刀の手入れしながら寝落ちしたハンターが目を覚ました頃には、窓は明るかった。
いつ寝たのか覚えていないが、恐らく丸1日寝過ごしたのだろう。
刀身がむき出しのままベットに転がっていたのに焦ったが、無傷だったので良しとした。
固くなった体を解しながら、出かける準備をし、宿を出て冒険者ギルドに向かう。
街の人からも奇異の目で見られるが、今だ覚醒しきれていないハンターは気が付かなかった。
「おはようございますー」
ギルドにつくと、掲示板に人が群がっており、依頼を見ることが出来なかった。
なにがなんだかよくわからず、ボーっと人の流れを見ていると見覚えのある鎧が視界に入った。
「おはよー旦那。
朝から精が出るなぁ」
「…あぁ」
「今日もゴブリン根切りにしようかと思うんだけど…旦那もゴブリンか?」
「そうだ。ゴブリンを狩りに行く」
「オッケー。
じゃあ、一緒に行ってもいいですか?
教わりたいこととか色々あるし」
「構わない」
「やったー」
気の抜けたハンターの声が響く。
ゴブリンについてゴブリンスレイヤーに教えを乞うていると、
向こうから白い礼装を来た少女が駆け寄ってきた。
「ゴブリンスレイヤーさん!遅くなってすみません!」
「気にしなくていい」
「ありがとうございます!
・・・あれ?」
少女はゴブリンスレイヤーと会話をしていたが、ハンターの姿に気が付くとビクッと震えた。
幼気な少女には表情が分からない黒づくめの男の姿は恐ろしかったらしい。
「…おはようございます。
えっと、ゴブリンスレイヤーの旦那のパーティーの方ですか?
縁があって本日同行させていただきます。
ハンターさんでもサムライさんでも気軽に呼んでください」
「は、はじめまして!
えっと、よろしくお願いします!」
ハンターの礼儀正しい姿に戸惑ったようだが、すぐになれて挨拶を交わす。
ハンターが胸元にかけられているタグを見ると同じく白磁等級のようだった。
「俺も昨日冒険者になったばかりなので…分からないことが多々あると思うので、
教えていただけると幸いです」
「いえ!こちらこそ、不慣れなことが多いので迷惑をかけてしまうかもしれないですけど…よろしくお願いしますね」
和気あいあいと話す二人を置いてゴブリンスレイヤーはゴブリンの依頼を受ける。
慌ててその背中を追い、ともに歩く三人は傍から見てだいぶ変わったパーティーだった。
「ハンターさんは、立派な鎧を着てますけれど昨日冒険者になったばかりなんですよね。
今までどこかで騎士をされていたんですか?」
「ファッ!?」
依頼の場所までの道のりを3人で歩いている最中、女神官にそう聞かれてずっこけたハンター。
今まで言われたことのない言葉に、返答に困ってしまった。
「ごめんなさい、何か変なことを聞いてしまいましたか…?」
「ぁ、ううん、大丈夫。ちょっと予想外通り越して新しい質問だったから吃驚しただけ。
・・・忍びの装いで騎士って新しいな」
「あ、あの…?」
「あ、大丈夫だよ。
えっとね、普通にどこにでもいるハンターだよ。
この鎧はその獲物から剥ぎ取った素材を使ったものなんだ」
「え、これ動物から作られたのですか?
それにしては…とても硬くて、頑丈そうですけど…」
「うん、堅くて頑丈で、生半可な攻撃は通らない仕様だよ。
うちの地方にはこういう奴が多くてね、それでこの装備を作るんだ。
苦労したわ…マジで」
過去を思いだし、仮面の下で死んだ眼になるハンター。
来る日も来る日もモンスターを狩り、足りない素材を集めて、出てこない激レア素材に血涙を流し、発狂したあの日々…。
「紅玉、逆鱗、天鱗、天殻…ッぅう!頭がぁ…お前だけは絶対に許さん、物欲センサァッ…死すべし妖怪イチタリナイィイッ…」
トラウマスイッチ再び。
しかも今度は以前のものよりも強烈かつ強力なトラウマだった。
頭を抱えて、ふらつき何かを口走るハンターは、誰が見ても危ない人だった。
「ぁ、あの…?」
「あ、ごめん。トリップしてたわ…
でも、うん、作る過程でいろいろあるんだよ、この装備…」
悲哀を込めたその言葉は女神官に「思い出したくない、辛い過去がある」と思いこませてしまった。
ハンターにとっては確実に思いだしたくないマラソンの日々だったが、二人の間に良く分からない誤解とすれ違いが発生したのは確かだろう。
暗くなったパーティーに声をかけたのは、ゴブリンスレイヤーだった。
「…そろそろゴブリンの巣が近い。
気を引き締めろ」
「は、はい!」
「了解!」
先行き不安なパーティーは、ゴブリンが出ると噂の洞窟にたどり着いた。
初対面にはしっかりと丁寧に接するハンターさん。
慣れると素の口調になります。
物欲センサーはモンハン最大の敵といっても過言ではない。
何故欲しい時に限って天鱗が出てこないんだ…ッ(血涙)
それにしてもこのハンター、発狂しすぎである。