とあるハンターのゴブリン討伐紀行   作:毒素

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お買い物

狼狩りから一週間。

ギルドの酒場でゴブリンスレイヤーを待っていた。

受付嬢に伝えてもらったメッセージを聞いたゴブリンスレイヤーからの伝言は「構わない」という簡潔な言葉だった。

 

それを聞いたハンターは装備を買うためにずっと地下でネズミ狩りをしたり、村近辺に現れる害獣退治などで小金を稼いでいた。

簡単な依頼だったせいで大した金額を稼ぐことはできなかったが、

ある程度溜めることに成功していた。

 

ようやく生活に安定性を見出したハンターはカウンターで茶をすする。

茶を飲みながら受付嬢から借りた簡単な語学の本を読んで待っていたが、見知った気配を感じて顔を上げた。

見れば自分と少し離れたところにゴブリンスレイヤーの姿を確認すると手を軽く上げて、本をアイテムポーチにしまった。

 

「旦那。久しぶりー。

元気にしてたか?」

 

「あぁ、特に変わりはない。

そちらはどうだ」

 

「特に変わったことはないかな。

強いて言うならだいぶ冒険者になれて活動しやすくなったくらいだな」

 

「そうか」

 

「うん」

 

互いにそれ以上言葉を発しなかったせいで終了した会話に、なんともいえない気まずい空気が流れる。

しばらく黙りながら向かいあう二人になんとなく周りにいた人間の方がハラハラと見守ってしまう。

そんな気まずい空気はハンターが立ちあがり、傍に立てかけておいた太刀を背中に背負ったことにより霧散する。

 

「行こうぜ旦那」

 

「あぁ」

 

金属がすり合わさる音を鳴らしながら二人は歩き出した。

微妙な空気を醸していた二人が行動し始めた事により、空気も和らぎギルドはまたいつも通り活気ある雰囲気に戻ったのだった。

そんなことは全く知らない二人はギルド内を歩く。

 

 

「旦那のおすすめは片手剣なんだっけ?」

 

「あぁ。狭い場所で闘うときに有効だ」

 

「狭いところで闘いやすいっていうのはいいアドバンテージだよな。

手数が多くて回避しやすいってのも片手剣の良いとこだし」

 

「広い場所だったらお前のその武器でも有効だろうが、狭いところではむしろ枷にしかならない」

 

「確かに。

開けてる場所なら問題ないけど、狭い場所だと死にかねないし」

 

初めてゴブリンスレイヤーと出会った洞窟での戦闘も太刀では突きくらいしかまともな攻撃ができず、

かなり手間取った。

耐久力も攻撃力も低いゴブリンだったから大した問題ではなかったが、

もっと強い敵であった場合あの時点で死んでいてもおかしくなかったとハンターは考えていた。

 

「片手剣で闘った経験はあるのか?」

 

「あるよ。

動きの基本だから一通りは使えるけど…慣れた武器よりかは動きが劣るかもな」

 

片手剣は便利で、動きが軽快で使いやすい。

ハンターになるものは一度片手剣で動きを学んでからそれぞれにあった武器を見つける。

一通り武器を使えるのはハンターにとって必要技能な為、その例にもれずハンターも扱うこと自体はできる。

ただ、その技能が得意とする武器よりもどうしても劣ってしまうだけだった。

 

「そうか」

 

「うん。

でも、回数こなせばメイン武器と同じくらいには戦えるようになるかな」

 

「ならば問題ないな。

・・・ついたぞ、ここだ」

 

「お!ここかぁ!」

 

ゴブリンスレイヤーが階段の下にある武具屋の扉を開けて入っていくのでハンターもそれに続いて中に入る。

店の中には鎧が店の中に飾られており、壁には様々な武器や防具がかけてあった。

自分が見てきた武器屋とはまた違う内装にハンターは興味深げにあたりを見回した。

 

「はっえ~~。

なんかいろいろ売ってるな」

 

きょろきょろと見回しては気になったものを見ていくハンターは今までで一番テンションが高く、

おもちゃを眺める子供の様に無邪気であった。

そんなハンターをしり目にゴブリンスレイヤーは武具店の主人である翁のもとまで行き、話しかけた。

 

 

「片手剣が欲しい」

 

