【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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【短期集中リハビリネタ企画】やる夫は叢雲とステンノとマシュを連れて一年戦争を乗り切るようです その3 一般将兵side

 一年戦争において連邦の勝利というかジオンの敗北を決定づけたのはどの戦いだったのか?

 多くの専門家は地球侵攻作戦をあげるが、ジオン軍とてルナ2を残す危険は理解していた。

 それでも、ジオン軍は地球侵攻作戦に踏み切らざるを得なかったのである。

 

「レビル艦隊がほぼ壊滅したと言っても、ティアンム艦隊がルナ2に残っていたのが厄介でした。

 当時のジオン情報部は、ルナ2に駐留している艦隊数をおよそ40-60隻と見積もっていました。

 これは、再度ルウムの決戦を敵拠点であるルナ2で行わないといけない事を意味します。

 当時のジオン軍はルナ2攻略と地球侵攻の二つの作戦案がありましたが、ジオン軍中枢は南極での講和会議において地球侵攻作戦を行う事をすでに決定してたのです。

 ドズル・ザビ宇宙攻撃軍司令官が戦死した事で、かれの軍勢と派閥は、ギレン総帥とキシリア突撃機動軍司令官に分割され、地球侵攻作戦の指揮がキシリア突撃機動軍司令官に一元化されたことで戦力が拡大したというのも大きかったと思います。

 事実、ジオン軍の地球侵攻作戦はその初動は完全に成功しました。

 ユーラシアの殆どに、北米、オーストラリアとその支配領域を広げたのですから。

 その時にルナ2は何もしなかった。

 いや、完全にジオン軍の兵站線が広がり切るのを待っていたんです。

 ニューソクデ少将は」

 

 彼がこの時に指揮下に置いていたのは戦艦二隻と巡洋艦二隻の四隻しかなかった。

 だが、彼の元にはブリティッシュ作戦で救助した艦艇やパイロットがそのまま残っていた。

 それらの破損艦艇を修理して戦力化してルナ2の防衛に組み込んだ事と、ジオン軍のMSであるザクをどこからともなく入手した事は彼のその後の功績の伏線となる。

 

「ニューソクデ提督?

 そりゃ、モゲロと言いたくなりますよ。

 あの綺麗どころを侍らせて、腐敗した連邦高官の最たるものと陰口は常に叩かれていましたね。

 けど、それ以上にあの人の功績を否定できないんですよ。

 ティアンム提督に次いでルナ2防衛のナンバー2になるのですが、艦船の修理をはじめとした裏方は全てあの人が処理していたはずですよ。

 あげくに、月経由で旧型のザクを入手するコネはどこから持ってきたのか……

 もちろん、裏方だけで終わらないからあの人はあそこまで出世したんでしょうが。

 あの旧型ザクを利用してジオンの補給船狩りをしてジオン軍をきりきり舞いさせたのはルナ2どころかジャブローでも喝采をあげた人が多かったとか。

 レビル提督が対ジオン軍の総司令官になったのですが、ニューソクデ提督が外れなかったのは、これらの功績をレビル提督が無視できなかったのでしょうね」

 

 この時期の地球連邦軍で反攻作戦を指揮したのは、ジャブローのゴップ大将である。

 レビル将軍がV作戦をはじめとしたMS開発計画を主導した結果、通常戦力でのハラスメント攻撃がこの反攻作戦の主目的だったという。

 だが、この反攻作戦は信じられない大戦果をあげる事になった。

 

「ニューソクデ提督は衛星軌道上でのハラスメント攻撃に特化しながら、ジオン軍の兵站線の把握を常にジャブローに送り続けていました。

 彼らが息切れするその瞬間を現場でデータを送っていたニューソクデ提督と兵站のプロだったゴップ大将は完全に分かっていたんですよ。

 おまけに、その反攻作戦というのが高高度からの絨毯爆撃ときた。

 いくらMSが強力な兵器とはいえ、空を飛べない以上高高度からの絨毯爆撃にMSはなすすべがなかったんです。

 最初は小出しに、戦果がはっきりと出ると大々的に。

 調子に乗って戦線を広げ切っていたジオン軍はこれに対処する戦力は残っていませんでした」

 

 ジオン軍は初戦の勢いはどこへと言わんばかりに敗走を重ねる。

 地上という重力にとらわれた千差万別の戦場にジオン軍のMSは対応する時間が与えられずに次々と撃破され、戦争は完全にジオン軍の主導権が失われる結果となったのである。

 

 

「もし、ルウムでドズル閣下が戦死なさっていなかったならば、地球侵攻はあそこまで深く行う事はなかったのではないか?

 ドズル閣下は、宇宙攻撃軍を率いて宇宙要塞ソロモンにてルナ2の動向を常に監視していました。

 ジオンの攻撃目標が地球ではなくルナ2だったら……

 あの時ジオン軍のMS乗りだった私はそれをふと思う事があります。

 もっとも、その場合はあのニューソクデ提督と戦う事になるのですけどね。

 あの人の艦隊は、『怖い』のではなく『うざい』んですよ。

 人死によりも作戦目標--我々の補給物資投下を邪魔するー-がしっかりしているから、戦っていると酸素や燃料、降下ポイントの逸脱とかで気づいたら負けている。

 そんなのが何度もありましたよ。

 この戦いを本当に恐れていたのはマ・クベ中将だったとか。

 事実、あの人はオデッサの戦いで降伏していますからね」

 

 

 戦争はジオンの優勢から連邦の反撃へと移りつつあった。

 オデッサの戦い。

 連邦MSの登場と共に、こうしてジオンの敗北は始まった。


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