【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです 作:北部九州在住
あっ……
ゲームで過小評価されているけど、このスキル群、二次創作だと凶悪すぎる。
証拠写真
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命蓮寺で待ち伏せという事だが、念のためにチームを二つに分けることにした。
ヒロインの一人である秦野久美子が狙われる可能性があったからで、彼女がここの封印の神様の子孫である事を伝えて、監視と保護を頼んだのである。
そっちの方は葛葉キョウジとレイ・レイホゥとシエル先輩にお願いしている。
「ごめんください。
宅配便ですけど、住所はこちらでよろしいですか?」
「?
宅配便なんて頼んで……」
「はい。
こちらで大丈夫です。
本堂に運んでください」
罠と思って露骨に警戒している井河アサギを押しのけて、俺が出ていってサインをする。
もちろん主の聖白蓮の許可はもらっている。
「入即出さん。
一体これは何なのですか?」
水城不知火の言葉に俺達は降ろされた十数箱の中身を本堂で開ける。
出できたのは大量の書類の束。
平崎警察署警部の百地英雄に協力してもらって、平崎市と天童組の財務関連のデータのコピーをもらってきたのである。
そんな箱の一つを開けて俺はニヤリと笑う。
「……ふぅん。
平崎警察署の財務記録までつけてくれたのか。
あの警部さん分かっているじゃないか」
対魔忍コンビ二人が頭に『?』を浮かべたままなのに対して、俺はCOMPから文車妖妃を召喚する。
「この書類を調べて金の流れを追うぞ」
一応組織人である天ヶ崎千草の方が理解して、文車妖妃の指示の元で書類の整理をはじめていた。
叢雲も俺の秘書艦を長く努めていたので、この手の書類仕事はちゃんとできるようになっている。
一方で対魔忍コンビは何をすればいいかというより、何をやっているのかすら分かっていなので、叢雲につけてその指導を任せることに。
りっぱなお局ぶりに俺も……
「何考えているのかしら?司・令・官」
「何も」
雉も鳴かずば撃たれまい。
だまって書類を見続けること数時間。
お目当てのものが見つかりだす。
「おうおう。
出てくるわ出てくるわ。
用途不明金の山だらけじゃないか。
東京地検に引き渡したら涎が垂れるんだろうな。こいつ」
天童組の不正経理までは掴んでいたが、平崎市から見ると更に新たな企業が追加される。
その名前はアルゴン社。
このゲームの続編である『ソウルハッカーズ』に出てきており、ファントムソサエティー側と協力関係にある。
で、ここからが問題なんだが、この平崎市を通じて金の流れが複雑怪奇に入り乱れている。
天童組の赤字状態の解消だが、平崎市ではなく天海市の方で金を得ていたのだ。
からくりはこう。
政府の『次期情報都市政策』において情報環境モデル都市に指定され、再開発された天海市は全面的に作り変えられたが、その開発を一手に引き受けていたのがこの天堂組という訳だ。
ヤクザは地上げと同時に土建業も営むことが多いので、その土建で金を稼いでいたと。
国の事業だけにその予算は桁違いであり、そこから適度に着服していただけで裏金の出来上がり。
それで終わらないのがこの世界である。
「天童組を隠れ蓑に政界工作を派手になさっているみたい。
その金を天童組に提供しているのがダミー会社を通じてですけど、その本体が多国籍複合企業体のノマド」
「「なんですって!?」」
文車妖妃の報告にその世界出身の対魔忍コンビが慌てて駆け寄る。
ある意味納得の配役であるが、それは政府がかなり悪魔というか魔族に買収されている事を示している。
そりゃ、アメリカも核を撃つわけだ。
納得はしないが。
「何でこいつらを処分しないんですか!」
「そうです!
