【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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学園都市聖杯戦争 その5

 戦場は限定できた。

 次は、敵味方の選別である。

 

「手慣れていますな」

 

 俺の皮肉にも画面向こうのカエサルは肩をすくめてこう返しただけだった。

 

「たいしたことではないよ。

 ガリア人相手に戦い続けるよりはね。

 精々今の状況は、アレシアの包囲戦よりは楽だからな」

 

 ……なんでこの人を星3なんぞに置いたんだろうなぁ……

 そんな事を考えながら、俺はカエサル劇場の観客に徹することにした。

 

 

 

「米国には今回の聖杯戦争がテロ組織のテロであるという情報は届いているのか?」

 

「……いや。

 そのお話は初耳ですな?」

 

 俺の電話会談を受けてくれたトールマン大使は、慇懃無礼に俺の言葉をかわす。

 なお、そのテロ組織メシア教って言って、トールマン大使がそこの構成員というのを分かったうえでのこのセリフである。

 こういう策を提示するあたり、そーいうところだぞ。カエサル。

 

「ええ。

 情報ソースは秘匿させてください。

 今回の事件、学園都市にある聖杯を爆弾、つまり冬木市で発生したような溶岩流出事件を起こすために使い、都心でテロを仕掛けるのではないかという話なのです。

 この情報を我が国は関係機関に流し、情報の裏取りを進めています。

 同盟国として、今回の事件に対して協力をしてくださっている米国の協力への感謝と思っていただけるとありがたい」

 

「それはそれは。

 我が国はいつでも同盟国として支援する用意がありますぞ」

 

 まずは最大勢力のメシア教と米軍の連携に楔を打ち込む。

 マスター陣営が切り捨て要員だからこそできる、本体へのダイレクトアタックにトールマン大使は電話向こうの語気は変えないが、焦っている事だろう。

 

「助かります。

 すでに、米軍にも横須賀基地のユーリア・ブラッドストーン大佐に伝えており、このテロ組織への警戒を促している所です。

 何もない事が一番なのですがね。

 ああ、メアリー・スー大佐に伝えておくべきでしたか?」

 

 つまり、デグさまことターニャ・デグレチャフ少将にも伝えているという事で、現在ワシントンで行われているアンブレラ社パージにかこつけてメシア教パージも行うという事だ。

 彼らに選択肢があるように見せて追い込む。

 動くか、動かないかを。

 

 

トールマンの反応 100で政治的に判断

 95

 

メアリー・スーへの反感 100で好感情

 15

 

 

「いいえ。

 私は米国駐日大使として、権限を有している。

 入即出統括審議官のお手を煩わせる必要もないですよ。

 私の方から伝えておきましょう」

 

 

 

「各個撃破は戦争の基本だよ。

 ましてや、大勢力になればなるほど、中の意思疎通は滅茶苦茶になる。

 考えてもみたまえ。

 現代のローマである米国の中が、果たして一枚岩なのかね?」

 

 それであっさり分裂にもってゆくというか、そうやって貴方元老院とポンペイウス潰しましたね。

 実体験があると違うなぁ。ほんと。

 これで、メシア教と米軍に楔を打ち込んだ。

 

 

 

「ん、本気を出せ……? よろしい、そのオーダーに応えましょう!

 この研究についてはこう……この論文のポイントはこう……ここの理論については……」

 

 ダヴィンチちゃん大活躍である。

 木原加群のアドバイスの元、木原病理が諦めさせようとしていた研究に徹底的にテコ入れする。

 というか、モニター向こうの木原加群に一喝してみせたダヴィンチちゃんはさすがダヴィンチちゃん。

 

「なんだい!なんだい!

 そんな事で君は諦めたのかい?

 私を見たまえ!

 死んで英霊になってもなお諦めきれず、この美女になってまだ見ぬ未来を追い求めている。

 そう、キミたちはあらゆる困難を乗り越える。その証左を今示そう!

 『境界を超えるもの』! ──さあ。行けるトコまで、行ってみよう!!」

 

 いや、それロリンチちゃんのセリフ……聞かなかったことにしよう。

 今のダヴィンチちゃんは学園都市研究という極上の餌に貪りついている可能性の獣だ。

 というか、カエサル。

 隣にいたのだろう。しっかりセリフが聞こえているんだよ。

 

「なんだ。マスターもそんな風に笑えるのではないか」

 

って。

 

 

学園都市統括理事会の支援 100で好反応 +ダヴィンチちゃん支援30

 69+30=99

 

アレイスターの行動 100で行動 0で黙認

 7

 

 