「おう。

ゴブリンスレイヤー、また来たのか。

この間買ったばかりじゃなかったか?」

 

「今回は俺じゃない。

あいつだ」

 

「…あの兄ちゃんか?」

 

ゴブリンスレイヤーが親指で後ろで装備を物色するハンターを指さす。

盾を持って品定めに集中してしまっているハンターは、翁がハンターを凝視していることに全く気が付いていない。

翁は眉をひそめて、ハンターの装備を観察したが困惑したような声を上げた。

 

 

「なんだ、あの兄ちゃん。

随分と立派な装備をしてるじゃねえか。

ただの鎧じゃねえぞ、あれは」

 

「詳細は知らん。

だがあの武器じゃ洞窟じゃ長すぎる。

片手剣が必要だ」

 

「長えも何もあんなデカい武器は並の人間じゃ扱えねえぞ。

飾りじゃねえだろうな?」

 

「少なくとも、あれでゴブリンを突き殺していた」

 

「突き殺す、ねえ。

・・・おい、そこの兄ちゃん」

 

思案顔でしばらくハンターを見つめていた翁だったが、

顎にやっていた手を外すとハンターを呼んだ。

 

「あ、はーい」

 

持っていた盾を元の場所に戻し、小走りで翁とゴブリンスレイヤーのもとまで駆け寄ったハンター。

重い鎧を付けているとは思えない軽やかさに翁の観察眼は鋭く光る。

 

「どんな片手剣が欲しい?」

 

店主の問いにハンターは少し首を傾けて悩んだ様子を見せたが、

すぐに思いついたように人差し指を立てた。

 

「うーん、出来れば切れ味が維持しやすいものだといいね。

何度も何度も研ぐのは面倒くさい」

 

「おいおい、そんなのは魔力付与でもついてねえと出来ねえぞ」

 

「魔力付与とかはよくわかんないけど、とりあえずないって感じか?

だったら洞窟で闘いやすい長さの片手剣と堅い盾でいいや」

 

翁の言葉に首をかしげたが、

大して気にした様子も見せずハンターはいった。

ハンターの雑なリクエストに翁は呆れたようなかおをしたが、

その背中の太刀に目を向けると少しだけ表情が柔らかくなった。

 

「あんた、随分と戦いなれてるようだな。

そんなでけえ武器背負ってる割に重心が安定してる」

 

「え?デカい?」

 

素で聞き返したハンターは不思議そうに首をかしげる。

日ごろからハンマーやガンランス、大剣のような大きな武器を見慣れているハンターには、

太刀が大きいという認識がなかった。

 

「見栄を張ってる白磁にゃ見えねえ。

装備に見合った腕は持っとるようだな」

 

「なんかよく分かんないけど、褒めてくれてありがとうございます?」

 

感心したように頷く翁についていけず、

首を傾げながら後頭部に右手当ててペコペコ頭を下げるハンターは褒められてどこか嬉しそうに見える。

 

「それで、予算はいくらだ?

それで買える武器を用意してやる」

 

「予算はこれくらい。

多少これより高くなっても問題ない。」

 

ハンターは腰につけたアイテムポーチから取り出した小袋を翁に渡す。

ずっしりとした重量の小袋の中身は金貨。

ここ一週間で貯めたハンターのなけなしの金だった。

 

(なけなしの金で武器を買うとか、本当にいつぶりかな?

駆け出しの時とかはよくあったけど…ここ最近あんまなかったから懐かしいなぁ)

 

この金を支払うことでしばらくはまた貧困生活に逆戻りだが、

装備を揃えるための金なら惜しんだところで仕方がないと割り切る。

出し惜しみをして死ぬなんて笑い話にもならない。

翁は小袋の中身を確認した後に、壁に立てかけてある武器を物色する。

少しの間悩んだようだったがすぐに一本の剣と盾を選ぶとカウンターに置いた。

 

「この予算で買える剣と盾だな。

あんたが背負ってる剣より性能は圧倒的に劣るが、洞窟でモンスターと戦うにゃちょうど良いはずだ」

 

「まあ、そこらへんは俺もわかってるんで大丈夫です。

・・・それじゃあ、早速」

 

ハンターは早速盾を右手に持ち、片手剣を左手で持つとヒュンヒュンと風を切る。

圧倒的に様になった持ち方に翁は感心したように息を漏らした。

 

