【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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麻帆良学園訪問 その6

 来たことなど一度もないのだが、その場所を懐かしいと思うのはなかなかおもしろいものがある。

 『ネギま』の始祖吸血鬼ことエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルの家というのは、中の水晶球を含めて二次創作を読みまくった俺にとってそんな場所だった。

 

「お待ちしておりました。入即出様」

 

 頭を下げたのは絡繰茶々丸。

 その隣に、鎌を持ったマシュ・茶々丸が一体こちらを挑発的な目で睨んでいる。

 多分チャチャゼロだな。こいつ。

 

「貴様か。

 ジジイの紹介で私の呪いを解きたいという酔狂者は」

 

 生幼女吸血鬼である。

 どれだけ多くの二次創作がエヴァ救済ルートを通った事か。

 ああ。全てが懐かしい。

 

「おい!

 聞いておるのか!貴様!!」

 

「……すいません。

 入即出やる夫と申します。

 こちらも色々事情がありまして」

 

 とりあえず手を差し出すと、エヴァはその手を握ってくれた。

 小さな手だが、握力は吸血鬼なだけあって強い。

 

「聞かせろ。

 どうやってジジイの取り巻きを説得した?

 奴らは呪いが解けると私が復讐に出ると怯えていたからな」

 

「それは秘密と言いたい所ですが、彼らの排除はこちらのオーダーでもありましたし」

 

 手を離したエヴァが首をかしげる。

 エヴァも、『ネギま』世界の常識に捕らわれているというのが分かる。

 というかこんな闇鍋世界でどれが常識かを問うのもナンセンスだが。

 

「こちら?」

「日本政府」

 

 まだ首をかしげるエヴァンジェリン。

 麻帆良学園都市に住むと、どうしても上をメガロメセンブリア元老院と考えている連中の多いこと多いこと。

 しかも、学園長をトップとして学園上層部が魔法関係者で固められているから、日本政府の介入をどうとも思っていないふしが露骨に出ている。

 

「今までこちらを放置していた連中が今更口を出すと?」

「放置していたのではなく、放置せざるを得なかった、なのです。

 お間違えなく」

 

 麻帆良学園都市に学園都市に在日米軍という三点セットがこの戦後日本を苦しめている。

 もちろん、それ相応の恩恵も受けているのだが、この矛盾の精算を迫られているのも事実であった。

 

「戦争はするものではないですよ。

 特に負ける戦争は」

 

「それには同意するな。

 そちらは半世紀ほど平和だったが、向こうは大分裂戦争が数年前のことだ」

 

 戦争からの復興には時間も金もかかる。

 そして、その復興を地球側が支援しているというのは政府資料から裏付けがとれていた。

 弱っている所につけ込むというのは言い方が悪いが、対学園都市絡みでも麻帆良学園都市を日本政府の影響下におく事は既定路線と言っていいだろう。

 

「来年できる文部科学省から査察官がやってくる事になります。

 色々痛くない腹を探られると思うので、彼らも貴方のことまで手が回らないでしょうな。

 とはいえ、魔法世界の懸賞金についてはこちらも関与できないので、この街を出たら狙われるというのはお忘れなきように」

 

 なお、その査察官の名前は入江省三って言うんだろうな。きっと。

 そこまで話して、ふと気になった事を尋ねる。

 

「そういえば、私の前に貴方を訪ねた客来ませんでした?」

 

「ああ。今も水晶球の中だ。

 お互いかなり話して、色々刺激を受けていた所でな。

 もうしばらくは居るつもりらしい」

 

 エヴァの言葉についてきたマシュ・茶々丸を眺める。

 後で超鈴音も交えて人形談義に花が咲くのだろう。

 今度、アリス・マーガトロイドも連れて来てやろうと心のメモに記録しておく。

 

「とりあえず、能書きはここまでだ。

 それで、どうやって私の呪いを解除するつもりだ?」

 

「いくつか案がありますが、かんたんなのとド派手なのどっちがいいですか?」

 

 俺の確認にエヴァはあっさりと一言。

 家の外に出る。

 さらりと魔法関係者の監視がある事を確認。

 

「決まっているだろう。

 ド派手なのだ」

 

「わかりました。

 令呪を持って命じる!

