無事に少女たちを村まで送り届け、
ゴブリンスレイヤーと共に街に帰還する。
街についた時にはもう夜が明けてしまっていた。
「さすがに、ちょっと疲れたわ…」
徹夜くらいでは悲鳴を上げるほど軟でないが、肉体よりも精神に来るものがあった。
恐らくハンターが今までこなして来たクエストの中でも上位に組み込む後味の悪さだろう。
フラフラになったハンターとゴブリンスレイヤーが共に冒険者ギルドと誰もがこちらを見た。
「ゴブリンスレイヤーだ…」
「あんなのが銀等級か…」
「それにしても、見ろよ隣の鎧。
なんだい、あの不気味な仮面。あんなんでよく冒険者が務まるぜ…」
「あいつ、昨日受付嬢を脅してたって話だぜ…見た目通りやばい奴だから、近づかないほうがいい」
ひそひそと交わされる言葉は、傷んだ心に塩水をぶちまけるくらいには沁みた。
ただでさえ荒んだ心がさらに荒みそうだったので、さっさと報告してさっさと退出するに限るとばかりにハンターは受付嬢のもとまで歩いた。
「根切ってきましたー。
いやぁ…めんどくさかったです…」
「ご無事だったんですね!
よかった…ゴブリンスレイヤーさんが間にあってよかったです!」
「ぉお?」
受付嬢の言葉が良く分からず、振り返ってゴブリンスレイヤーを見た。
兜の下の表情は、ハンターと同じくわからない。
「昨日、ゴブリン退治の依頼を見に来たら白磁級が一人でゴブリンの巣に向かったと聞いた。
それだけだ」
「…てことは、あれは偶然の出会いじゃなくて俺を助けに来てくれたのか?」
「違う。ゴブリンを殺しに行っただけだ。
白磁が一人で何て無謀だから殺しに行っただけだったが…一人でも十分だったな」
「いんや、そうでもない。
助かったぜ、ゴブリンスレイヤーの旦那。
ソロでやるのは正直きつかった。
・・・ありがとうございました」
深くお辞儀をするハンターに、ゴブリンスレイヤーはそっけなく「気にしなくていい」と答えた。
頭を上げ、今度は受付嬢と向き合う。
「貴方も、ありがとうございました。
貴方が旦那に声をかけてくれたおかげで、助かりました。
昨日は驚かせてすみません」
「い、いえ!
むしろ勝手なことをしてごめんなさい!」
ハンターが頭を下げると、受付嬢も慌てて頭を下げた。
二人で謝り合う姿はシュールで、周囲から好奇の目にさらされる。
「…疲れたのならば、もう戻って休むといい」
「え?あ、そうだな。はやくもど・・・ら、ないと…」
勢いよく頭を下げていたハンターの言葉がぴたりと止まる。
不思議そうに見あげる受付嬢の方に、ギギギと音を立てて首を向けたハンターの背中からは哀愁が漂っていた。
「…俺、無一文なのですが…どうすればいいのでしょうか…」
「いやあ、旦那。本当にありがとうございます…。
お蔭で野宿とかにならなくて済むわ…」
「気にするな。
あれはお前の正式な報酬だ」
こちらの世界のお金を持っていないことに気が付いたハンターが膝を折り、
絶望しているとゴブリンスレイヤーは受付嬢に声をかけた。
そして今の報酬をこの場で出してもらいたい、といった。
本来ならば調査し、任務の達成を確認してから渡すものだが、
信頼されている銀等級の冒険者の口利きならばと特別に報酬が渡されたのだった。
「なにからなにまで、本当に助かりました。
出来ればまた、ゴブリンについて教えてほしいんだが…」
「構わん。ゴブリンを駆逐する奴が増えることは、良いことだ」
「よろしくお願いします。
・・・それじゃあ、俺は先に宿に戻ることにするわ。
それじゃあ、また」
「あぁ」
ゴブリンスレイヤーとわかれ、受付嬢に教わった一番安い宿屋に宿泊する。
中は普段使って居た部屋と比べ物にならないくらいに狭いが、
野宿以外なら何でもハッピーなハンターは気にもしない。
狭く、堅いベッドに胡坐をかきながら太刀の手入れをする。
血糊を落とし、欠けている部分がないかを確かめ、打ち粉を叩く。
無心で手入れを行っていたハンターだが、疲れたように天井を仰ぎ、息を吐く。
思いだすのは、先ほどの惨状だった。
「…あんなんがいるんじゃ、誰も安心して暮らせないよなぁ」
自然の圧倒的で無作為の理不尽さとは違う、悪意から来る理不尽は、いままでハンターが知らなかったものだった。
そんな状況にさらされるこの世界で、自分は何ができるだろうか。
自答するハンターに、答えは出なかった。
貧乏人ハンターさん。
もちろん、元の世界では限度額ギリギリまでもってます。
しかし、狩りの最中お金は持ち歩かないのではないかという推論の元、
彼は無一文です。
どっかに一泊する程度は保険で持ってるかもしれないけど、
勿論使えません。
早く換金しないとね!
しばらくは極貧生活!
一か月1万円生活をハンター君は乗り切れるか!