよ。報酬くださいな」

 

相変わらずハンターがギルドに入るたびに何とも言えない空気が漂うが、

我が道を進むハンターはその空気すら気にしない。

真っ直ぐと受付嬢のもとまで歩き、右手を上げると顔なじみとなった受付嬢は笑顔で出迎えてくれた。

 

 

「お疲れ様です!ハンターさん!

討伐を証明できるものはお持ちですか?」

 

「ボス狼の皮剥いで来たよ。

あと他にも持ってきたけど、いる?」

 

証明用と素材用に取っておいた狼の部位をアイテムポーチから取り出し、カウンターにおく。

血生臭さと獣の臭いが混ざった匂いに、一瞬受付嬢は顔をひきつらせたもののすぐに営業用の笑顔を取り戻した。

 

 

「少々お待ちくださいね!」

 

受付嬢は鑑定人のような人物を後ろから呼ぶとおいておいた素材の鑑定をお願いする。

今まで一緒に受けていた依頼をゴブリンスレイヤーの信頼でこの作業が省略化されていたが、

正規であればこのような段取りが必要なのかと思った。

正直な話をすると面倒くさいし時間もかかるが、元のギルドでも狩猟証明にはそこそこ時間がかかっていたのでそこはどこもかわらないようだと少し懐かしい気持ちになった。

 

「…はい、ハンターさんお疲れ様です。

こちらが報酬となります」

 

「ありがとうございますー」

 

銀貨と銅貨、そして数枚の金貨が入った小袋を受け取るとハンターは満足げに頷く。

受け取った小袋はアイテムポーチの中にいれ、渡した素材も受け取った。

 

 

「そういや、ゴブリンスレイヤーの旦那って今依頼でてるかな?

今度武器屋を紹介してくれるって話してんだけど」

 

「ゴブリンスレイヤーさんなら朝に仕事に行きましたよ。

そんなに遠い場所ではありませんし、明日か明後日くらいには戻ってくると思います」

 

「そっか。

じゃあ旦那に『時間があったら一週間後の昼にギルド集合』って伝えておいてもらってもいい?

俺もそのくらいまでにはお金溜めとくわ」

 

「わかりました。ゴブリンスレイヤーさんに伝えておきますね!」

 

「ありがとうございますー

それじゃ、俺もいったん帰るわ。」

 

 

「お疲れ様です-」と頭を下げてから去っていくハンター。

ひそひそと話していた人がサッとハンターを避けていく様を見つめながら受付嬢は

「なんだかんだで話してみると普通の人なんだけどなぁ」と残念に思った。

 

 

 

 




狼の群れは1d4でダイスの目が出た数を十の位にしましたー。
そこそこな数が出たけどよくよく考えたらいつも20とか30匹の小型モンスター討伐とかしょっちゅうしてるよな…と死んだ眼になります。
チートにするつもりないのにチートぽくなってく・・・ハンター=サン強すぎぃ!

そろそろ原作沿いに進むかあと少しだけオリジナルストーリー入れてくか悩みます。
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