【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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『お・り・が・み』を読み返しているが、戦前からの組織があるので色々出せる事に気づく。
あと、神殿協会は間違いなくメシア教の分派だ。これ。


麻帆良学園訪問 その1

 東京駅で京浜東北線に乗り換えてしばらく。

 気づいたのは、封印指定を食らって身の警戒を一番している蒼崎橙子だった。

 

「つけられているな」

 

 一言。

 問題は、つけられている事よりも何処がつけているかという事である。

 

「男性か?

 女性か?」

 

 

1 男性

2 女性

 

結果 1 男性

 

 

「男性だな」

 

 だったら話は早い。

 という訳で俺はステンノに声をかける。

 

「頼んだ」

「ええ。

 人使いが荒いけど、こういうのも悪くないわ」

 

 という訳で、ステンノの魅了で一撃となった男からつけた連中の背後を探ると、こんな組織の名前が出てきた。

 

「関東機関かぁ……」

 

 『お・り・が・み』の政府系退魔組織で、バックが大蔵省。

 第二次世界大戦において、決定的に弱体化した日本の政府系退魔組織なのだが、元は関東軍の研究組織を戦後大蔵省が手駒として再利用した組織である。

 なんでかというと、宗教法人の脱税対策。

 そりゃ、神様と悪魔が跋扈しているこの世界の宗教法人から税金を取り立てようとするならば、その手の組織は必要になる訳で。

 こういう時こそ、コネの出番である。

 学園都市謹製の携帯をピポパとポタンを押して相手が出るのを確認してから俺は声を出す。

 なお、つけていた関東機関の男は未だ電車の中で終点まで寝ている事になるだろう。

 

「もしもし?

 入江さん?

 お久しぶりです。入即出ですが、今大丈夫ですか?」

 

 名刺は破くものではない。

 連絡をするものである。

 さすがに話が話なので、一度駅に降りてホームの端での電話である。

 このあたり、次がいくらでも来る都会だからこそできる技だろう。

 

「これは入即出次期宮内省技術総括審議官。

 就任おめでとうございます。

 宮内省にも私と同じ入江が配属されるかもしれませんが、その時はよろしくおねがいします」

 

 やっぱり来るのか。入江シリーズという名前の日本官僚組織の非公然活動要員。

 上が何処か分からないあれは多分クローンじゃないかと俺は疑っているのだが。

 

「挨拶はこれぐらいで。

 ちょっと確認したい事があるのですが、関東機関ってご存知ですか?

 その構成員につけられていたのですが?」

 

「あそこですか。

 うちとは関係がないですが、面白い動きをしているとは聞いていますよ」

 

 面白い動きときたか。

 口笛を吹きそうになるのをこらえてあくまで事務口調で尋ねる。

 

「面白い動きですか?」

 

「ええ。

 あそこの飛騨局長が何者かに殺されて、組織そのものは弱体化しているんですよ。

 その結果、このご時世誰かさんが始めた退魔組織の統廃合の波に乗り遅れて焦っているとか。

 大蔵省と内務省って仲悪いですから」

 

 官僚組織的に見ると、俺は内務省側というか警察側の人間らしい。

 この手の内と外の意識は日本組織あるあるである。

 

「それがどうして俺の監視に?」

 

「だって貴方、内務省が進める退魔組織統廃合の旗振り役じゃないですか。

 恨まれもするでしょうし、情報を得ようとするのは当然では?」

 

 納得。

 こっちの納得など知らない入江省三は話を続ける。

 

「あと、関東機関は永田町の先生が目をつけたそうで。

 今や地方リゾート開発が華やかですから、土地神を鎮める戦力を確保しておきたいというのと、神様相手の力をそのまま敵対派閥に使いたいと言ったところでしょうか。

 政府にかなり食い込んでいたノマドが力を失った事で、そのあたりの戦力を確保したいという訳で」

 

 あのカレー好きの先輩は一人で本当に大暴れしたらしい。

 たしかに東京キングダム跡地は俺が押さえて英雄王専用の発電所兼魔力炉の建設中、地下都市ヨミハラも今や東京ジオフロントに名前を変えている。

 対魔忍クローン事業で立て直しては居るだろうが、対魔忍クローン生産が公的事業になりつつある昨今、ノマド自体が襲われるリスクをおさえるために、クローン事業を別会社に移すように通産省が圧力をかけている最中だったりする。

 入江省三の話は続く。

 

「省庁再編は政府組織にこれでもかとある退魔組織と、秘密部署の存在を暴露しましたからね。

 室戸次期宮内省事務次官の切り札と呼ばれている公安の荒巻課長が各所を回って、連絡会議への参加を求めているけど、宮内庁神霊班と共に参加を拒否しているのがこの関東機関ですね」

 

 つーか、本家宮内庁内部でよりにもよって連絡会議に出ないってそりゃまずくね?

 それを言おうとして、先に入江省三がその種明かしをした。

 

「宮内庁の方は命令系統が明確に違います。

 神霊班の表向きの上って侍従長ですよ」

 

 あー。

 つまり、上が皇室というかそっちのお方か。

 これは手が出せない。

 という訳で、もう片方の方を尋ねてみた。

 

「じゃあ、関東機関に手をつけたその大物政治家ってのは掴んでいるのでしょう?」

 

「ええ。

 野党連立政権の大物、澤田武志議員ですよ」

 

 長きに渡って政権の地位にあった与党はこの夏に腐敗とスキャンダルと権力争いから勃発した解散総選挙で敗北を喫し、野党連立政権が誕生していた。

 そのキングメーカーとして君臨したのが澤田議員であり、選挙戦の最中に発生したミサイル誤射事件は野党側への追い風となって政権交代の一因となる。

 なお、彼は外交の自主独立路線を掲げ、『大東亜共栄圏』復活を自派議員や官僚にぶちあげている人物でもある。

 電話を切ってそろそろ電車に乗るかと思ったら近づいてくる男が一人。

 その男は眼鏡の奥の笑わない目でこんな事を言ってのけたのだった。

 

「内調の羽柴茂光と申します。

 麻帆良学園への護衛にいかがですか?

 お安くしておきますよ」




次の列車が来る都会
 うちの実家がある日豊本線は普通だと大体一時間に一本。
 西鉄大牟田線界隈で生活しだしてその列車の本数に感動した覚えが。

上が侍従長
 『お・り・が・み』ではぼかしているけど、那田主任が直で話しているので、ワンクッション置くためのオリ設定。

澤田武志
 『COMBINATION』(聖りいざ 光文社)
 綺麗なO沢さん。
 『真・女神転生』のオザワ役あたりをさせようかと考えていたが、時間が93年というクリティカル時期だったが為に登場と相成った。
 なお、細川連立政権が成立したのは93年の8月9日。
 対魔忍世界の政治家がこれで野に下っただけでなく、冬木の聖杯戦争でのミサイル誤射事件が総選挙前にぶち当たるというミラクルまで重なってこの人のご登場と相成った。
 多分省庁再編を手動したのがこの人。
 これで妹之山財閥が出せるな。

羽柴茂光
 『COMBINATION』。
 沢田さんが出るならこの人も出るだろうという訳で。
 時間軸的には、『COMBINATION』3巻あたり。

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