【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです 作:北部九州在住
セイバーの降伏。
第三学区の日本政府施設にあるカメラから撮られているカエサルは実にふてぶてしかった。
ああ。こいつはセイバーではない。
政治家だ。
「はじめまして。
まずは降伏に伴う寛大な対応に感謝を。
私の名前は言わなくていいだろう?」
「ええ。
ガイウス・ユリウス・カエサル。
あなたをセイバーだなんて呼びたくありませんな。
入即出やる夫。宮内省統括審議官。
あなたの知っている役職で、一番わかりやすいので言えば……属州総督でしょうな」
「これはまた大物だ。
その前職は、執政官かね?法務官かね?」
「法務官ですよ。
ローマ外の属州生まれが後援者を得て、財務官、法務官と経て属州総督に。
野心があるならば、執政官にという所なのでしょうが」
「素晴らしいじゃないか。
私なら、迷うことなく君を執政官に推挙するよ」
「そうやって何人誑かしたのですか?」
「そうだな。
ローマが傾くぐらいかな?」
「はっはっは」
「はっはっは」
小粋なローマジョークの挨拶も終わって、そのまま本題に入る。
あくまでこっちが勝者であり、向こうが敗者なのだ。
とはいえ、このペテン師は簡単にそれをひっくり返しかねないのが怖い。
「なんでうちに逃げ込んだのです?」
「簡単な話だよ。
今回の聖杯戦争は、背後勢力の潰しあいがメインだ。
つまり、サーヴァントが残っている間に、背後勢力を潰した所が勝者となる」
あっさりとこの聖杯戦争の本質を見切るあたり、彼の政治能力は本物だ。
多分、これに気づいているのは、ライダーのアキレウスとアーチャーのアルジュナぐらいだろう。
そしてそれは、サーヴァントの意味が変わる事を意味する。
サーヴァントという『戦力』が『タイマー』に。
「それを分かっていながら、あなたアマデウス潰しましたよね?」
「そりゃ、ここに転がり込むための手柄の一つという事だよ。
何よりも、奇数より偶数の方が手を結び易いだろう?
今頃は我々の提携に泡を食って、水面下で楽しいことになっているだろうな」
「その水面下で動いている黒幕らしいキャスター・リンボについて何か?」
セイバーの推理+マスターの学園都市知識補正30
99 クリティカル+30=129
「まぁ、ある程度の説明はできるが、ここから先は取引というやつだな」
いいようにカエサルの口車に乗っている自覚はあるのだが、現状その水面下にて蠢く勢力を武力討伐する場合どれだけの手間がかかるか分からない。
降伏の時点で、俺にはカエサルの口車に乗るしかなかった。
このローマ最高の政治家の一人は、大ほら吹きであると同時に、互いの妥協線を作り上げるのがとてもうまい男だったのだから。
「で、こちらには何を求めて?」
「私個人としては色々とあるが、とりあえずはこの聖杯戦争からの安全な脱落を望むね」
聖杯戦争に参加するサーヴァントは、聖杯に望みがあるから出てきている。
それにも関わらず、彼はためらうことなく聖杯戦争からの脱落を望んだ。
それの意味することは一つだ。
「『聖杯を完成させるな』……か。
冬木の汚染された聖杯よりたちが悪いみたいだな」
「あれが聖杯だって!?
とてもじゃないが、そんな代物ではないよ。
少なくとも、呼ばれたあれは聖杯などと呼びたくない何かだよ」
つまり、大聖杯は『Fate/KOHA-ACE 帝都聖杯奇譚』に出てきた八一号聖杯爆弾で確定と。
待てよ?
そうなると、現在行方不明の本物の聖杯とメシア勢力の狙いは何だ?
「あれが爆発したとき、何か起こるか正直見当がつかん。
この世界の核か。
あれよりもたちが悪いと、私は思っている」
考え込む俺の思考がカエサルに誘導される。
嘘は言ってないのだろうが、実に腹立たしい。
そこから導かれる答えに行きついたからだ。
「悪魔の出現は核戦争の後だったと言われているが、核爆弾ぐらいで悪魔が出現するのならば、地球上にはもっと悪魔がはびこっている。
今までどれだけの核実験で核爆弾が地球上で爆発してきたと思っているんだ?」
「そういうことさ。
私も名声や富や快楽を十分に堪能したが、それでもローマという人類の揺り籠を壊したりはしなかった。
悪魔という蛮族相手に、自ら防壁を崩そうとする愚か者と手は組みたくないという訳でね」
メシアの狙いはわかった。
この聖杯爆弾を炸裂させて、この地上に悪魔を跋扈させて千年王国へという筋書きなのだろう。
「ん?
待てよ。
魔界への穴はすでに開いているのに……ああそうか。
その穴を広げる為の聖杯爆弾か」
「そこまでわかるならば、この聖杯戦争の筋書きが見えてくるだろう?」
誰が用意したが知らないが聖杯爆弾が学園都市にあり、その爆弾が炸裂するのは東京ジオフロントと呼ばれている地下都市ヨミハラ。
つまり、メシア側としては聖杯爆弾を都心に運ぶ必要がある。
「……その過程で最も邪魔なのは俺か」
「だから、君を相手に選んだという訳さ。
手を組んでくれるだろう?」
「ああ。
カエサル殿については分かった。
だが、マスターは賛同しているのかな?」
俺の確認にカエサルはにやりと笑う。
すでにカエサルの術中にはまっているが、こまったことにそれが心地よい。
「それも条件に入れておこう。
マスターの願いは、木原病理への復讐なのだが、君と組んでいると勝手に成功するのだよ」
ん?
どういう事だ?
そんな顔をした俺にカエサルは楽しそうに言い放った。
「君の所のダヴィンチ女子。
彼女、可能性の塊じゃないか。
彼女が学園都市の研究者にアドバイスし続けば、木原病理が司る『諦め』は簡単に破綻する。
それも君の所に転がり込んだ理由の一つさ」
そういう事か。
こいつ、計算づくで逃げ込んだ。
それの意味することは……
「さすがカエサル。
俺の所に逃げ込んだのを全勢力にばらまいたな」
「そして、安全に脱落させるためには、我々を学園都市外に出さないといけないだろう?
ほら。
戦場を限定できた」
うん。
こいつは英霊になってもカエサルだ。
セイバーなんてクラスにおさめきれない器に俺は苦笑するしかなかった。