 学園都市の権力者は超能力者ではない。

 それを生み出す研究者こそ、権力者であり、金を持っている連中の多くは、それゆえに現在に満足して留まってしまう。

 そして研究者から権力者に姿を変えてゆくのだが、そんな行き詰った権力者たちにダヴィンチちゃんは容赦なく刺さった。

 そのうえで、正論で押し通してゆく。

 

「こちらは、そちらの自治を尊重したうえでお話をしているのだが、学園都市内部にそういう事をせずに好き勝手する連中がいるみたいですな?」

 

 アレイスターの反応だけが気がかりだったが、彼はついに動かなかった。

 という事は、彼にとってもメシアのハルマゲドンは迷惑でしかなかったという事なのだろうか。

 そのあたりの事情はいまいち読み取れないが、少なくとも学園都市側から敵対行動をとられなくなったという事で、敵を絞ることができた。

 

「ノマドが行っていた、クローン対魔忍製造の件なのですが、その部門をヨロシサン製薬に移して独立させようという動きが通産省の中であります。

 どうです?

 一口乗りませんか?」

 

 

ラオモト・カンの利益 100で利益

 9

ラオモト・カンの執心 100で執心

 3

 

 

 思った以上に、ラオモト・カンは乗ってこなかった。

 というか、よせばいいのに麻帆良学園に移した五車学園に手を出そうとして、麻帆良の連中に目をつけられたからだ。

 彼らの正義にラオモト・カンは防戦に追われ、政権交代で一緒に甘い汁を吸っていてた政治家が失脚した今、体制立て直しの為に早急な手打ちを急かされていたのである。

 まぁ、東京が爆発四散した時に、所沢も無事なわけないしな。

 この手打ちにて、ネコソギ・ファンド社は損切りをしてジェノサイドとバーサーカーもこちらの影響下に置くことに成功した。

 個人的に一番うれしかったのは、雇われていたシルバーカラス=サンの契約を俺が引き継いだ事で、矢本古希に居合いのイニシエーションを伝えられることだろうか。

 せっかくの闇鍋世界だ。

 本物の剣豪英霊あたりも今度呼んでやろう。

 とにかく、こうしてニンジャも舞台から降りた。

 

 

 

 東京キングダム跡地。

 現在ここに建設中の火力発電所は絶賛工事中である。

 

施設完成度 100で完成+ダヴィンチちゃん補正30+学園都市補正+10

 53+30+10=93

 

「施設はほぼ完成ですね。

 24時間突貫工事。

 学園都市の技術支援があったとはいえ、よくこれだけの期間で完成させましたよ」

 

 工事関係者のぼやきを俺は適当に聞き流す。

 なお、こういう工事大好きなダヴィンチちゃんが学園都市技術を流用して工事スケジュールを超短縮させたのだが言うつもりはない。

 とにかく、英雄王はこの地にて十全に動くことができる。

 

「遅いぞ!道化!!

 待ちくたびれたぞ!」

 

 いや、半年で巨大発電所を建設するという力業は本来無理ですから。

 とはいえ、それをいった所でこの王様聞かないだろうし。

 

「王にお喜びいただけましたら何よりです」

 

「約束どおり褒美をとらそう。

 と、言いたい所だが、こちらに来た目的、すでに察しておる」

 

 さすが千里眼の持ち主。

 こういう所でこの人は敵に回してはいけない。

 

「よかろう!

 あの雑種が出るかもしれんというだけで、我が出る理由になる。

 このような三文芝居の脚本を書いた、あれに感謝するのだな」

 

 万一に備えて英雄王参戦確定。

 敵を減らし、味方を増やして各個撃破。

 見事な手並みを三文芝居と言い切れるところに、この英雄王の凄味がある。

 そして、雑事は俺の仕事。

 ここは英雄王の力の源であり、弱点だからだ。

 

「警備は対魔忍とPMCに任せろ。

 たしか室戸次官が雇ったロシア人のPMCがあったろ。

 あれだ」

 

 敵は分散させ、味方は集中させる。

 だから、発電所出口で待っていたあのお方が居るのもあのカエサルのシナリオの内なのだろう。

 

「もちろん、私も連れてってくれますよね♪」

 

 周囲の空き地に草を生え散らかして待っていたアマテラスおねーちゃんの隣ですべてをあきらめたような目になっている鬼咒嵐を俺は見なかったことにした。

 なお、俺の目も彼女と同じようになっているなんて言ってはいけない。

 

 




この人『賽は投げられた』とか『来た見た勝った』とかのセリフが有名だけど、私がこの人の言葉で心うたれたのは『ローマ人の物語』(塩野七生 新潮社)のこのセリフだったりする。


「まず敵と戦場を見せてくれ。その後で勝つ戦法を考える」


本当に言ったかどうかは知らないが、そういう言葉を言ったかのような功績をこの人は歴史に刻んでいるから凄いのだ。

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