【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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あの時代にやばいやつが居るのならばこの時代にもやばいやつは居る

「関東魔術協会のシスター・シャークティと申します」

「ヤタガラスの入即出やる夫と申します。

 私の留守中に、ご訪問いただいたとのことでお手数をおかけしました」

 

 平崎市のホテル業魔殿の俺の部屋にてシスター・シャークティとの会談が行われた。

 向こうはわざわざこちらに出向いたのだから、会わない訳にはいかないという判断である。

 後ろに控えている天ヶ崎千草が敵意むき出しでシスター・シャークティの方を見ているが、ここは無視することにする。

 

「この街での悪魔騒動を解決なさったとかで、麻帆良でも話題になっていますよ」

「そりゃ、自分の手を汚さんと己の庭先の掃除をしてもろたら礼ぐらい言いますわなぁ」

 

 うん。

 分かっていたが、本当に関東と関西の対立がひどい。

 シスター・シャークティは顔をひきつらせながら会話を進めようとする。

 

「我々関東魔術協会は、貴方を受け入れる用意があります」

「そない言わへんと、そちらの面子が立ちませんわな。

 シスター・シャークティほどのもんが、関東の悪魔騒ぎを解決しそこねたなんて無能を晒すようなもんどすからな」

 

 天ヶ崎千草のこの物言いは、ある意味計算されたものである。

 彼女の仕事の中には、関東からの引き抜きの阻止というのが入っているからだ。

 あえて棘のある言い草をする天ヶ崎千草を入れたのはこのためである。

 

「お気を悪くなさったら謝りますが、私も放浪していたおかげでこのあたりの確執を知らないのです。

 何故関東と関西は仲が悪いのでしょうか?

 関東から見た意見というのをお聞かせ願いたい」

 

 立ち位置の明確化という事で、この交渉は最初から関東に喧嘩を売る形になっている。

 それで失礼しますだったらこっちも楽なのだが、交渉に来たシスター・シャークティは顔を崩そうとせずに口を開く。

 

「魔法世界の大分烈戦争についてどれぐらいご存知で?」

「子供でしたので従軍はしていませんでしたよ。

 ただそういう戦争があったという事を知っている程度で」

「この戦争に関西呪術協会のもんがようさん出征してな。

 うちの両親を含め多くが帰ってこんかったんや……」

 

 天ヶ崎千草の涙声にシスター・シャークティが顔をそらす。

 天ヶ崎千草にはこういう相手を糾弾する場が必要だった。

 それすら出来なかった故に、彼女は最後まで復讐に走ることになる。

 これで復讐を止めるとも思えないが、それでもこれは必要な場所だと俺は思っている。

 

「我々には守らなければならないものがありました。

 そして、それを守るために、関西の人たちに助けを求めたんです」

 

「嘘や!

 関西に戦力を出させて、あんさんらは麻帆良の中でぬくぬくと結果を見とったやないか!!」

 

 なんとなく見えてきた。

 凄く嫌なものが。

 俺はそれを確認するために、口を開いた。

 

「シスター・シャークティ。

 一つお聞きしたい。

 麻帆良学園都市。

 その行政は何処に属しているのですか?」

 

 その質問の意味を理解できない彼女は、彼女の常識と共にその答えを導き出す。

 

「はい。

 本国元老院に」

 

 その一言を聞いた瞬間、俺は額に手をあてて天を仰いだ。

 概ねの流れが見えたからだ。

 そりゃ、二次創作で大活躍する訳だ。関西呪術協会は。

 

「わかりました。

 色々とありがとうこざいます。

 私は関西呪術協会に属していますが、今は護国機関ヤタガラスの一員です。

 何か手助けを求めたい時は、そちら経由で連絡をいただけると助かります」

 

「いえ。

 こちらも何か失礼があったかもしれませんが、それについては関東魔術協会を代表して謝らせていただきます。

 申し訳ございませんでした」

 

 互いに頭を下げる日本的光景だが、どうみてもシスター・シャークティは日本人ではない。

 念の為。

 彼女を丁重に見送ったあと、俺は泣き止んだ天ヶ崎千草に大きく大きくため息をついた。

 

「すんまへん。

 こないな形で話を乱すつもりは無かったんどす」

 

「いや。

 そっちの事はいいよ。

 君も吐き出す場は必要だっただろうからね。

 少し考えたいから下がってくれないかな?」

 

「……はい」

 

 天ヶ崎千草が部屋を去り、ステンノが姿をあらわす。

 また入れ違いでコーヒーと茶菓子を持ってきた叢雲が部屋に入ってくる。

 

「何かわかったの?

 やる夫」

「ああ。

 考えうる限り最悪の状況だ。

 この国はもはや、植民地に成り果てている」

 

 国家は基本的に国家内国家を認めない。

 ましてや、国家内において別国家の主権を主張するなんてことはありえない。

 今の日本は、独立独歩で好き勝手する学園都市に、メガロメセンブリア元老院の意向を尊重する麻帆良学園、日米安保条約下で軍を置いている米国と主権侵害どころではない状況に陥っていた。

 考えられる関西呪術協会の参戦理由は、戦時徴兵か傭兵、もしくはその両方か。

 そんな状況下で彼らの楔から逃れようとして悪魔の力に縋ったのだから本末転倒もはなはだしい。

 そりゃ、後藤一佐がクーデターを起こすわけだ。

 賛同する気は毛頭ないが。

 

「あらあら。

 じゃあどうする?

 逃げちゃう?」

 

「逃げた所で待っているのが核ミサイルだ。

 踏ん張るしか無いのさ」

 

 ステンノの誘惑を俺は笑顔で振り切る。

 本気で逃げようと思えば逃げられるのだろうが。

 そんな事を考えようとした時にドアを叩く音がした。

 

「失礼します。

 お客様がお見えになっていますが」

 

 ホテル業魔殿のメイドであるメアリさんの声で一旦思考を打ち切る。

 来客の名前を聞いて、最初に思ったのは『たしかにこの時代なら居るよな』だった。

 

「お通してくれ」

 

 しばらくしてドアがノックされて、美少年が俺の前に現れる。

 

「平崎市の怪異についてお話を聞きたい思ってまいりました」

「こちらも、高名な貴方に来てもらえるとは思いませんでしたよ」

 

 握手をする。

 令呪を隠す手袋と刻印を隠す革手袋が触れ合い、俺は彼の名前を告げた。

 

「皇家13代目当主。

 皇昴流さん」




皇昴流
 『東京BABYLON』。
 メガテン世界だと大体何でも出しても最後は滅亡エンドに持っていけるので楽だったり。
 出したかっただけなので時間軸の確認をしていない。
 北斗ちゃんが生きているか死んでいるかでその後のストーリーが大きく変わる予定。
 そのためにも書庫にしまってある『東京BABYLON』を引っ張り出さないと……

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