【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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更に続く猫の手の確保 その2

 横須賀基地のグラウンド。

 平賀=キートン・太一氏の指導の元、隊員に混じってハイデッカーやオイランロイドも走り込みをしているのが日常となりつつある今日このごろだが、上の方ではその彼らの確保について頭を抱えていた。

 なお、指導に際して元階級の曹長を用意したのだが、固辞されたので曹長待遇という事でお茶を濁すことに。

 

「今や何処もかしこも彼ら彼女らの確保に必死になっているよ。

 こちらの購入価格の倍の値段を出すから売れという話すらきだした」

 

 俺の上司扱いである咲川司令はそう言って苦笑する。

 それを言い出したのは、現在組んでいる巨大軍産複合体のトライデント。

 自衛隊が導入したという事を受けて、各国が導入に踏み切ったからだ。

 なお、トライデントにそんなオファーを出してきたのは、国民が信用できない独裁国や国家相手に喧嘩できる麻薬組織とかだったりする。

 

「パンドラの箱ですからな。

 数が確保できるのは強いですよ。

 おそらく、我が国の新たな産業として発展するでしょう」

 

 資源などで国家経済を回しているレンティア国家などでは、国民を不良債権として切り捨て--つまり虐殺--の方向に動いてゆくだろう。

 もちろん、虐殺を受け入れる訳がないので、彼らも蜂起し内戦へという道がとても容易に見える。

 そして、そういう治安悪化の背後にメシアやらガイアやらトライデントやらアーカムやらミレニアムやらの影がちらつく訳だ。

 他にもまだその手の組織がありそうだから困る。

 

「アーカムも本格的にクローンやアンドロイドの導入を決めたという。

 優れたプロだけでは結局組織は回らない。

 安心して使い捨てができる兵の登場は、次の戦争をがらりと変えてゆくのだろうな」

 

 アーカムも動いたという事は上層部にヘンリー・ガーナムあたりが台頭する頃か。

 そんな事を考えていた俺の前にいる咲川司令の口調が改まる。

 つまり、ここからが本題という訳だ。

 

「市ヶ谷は君の立ち位置について疑念を深めている。

 君の居場所を用意できなかった失態を棚に上げてだ」

 

「こちらに籍を残すのは向こうとの話で合意できていますよ。

 今の所、貴方の下が一番動きやすいという事で」

 

 このあたりの会話の先に、横須賀港に停泊している俺の指揮下の船、叢雲改二・マシュ風・ジャンヌ・ダルクの三隻の存在がある。

 問題は、三隻目のジャンヌ・ダルクだった。

 悪魔であり英霊であり艦娘であるという欲張り三点セットの上に、彼女の所で戦闘妖精たちが指揮運用されているのである。

 上にあげたくない市ヶ谷は俺からこれを取り上げたい所だが、既に俺の居場所が宮内省技術総括審議官という最上位の場所を用意した宮内省にかっさらわれるという大失態をやらかしている。

 なお、わずか数ヶ月の間に立て続けて起こった騒動のせいで書類の改ざんがおいつかず、この三隻が所属する第70護衛隊は、『みらい』の第71護衛隊や『大和』『叢雲』の第72護衛隊と共に警備隊のある横須賀地方隊の所属だったり。

 冬木の件から俺達の身柄を舞鶴が欲しがっているし、『大和』は呉が里帰りを企んでいるとか。

 一方、佐世保は就役したばかりのこんごう型護衛艦一番艦『こんごう』のイージス運用の為に『みらい』の人員を欲しがっていた。

 だが、それ以上に市ヶ谷が喜んだのは、これらの船の人員補充の名目で大量導入されたハイデッカー・オイランロイド・対魔忍による人員だった。

 バブル継続中で充足率が八割を切ろうとしていた海上自衛隊にとって、かれらの投入によりシフトが緩和されて、通常隊員が楽ができるという恩恵がこのなし崩しの混乱を黙認した一番の理由だろう。

 

「君の指揮権は結局誰が握ることになるのですか?」

 

 そして、市ヶ谷の防衛省(来年昇格)と宮内省(来年昇格)が壮絶に揉めたのがここだった。

 元組織だったヤタガラスと海上自衛隊との間でかわされた取り決めはこんなのだ。

 

