とあるハンターのゴブリン討伐紀行   作:毒素

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武器談話

ゴブリンスレイヤーたちが街に戻ったのは、洞窟のゴブリンを処理した次の日だった。

真夜中に動くわけにはいかず、野宿で夜を過ごしたが、もっと厳しい環境で生活してきたハンターや、

野宿になれたゴブリンスレイヤーはピンピンしていたが、女神官は疲れ切った顔をしていた。

途中からハンターが彼女の荷物をしょって歩いていたが、ハンターに疲れの色は全く見えない。

  

 

「神官さん、お疲れ様。

これでゆっくり休めるな」

 

「はい…すみません、途中で荷物を持ってもらってしまって…」 

 

「別に俺はこのくらいじゃ疲れないから問題ないよ。

むしろ余力ある人に任せたほうがいいと思うなぁ。

疲れてるところ襲われたほうが不味いし」

 

「そ、そうですね」

 

 

ギルドからの依頼を終え、「さあ帰るぞ」という段階になって、

乱入クエストが入ることが今だにトラウマなハンターの言葉はとても実感がこもっていた。

想定外のモンスターに乱入されることは、ハンターにとっては装備や道具などの問題から死活問題だった。 

 

 

 

「旦那、とりあえずギルドって報告したら解散ってことでいいのかい?」

 

「それで構わない」

 

「だってよ。

神官さん、あともうちょいだから頑張れ」

 

「はい!」

 

 

 

仕事を終え、少しだけ明るい気持ちで戻ったパーティーはギルドの扉をくぐると、ワイワイと騒がしかったギルド内の空気が、少しだけ変化した。

相変わらずゴブリンスレイヤーとハンターに注がれる、

奇異の視線とひそひそと囁かれる悪口に女神官は顔をしかめ、

何も知らないのに、どうしてこの二人を悪く言うのだろうという思いから軽い憤りを感じた。

しかし、他人の評判など気にもかけない二人はずんずんと受付嬢のもとまで進んだ。

 

 

 

「ゴブリンスレイヤーさん!おかえりなさい!」 

 

「あぁ、ゴブリンを殺して来た」

 

「お嬢…俺の存在は無視かよぉお…なんかショック」

 

「あ、あ!ごめんなさい!

三人ともお疲れ様です!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

慌ててハンターと女神官のこともいたわる受付嬢に、女神官は笑顔で答え、

ハンターはわざとらしく落ち込んだ振りをし、受付嬢を慌てさせた。

 

 

「そんなつもりじゃなかったんですよ!ハンターさん!」

 

「分かってるから大丈夫だって、冗談冗談。

俺らのことも心配だったけど、旦那のことが一等心配だっただけだろ?」

 

「か、からかわないでください!」

 

 

からかったせいで顔を赤らめた受付嬢を見て、ハンターは楽しそうに笑った。

 

 

「…報告しても構わないか?」

 

 

「とと、すまんな。旦那。

大丈夫だぞ」

 

「は、はい!大丈夫です!」

 

 

その話の中心ではあるが、何のことかわかっていないゴブリンスレイヤーが話を遮ると、

受付嬢は慌てて仕事の顔を作る。

そのことがなおさら面白くてニヤニヤと仮面の下で笑いながら二人の様子をハンターは見守ってた。

 

 

「―それでは、報酬は確認が取れ次第、

後日お渡ししますのでよろしくお願いいたします。」

 

 

「了解。

んぁ~~、乙でーす」

 

 

しばらくゴブリンスレイヤーと受付嬢の間で今回の任務の簡単な報告がされていたが、

それも無事に終わり、三人は解散という流れになった。

 

 

「はい、お疲れ様です!

ハンターさん、今回はありがとうございました!」 

 

「いいよ、気にしないで。

でも今回、俺ってば何もやってないから正直お金貰うの気が引けるんだけど…」

 

「そんなことはない。

見張り役が居るのと居ないのでは、行動の仕方が全く変わるからな」

 

 

「まあ、一理あるけど…。

じゃあ、俺の分け前二人より少なくていいから。

こういうのは、働いたものから貰った方がいいだろ」

 

 

「分かった」

 

 

ハンターの言葉に頷くゴブリンスレイヤー。

ハンターもそれを見て満足げに頷くと、黒い鎧を着ながら大きく伸びをした。

重厚な鎧ではあるが、見た目以上に可動域が広いのか、その動きは自然だった。

 

 

「俺としてはもうちょい動きたかったなぁ…。

でも、もう少し名前上げないと難しい依頼って受けらんないんだろ?」

 

「そうですね…難しい依頼となるとどうしても実力と信用が必要ですから」

 

「だろうなぁ」

 

「等級は任務を受けていくうちに自然と上がるものだ。

地道に受けていくしかないだろう」

 

「まあ、こればっかりは仕方ないわな。

それに、ゴブリン狩りで学ぶことは多いし。

・・・ちなみに、旦那ってどうやっていつもゴブリン狩ってるんだ?」 

 