「うん、いいね。

これなら乱戦になっても調整効くし、モンスター切り捨てるのに問題もない。

旦那的にもこれで問題ないと思う?」

 

「あぁ。

切れ味も問題ないだろう」

 

「そうだね。

重みもあるから薄い鎧ごと圧し切れると思う」

 

チャキッと片手剣の刃を見つめながらハンターは満足そうに頷いた。

厚みのある刃は両刃となっており、普通の剣よりかはずっしりとした重さだった。

丸型の盾も鉄で出来ているらしく、先ほど試しに持った華美な盾よりも重みがあり、かつ武骨だった。

 

「同じ長さの剣よりも重さがあるから初心者にゃ向かねえが、

お前さんはそんだけ長い剣振り回せるんだから、重さは問題ねえだろ」

 

「ないね。

むしろ軽すぎると折れるし、手から吹っ飛ぶ可能性高いからこのくらいでちょうどいいや」

 

片手剣をカウンターに置いてあった鞘にしまい、背中に背負ってる太刀の邪魔にならないように腰に下げる。

腕に盾を装備するとハンターは息を吐きだした。

 

「これでよしっと。

これで洞窟で縛りプレイする必要性なくなるぞ!」

 

グッと満足に親指を立てるハンターは喜色で満ちていた。

全身からあふれるオーラは「早く新しい装備を試したい」という無邪気な闘争本能が溢れていた。

 

「良い店教えてくれてありがとう、旦那」

 

「あぁ」

 

「あ、あとまたゴブリン退治一緒にいってくれるとありがたいな。

俺、まだああいうのに慣れてないから…」

 

こちらに来てからも小型モンスターや獣を狩りまくっているハンターだったが、

ゴブリンは意図的に戦わないようにしていた。

無慈悲な自然の脅威とは違い、悪知恵が働くゴブリンとの戦闘は、

ただ動きを読んで己の技術と肉体を持ってして戦えばいい今までのハントとは全く異なっていた。

そんな敵と無知のまま戦うのはハンターとしては避けたい。

更にいえば人型モンスターと戦うのに慣れたいという思いもあった。

そのため、ゴブリンスレイヤーにいろいろと教えてもらいたかった。

 

「構わない」

 

ゴブリンスレイヤーの簡潔な言葉に、パッとハンターの雰囲気が明るくなった。

 

「ありがとう!

今度飯おごります!」

 

「気にしなくていい」

 

「いいのいいの、俺の気持ちだし。

それともご飯よりなんかアイテムとかの方がいいか?」

 

ごそごそとアイテムポーチから適当にアイテムを取り出してゴブリンスレイヤーに見せるハンター。

ゴブリンスレイヤーは見たことがないアイテムに興味を持ったのか、ハンターが手に持っていた小瓶を受け取り、 明かりに透かした。

小瓶の中で緑色の液体が揺れる。

 

 

「…これは?」

 

「それ?それは回復薬G。

飲めば体力が回復できる優れものだよ。

ハンターの必需品なんだ。

・・・あ、じゃあそれでいいか?結構使いどころ多いと思うんだ」

 

「ポーションか。

だが、お前にとっても必要なものだろう」

 

「大丈夫だって。今日のお礼だから。

素材はまだあるからいつでも作れるし、むしろ一個だけとか申し訳が…あ、もう何個かもってく?」

 

「いや、いい。

ありがたく貰っていこう」

 

「気にしなくていいってば。

それより、これからどうしようか。一回ギルド行って依頼でも見てく?」

 

「そうだな」

 

 

ワイワイ話しながら出ていくハンターとゴブリンスレイヤーに翁はニヤニヤと笑みを浮かべた。

珍しいものを見た、といわんばかりに翁はつぶやいた。

 

 

「なんでぇ、あいつにも話せる奴いるんじゃねえか」

 

 

 




新しく装備を作ったときのワクワク感はモンハンの楽しみの一つだと思うんですよね。
とりあえずなんか狩りに行くスタイル。

ホントは武具屋の翁との絡み増やしたかったんだけど、武器談義ですごいことになったんで端折りました
また違う機会にできたらと思いますー。

武器屋の場所を思いって切り間違えてたんで直しました!!!!!
すんませんでしたぁあぁあ!!!!
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