【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです   作:北部九州在住

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猫の手を押し付けられた麻帆良学園の一日

 麻帆良学園都市の朝は早い。

 夜に侵入しようとする侵入者の対処が終わるのが、一日の始まりと言っていいだろう。

 朝5時。

 それがこの街の朝の始まりである。

 

「にゃー!

 お仕事終わったぁぁぁ!!!」

 

 背伸びをするかっここと魔神ヴィゼータ。

 侵入者側なのだが、やる夫と取引したのが運の尽き。

 二重スパイとして働けと警備員の真似事をする羽目に陥っている。

 

「中にいれば情報は取り放題だろう?

 どうせ困るのは麻帆良学園の妖怪じじいだ」

 

 というのが彼女の身分保障をしたやる夫の言い分である。

 もちろん、反対意見は出たが今度は入江省三監察官が中からつつく。

 

「そもそも、学園の全体警備の要は復学したエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルさんが担っているのでしょう?

 学園の一生徒にそのような重大任務を任せるだけの理由をお教えいただきたい」

 

 かくして、ここでも敗北した麻帆良学園都市側は警備についての見直しに着手する。

 テロ事件を名目に駐屯し続ける陸上自衛隊の退魔部隊指揮官である後藤一等陸佐は、治安維持警備を名目に、麻帆良学園都市の武装解除を進めていた。

 

「お疲れ様。嬢ちゃん

 とりあえず少し寝てから学校に行くことだな」

 

「嬢ちゃん言うな!

 あたしはこれでもあなたより年上なんだからぁ!!!」

 

「そういうことを言っている間は、まだまだ嬢ちゃんだよ」

 

 ヴィゼータをからかうのは、田中鍵ことシルバーカラス。

 なお、付き合いは某水着剣豪がまたやってきて暴れた際に、ともに気絶した仲という関係である。

 

「あれが一番の問題じゃないの?」

 

とは、ぶっ飛ばされたヴィゼータの文句なのだが、その文句の行き先であるやる夫は視線をそらせて沈黙する事で答えとした。

 ときおり現れるあの水着剣豪なる対魔忍もどきにぶっ飛ばされた連中は数しれず。

 そのくせ人死には出していないのだからたちが悪い。

 

「しっかし、この広い街の警備をあのムチムチお嬢様一人に任せていたって言うのがこの街の歪みよね」

 

「それでこの街を守れていたというのが凄みだよな」

 

 復学したムチムチJK詐欺ことエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルが警備から外れた結果、警備体制の強化はマンパワー、つまり大幅な増員によってもたらされた。

 陸上自衛隊の対魔部隊にこの地に移った対魔忍、さらに影響力確保のために駐屯しているアリアドネー魔法騎士団にいままでの警備をしていた麻帆良学園教師陣。

 魔法生徒も基本的には参加させない方向だが、参加させる場合は大人の補佐という形にしている。

 今回のヴィゼータとシルバーカラスはそんな事情でできたコンビである。

 

「で、だ。

 どうでもいい話だが、あれお前のところの組織に伝えるのか?」

 

「もう伝えたわよ。

 で、頭抱えている。

 どこの世界に『影の城をくっつけたバニーと天狗がやってくる』というのよ!?」

 

 天狗はまだいい。

 この国の妖怪というカテゴリーだからだ。

 なお鞍馬天狗で鬼一法眼なのは見ないことになっている。

 問題はバニーだった。

 麻帆良学園都市の霊脈とやる夫が管理しているプリズマ・ゴーズ異界を繋げるために、己の影の城を持ってきたのである。

 結果、枯れようとしていた世界樹の魔力供給が異界経由で行われてしまい、世界樹の管理権限があの異界で匿われていたダヌ様に移るという本末転倒ぶりが。

 この顛末に日本側もメガロメセンブリア元老院側も怒るに怒れなかった。

 だってダヌ様だし。

 なお、唯一怒る資格を持つアマテラス様は世界樹の管理権限移動がある種の異界取り込みであり、地脈にたいする影響が軽微と分かると一言。

 

「まぁ、いいか」

 

 多分ダヌ様のシチューに買収されたのではないと思う。

 ついでにいうと、ごはんにシチューをかけて鍋が空になるまで食べ尽くしたなんてことは秘密である。

 プリズマ・ゴーズ内では、対悪魔対策兵器の開発と実験が進められており、それがこの国の悪魔大量発生を防いでいる原因の一つとなっている。

 更に、量産され続けているハイデッカーにオイランロイドにクローン対魔忍の育成にうってつけの人材として鬼一法眼とスカサハがやってきた訳で。

 話がそれた。

 

「さあ。時間だ。

 行った行った」

 

「いつかけちょんけちょんにやっつけてやるんだからぁ!

 まったねー」

 

 ヴィゼータが去るとシルバーカラスはタバコを口に咥える。

 同棲しているノナコが嫌がるので、最近は咥えただけにしている。

 

「火、貸しましょうか?」

「結構ですよ。高畑先生」

 

 先生の場合、交代後も生徒の通学まで見る必要があるので負担がすごい。

 バニーだろうと天狗だろうと先生というか教師が増えることは大歓迎なのだった。

 なお、鬼一法眼先生は初等部の人気教師に成り上がり、スカサハ先生はその容赦ない指導で対魔忍たちを扱き上げていた。

 

「まだ見つからないようですよ。彼」

「そうなると、麻帆良学園都市周辺に潜んでいる可能性が高いな。

 探るならば、色々と上に話をせねばならぬ」

 

 二人の会話は途切れる。

 朝の通学時間が始まり、その話題にしていた生徒から挨拶されたからだ。

 

「おはよう。センセ。

 夜ふかしはだめよ」

 

「おはようございます。高畑先生。田中先生」

 

 麻帆良学園都市周辺で衛宮切嗣を見かけたという情報が入ってから、入即出やる夫はできる限り捜索の網をかけたのだがまだ見つかっていなった。




 さり気なくクーデター勢力が復権しているのがポイント。
 これは、伊庭義明三尉を帰還させた際の副作用。

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