【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです 作:北部九州在住
サイド7駐留艦隊司令官。
ニューソクデ提督の次の職場であり、実質的なサイド7総督としての赴任を強力に推したのはゴップ大将だったというのは有名な話である。
その理由として、南極条約で問題となったサイド5の難民の収容という大仕事を任せられるのが彼しかいなかったというのがある。
「ニューソクデ提督の本質はロジスティクスにあり、五百万人もの難民を受け取り管理する現場指揮官が宇宙に殆ど居なかったのです。
ルナ2で後方がらみの仕事をほぼ掌握していたあの人にとって、うってつけの仕事だったのは間違いありません。
と、同時に確執があったレビル将軍が行っていたオデッサ作戦に彼を絡めたくなかったという裏事情も否定できませんけどね。
後にV作戦と呼ばれる連邦のMS開発はあのサイド7で行われていたのですから。
ニューソクデ提督にそこを任せるにあたってレビル将軍は相当の葛藤があったみたいですが、ゴップ大将の説得に最後は折れたみたいですね」
ここでニューソクデ提督はその才能を十全に発揮させる。
連邦政府高官のコネを利用してフォン・ブラウンやサイド6の企業を誘致、悪名高い空気税を撤廃して経済的基盤を整え、難民を受け入れると同時にその秩序維持に成功したのである。
この五百万人の難民がサイド7で市民化する事の意味を連邦政府側が十二分に評価していた。
「あの人のえぐい所は、五百万人の難民から兵士を抽出した所にあります。
ジオン憎しで志願した難民が兵士という職を得たことで、中の治安が良くなっていったのは見事と言わざるを得ません。
彼らの戦力化は主に後方勤務において利用されました。
ルナ2への資材生産と搬送、ルナ2駐留将兵の休養娯楽拠点への配備、重要度の低い拠点の警備を代行する事で連邦軍正規兵を抽出などこの時期の連邦宇宙軍の再編においてニューソクデ提督の関与が無かった物はありませんでしたよ」
その一方でジオン軍への兵站線妨害攻撃も忘れていない。
特に鹵獲したらしいザクⅠを利用した海賊まがいの鹵獲までやってみせ、『地上のレビル将軍、宇宙のニューソクデ提督』の評価を確定させる。
「当時のニューソクデ艦隊はペガサス級という新造艦艇が1隻加わったとはいえ、マゼラン級2隻、サラミス級4隻、コロンブス級2隻の9隻しか存在していませんでした。
ルナ2の艦隊が艦隊保全に走っていた時に、この9隻は縦横無尽に暴れまくったのです。
特に、その襲撃の全てにニューソクデ提督は出撃していたんです。
『艦はムラクモ大佐とマシュ中佐でコントロールできるからお前ら艦を降りて休め』なんていうんですよ。あの人。
幸い、ブリティッシュ作戦で彼に命を助けられて彼の艦隊に志願を希望した将兵が多かったので、そんな醜態は未然に防いだのですが、見事なまでの指揮官先頭に将兵が奮わない訳がないですか」
「あの人のすごい所は、襲撃の指揮は完全にムラクモ大佐とマシュ中佐に任せていた所で、出撃中何をしていたかというと、ステンノ中佐と一緒にサイド7統治の書類の処理をしていたんですよ。
艦橋の指揮官の椅子に承認印とサイン用の万年筆が置かれていたのはあの人ぐらいですよ。
そういう事をやっていたから、あの三人相手にご乱交をやっても生暖かい目で見るしかないじゃないですか」
ジオン軍側から見てもニューソクデ艦隊は目の敵だったのだが、その撃退に動く戦力はすでに残っていなかった。
ジオン軍は地球という広大な戦場に完全に引きずり込まれており、オデッサ作戦という連邦の大反攻に対処するだけで精いっぱいだったのである。
「ニューソクデ艦隊。
そりゃ、当時のジオン兵站部隊においてあの名前は聞きたくないものでしたよ。
何がいやかって、あの艦隊妨害に特化していて、まっとうに戦わないんですよ。
ミノフスキー粒子をものともしない陰湿な戦い方はあの艦隊の十八番でしたね。
ミノフスキー粒子は戦場に散布することで、あらゆるレーダー兵器や通信機器を妨害する性質があるのですが、事前誘導のミサイル攻撃を遠距離から容赦なく仕掛けて来るんですよ。
地球への降下ポイントに。
ジオン軍占領地にHLVを落とす場合、北米かオデッサかキリマンジャロの三つのポイントがあります。
で、そこに落とす場合の時間と降下ポイントは計算ができるんですよ。
その計算に基づいて、超長距離からミサイルを容赦なくばらまく、ある種の機雷ですね。これは。
我々はニューソクデ艦隊の姿を見ずに、奴らが放ったミサイルの処理にMSを出して何度対処した事か。
それで追い付かずに降下を諦めた事も多々ありました。
オデッサ作戦が始まるともうニューソクデ艦隊への攻撃すらままならない状態で、ソロモンの部隊を動かしたらという意見が統帥部から何度も上がったのですが、それ合わせてルナ2の艦隊が出て決戦になった場合、艦隊戦力の枯渇からソロモンが落ちる可能性を考慮して見送られました。
妥協の産物としての突撃機動軍によるサイド7核攻撃なのですが、結果として攻撃部隊は降伏して失敗。
オデッサの戦いがあの結果になったので、キシリア閣下の失脚に繋がったわけです」
オデッサ作戦が順調に進む中で、連邦軍はジャブローから艦隊の打ち上げに成功する。
その艦艇の多くがニューソクデ艦隊に配備された上に中将に昇進したのはこのような功績があったからに他ならない。
結果、サイド7駐留艦隊はマゼラン4隻、サラミス13隻、コロンブス8隻、更に鹵獲したチベ1隻とパプワ級1隻という陣容になり、ジオンのソロモンを睨み続ける事になる。
その状況でオデッサではジオンの敗北が近づいていた。