【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

166 / 237
INTERMISSION その3

 麻帆良学園。

 近年は関西呪術協会を始めとした侵入者の撃退が激変し、今やそのセキュリティーは魔法と科学にて強固なものになっていた。

 

「で、今日の馬鹿はどいつだ?

 米国の工作員か?

 ナチの馬鹿どもか?

 魔術協会の命知らずか?

 神殿教会と聖堂教会の狂信者か?

 アーカムやトライデントの金の亡者か?」

 

 学生生活を謳歌しているエヴァンジェリンA・K・マグダヴェルにとって、この警備業務はただの面倒事なのだが、今日の相手はその中でも飛び切りの面倒事だった。

 タカミチ・T・高畑は彼女に向けて、その相手を淡々と告げた。

 

「ニンジャだ」

「忍者!?」

「いや、ニンジャだ」

 

 日本語のニュアンスは難しい。

 とりあえず、そのあたりの問答を経て、二人の話は先に行く。

 

「ほら。

 対魔忍育成機関の六車学園を麻帆良に設置しただろう?

 対魔忍はその容姿もあって、捕まると魔物たちに凌辱されてね。

 口の悪い輩は『魔物相手の娼婦』なんて言っている奴もいる。

 そんな彼女たちを狙っているのが、ニンジャという訳だ」

 

「すまない。

 私もかなり日本に長く住んでいるのだが、いつの間にこの国はそんな愉快なことに成り果てて居たんだ?」

 

「さぁ。いつからなんでしょうねぇ?

 私としましてはそっちもそうですが、この学園の防衛体制にも懸念を持ちたい所なんですけどねぇ」

 

 さも当然に話に加わるのは、着任したばかりの入江省三麻帆良学園監察官。

 文部省の入江シリーズで、この麻帆良学園都市の主権を日本国に戻すのを目的としている。

 そのあたりを隠そうともしていないから、当然先の二人も警戒感バリバリである。

 

「こういうトラブルは上位組織に報告して、その上で対処していただくのが筋なのですが、現場判断で対処した結果報連相がなおざり。

 よくある事ですな」

 

「御高説ごもっとも。

 その御高説が今夜の襲撃にどのように役に立つか、お教えいただくとありがたいのですが?」

 

 エヴァの慇懃無礼な質問にも入江省三の顔色は変わらない。

 そもそも、理由があるから現状がある訳で。

 その理由に触れずに現場判断を繰り返す以上は、理由を潰すのが一番手っ取り早い。

 

「ええ。

 今回のニンジャ、その組織を束ねているのは所沢に本社があるネコソギ・ファンド社というのですが、前政権やノマドと癒着して色々とやっていたみたいですな。

 それが政権交代で甘い汁が吸えなくなった。

 これが一つ」

 

 多国籍企業であるノマドにとって、どうしても国内優先という訳にはいかない。

 対魔忍を娼婦化した売却先の一つがこのネコソギ・ファンド社であり、ここの娼婦はオイランと呼ばれて政財界の暗部にブランドとして知名度を誇っていた。

 そんな娼婦供給ラインが去年の秋口あたりから壊滅した。

 製造していたノマドはどこぞのカレー好きシスターの猛攻撃で国内拠点の大半を失う大ダメージを受け、野良や元を含めた対魔忍を先ごろまとめて買い漁ったのが入即出やる夫である。

 つまり、現場の娼婦の供給が追い付かなくなりつつあったのである。

 何しろ魔物やニンジャを相手にする娼婦はただの人ではすぐ壊れてしまう。

 そういう意味で、対魔忍というのは格好の娼婦素材だったのである。

 無いならば、奪ってくるしかない。

 

「もう一つは、向こうのご挨拶というやつですな。

 三下を出して様子を見た上で、今後のお付き合いを考えようという所でしょう。

 何しろ、ネコソギ・ファンド社は学園都市の技術を転売することで巨利を得ています。

 同じことを麻帆良学園都市でも考えるのは自然でしょう?」

 

 さりげなく入江省三は、学園都市で起こっている聖杯戦争にニンジャが絡んでいる事を伏せた。

 いずれは分かる事だろうが、そのあたりの対処を含めて麻帆良学園首脳部の動きを知りたいという理由である。

 それに気づいている二人は、ネコソギ・ファンド社の狙いに気づく。

 

「こっちで研究している冬木の大聖杯のデータか」

「学園都市で聖杯戦争が起こっているらしいですからね。

 だったら、冬木の聖杯戦争も調べますな。

 襲ってくる連中の狙いはこれです」

 

 冬木の大聖杯の研究は、ここ麻帆良学園都市にデータが送られて調べられている。

 その調査解析の中心にいた人物こそ、超鈴音だったりする。

 襲われる理由はいくらでもあった。

 

「そろそろ仕事の話に戻りましょうか。

 現在の警備は、貴方たち関東魔法協会に入即出統括審議官がつけてくれた対魔忍が中隊規模。

 さらに自衛隊の対魔小隊が配置についています」

 

 政権交代でその大義を失った自衛隊のクーデター戦力の一つであるガイア系自衛隊員だが、左遷先の一つがここ麻帆良学園だった。

 彼らは麻帆良の現状を正しく認識し、日本政府への麻帆良の主権返還を目標に入江の良い手駒に成り果てて居た。

 ショック療法と言ってはいけない。

 

「で、相手は?」

 

「ただのサンシタみたいですね。

 向こうは主力のシックスゲイツを学園都市に投入するでしょうし、聖杯戦争もまだ序盤戦です。

 ただ、進めば進むほどここも後方ではいられなくなるのでご注意を」

 

 現代戦争に後方なんて文字はない。

 あるのは総力戦であり、それに勝ったからこそ米国は超大国の地位に居座っていられるのだ。

 仮にも戦争と名がつけられた以上、国家というものがどう動くかというのを他の勢力は理解していなかった。

 後日、警備の為に自衛隊員の増派が行われ、メガロメセンブリア元老院との決別に向けて麻帆良学園首脳部と暗闘を繰り広げるのだが、麻帆良学園はその動きをまだ理解していなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。