我ら対魔忍の力を以てすれば……」
対魔忍コンビの憤慨に俺は水を差す。
淡々と、だけどその言葉は重たく容赦ないように。
「けど、ノマドから遠慮なく資金をもらっているの、後藤一佐とその対魔忍だぞ。
ほら」
「「え!?」」
対魔忍コンビ二人が完全に固まる横で、戦災孤児である天ヶ崎千草。
淡々と出る言葉にある種の諦めがある。
「ようある事どすな。
この国は先の戦で負けてから、麻帆良と学園都市という二つの租界みたいなもんを作られて手足を縛られとりますからな。
表は米国の、裏はこいつらの植民地という事どっしゃろ。
それを打破するために悪魔の力も借りる。
人というのは、哀れで滑稽な生き物どすなぁ」
自分自身に全部跳ね返っているのをわかった上で天ヶ崎千草は自虐の笑みを浮かべる。
二次創作でよく出ていた、麻帆良学園と学園都市へのスパイの元はこの世界ではこっちの方か。
とはいえ、関西も間者は放っているのだろうが。
笑うのが、麻帆良学園を中心とした彼らが正義を行使しているおかげで、この国は完全に悪魔に乗っ取られずに済んでいるという所だろうか。
あと、このデータはシエル先輩に提供しておこう。
これで彼女は、この国に長期滞在確定である。
なぜならば、ノマドの創始者のエドウィン・ブラックは不死者にして真祖の吸血鬼なのだから。
アヘ顔ビデオレターがやってくる事もあるかもしれないが、そこはエロゲヒロインだから大丈夫だろう。
「……うちの顔に何か?」
「いや。
なんでもない」
そういえば、麻帆良学園にも吸血鬼の真祖が居たなぁ。
多分知っているから黙っていよう。
二次創作系だと、彼女の抹殺目的の侵入者も結構居た覚えが。
そんな事を考えていたら、ある企業と人物に目が行く。
「豪和インダストリーに西田啓か……」
多分、後藤一佐の主導するクーデターの精神的支柱はここだろう。
となると、TAことタクティカルアーマーは現在開発中と。
あった。
後藤一佐の幕僚に広川三佐の名前発見。
それと北海道の陸自の帯広駐屯地にえらくセキュリティーレベルの高い実験中隊が作られていやがる。
これが多分デモニカスーツの流れになると見た。
あ。
他にも、甲斐冽輝や柘植行人の名前を発見。
おまけに彼らのセキュリティーのえらく高い計画、多分クーデターなんだろうがそのコードネームが『皇帝のいない八月』と来たもんだ。
この計画にファントムソサエティーは大規模な支援を行っていた。
彼らの本命は間違いなくマニトゥの方で、クーデターもこの平崎市も陽動という所か。
メシアが、核ぶっぱの千年王国を目指しているから、ガイアも過激にやっているだろうと思ったが、出るわ出るわやばいぶつが。
何よりもやばいのが、そのヤバさが作品世界で分断されているので、そのヤバさを俯瞰的に説明できるのが俺しかいないという所が特に。
「サマナー!
シド・デイビスがやってきた!!
今、聖白蓮さんが相手をしている!!!」
ハイピクシーが慌てて部屋に入ってきたので、俺はステンノにこう言う。
「ステンノ。
魅惑の美声Aと女神のきまぐれAをたのむ」
「はーい♪」
霊体化したステンノが気配遮断A+で門のまえにこそっと近づいて、スキル発動。
「うふふふ。
楽しいわ♪
とってもね♪」
『女神のきまぐれA』は、味方全体の攻撃力を20%アップ+『神性』特性の味方全体の攻撃力を20%アップするスキルである。
さて問題だ。
伝説の僧侶で聖の名持ちである彼女に神聖特性が無いのだろうか?
そんな訳がない。
つまり、
聖白蓮 Lv126 × 20%UP × 20%UP =181
「じゃあ、これならどうかしら?」
おまけに、ステンノの奇襲に近い魅惑の美声Aが発動。
シド・デイビスはステンノの姿を見て思わず動きを止める。
それを見逃す聖白蓮ではなかった。
「南無三!」
「サマナー。
思ったのですが、支援要員が居ないとおっしゃられていましたが、あのお方が居れば、事足りるのでは……」
さらっと『女神の気まぐれA』で特盛バフがちゃんと乗った『女神』ブリジッドのツッコミに俺はただ肩をすくめるだけで答えた。
多国籍複合企業体ノマド
『対魔忍アサギ』世界の暗黒メガコーポ。
大体こいつらが悪いでかたがつくので便利。
豪和インダストリーに西田啓
『ガサラキ』。
ゴトウのクーデターは、首謀者は居るがその精神的支柱がないなと思って探してきた。
難民問題などかなり今に通じる設定に改めてびっくり。
ゴトウは三島由紀夫のモチーフらしいが、彼が自衛隊内に居るよりもその精神的支柱が自衛隊外に居たほうが日本のクーデターらしいと思い設定。
甲斐冽輝や柘植行人
『機動警察パトレイバー』。
せっかく自衛隊にクーデターをさせるのならばと登場。
後藤警部もこんな世界でカミソリを使わないといけないからかわいそうに……
『皇帝のいない八月』
小林久三による小説。後に映画化された。
改めて思ったけど、この頃の冷戦構造と自衛隊が軍隊で無いというトラウマは今の時代では多分理解できないのだろうなぁ。