【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです 作:北部九州在住
「ちょっと!
結局敵来なかったじゃない!!」
羽をパタパタさせてプリプリ怒るレミリア・スカーレット嬢がかりちゅまを発揮している。
かわいい。
もちろん口に出すことはないのだが。
「こちらからすれば、勝手に敵が自滅してくれたのでありがたい事この上ないのですけどね」
そんな事を言いながら、俺はご機嫌取りにとエスティア艦内戦闘の画像をお見せしている最中である。
十六夜咲夜やパチュリー・ノーレッジやフランドール・スカーレットも茶菓子片手に画面を眺めており、上映会はそこそこ成功と言えよう。
その画像の向こうで実際に人死にが出ていることについては、ひとまず他人事として処理しておこう。
「いいなぁ。
私もこれしたかったなー」
「そうよ!
なんで私を呼んでくれなかったのよ!?」
羨ましそうに眺めているフランドール・スカーレットの隣で当たり前のように居るエリちゃん。
今回、お疲れ様会という事で、紅魔館に魔法少女とサーヴァントの皆様まで集めている。
つまり、ダヌ様やメイヴちゃんやメディア・リリィとかアリス・マーガトロイドや赤おじさんと黒おじさんコンビに、戦闘妖精少女に、女神まどかに引っ張られてきた悪魔ほむらやグレアム提督とその使い魔であるリーゼロッテとリーゼアリアもこの宴席に参加しているわけで。
BBちゃん。
居るに決まっていますが何か?
要するに、やべー奴らにやべー奴らを紹介しようというのがこの会の趣旨である。
その為、会場となった溟海の城では各地の料理を取り揃えての大宴会となりつつあった。
お菓子の国からお菓子を用意し、ブリジッド様がケルト料理をごちそう……ダヌ様。その鮭はどうか返してあげてください。お願いします。
メディア・リリィがキルケー様直伝のキュケオーン(毒は当然入っていない)を振る舞い、大淫婦バビロン。その葡萄酒聖杯から取り出したから駄目。
エリちゃんはエリちゃんでハロウィン仕様なのを良いことに真っ赤なパンプキン料理を何処からか持ってくるし、もちろん誰も手をつけていない。
我が日本も負けておらず、叢雲に乗った隊員達が海自カレーをご馳走し、BBちゃんが元になった間桐桜のデータを使って家庭料理を披露しようとすれば、女神まどかと悪魔ほむらも料理を手伝いたいという事で、女性陣がマシュ風の艦内厨房を乗っ取って楽しく料理タイムの最中である。
傍目で見るとドレイク船長がグレアム提督相手にチェスをやっていたり、木林がロリンチちゃん相手に議論をふっかけたりとカオスの極みである。
そんな喧騒の輪に入らなかった一人の女性に俺はホストとして声をかけた。
「どうなさいました?」
「どう入るべきか分からなかったので。
大人になると、騒ぐにも理由がいるって嫌ですね」
朔月陽代子。
朔月美遊の母であり、司法書士持ちの才女である。
朔月美遊はクロエと共にマシュ風の厨房で料理を作りに行っているので、この場には居ない。
逃すものかと絶賛スカウト中である。
水晶の中から助けられた二人は現在の所は無事で、いずれは彼女たち二人が幸せに暮らせる世界に送ってあげようと考えている。
ゲート技術はほぼめどが立ち、加護までもらえて世界移動ができる神様二柱こと女神まどかと悪魔ほむらが居るのだ。
ただほんの少し、具体的に言うと来年の宮内省立ち上げ直後に法律をしっかり解釈適用できる信頼ができる事務屋は喉から手が出るほど欲しいのだ。
霞が関の争いだけでなく俺の身の安全のためにも。
「貴方は何を私に望んでいるのですか?」
朔月家の特殊事象は知っているが、そんなものはこの闇鍋世界では実はそれほど価値はない。
何しろ聖杯なんてこの場だけで無駄に溢れ……ダヌ様お願いですから、そのオートミールが入っている大釜はちゃんと後でダグザ様に返してあげてくださいね。
その大釜聖杯の原型なんて言われているけど全力で見ないことにしますから。
メイヴちゃん、料理に自分が持ってきた蜂蜜をかけるんじゃねぇ!!!
ああ。レミリアお嬢様。
大淫婦バビロンの聖杯から葡萄酒を直飲みして……まあいいか。
というか、エリちゃん負けじと拾った聖杯に葡萄酒を注がないで。まだ洗っていないんだからそれ……
「見てのとおり、聖杯は無駄にあるんです。
けど、法律に精通している事務屋はとてもとても少ない。
こんな混沌の世界でも、日本人が日常を送る為には、判子と稟議書が必要なんです」
今の霞が関は、世界改変とそのすり合わせで幽鬼共が黙って首を横に振る(比喩表現)、霞が関官僚の修羅場と化していた。
そんな組織の一部門の局長になるという事は、部屋いっぱいの書類に埋もれて忙殺される事が確定している訳で。
「あなた方が幸せに暮らせる世界に送ることをお約束します。
必要ならば、生活基盤も向こうでの生活の資金も用意しましょう。
ですから、最低でも一年、最長で七年ここに留まってほしいのです」
「一体何が起こるというのですか?」
気づいてみたら皆の視線が集まっているのだが、俺は躊躇うこと無くそれをあっさりと口にした。
「ハルマゲドンですよ」
「面白そうじゃない!」
言うと思っていましたよ。レミリア嬢。
クー・フーリンとメイヴちゃんが立ち上がる。
こいつら、しっかり酔ってやがる。
「水臭いぞ。大将。
そういう戦いに俺を外すなんて事はしないよな?」
「あら?
クーちゃんが行くなら私も行くに決まっているじゃない♪」
あ。
エリちゃんが寄ってきた。
フランも一緒ついてきている。
「子イヌ。私は当然連れて行ってくれるのよね?」
「えー?フランも一緒に遊びたーい!」
朔月陽代子が微笑む。
あ。これはふっかけられるな。
「ちなみに、契約にはこのような状況の整理も入っているので?」
俺は苦笑してそれを飲まざるを得なかった。
入即出やる夫宮内省技術総括審議官秘書として、彼女はパチュリー・ノーリッジから教えてもらった小悪魔召喚呪文を駆使して、宮内省の事務方を掌握する事になるのだが、そんな未来が実現する少し前の話である。
まどか✕ほむらはまどか攻めである。
判子と稟議書が必要
『遥かなる星』二巻の描写。
核兵器のパイ投げにおいても東京から多くの官僚や社員が離れなかった理由で、読んだ時実に日本人らしいなと笑ったフレーズである。