【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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学園都市二日目朝から三日目朝

 学園都市二日目。

 今日は名目上の滞在目的である兵器見本市を見学する。

 実際に学園都市製造の兵器は優れているから、参考にはしておきたいらしい。

 海自からは今回の滞在許可と引き換えに、レポートの提出を求められている。

 

「さてと、レーダーだが……おりひめⅠ号を利用したシステムか」

 

 そもそも、イージスシステムというのは、第二次大戦時の日本軍の神風特攻で痛い目を見た米軍が、冷戦期におけるソ連の対艦ミサイル飽和攻撃にどう対処するかから始まっている。

 そのため、このシステムは、探知と迎撃に分かれている。

 つまり、『どうやって敵を見つけるか?』と『見つけた敵をどの武器で対処するか?』を突き詰めた結果としてのできたものなのだ。

 そんなイージスシステムだが、その広範囲探知機能と多様性のある迎撃手段により、ICBM迎撃の手段として注目されだす。

 冷戦時の最前線だった日本にとって、この盾は欲しくてたまらないものであり、学園都市は日本にこの技術を流出させる事で、米国の影響力の削減も狙ったのだろう。

 

「悪くないな。

 このシステムは」

 

 何しろメガテン世界では米国がICBMを撃ってくるのだ。

 米国由来のイージスシステムが使い物にならなくなる可能性は考慮しておいた方がいい。

 

「発見から、迎撃選択にミサイル誘導まで人工衛星がやって、こっちはミサイルキャリアーとしてそのICBMが迎撃できる所まで移動するだけというのがいい。

 この方式だと、今の護衛艦でも迎撃能力を大幅に向上できるのが更にいい」

 

 これも人工衛星、というか言ってしまおう。

 『樹形図の設計者』の恩恵である。

 これがある限り、科学を以てして学園都市を落とすのは難しいだろう。 

 

「そう言っていただけると、うれしいですわ」

 

 ガイドでもあるテレスティーナ=木原=ライフラインは営業スマイルを崩さない。

 そんな彼女からこんな提案が出る。

 

「これは統括理事会からの提案なのですが、日本政府の好意に報いたいという事で、この最新式イージスシステムのモニターになってみないかと」

 

 にっこり。

 にっこり。

 互いに目は笑っていない。

 つまり、昨日の夜の襲撃に対する侘びというやつなのだろう。

 それについてはひとまず保留して、他のシステムも見てみる。

 見逃せないものを見つけてしまう。

 

「……天海市の衛星回線ネットワークに協力……?」

「はい。

 政府の天海市二上門にある天海モノリスのアンテナから衛星通信ネットワークを用いたコンピューター回線を……」

 

 テレスティーナの言葉をもはや俺は聞いていなかった。

 ソウルハッカーズにおける根幹の仕掛けは、パソコンネットワークを用いた魂の収拾。

 そして、その魂を偉大な存在に捧げる事で神格を上げる事に使われる訳で……

 

(やべえ。これ絶対能力進化計画に直接絡めるやつだ……)

 

 頭を抱えたくなるのを俺はぐっと我慢する。

 そんな俺をテレスティーナが怪訝そうに見つめる。

 

「何か問題でも?」

「失礼。

 そちらの提案は、歓迎すべきものです。

 ただ、自衛隊では完全と言うものはないと叩きこまれていましてね。

 このシステムだとミサイルの更新だけで済みますから、元々用意していたスペースに何か積めないかと考えていたのです」

 

 『樹形図の設計者』はいずれ壊れるだろうしなんて言えず。

 俺のごまかしはどうやらテレスティーナにはバレなかったらしい。

 

「でしたら、こちらのシステムなどはいかがでしょうか?

 ここでしか実用化されていない未来の兵器。

 レールガンです」

 

 なるほど。

 その技術を機械で実用化できたからこそ、御坂美琴が出てきたのか。

 この超兵器はとにかく電力を大量に消費する。

 ジオ系悪魔に電力作ってもらって、撃てるかな?

 とりあえずカタログをもらって検討するという事にした。

 

 

 スティーブン探索判定 100で足取りが見つかる

  74

 

 学園都市監視度    100でしっかり監視

  43

 

 学園都市妨害度    100で攻撃まで含める妨害

  17

 

 この学園都市に来た本来の目的であるスティーブンの探索だが、なんとか足取りを捕まえることに成功した。

 学園都市内のネットワークにオカルト系のサイトがあり、スキルアウトのたまり場である第10学区に目撃情報が発見されたのだ。

 天ヶ崎千草に身代わり人形を作らせてホテルの監視を騙し、ステンノの『気配遮断A+』を駆使して、第10学区にお出かけ。

 適当に近づいてきたスキルアウト達を『魅惑の美声A』で魅了すれば、あとは第10学区内部のアンダーネットワーク端末まで一直線である。

 

「君は私が作った悪魔召喚プログラムを使ってるね。

 もし君が秩序にも混沌にも偏らず、中庸の道を往くのなら、私が僅かばかりだが協力してあげよう。

 人間が持つ価値を、可能性を、私に証明してくれ」

 

 この台詞を聞いた時の安堵感たるや。

 アームターミナルのCOMP内部の悪魔枠を倍の12に拡張してもらい、学園都市だからと当たり前に存在しているスマホに悪魔召喚プログラムが移せるようにも改造してもらった。

 その日の夜。

 学園都市側からの襲撃は無かった。

 

「おはようございます。

 短い間でしたが、ありがとうございました」

 

「こちらこそ、これからも良い関係を続けていきたいと思っておりますわ」

 

 テレスティーナと互いに握手を交わし、俺達は無事に学園都市を出ることができた。

 今回、イージスシステムとレールガンを入手した事で、海上自衛隊内部において俺の評価が高まったのは言うまでもない。

 それともう一つ。

 

「おかえりなさいませ。

 やる夫様。

 東風谷早苗と名乗るお方がお待ちになっていますよ」

 

 ホテル業魔殿からの電話報告を聞いて、彼女の戸籍と身分の再確認と場合によっては偽造をしなければならないなと俺は思いながら、とりあえず提出するレポートを書くことにした。


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