【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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沖縄沖海戦 その7

沖縄での揚陸終了時間

 6時間

 

敵艦隊接近予定時間

 6時間

 

 

 上陸拠点は戦線の後方の安全地帯と距離から本部港に決められた。

 沖縄-鹿児島のフェリーが停泊できる港湾施設があるのが決め手となったからである。

 問題なのは、こちらの揚陸終了時間と敵艦隊接近時間がほぼ同時刻という事。

 砲雷撃戦は避けられそうにない状況だった。

 

「で、敵艦隊の数は?」

 

巡洋艦1隻

駆逐艦4隻

 

「航空偵察だと、巡洋艦1隻と駆逐艦4隻が単縦陣を組んで接近中。

 残りの船は空母と共に退避中ね」

 

 叢雲が国防軍からの情報を読み上げる。

 空母が居なくなったとしても、敵は那覇空港に航空機を前進させている。

 奄美大島のこちらの空軍がその敵部隊を相手に制空権を取れるかどうかはやってみないとわからなかった。

 

「マスター。

 藤堂海将から」

 

 ステンノから受話器を受け取ると、藤堂海将は要件を告げてきた。

 声に緊張があるのは、まだこの勝負の行方がわからないからにほかならない。

 

「敵艦隊に向けてハラスメント攻撃をしかけようと思う。

 そっちの大和に搭載していたハリアーⅡJ7機と戦闘妖精少女たちに協力をお願いしたい」

 

 ハラスメント攻撃。

 要するに嫌がらせである。

 空母のカバーがなくなったので、この世界では技術的に古いハリアーⅡJをやっと出すことができるという訳だ。

 

「大丈夫ですか?」

 

 戦闘妖精少女の方はまだ技術的に勝っているが、この世界でのハリアーⅡJは骨董品である。

 藤堂海将はそれも考えていたらしく、説明を続ける。

 

「搭載できるハープーンミサイルの射程が大体120キロ。

 その距離から撃って逃げるだけ。

 向こうの防空性能がどれぐらいかわからないのですが、相手の対空ミサイルを落とすためにも、戦闘妖精少女の協力が欲しいのです」

 

 ここに来ての航空戦力は敵にとっても嫌だろう。

 足止めできたら御の字で、ダメージが入ったら儲け物。

 安全に配慮してさっさと逃げるというプランに俺も文句はつけられない。

 

「わかりました。

 そちらにおまかせします」

 

 

戦闘妖精少女

 FFR-31MR スーパーシルフ “雪風”ちゃん

 FFR-41 メイヴ“雪風”ちゃん

 FFR-31シルフィードちゃん

 FA-1ファーンちゃん

 FA-2 ファーンIIちゃん

 

 ハリアーⅡJ 7機 × ハープーンミサイル 3発 =21発

 

 

敵艦隊防戦

 ミサイル撃墜数 15発

 

 航空隊向け対空ミサイル発射 21発

 戦闘妖精少女のミサイル迎撃 23発 オーバーキル

 

敵艦隊へのミサイルの行方

 

1 巡洋艦

2-5 駆逐艦

6 はずれ

 

2、2、1、3、3、3

 

 

敵艦隊の決断

 

1 撤退

2 同上

3 同上

4 同上

5 同上

6 同上

7 同上

8 損傷艦を置いて追撃

9 同上

10 熱烈歓迎

 

 

 

「こちらスーパーシルフ雪風。

 先頭の巡洋艦とその後続の駆逐艦二隻にミサイル命中。

 うち、駆逐艦一隻は大破炎上中。

 進路を変えて撤退しつつあり」

 

 スーパーシルフ雪風ちゃんの報告に、艦橋に喜びの声が漏れる。

 うちみたいにきっちり防戦に徹すればよかったのに、防御と空襲部隊への攻撃を両方行ったのが仇となった。

 敵が発射した対空ミサイルをこちらの戦闘妖精少女が全機撃墜した隙を突かれて、こちらの放った対艦ミサイルが殺到したのだ。

 現代戦闘はとにかく分単位、秒単位の決断が勝敗を分ける。

 この世界的に古いミサイルとはいえ当たれば爆発する訳で、火力の増大から防御より回避や迎撃に重点が置かれていた敵軍の巡洋艦や駆逐艦は見事戦闘行動不能に追い込まれ、撤退するとこになったという訳だ。

 

「寂しいものだな」

 

 ぽつりと漏らした俺の言葉に九島少将が反応する。

 

「なにかおっしゃいましたか?」

 

「お気になさらず。

 艦隊戦と意気込んでいたのですが、飛行機の威力は昔も今も変わらないなと」

 

 またも大和の主砲は敵艦に向けて放たれなかったのである。

 航空機の恐ろしさとその防戦は戦艦を正しく過去の存在にした。

 それを俺は痛感していた。

 

「たとえ使いみちが違えども役に立つのならば、それは喜ぶべきでしょう。

 大和の防空能力が無ければ、炎上し撤退していたのは我が艦隊なのですぞ」

 

 正しいゆえに俺はただ頷いた。

 大和にはまだ仕事が残っている。

 沖縄に上陸した敵部隊への対地攻撃という仕事が。

 

 

 

 ここからの戦闘はたいした見どころがないので、淡々と語るとしよう。

 本部港に増援の連隊を上陸させると、艦隊を二つに割って第四艦隊は残りを連れてくるために奄美大島にとんぼ返り。

 我々は対地攻撃のために那覇港に向けて進路を取る。

 その際、高速艇4隻を護衛にと残してくれたのは、純粋な好意と我々だけ目立つのは後々まずいという政治的配慮なのかそこはわからないし知る必要もない。

 大和の主砲が吠える。

 その轟音が敵軍に刺さると、敵の崩壊は更に加速した。

 その日の夜には、奄美大島に帰った第四艦隊と横須賀から出撃してきた第一艦隊が沖縄に到着。

 残った二個連隊に魔法師の義勇兵部隊も到着して掃討戦の段階に入る。

 敵上陸部隊は混乱したまま各所で孤立し、撃破されるか降伏していった。

 最終的に沖縄から大亜細亜連合上陸軍の駆逐と戦闘終結宣言が日本国防軍から出されたのはそれから一週間後の事である。

 それまでの戦闘で沖縄への被害は甚大で、被害者は19万人に及んだことをここに記しておこう。

 

 

 

 

 

 那覇市内に轟音が轟く。

 大亜細亜連合軍は算を乱して潰走するが彼らに逃げられる場所は何処もなかった。

 制空権は既に日本の方に移り、制海権も日本が握ったからのこの大規模質量砲撃である。

 いかな魔法師といえども、高高度から落ちてくる46センチ砲の質量と衝撃を防げない。

 司波達也はそんな敵兵たちを虐殺してゆく。

 ふと彼は海岸線上に目を向けた。

 彼の精霊の目は、洋上に浮かぶ女性たちを捉えていた。

 その中央の女性が嬉しそうに泣いていたのは見間違いなのだろうか?

 

「どうした?特尉」

「……何でもありません」

 

 司波達也は戦場に目を戻して、もう彼女たちを見ようとはしなかった。

 

 


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