『海上自衛隊からの命令については、協力できる限りにおいて協力すべし』

 

 だが、そのヤタガラスも組織再編で宮内省の下部組織である神祇院に移り、俺自身は日本の国家退魔組織の現場側トップの椅子に座る予定である。

 するつもりはないが、市ヶ谷の命令を拒否できなくもない。

 市ヶ谷はその可能性を恐れている訳だ。

 

「オカルト絡みなら上の室戸次官が、普通の軍艦相手なら統幕の命令に従いますよ」

 

 防衛省昇格に伴い設置される統合幕僚監部の今の仕事は、鎮静化した自衛隊内部のクーデター勢力のパージであり、陸海空自衛隊の指揮権の一元化だった。

 その一元化に壮絶に邪魔なのが俺というのは皮肉というかなんというか。

 俺の言葉を聞いて咲川司令はまったく安心していない目でこう言ったのである。

 

「そのような事が無いことを祈りますよ」

 

 それには同意できるのだが多分無理だろうなと思った俺は黙って彼の部屋から退出したのだった。

 

 

 

 現在の第70護衛隊は大規模な隊員不足にある。

 言うまでもなく、その理由はジャンヌ・ダルクだ。

 なお、現在の第70護衛隊の隊員構成はこんな感じである。

 

やる夫、叢雲、ステンノ、マシュ、ジャンヌ・ダルク

海上自衛隊員

 100人

ハイデッカー

 400人

オイランロイド

 80人

対魔忍+クローン対魔忍

 7人+20人

マシュ・茶々丸

 50人

 

その他乗員

 天ヶ崎千草

 ロリンチちゃん

 モードレッド

 ドレイク

 クー・フーリン

 

悪魔

 妖精  ハイピクシー lv10

 妖精  ジャックフロスト lv15

 妖精  チルノ lv32

 神獣  ゲンブ lv43

 大天使 イスラフィール lv42

 

COMP外悪魔

 鬼女  文車妖妃 lv12

 魔神  大淫婦バビロン lv69

 

戦闘妖精少女

FFR-31MR スーパーシルフ “雪風”ちゃん

FFR-41 メイヴ“雪風”ちゃん

FFR-31シルフィードちゃん

FA-1ファーンちゃん

FA-2 ファーンIIちゃん

 

 

叢雲 みねぐも型護衛艦

 乗員220人

浜風 陽炎型駆逐艦

 乗員239人

ジャンヌ・ダルク ヘリ空母

 乗員

士官31人+下士官182人+兵414人=627人

 兵員輸送能力700人

 

 

 ジャンヌ・ダルクの分の乗員がまったく足りない。

 とりあえず、麻帆良学園の超鈴音の所からマシュ・茶々丸を50体ほど連れてきたが、現状ではジャンヌ・ダルクは艦娘として動かざるを得ない。

 あと、人員確保できそうな所と言うと学園都市なのだろうが……

 そんな事を叢雲の自室で考えていたら、緊急警報が鳴り響く。

 

「何が起こった!」

 

 倒れかかる叢雲を抱き起こしてモニターを見ると、そこには『YAMA』の文字が。

 やばいことが起こっているのは分かるが、それでも思ってしまったのだ。

 

(『BABEL』じゃないのか……)

 

と。




レンティア国家
 レント収入(ランティエ、すなわち、土地による天然資源収入等の非稼得性から見出され国家に直接的に流入する利益)に依存する国のことである。(by wiki)
 資源収入で国家を回せるから、基本的に国民そのもの経済活動に依存しない。
 そういう国に代替できる裏切らない人間の存在が知れたら喜んで代替に走るわな。

こんごう
 ちょうどこの頃出来上がっている。

『YAMA』
 『スプリガン』6巻『終末計画』。
 読み直して思ったが、この後始末でヘンリー・ガーナムあたりが台頭してきたんじゃなかろうかと。
 舞台が米国の話だから、あくまで第三者イベント。

『BABEL』
 『機動警察パトレイバー the Movie』。
 89年の映画だから、こっちの方が古い。

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