とあるハンターのゴブリン討伐紀行   作:毒素

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情け無用

 

 

「…ここだな」 

 

 

日が暮れはじめ、辺りが薄暗くなってきた時間に3人は崖に来ていた。

依頼があった村から数里離れた崖にある洞窟の中に、ゴブリンは住み着いたらしかった。

昼の間に周囲を確認し、付近に抜け穴がないのは確認済みだった。 

 

「それで、どうやって攻めるんだ、旦那」 

 

「燻り出す。

穴に煙が入れば奴らは死ぬ物狂いで外に逃げようとするだろう。

俺たちが中に入って火を起こす。

お前は隠された抜け道がないか探してくれ。

あれば煙がそこから立つ」 

 

「了解。

でも、この時間にやるのか?もうすぐ夜になるが…」

 

 

「問題ない。

夕方は奴らにとっての早朝だ。

奴らにとって、昼が夜で夜が朝だ。

だが、昼は流石に奴らも警戒してるからな。

つまり、夕方の方が狙い目だ」 

 

「成る程な。つまり夜行性ってわけか。

つくづく人間襲うためにあるような種族だな」 

 

「そうだ。

だからこそ、ゴブリンはすべて皆殺しにしなければいけない」

 

 

 

人型をしているが、やはり根本的に人間とは異なる種族ということなのだろう。

それをしっかりと頭に叩き込む。

一瞬の隙が命取りになりかねない狩りで、躊躇などしていられない。

そう思いなおしつつ、ハンターは彼らから少し離れた位置にある小高い岩場に上り、周囲を見渡す。

手を振ってゴブリンスレイヤーに合図をすると、ゴブリンスレイヤーは洞窟に入っていき、

その後ろに女神官も続いた。

 

 

 

 

 

「…お、燃え始めた」

 

二人が入った後、ハンターは洞窟周辺に注意を払っていると、白い煙がかすかに洞窟から流れ出る。

それはどんどんと濃くなり、灰色の煙が立ち上がりはじめる。

風に乗ってかすかに漂う煙の匂いに、ハンターの鼻にしわが寄った。

 

 

「おいおい…あれじゃ旦那達ごと蒸し焼きにならないか?」

 

時間が立つにつれ、段々と色の濃い煙が洞窟から出るようになった。

事前調査通り、抜け穴は確認できず、

彼らが入っていった出入り口以外からは煙は観測できない。

そこでハンターは迷った。

洞窟に入った彼らを救出しに行くかこのままゴブリンスレイヤーに頼まれた仕事をこなすか。

ここで救いに降りれば、頼まれた仕事である周囲の観察を怠ることになる。

もしかしたら、他にも抜け穴があるかもしれないのだが、あのまま放置すれば彼らの命にかかわることだった。

しかし、ハンターは恩人であるゴブリンスレイヤーを放置することはできず、

岩場から飛び降りようと足に力を込めた。

 

その瞬間、煙の中から女神官を担いだゴブリンスレイヤーが飛び出した。

 

 

「いと慈悲深き地母神よ、か弱き我らをどうか大地の御力でお守りください

『聖壁』!」 

 

 

 

転がるように飛び出して来たゴブリンスレイヤーに担がれた女神官は、

彼が飛び出した瞬間に奇跡を発動させた。

洞窟の入り口に白い壁が現れ、洞窟に蓋をする。

立ち上っていた煙が妨げられ、透明の壁越しに濃い煙が滞留していく。

ハンターは行き場を失った煙が他の場所で立ち上っているかを確認したが、

それはなく、ゴブリンスレイヤーにサインを出し、岩場から飛び降りた。

 

 

「他に抜け穴は観測できなかったぞ、旦那」

 

「そうか」 

 

「この煙だ。もってあと数分ってところだろうな」 

 

「そうだな。

だが奴らはしぶとい。しばらくここで、奴らが確実に死ぬのを待つ」 

 

「執念深いな、旦那は。

・・・それにしても、これって神官さんの力か?」

 

「は、はい。地母神様から与えられた奇跡です」

 

 

「…これが、“奇跡”かぁ。

凄いな。モンスターの一撃でも耐えられるんじゃないか?」

 

 

純粋に感嘆の声を上げると、女神官は照れたように笑った。

ハンターが興味津々の様子で入り口に張られた《聖壁》を眺めていると、バンッと何かが壁の内側に当たる。

黒煙で見えづらくなってはいるが、それは小さな人型の手だった。

それはいくつも現れて、バンバンと壁を叩いた。

中には体ごとぶつかり、壁を壊して外に出ようとしている奴もいた。

 

 

「うわッ…!」

 

「ぅっ…」

 

「しぶといな、本当に」

 

 

 

死に物狂いで外に出ようとしているゴブリンたちは、ガンガンと《聖壁》を叩き、

壊そうともがく。

しかし、白い奇跡は全く揺らぐ気配を見せなかった。

黒煙が勢いを増し、壁の向こうをさらに覆っていくと、叩く手の動きも鈍くなり、

次第に叩かれなくなった。

 

 

「…中で大分派手に燃やしたみたいだな、旦那」 

 

「こうでもしないと奴らは確実に殺せない。

・・・奇跡はまだもちそうか」

 

「は、はい!まだ大丈夫です!」

 

「そうか」

 

 

 

女神官の奇跡が持つまでしばらく洞窟前で待っていたが、もう壁の向こうから叩く気配はしなかった。

やがて《聖壁》が解けて洞窟入り口が開放されたが、中から出てこようとするゴブリンはいなかった。

出口が確保されて、日が落ち、暗くなった空高くに昇っていく黒煙を眺めたあと、視線を下に向ける。

外に出ようとして壁を叩いていたであろうゴブリンの死体が複数体、入り口付近に倒れていた。

苦悶の表情を浮かべ死んでいるそれの顔を見て、ハンターは顔を歪めた。 

 

 

「…下手に人型に似てると、情が湧きそうで怖いな」 

 

「不要だ。奴らに情けなど無用だ

必ず殺せ」

 

 

「そうだな…、ハンターに情けは不要だ」

 

 

そう呟いたハンターは死んだゴブリンに近づく。

ハンターの知識から分別にするに小型のモンスターだが、

剥ぎ取り素材に期待はできそうにない。

やせぎすで肉質に期待はできそうになく、皮も加工できそうになかった。

  

 

「持ち物もガラクタだし、素材にもできないとなると、ホントただの駆除作業だな」

 

「ハンターさん、何していたんですか?」

 

「んー?

皮とか剥ぎ取れるかと思ったんだけど、期待できそうにないから止めた」 

 

「は、剥ぎ取り、ですか」

 

「ハンターだからね。

殺した得物はできる限り有効活用したかったんだけど…無理っぽい」

 

 

その言葉に何とも言えない顔をする女神官だったが、それに気が付かないハンターはやれやれとため息をついて立ち上がる。

そのままゴブリンスレイヤーに目をやれば、彼もゴブリンの絶命を確認し終わったところだった。

 

 

「近くで野宿をしてから、明日戻るぞ」

 

「はい!」

 

「了解!」

 

 

 

 

 





リアルでゴブリンは剥ぎ取りに期待できないと思う。
ランゴスタですら役に立つのに…何故じゃ。

いちいち情が湧いていたらハンターなんて出来ないけど、
人型モンスター狩りになれてないハンターさんだから仕方ない。
これから毎日村を焼くメンタルをつけないとね!


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