「なんでも使う。

近くの川から水を引くこともあるし、昨日のように火を使うこともある」

 

「なんでもありとか、逆に選択肢が広がりすぎて何とも言えねえわ」

 

 

お手上げ、という風にハンターがジェスチャーをすると、

ゴブリンスレイヤーが「選択肢の幅は広い方がよりいい」と冷静に言った。

 

 

「お前のその防具は、見た目以上に堅いようだが、動きやすいようだな。

どこで作った」

 

「んー?馴染みの鍛冶屋だ。

動きやすいってのは鍛冶屋の腕前だけど、堅いってのは元の素材がいいからだな」 

 

「なるほど。

その鍛冶屋を紹介してもらうことはできるか」

 

「旦那には恩があるから紹介したいのは山々なんだけどね。

ちょっと諸事情で、難しい」

 

「そうか。分かった」

 

 

 ハンターの困ったような声と申し訳なさそうな仕草に、

ゴブリンスレイヤーは短く頷く。

大してショックを受けてないところを見ると、

ダメで元々という心持で聞いたようだった。

 

 

「俺も、今のこの装備が壊れたらどうしようかなぁ…。

下手に使って壊したくないし、こっちで装備買おうかな」

 

「だったら、街の武器屋を紹介する。

ついでにお前の武器も買い替えたほうがいい」

 

 

「刀は武士の魂なんだけど…仕方ないね。

手入れするのにも限度ってのがあるし。

でも、ゴブリンの鈍らを使うほうが嫌だし…」

 

 

「切れ味はよくないが、ゴブリンを殺すのに支障はない」

 

「そういう問題じゃないって…。

一流は道具を選ばないっていうけど…良い得物使ったほうが確実に効率がいい」

 

「だが2、3体斬れば血や脂で切れ味が落ちるぞ」

 

「え、普通に研げばよくない?

対峙しながら隙見て研ぐのは剣士の必須技能」

 

 

ケロッと言いのけるハンターに、ゴブリンスレイヤーは少し言葉を詰まらせる。

敵と対峙しながら刀を研ぐなどゴブリンスレイヤーからすれば自殺行為に思えるが、

ハンターは常識のようにいったからだ。

 

 

「…それは危険ではないか?

使い捨てたほうが良くないか」

 

「旦那と俺じゃ狩る相手が違うからね。

俺は大型モンスター専門のハンターだから、使い捨てる余裕一切なしだよ」

 

「なるほど、確かにそれだと使い捨てはできないな。

だが、ゴブリンはいくらでも湧いて出てくる。

研ぐよりも使い捨ての方が効率がいい」

 

「うーん、確かに。

武器が補充できる環境にいるなら、

研ぐ時間に割くよりも拾ったほうがいいのかもしれないけど…」

 

 

ハンターも納得してはいないが、一理あるのか神妙に頷いた。

 

 

「とりあえず、近いうちに一本新しい武器をそろえたほうがいいだろう。

洞窟のような狭い場所で立ち回るにはその武器は長すぎる」

 

「それは同感だな。

片手剣買わないとなぁ…。

武器に関することだから早い方がいいんだろうけど、今度でいいか。

急いでないし、神官さんも疲れただろうし」

 

「え!?

い、いえ、私は…」

 

 

急に話を振られた女神官は慌てて否定しようと首を振るが、

ハンターは手を軽く振って遮った。 

 

 

「俺と旦那の長話につき合わせてごめんな。

もう解散しようか」 

 

「そんなことないです!

ゴブリンスレイヤーさんがこんなに話しているの見るのは、

なんだか珍しくて、つい…」

 

 

「まあ、確かに旦那は無口ぽいよな。

職人肌っぽいし」

 

「…そうか?」 

 

「絶対そうだって。

・・・まあいいや、じゃあまたよろしくお願いするよ。

おつかれですー」 

 

「は、はい!ハンターさんもお疲れ様でした!」

 

 

ぺこりと頭を下げる女神官と、

こちらを見送るゴブリンスレイヤーに手を振ってハンターはギルドを出た。

昼下がりの町を歩きながら、ハンターは頭を悩ませる。

ゴブリンスレイヤーには今度買い替えるというようなことをしまったが、

ハンターにはまず武器を買い替えるお金がなかったからだ。

 

 

「うーん、武器は買うっていってもお金がないしなぁ。

しばらくソロで稼げる仕事探すかぁ…」

 

 

 

そういうつぶやいたハンターの背中は、

お金がないものが放つ一種の哀愁に満ちていた。

 

 




元の世界だと軽く大富豪なハンターさんだけど、
今持ってないから仕方ないよね!

わりかしマジでお金持ってないと生活できない世界すぎて、
ハンターさんの生活が心配になってくる
狩り暮らしのハンター=サンの明日はどうなる!

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