 来い!

 メディア・リリィ!!!」

 

 瞬間、地面が光り、神代の魔術師がこの地に召喚される。

 プリズマ・コーズでボス役をやっていたメディア・リリィである。

 今回の事で、一時的に契約してこうして召喚したのだ。

 

「サーヴァント、キャスター。メディアです。

 あの、よろしくお願いします!」

 

 呆然とするエヴァ。

 そりゃそうだろう。

 たとえ世界が違うとは言え、魔術を操る者で歴史を遡るならば、必ず名前が出てくる魔女の一人なのだから。

 その全盛期スタイルの召喚なんてどれだけの神秘なのかは言うまでもない。

 

「宝具開放。

 彼女の呪いを解いてやれ」

 

「はい。

 頑張りましょう」

 

 スキル『高速神言 A』lv10使用。

 なお、概念礼装『魔性菩薩』を念の為に持たせている。

 これでNPは100%オーバーチャージに『魔性菩薩』の効果で300%となる。

 あとは、この麻帆良学園都市という敵地で、ナギ・スプリングフィールドの呪いを解除できるかという勝負となる。

 

ナギ・スプリングフィールドの呪いのレベル

 141

麻帆良学園都市の結界の効果

 キャラクターレベル能力の52%のバフorデバフ効果

 

1 バフ

2 デバフ

3 影響なし

 

結果 3

 

メディア・リリィのレベル+魔性菩薩のOC

 80✕300%=240

 

「どうか誰も傷つけぬ、傷つけられぬ世界でありますように……

『修補すべき全ての疵』」

 

 解き方が分かっている以上、問題はそれをどうやって用意するかだった。

 原作では、ネギの血だけでなく、麻帆良学園都市の停電による結界の解除という外的要因も重なっての解除だったが、ここでは見せつける為にも宝具で一気に押し込む事に。

 後でメディア・リリィに聞いたが、呪いはかなりやばかったらしい。

 どれだけの馬鹿力で無茶苦茶な魔法をかけたのやら……

 

「どうです?

 呪いは解けましたか?」

 

「ああ。

 こんなに苦しんでいたのに解けるとあっさりとするものだな」

 

 みるみるエヴァの中から殺気が膨れ上がる。

 このあたりもお約束だなぁと思いながら、俺は学園長からの預かりものを手渡す。

 

「何だそれ……あっ!」

 

 黒い筒に入っていたのは中等部の卒業証書。

 それを見て震えるエヴァに文部省と交渉して作成した書類をエヴァに手渡す。

 

「転入届…だと?」

 

「貴方は転校していた事になっています。

 これがあれば、高等部に進学できますよ」

 

 エヴァの登校地獄の呪いは88年に始まっている。

 その時中等部一年ならば、今の93年だとギリギリ最初の学年の連中がこの学園内に残っている計算になる。

 三年間の友人生活と二年間の無視という苦しみを思い出してエヴァは姿相応の少女の声で呟く。

 

「……あいつら、私を覚えていてくれると思うのか?」

 

「貴方の行い次第でしょうな。

 友人ならば、笑ってくれますよ」

 

 ただ静かに嗚咽の声をあげるエヴァを置いて俺たちはここを去ることにする。

 後は、茶々丸やチャチャゼロの仕事だろう。

 家を出てしばらくすると、数人の女子高生たちがこっちにやってくる。

 

「あの、すいません!

 このあたりに、外国人の女学生の家ってありませんでしたか?」

 

「ああ。

 私は学園長に頼まれて、転入届を彼女に手渡して……」

 

「ほらっ!

 やっぱりエヴァちゃん帰ってきていたんじゃない!!

 ありがとうございます!」

 

 そんな事を言いながら走り去ってゆく女子高生たち。

 そんな後ろ姿を眺めた後、俺たちはここを立ち去った。 




エヴァ救済回
二次創作だと後は長谷川千雨救済がお約束。

かんたんな解呪
 コマンド・コードをつけたマシュで殴る予定だった。
 弱体解除のやつがそこそこあるんだよなぁ。あれ。

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