【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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まだまだ続く猫の手の確保 その2

「君は何を着ても似合うな」

 

「人の見た目の判断というのは存外馬鹿にできないものでしてね。

 ましては人を相手にするのが軍師という仕事です。

 この時代で言うならば、参謀というのでしたっけ?」

 

 孔明と一緒に来た軍師が陳宮である。

 迷うことなく霞が関に送り込んだ孔明と違って、陳宮は孔明を連れてきた事を奇貨にして俺たちに自らを売り込みに来た。

 というか、偽造国籍を使って警察のキャリア官僚になっているあたり凄いというかなんというか。

 スーツ姿はまさに鬼畜眼鏡である。

 

「司令官。

 で、この人は使えるの?」

 

 叢雲は懐疑の視線を陳宮に向け、

 

「あらあら。

 マスターは男にもモテるのかしら?」

 

 ステンノはいつもの笑みで陳宮を眺め、

 

「私は会った事はないのですが、こうして先輩を助けてくれるのですから悪い人ではないと思います」

 

 マシュはよくわかっていない顔で陳宮の履歴書を確認する。

 

「能力把握の為に出した、陸自の指揮幕僚過程試験98点。

 海自の指揮幕僚過程試験81点。

 空自については自ら試験辞退。

 たしかに軍師としての才能はあるみたいですけど」

 

「警察ではキャリア警部として冬木市に出向。

 その仕事は真面目かつ優秀で、本庁帰還後に警視に昇進。

 人事評価については何も文句はありませんね」

 

 甲賀朧と甲河朧の疑似双子姉妹が陳宮の成績を確認する。

 さらりとマイク越しにこの会話をダヴィンチちゃんにも聞かせていたり。

 

「で、俺に売り込むとして、何を売り込むんだ?」

 

 俺の質問に陳宮はニヤリと笑う。

 この手の会話戦は軍師の独壇場である。

 

「それは色々とありますが、一番役に立つと思われるのは『効率良い味方の殺し方』ですな」

 

 最初の一言で主導権を持っていかれる。

 この鬼畜眼鏡は一回も出会っていないのだが、まるで見てきたかのように俺の事を語る。

 

「軍隊というのは詰まる所『効率よく敵を殺す』他に『効率よく味方を殺す』事が良い将であると言えます。

 戦争には相手が居る以上、全ての策が成功し全ての城が守れるという事は絶対にありません。

 マスターは子房殿を目指しているみたいですが、私が見た所戦場に出られている。

 いつか全てを守ろうとして何進大将軍のように討たれましょうぞ」

 

 ぐうの音も出ない正論に黙り込む一同。

 とはいえ、三国志時代の軍師による評価として何進というのは褒められているのか貶されているのか……

 

「折角だ。

 その設定を使わせてもらおう。

 陳宮。

 俺を宮殿に行かせないようにするならば、どう献策する?」

 

「そうですな。

 詰まる所、あの件は宦官を殺すか大将軍が殺されるかの二択でした。

 だったら、その下の曹操殿と袁紹殿をたきつけて、先に宦官たちを殺しますな。

 勝手に動いた責はこの陳宮が背負いますとも」

 

 なるほど。

 曹操と袁紹は何進を説得しようとして失敗した。

 軍師は君主のその人となりを知らねばうまく働かないか。

 

「なんとなく見えてきた。

 曹操の元を離れたのは、曹操が全てを守ろうとしてしかもそれができてしまったからだろう?」

 

 俺は陳宮との会話の核心に迫る。

 どうして陳宮は曹操でなく呂布を選んだのか?

 俺の言葉に陳宮はニヤリと笑った。

 

「晴れた日に傘をさしても、道行く人は奇人変人と見るしかないでしょう?」

 

 あの人材マニアの曹操の事だ。

 その将を必要な犠牲として斬り捨てる策を取りたくなかったし、それを前提として戦略の完遂を求める陳宮とではそりゃ相性が悪かっただろう。

 

「とはいえ、俺も曹操と似たようなものだろうに……何でお前は俺を曹操ではなく何進に例えたんだ?

 才能うんぬんではないだろう?」

 

 俺がこの会話の核心に迫る。

 それは、陳宮の策に俺がハマる合図でもあった。

 

「何進殿は何皇后が全てでした。

 マスターも同じく四人の何皇后がいらっしゃる。

 逆に言えば、この四人とそれ以外をちゃんと秤にかけて、その四人をとるように常に心掛けている。

 ほら。

 私が仕えるにふさわしいお方だ」

 

 こいつは、自分が切り捨てられる事も前提に作戦を立てているという訳だ。

 納得しようとした俺にマシュが声をかける。

 

「陳宮さん。

 質問なのですが、この宝具の『掎角一陣』というのは……」

 

「それは……」

 

 その効果と性能にドン引きする女たち。

 たまらず俺は苦笑する。

 

「さすが軍師だ。

 『切り捨てられる』ことと『生き残る』ことは別か」

 

「そうでないと、軍師なんてやってられないでしょうに」

 

 俺は笑って採用確定とばかりに両手をあげた。

 現状のオカルト絡みの対処はうまく行っているが、現状は全てを守ろうとしての状況に近いとこの会話で思い知ったからだ。

 いずれ、メシアとガイアの衝突や学園都市のあれこれやミレニアムがらみで取捨選択が迫られるだろう。

 その時に陳宮は軍師としてきっちりと『必要な犠牲』を提示してくれるに違いない。

 

「わかった。

 とりあえず警察からの出向という事でこっちの組織に入ってくれ。

 仕事は、与えなくても見つけるだろう?」

 

「仰せのままに」

 

 面接終了後、俺は最後に陳宮に尋ねる。

 さっきまでの会話と、陳宮の最後が微妙にずれていたからだ。

 

「ついでだから教えてくれ。

 曹操の事だ。

 徐州の戦の後でも助かろうと思えば助かっただろうに。

 どうして自ら斬られたんだ?」

 

「……簡単な話です。マスター。

 あの時のあの人の陣に私の居場所はなかった。

 知識だけの語りになりますが、私は徐庶殿みたいになるのはいやだったのですよ」

 

 ああ。

 あの綺羅星の陣営の中に彼の居場所は確かになさそうだ。

 その後、陳宮は宮内省の管理官として退魔組織の指揮運営に注力し、効率の良いオカルト事件の処理に邁進する事になる。

 なお、孔明とはなんだかんだでうまくやっているらしい。




この陳宮はFGOベースに三国志演義風味にしている。
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